薬害エイズを忘れない!

1500名の被害者を出した薬害エイズ事件が一応の終結を見て早10年。「薬害エイズってなあに?」と言う若者が増えています

クリオ製剤とコーン分画製剤とは全くの別物なのですか?

2005-09-20 10:13:21 | 薬害エイズに関する情報
一般的にクリオ製剤と言えば、ミドリ十字のAHFに代表される「クリオプレシピテート製剤」のことを指します。
 血友病Aの治療は、1960年代までは新鮮な血液(全血血液)または新鮮凍結血漿、1967年承認後は「コーンの低温エタノール分画法による画分I製剤(ミドリ十字のAHG)」が用いられ始めました(地方都市への普及は2~3年かかったのではないかと思います)。
その後新鮮な人血漿を一度凍結した後、低温でゆるやかに融解したときに生ずる沈殿(これをクリオプレシピテートと呼びます)に第Ⅷ因子が多く含まれていることが発見され、これが用いられるようになりました。
 クリオ製剤は、全血液や血漿の輸血に比べると第Ⅷ因子が数十倍含まれています。このため軽度の出血だけではなく、手術を要する大出血にも対応可能でした(血友病患者の多い医療機関に限られていましたが)。

その前段階としての「コーン分画I製剤」 AHG
血漿にエチルアルコールを加えることで特定の蛋白質成分を分離するコーン分画法が1940年代、ハーバード大学の化学者コーンらによって発見されていました。当時は、少数の成分が利用されるにとどまっていたのですが、1965年ごろから、コーン分画I成分をもちいたコーン製剤(「コーン分画I製剤」)が血友病Aの治療に使われるようになりました。日本でも1967年ミドリ十字は、コーン分画I製剤(商品名「AHG」)の製造承認を受け、販売を開始していました。

私の記憶では、1970年頃乳歯の生え変わり時の出血に対して熊本大学病院第二内科で使用したのが初めでした。100単位の第8因子を含むAHGを添付の注射用蒸留水で溶解し、点滴投与していました。抜けかけた乳歯の抜歯治療には抜群に効いて、殆ど出血がありませんでした。

その後もAHGは(少なくとも熊本では)しばらく使われていたと思います。AHF承認が1972年だそうですから、その後順次切り替わって行ったのでしょう。しかし小児患者にとって、AHGからAHFへの転換は、少なくとも医療現場においては「溶解液が100mlから50mlに変わった」くらいのもで、「製造工程の違い」などの認識もなく、「AHGの改良型がAHF」くらいの認識しかありませんでした。
しかも当時の熊本の医療は「関節内出血がひどくなって打つ」という治療スタイルだったので、回顧的に考察すれば関節の拘縮予防効果は少なかったと思います。以下記すような血友病専門医の認識は大都市周辺の一部医療機関の「第8因子製剤の使用方法の高い意識」に留まっていました。

コーン分画I製剤ですが、新鮮血輸血しか方策のなかった患者(特に小児患者)にとっては相当なインパクトを有していました。
京友会の中心メンバーとなる石田さんは、1970年、25歳のとき、京大付属病院で、コーン分画I製剤(AHG)を初めて打ち、内出血の痛みが消えるのに衝撃を受けています。
当時の血友病専門医のリーダーたちも、「幸いなことに、ここ数年来、AHG製剤をはじめとして、血友病の患者さんに対する凝固因子補充療法が急速に進歩しましたので、整形外科の分野でも、これと積極的に取り組むことができるようになりました。」「関節変化を減らすことが出来るのは、最早明白な事実です。」と患者会講演などで発言しています。

こうしたインパクトは、ほぼ同時期に開発・販売・普及され始めた「クリオ製剤」(ミドリ十字のAHF)に引き継がれることになります。






クリオ製剤ってどんな薬だったのですか?

