薬害エイズを忘れない!

1500名の被害者を出した薬害エイズ事件が一応の終結を見て早10年。「薬害エイズってなあに?」と言う若者が増えています

我慢強さも考え物 せっかくHCVは消えても・・・

2007-05-02 12:23:45 | 薬害エイズに関する情報

HIVを持った血友病の中には、辛いインターフェロン治療に耐えてHCV定性マイナス化に成功したのに、肝硬変・・・というか、突発性門脈亢進症的な症状が進行してしまう人がいます。

僕がそうです。

症状は以下の通り。
門脈圧が上昇するので、脾臓が大きくなったり腹水がたまったりします。
さらに、門脈圧の上昇により門脈血の一部が肝臓に向かわずに他の方向に逃げるようになります(このようにしてできた新しい血液の流通経路を側副血行路と言います)。
この側副血行路のために腹壁の静脈が怒張したり、食道や胃に静脈瘤ができます。
脾臓が大きくなると脾機能亢進という状態になり、貧血をきたすようになります。
血小板も低下しやすくなり、出血した時に血液が止まりにくくなります(今のところこれはないです)。
また、静脈瘤の圧が上昇すると、静脈の血管がその圧に耐えきれなくなり、破裂・出血してしまい、吐血・下血等の症状が出ます(インターフェロン治療開始前の胃潰瘍大量下血時に2箇所静脈瘤ができていました。改善は・・・難しいでしょうね)。

僕と同じような目に遭わないで欲しいので、以下のことをお勧めします。

1 消化器出血や風邪のこじらせなどにより肝硬変や門脈亢進症は一気に進行することがあります。できるだけ早く、元気なうちに(苦しいけど)ペグインターフェロン+リバビリン治療を受けるようにしましょう。

2 HIV専門医は検査値ばかり気にして、腹回りの様子などこちらから言い出さない限り、気にもしていません。出来るだけ毎回触診してもらってください。腹回りが苦しいなどの病状はうるさいくらい訴えましょう。

3 3ヶ月に1回は消化器内科の専門医に実際に診てもらうことを強く勧めます。ちょっと変だなと思ったら、無理してでも診てもらうことです。

肝硬変、門脈亢進症は(個人差もあるでしょうが)苦しいですよ。腹水が溜まると食欲はなくなるし、声はかすれる、脳にはアンモニアが溜まりやすくなる・・・いいことは一つもありません。ストップ!肝硬変!!です。


エイズ・ブロック病院が差別を始める時代が来た???

2007-03-30 03:35:42 | 薬害エイズに関する情報
1997年4月1日の立ち上げから、2007年4月1日でブロック拠点病院はまる10年となります。

でもその施設長の発言が以下のようなものだったりすると、がっかりしてしまいます。

●近年我が国においては、関係各位の懸命の活動にもかかわらず、性感染によるエイズ患者が年々増加の一途を辿っている。
●しかし我が国のエイズ医療を担う拠点・中核病院、エイズ診療に携わる専門家の数には限りがあるので、各病院は患者増への対応に四苦八苦している。
●しかし性交渉による感染者増加のために、薬害エイズ被害者が不利益を被るような事態が起こることは断じて許されないことである。
●性感染エイズの患者に対してはC型肝炎など他の感染症の患者と同様の診療を行う一方、薬害エイズ被害者の皆様への医療サービスをこれまで通り堅持、改善していくべきである。
●エイズ医療を担う拠点・中核病院の現況を考える時、救済医療としてのエイズ診療と性感染症としてのエイズ診療を「峻別」していくことも今後求められるべきである。

つまり、病院は「救済医療」として薬害患者治療はちゃんとやらなくちゃいけないが,現在のブロック拠点病院の多忙は「セクシャルエイズ」の増加に伴うものであり,彼らに特別な医療を与える必要はないと言っているのです。

こうした発言がチェックなしで出てくるとするなら、厚生労働省や国立病院機構本部も同意見であると見なさざるを得ません。

ブロック拠点病院のヒト・モノが足りないのなら,「セクシャルエイズ」を切ればいいのでしょうか?

私たちは三重苦以上の病と闘っていますから、医療的にどうしても手間隙をかけてしまいます。

しかしだからといって「薬害被害者以外の患者は一般疾病と同じに扱っていいよ」「患者数が増えすぎたら、薬害以外の患者さんに大幅手抜き医療をしていいよ」などとは思ったこともない。

むしろ「感染自体がショックだし、同性愛者の場合自分のセクシュアリティを家族に明らかにしなくてはならない大問題もあるし、高い医療費、身体障害手帳の申請や更生医療の手続き問題、何よりも不安一杯の病状と副作用満載の抗HIV薬を半永久的に飲み続けなくてはならず、心と頭の整理に一ヶ月はかかる。そういう彼らにこそ良質の医療・福祉を提供することがブロック拠点病院の大きな役割ではないのか!」と考えています。

「いいエイズ」「悪いエイズ」と区別、差別を当然視する風潮が蘇ってほしくはない

皆さんはどう思いますか?