2005-09-19 12:33:41 | 薬害エイズに関する情報
クリオ製剤とは、1972 年に承認された,血液の凝固因子だけを血液の中から取りだして開発された血友病の治療薬です。クリオプレシピテート(creopresipitate=低温沈殿物)とは、輸血の血液を低温処理したときの沈殿物のこと。乾燥処理されたクリオ(冷蔵保存)を,添付されている注射用蒸留水に溶かして,基本的には点滴で静脈注射します。中には自宅の冷蔵庫でクリオ製剤を保管し、自己注射していた血友病患者もいましたが、東京近辺や京都などの大都市の特定の医療機関の患者に限られており、全国的には「医療機関に受診して、点滴製剤として打ってもらう」が基本でした。

特に地方都市の医療機関に置いてあるクリオ製剤は(保管のコストや、小児から大人まで対応できるという観点から)一瓶100単位のものが大部分でした。したがって、小学校高学年以上になると(500単位以上の投与が必要な出血が増えるので)「病院の開院時間を待って受診し、点滴を5本打ってもらう」といった感覚でした。

国内の1~2人の供給者から少量作るので,それらの人の病歴がチェックでき,品質の安全を管理しやすい,血液凝固因子の純度が血液の数十倍~数百倍あり,少量の注射でよいなどの長所があるものの,大量生産できないという短所があります。しかし輸血よりも少量で迅速に処置ができ,血友病患者の社会参加に大いに貢献しました。血友病患者の平均寿命が20歳を超えるようになったのはこの時代以降の話です。

非加熱濃縮製剤が使用されるようになってからはあまり使用されなくなりました。軽症の血友病患者であればクリオ製剤で十分だったのですが、病院経営上、極めて少数回の治療のために購入・保管しておくのは不可能だったのでしょう。

血友病ってどんな病気ですか?

2005-09-19 11:49:15 | 薬害エイズに関する情報
先天性血液凝固因子欠乏症(生まれつき特定の血液凝固因子が欠乏している病気。特異的な凝固因子濃度が低い病という専門家もいます。なお、血液凝固因子には13種類あります)の1つ。代表的なのが第VIII因子欠乏症(血友病A)と第IX因子欠乏症(血友病B)です。

血友病AとBは、病状としてはよく似ているので、どちらの病気であるのか(それとも他の血液凝固因子障害なのか)確定するために、特異的な凝固因子アッセイ(分析試験)が必要です。
出血傾向は凝固因子濃度に関係し、健常者の血液凝固因子活性の5%以上の軽症、1~5%の中等症、1%未満の重症に分類されます。

一般的に重症血友病患者ほど関節出血などの出血回数も多く症状も重いのですが、さほど重い出血がなく、出血時のみ治療が必要・・・という人もいます。中等症でも症状が重い人もいます。軽症の人の大部分は止血管理さえしっかりやれば、ほとんど健常者同様の生活が送れます。極めて軽い人の中には、中高年になって交通事故や手術がきっかけになって血友病が「発見される」患者もいます。

抗HIV薬情報 フュージョン阻害剤(エントリー阻害剤)の悲哀

2005-09-18 00:23:38 | HIV治療情報
■2003年に米国FDAから認可されたホフマン・ラ・ロシュ社の新薬フューゼオン(Fuzeon)は、HIVのDNAが増殖(multiplying)のため、新しく増殖母体(宿主)となる細胞(host cells)のDNAに融合する(フュージョン、Fusion)のを防ぐという画期的な切り口の新薬(ややこしい説明ですね(^_^;))。
フュージョン(溶融作用)を防ぐという意味で、フュージョン阻害剤(Fusion inhibitors)と呼ばれます。
エンフュービルタイド(エンファービルタイド)(Enfuvirtide)又は、T-20というコード名で、数年にわたり数多くの臨床治験が実施されていました。

■これまでのエイズ治療薬は、細胞内でエイズ・ウィルスが増殖するために必要な酵素を制御する切り口の薬でした。
逆転写酵素阻害剤(ヌクレオシド系と非ヌクレオシド系があります)とプロテアーゼ阻害剤を基本的に3種類組み合わせてHIVの増殖を抑える「カクテル療法(またはHAART)」が主流です。カクテル療法によって、比較的長期間にわたり、ウィルスの増殖を抑えることは可能ですが、HIVを完全に排除するには60年かかる(!)という研究者もいます(大半の患者はそれまで死んじゃっているよお)。薬剤耐性ウイルスが発生する問題もあります。肝機能障害、リポ・ジストロフィーなどの副作用とも闘わなくてはなりません(現に私も戦い、傷ついています(;O;)。それゆえ作用機序が全く異なるフュージョン阻害剤の登場は大きな注目を集めたわけです。

■しかしフューゼオン(Fuzeon)は、価格が高い(Fuzeon一種類で月額20万円かかるそうです。量産が困難なためとか)、使用の困難さ(一日複数回の注射が必要)という問題点があるのですね。ウィルス量が多い感染者は、ウィルスを不活性化させるために、当然これまでのカクテル療法を併用しなければならない。しかもフューゼオン併用により、かえって悪化するケースが報告されるようになったのだとか。
そこで(というわけでもないのでしょうが)エイズ治療薬では大手のブリストル・マイヤース社(Bristol-Myers Squibb)がもっと安くて、(注射ではなく)飲み薬のフュージョン阻害剤の開発を進めているのだそうです。患者には希望が広がる話ですが、新薬開発に莫大な費用を投じてきたホフマン・ラ・ロシュ社にはいささか厳しいお話ですね。


IL-2(インターロイキン2)療法でHIVが治る?

2005-09-17 23:59:05 | HIV治療情報
   IL2療法って何ですか?
IL2を投与して、免疫系を非特異的に活性化し(目を覚まさせ活発にすること)、させて、CD4数を増加させようという治療方法です。

HIV治療には、HIVの増殖サイクルを阻害し(増えるのを邪魔する)、感染者の体中のHIVを減らすことで効果を発揮する「抗HIV治療薬」と、免疫系を非特異的に活性化させて、CD4数を増加させようという治療方法があります。

前者については1996~7年以降、新しい抗HIV薬が次々に開発され、3種類以上の薬剤を併用する強力な抗レトロウイルス療法(Highly Active Anti-retroviral Therapy。英語の頭文字をとってHAART=ハート〔療法〕と呼びます)が標準的な治療法となりました。HAARTを行うと、半年で90%前後の患者の血中ウイルス量が測定感度以下に低下します。その分、HIV感染のために減少していたCD4陽性Tリンパ球(CD4陽性Tリンパ球は白血球の一つで、体の中で病原体への抵抗力を担っている免疫機能の司令塔としての中心的役割を果たしています)の数(以下、CD4数)が増加、患者の免疫力が回復、日和見感染症に罹患するリスクが減り、死亡数が激減しました。

後者の「免疫系を非特異的に活性化させて、CD4数を増加させようという治療方法」の代表例が、インターロイキン2、すなわちIL2による治療です。

そもそもインターロイキン2とは何者?

IL2は、主にTリンパ球から産生される可溶性たんぱくで、Tリンパ球の活性化や分化増殖に促進的に作用します。ヒトに投与すると、Tリンパ球が活性化され、細胞性免疫が高まることから、癌に対する免疫療法としてその効果が検討されてきてました。現在、日本では遺伝子組換え型のIL2が、腎臓癌と血管肉腫の治療薬として保険適応となっています。米国では、さらに悪性黒色腫に対しても使用されているそうです。

IL2の投与で免疫機能が回復するのですか?

こうした癌の治療と同様の発想で、「HIV感染者に対してIL2を投与すれば、Tリンパ球が活性化・増殖し、その結果、CD4数が増加して患者の免疫能を回復させることができるのではないか」という考えが生じてきました。Kovacsらにより1996年に報告された臨床試験は、1日1,800万単位のIL2を5日間連続投与し、これを2か月ごとに6回繰り返すというもので、IL2を投与しなかった群ではCD4数がやや減少したのに、IL2投与群では、IL2投与後に2倍以上になったそうです。その後も、小規模な臨床試験がいくつも報告され、IL2投与によりCD4数が増加することは確実なものとなりました。

IL2に危険性はないのですか?

HIV感染者へのIL2投与に関して危倶されたことは、「CD4陽性Tリンパ球がIL2によって活性化されると、HIVの増殖までも促進され、血中ウイルス量が増加してしまうのではないか」ということでした。
この点については、複数の臨床試験で、IL2投与がウイルス量に影響を与えないことが確認されました。
また、IL2の副作用についても検討されました。IL2は大量に投与すると、インフルエンザ様の発熱、筋肉痛などがほぼ必ず起こります。その他にも、血管透過性の亢進による浮腫、腎障害、肝障害、アレルギー症状、精神神経症状など多彩な副作用が報告されています。これらの副作用は、IL2の使用量に左右され、Kovacsらの方法のような5日間の間欠投与の場合、1日投与量として1,500万単位が許容上限(これ以上投与するのは無理といった限界量)であろうということもわかってきました。

IL2療法に実際の効き目は?