アンモニア脳症

2007-03-30 03:07:22 | 薬害エイズに関する情報
この九州でも半数近くの血友病患者がHIV⇒エイズで死にました。

ここ数年死亡者数がじわりと増えているのは、非加熱血液凝固製剤のせいでHIVとHCV(C型肝炎ウイルス)に「共感染」「重複感染」してしまっているからです。

一昨年からようやく保険適用となり、「HCV排除(著効と言います)の可能性が増大したので、ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法を受ける患者もかなり増えました。

私自身、「君のはインターフェロンの効果がいいHCVだから治療さえすれば著効だろう。早く受けなさい」と主治医に毎年言われました。

しかし全国を飛び回る仕事が多くなった私はそれを先延ばししていた。2005年には受ける予定にして。

多少張り切り上京を繰り返していた2004年秋、突然大量の下血を見ました。2005年1月にも再発。胃と十二指腸に潰瘍の跡が。抗HIV薬による胃壁へのダメージも肝臓へのダメージもあったのでしょう。

わずか数ヶ月で食道と胃壁の動脈瘤が出来ていました。GOT/GPTの値はさして高くなかったのに・・・。

「ストレスの蓄積やこじらせた風邪、そんなことで慢性肝炎から数ヶ月で肝硬変になる人は珍しくないよ」と涼しい顔で言う消化器内科の医師。

「おいおい、そんな大切なこと、早くから言って置いてくれよ!」

インターフェロンでHCVは消えても、門脈亢進症だけが進行し、利尿剤なしには生活できなくなる。
本来門脈を通って肝臓で代謝処理されるアンモニアなどもバイパスのほうを通って心臓に戻ってくるので、アンモニア脳になる(肝性脳症)。

HIVを持っている人も持っていない人も、慢性肝炎から肝硬変への移行は簡単なものです。恐ろしい。

くたばり損ないな私は、肝硬変・HIV・血友病と闘い続けなくてはならない。

みなさん、わたしの二の舞にならないようにね!

薬害エイズ事件:壮絶な死、まるで凶器 非加熱製剤使用中止の内幕--元担当医が手記

2006-11-29 17:30:05 | 薬害エイズに関する情報
薬害エイズ事件:壮絶な死、まるで凶器 非加熱製剤使用中止の内幕--元担当医が手記
 ◇安部元副学長の責任言及

 国内で初めて血友病患者としてエイズにより死亡と認定された患者の元担当医で、香川県赤十字血液センター所長、内田立身(たつみ)医師(67)が手記「真実を直視する 薬害エイズ訴訟の証人医師として」(悠飛社)を出版した。早くから非加熱製剤による感染の危険を疑い、使用を中止した内幕を明かしている。非加熱製剤の使用を続けた薬害エイズ事件の安部英・元帝京大副学長=控訴審審理中に死亡=について「危険性を知らなかったはずはない」とその責任に言及している。【堀文彦】

 内田医師は「自分がかかわった薬害エイズ事件を記録し、悲惨な実態を通じて薬害防止につなげたい」と訴えている。

 京大医学部で血液学を学んだ内田医師は、留学を経て福島県立医科大へ。85年に非加熱製剤を使用した血友病患者の治療に携わった。患者は入院後約1カ月で亡くなったが、症状などからエイズ感染が疑われた。同年5月、安部元副学長の血友病患者2人とともに、国内初の旧厚生省の認定患者となった。

 手記には、抵抗力が落ち、原因不明の肺炎に苦しむ患者の様子が、当時の病理組織の写真や死亡後の解剖報告書の写しなどとともに記載。「患者の死があまりに壮絶で、非加熱製剤に凶器のようなイメージを抱いた。同時期に安部医師の下で非加熱製剤の使用が続けられていたことは、想像もしなかった。後に知ってまさに仰天した」と書かれている。

 内田医師は元副学長の控訴審審理中の02年末、非加熱製剤から安全な加熱製剤に切り替えた経緯を証言するよう東京地検から要請された。同じ医師の責任追及には心の葛藤(かっとう)もあったが「真実が永遠に闇の中に葬り去られてしまう」と証言に踏み切った。エピローグでは「医師にとって、自分の眼で病気を直視することほど重要な体験はない」と締めくくる。四六判、149ページ。1470円。