こうして、IL2療法がHIV感染者に対する治療法として有効であるか否かを検討する、大規模な第3相臨床試験が2000年以降に開始されました。

1つは、2000年より開始されたSILCAATという臨床試験でしたが、ちょうどこの時期にHAART普及のために、多くの参加者でHAARTによるCD4数の増加が見られるようになり、IL2投与の効果判定が困難となり、2002年にこの臨床試験は中止されました。

もう1つの第3相臨床試験は、ESPRITと呼ばれるものです。こちらはHAART施行中でCD4数が300以上ある症例4,000例を対象に、SILCAATと同様のプロトコール(実験や治療の手順のこと)で、2001年より開始されました。このESPRITには、日本からも国立国際医療センター、国立大阪病院、東京大学医科学研究所附属病院の3施設が参加。2003年3月に目標の4,000例がエントリーを終了し、今後数年にわたって経過観察された後、IL2療法がHIV感染者の予後を改善するか否かの結論が得られることになっています。

今はまだIL2療法の有用性を総括する段階にはないわけですが、現状では以下のことが言えるでしょう(と中村先生はおっしゃっています)。
Ⅰ HAARTが導入される前の状況に比べると、その必要性は相対的に低下した。HAARTのみでも多くのHIV感染者でCD4数が十分に増加し免疫能が回復するわけで、そのような症例でさらにCD4数を増加させる意味があるかどうかは疑問がある。
2 しかし、一部の症例ではHAARTを施行しているにもかかわらずCD4数の増加が顕著でない症例もあり、そのような場合には魅力的な治療法の1つである。

IL2療法に他の希望ある使い道はないのですか?

HIV感染症に対する、IL2療法のもう1つの応用法として、HIVワクチンとの併用があげられます。HIV感染者では細胞性免疫(ウイルス感染細胞やガン細胞など自分の細胞に隠れている異常を発見して、Tリンパ球やNK細胞などが直接攻撃する免疫の仕組み。その司令塔がCD4陽性ヘルパーT細胞です)の低下があり、種々の微生物に対する特異免疫が障害されています。しかし、その中でも、「HIV自身に対する細胞性免疫が極度に低下している」ことが知られています。このことが、我々の免疫機構がHIVを駆逐できない原因の1つですし、また有効なHIVワクチンが得られていない原因でもあります。

HIVに対する特異免疫(HIVをこいつが敵だと明確に認識して攻撃する免疫反応、と言いましょうか・・・)が障害されている理由として、
① HIV特異的リンパ球のIL2産生低下があり、これは外からIL2を加えることで回復できることが知られています。
② そこで、HIVワクチン投与時に同時にIL2を投与することで、HIV特異免疫をより効果的に高めてやろうという試みがなされつつあるところだそうです。

抗HIV薬を併用するHAARTにより、HIV感染者の予後は著しく改善しましたが、HIVを駆逐することは困難で、感染者はほぼ一生涯、薬を飲み続けなくなくてはなりません。HIVは変身に長けているので?、真面目に飲み続けていても「薬の利かない耐性ウイルス」が生まれてきます。長く薬を飲み続けることによる「長期毒性問題」も深刻です。IL2療法によりHIV特異的免疫が強化され、HAARTを中断することができるようになれば、我々感染者にとっては大きな朗報と言えるでしょうね。

(株式会社ミノファーゲン製薬提供のPDFファイル、「HIV感染症とIL2療法」. 東京大学医科学研究所附属病院内科 助教授. 中村 哲也先生の原稿を参考にさせていただきました。感謝します)
medical.radionikkei.jp/ igakushoten/final/pdf/S160913.pdf

なぜ非加熱製剤が加熱製剤より先に認可されたんでしょうか?

2005-09-17 17:57:31 | 薬害エイズに関する情報
[教えて!goo] 薬害エイズ:非加熱製剤

03-12-09 19:38の投稿質問ですから、最早必要ないかもしれませんが、1960年代以降の血友病治療を受けてきた一患者として、できるだけ簡潔にご説明したいと思います。

ご質問は「なぜ非加熱製剤が加熱製剤より先に認可されたんでしょうか? 非加熱製剤が加熱製剤よりも何か優れていたんでしょうか? 単に非加熱製剤のほうが先に実用化されたからなんでしょうか・・・。」というものでした。

結論
非加熱製剤のほうが先に開発使用されていたからです。
より正確に言うと「ウイルス不活性化のための技術としての加熱技術」が未開発だったので、血液製剤に「加熱製剤」というものはなかったのです。
いわゆる「血清肝炎」がしばしば生じることはよく知られ、その病原体がウイルスらしいことは分かっていましたが、対処法としての加熱製剤の技法は確立されていませんでした。

血友病治療法(薬)の変遷
●1960年代の大部分 人間からの新鮮血輸血(家族、親戚、職場の人で血液型が一致する人たちに集まってもらい輸血に協力してもらう)
●1967年以降はコーンⅠ分画製剤(ミドリ十字のAHG) 1970年以降からクリオ製剤
血液を低温処理したときの沈殿物クリオプレシピテート(creopresipitate=低温沈殿物)から凝固因子を取りだした製剤。基本的に1~2人の血液から作るので、病原体感染の危険性は少ない。
●1978年以降 濃縮血液凝固因子製剤
 クリオよりさらに純度は高く、保管・扱い方の簡便さから家庭療法への道を開いた。しかしアメリカの売血を数千人分(2000人とも2万人とも言われる)プールして製品化しているので、供血者の中の一人でもウイルスに感染していると、そこから作られる製品が全てウイルスに汚染されてしまう危険性を持つ。このプール血漿からの製法がウイルス汚染リスクを高める危険性があることは早くから指摘されていたが、コスト低減のために、プール血漿製法が用いられた。その結果、国内の血友病患者の9割以上がC型肝炎ウイルスに感染させられ、約4割がHIVに感染させられる事態が生じた。(この項、LAPのニュースレター第4号、草下央氏の記事を参照)http://www.lap.jp/lap1/nlback/nl04/nl04yaku.html

HIV・肝炎ウイルス感染の危機意識
●輸血や血液製剤による「血清肝炎」がしばしば発生することは昔からよく知られていた。
●1970年 デーン(D. S. Dane)が電子顕微鏡で血液試料を調べ, B型肝炎ウイルスを発見した。以後ワクチン開発や血液スクリーニングによって血清肝炎は大幅に減ることが期待されたが、そうはいかなかった。当時は正体不明の肝炎を「非A非B肝炎」と呼んでいた。
●そうこうしている間に、上記濃縮製剤の製法のせい(+コスト優先の無対策)でHIVの方が血液凝固因子製剤を通じて世界中の血友病患者に感染、悲惨な被害を広げた。
●1983年3月 トラベノール社の加熱製剤がアメリカで製造承認 以降、各社の加熱製品を承認
●1985年7月 日本の厚生省、ウィルス処理した加熱製剤の製造・輸入を一括認可
●1989年 ブラッドレー(Daniel Bradley)がチンパンジーから採取した非A非B型肝炎血清をカイロン社に提供。ホートン(Michael Houghton)らがウイルス単体を発見し,その遺伝子配列を発表、C型肝炎ウイルスと名づける。
●1990年からC型肝炎の血液スクリーニングが始まる。

■ウイルスを不活性化できる加熱処理について(社団法人 日本血液製剤協会の用語集を参考にまとめてみましょう)

1 血漿分画製剤の加熱処理は、食品の殺菌法として行われる68℃、約30分間の液状低温殺菌法(パスツリゼーション)がモデルになっている。
2 血漿分画製剤でのウイルス不活化法は、まず「60℃、10時間の液状加熱処理」が1948年頃から熱に安定なアルブミン製剤について検討され、実用化されていた。
3 この処理により肝炎の感染を防止できることが実験的にも示され、臨床経験からも、加熱処理されたアルブミン製剤が血清肝炎を伝播しないことが示されている。
4 一方第Ⅷ因子、第Ⅸ因子製剤は、熱に対する安定性が非常に悪く、液状での加熱処理は不可能と考えられていた。
5 1980年代の初めになり、第Ⅷ因子に安定剤として大量の糖を加えると60℃、10時間液状加熱できることが判明した。しかし、この方法は大量生産に向いておらず、収率が半分に落ちる欠点があった。そこで、「凍結乾燥された第Ⅷ因子製剤をそのまま加熱処理する」ことが検討され、「60℃以上、72時間以上の乾燥加熱処理」をすることで、ほとんどのウイルスの不活化が可能となった。
http://www.ketsukyo.or.jp/yougo/ka/kanetu.html

多分、以上が私の知りうる「加熱製剤への道」です。
「もう必要ない情報だよ」と言われるかもしれませんが、もし参考になれば(他の人にも)と思い、まとめてみました。