毎日新聞 2006年11月22日 東京夕刊


特に血友病専門医でない医師でも、非加熱血液製剤によるHIV感染、エイズの発症をつぶさに見て、直ちに対処した医師が各地にかなりいた、というのは意外に知られていない事実です。
私の友人の兄は、消化器内科の開業医でしたが、1983年の新聞記事を見て、直ちに弟の血液製剤をクリオ製剤に切り替えたそうです。友人はお陰で感染を免れました。
その一人である内田先生の詳細な手記が発行の運びになったことを喜びたいと思います。(先生も恐らくは「危険性」と「止血効果」の狭間で揺れ動いたのではないでしょうか)

国立病院機構 九州医療センター

2006-10-13 19:13:17 | 薬害エイズに関する情報
●1996年当時のお話です。
(1996年3月29日和解成立後もですよ・・・)
 九州の一部では次のような「エイズ拠点病院」が存在しました。

・「承認済みの薬剤も安全性が確認されるまで使いません」(目の前で死を目前にした患者たちがいたというのに)
・「CD4値100を切っているのに定期的眼底検査を全く行わず、患者側から『目が見えなくなった』言われて慌てて眼科手術」(CD4数が100を切ったらサイトメガロウイルスによる網膜炎になる可能性が高くなるので、3ヶ月ごとに眼底検査をするのが欧米では常識化していた)
・「それを、『うちの眼科は何の偏見差別もなくしっかりと手術してくれた』と外部に誇らしげに語り」(患者は両眼失明し、半年後死亡。東京の治療水準では十分助けられる患者だった)
・エイズ患者収容施設整備費を活用し?「白血病患者の骨髄移植にも十分対応できる完璧なクリーンルームを作ってやった」と胸を張っていた(誰のためのお金だったのか)・・・といった有様(このように、1992年頃から構想された「拠点病院」システムは医療水準の向上に役立っていなかった。厚生省は「仏作って魂を入れず」で放置していた)。

●こうした逼塞状態を大きく変えていく原動力の一つとなったのが、1997年4月1日立ち上がった地方エイズブロック拠点病院九州医療センターです。
「国の薬害放置責任」に基づいて設立されました。
その九州医療センターも、HIV感染患者は2名といった有様だったのですよ。
何より実績がなかったし、患者も不安を抱いていた。
そこでブロック拠点病院を育てる意味も込めて、十数人単位の薬害HIV患者が九州医療センターに移転しました。

●我々の症例を見ることと、もっと物凄い症例と数をこなしている先行施設(ACCや熊大病院)との緊密な連携が相乗効果となり(勿論それに応えるだけの度量と雅量を医療者たちが持っていてくれたからである)診断力・治療力・情報力も大幅にアップ。
熊本大学病院に肩を並べる医療水準に。
登録患者数も170~180名。もうすぐ200人を越えそう。
スタッフの質の高さと、九州沖縄地区の医療ネットワーク化への貢献とフットワークの軽い人材網作りは一流だと思います。

薬害エイズってエイズとどう違うんですか??

2006-08-18 12:40:08 | 薬害エイズに関する情報
教えて!goo 薬害エイズについて

タイトルの質問について次のような回答が見られました。

「普通のエイズは血液感染します。
こちらはわかりますよね。

薬害エイズの場合は、献血した人から取った血を薬にした薬を飲んだ人が感染しちゃったエイズです。

こちらは前々から危険だからやめたほうが良いと言っている人がいたにもかかわらず、やめなかったので問題になっているのです。

今は加熱して、エイズのウィルスを殺してから作っているらしいので、平気みたいですよ。」

いやあ、ここまで不正確な回答が掲載され続けるとは困ったものだ。05-08-08 23:37に投稿以来訂正もされず載っているのだが、「自信: なし 」なら投稿しないでね。いくら無知だからといっても「わかりやすい説明ありがとうございました!!!」ではねえ・・・。

■普通のエイズは血液感染します。こちらはわかりますよね。■
●普通の=性感染や薬物注射などによって感染した、という意味でしょう。
●それに対して「薬害エイズ」とは、「その血液凝固因子製剤を投与しないと時として生命の危機にさらされる血友病患者」に「次第に混入ウイルス(HIV)の正体も突き止められ、エイズ症状を呈する血友病患者も広がり始め、加熱によってウイルスを不活化した加熱製剤が米国で承認使われるようになってからも、日本では承認審査に2年3ヶ月もかけ、非加熱製剤の回収も一切行わず、HIV感染被害者を大量に生み出してしまった」という危機管理能力の不全、そして誰も責任を取らない・・・という「社会構造による薬害(拡大放置総無責任体制)」によってエイズウイルスに感染させられた・・・という社会問題です。
●ですから、「普通のエイズだろうが薬害原因のエイズだろうが他人に移りうると言う意味では同じである」というのが正しい言い方です。

■薬害エイズの場合は、献血した人から取った血を薬にした薬を飲んだ人が感染しちゃったエイズです。こちらは前々から危険だからやめたほうが良いと言っている人がいたにもかかわらず、やめなかったので問題になっているのです。■

どうしてこのような不正確な説明を思いついたのか知りませんが・・・。
●まず、当時の血友病治療薬は、米国の「売血」何千人もの売血血液を大きなプールに集めて、攪拌させながら大量の製品を生産する「非加熱・血液凝固因子製剤」が圧倒的なシェアを占めていました。
一部良心的な医者は、多少の不便は覚悟でクリオ製剤に戻しました。
(私の知っているごく普通の田舎町医者は、新聞記事と数本の医学論文を読んだだけで、自分が診ていた弟の薬を、非加熱濃縮血液凝固因子製剤から、ただちに国内の2~3人の血液で作る一世代前の薬、クリオ製剤に代えました! 感染を免れた弟さんは今でも元気にビジネスで飛び回っています)
多くの患者が集まっていた専門病院では「感染の可能性は低い」「仮に感染しても発病の可能性は低い」安心情報を流し、ちらほらエイズ様症状が出始めると、今度は「これは誰にでも言っていることだがこれからの人生は感染しているつもりで生きて行ってね」と説明して、「ちゃんと告知した」という免罪符を得ようとしました。

「普通のエイズ」と「薬害エイズ」とは何が違うのか?
感染原因が違う。しかし病気やその治療は基本的には同じです。

こんな感じの説明でいいでしょうか?

またおいおい語りなおしましょう。

文科省「魅力ある大学院」46件選ぶ・財政面で支援

2006-08-10 12:24:46 | 薬害エイズに関する情報
文部科学省は12日、優れた大学院教育を選んで重点的に財政支援する「魅力ある大学院教育イニシアチブ」の本年度分として、129大学268件の申請の中から、35大学の46件を選定した。

 文科省によると、選ばれたのは国立が24大学の34件、公立は2大学の2件、私立は9大学の10件。件数が多い大学は、京大、大阪大、九州大で、いずれも3件だった。

 分野別では人文社会が16件、理工農19件、医療11件。

 お茶の水女子大は、学部の4年次と大学院の5年間を一体化させた6年制の教育プログラムを計画。試験やインターンシップの成果を点数化し、一定の基準に達した場合に学位論文の提出資格を与える「博士学位取得ポイント制」を実施する。

 熊本大は、エイズの基礎研究の成果を治療薬や治療法開発につなげる人材養成に取り組む。〔共同〕 (23:00)

コメント 新研修医制度によって熊本大学も有望な人材確保に四苦八苦しているという噂を聞いたことがあります。エイズパニック発生時は不適切な対応もあったようですが、それを率直に認識し反省・謝罪するところから、熊本大学のエイズ医療は本格化したように思います。累積患者数は100名以上と決して多くはありませんが、一人一人の症例に対するきめ細かな分析と治療戦略の立て方は驚きに値します。上記制度を活用して、世界に通用する人材をこれからも数多く育てて言って欲しいものです。

薬害エイズ和解10年 特に重い母親の心の傷

2006-06-06 02:11:21 | 薬害エイズに関する情報
血友病などの治療に使われた非加熱の血液製剤にエイズウイルス(HIV)が混入し、多くの患者が犠牲になった薬害エイズ事件は、国と製薬会社が責任を認め謝罪した1996年3月の和解成立から29日で10年を迎える。

 だが、同年以降だけでも200人以上が死亡し、遺族は今も差別の影におびえ心の傷は癒えないままだ。被害は終わっていない。

「息子の死因言えない」
 「なんて優しい音色」

 2月中旬。都内の小さなホール(注記 日大カザルスヒールです)で、事件の犠牲者にささげるコンサートが開かれた(「第2回 はばたきメモリアルコンサート)。30歳代だった息子を91年に亡くした母親は、旋律が心にしみこみ、癒やされるのを感じた。

 でも、コンサートがお開きになると、孤独と悲しみの世界に引き戻された。

 ホールの周囲は思い出の場所だった。息子が大学生の時「母さん、すしをおごるよ」と連れて行かれた店、仕事で通った道――。

 「ワイシャツのサイズは39―78。いつも私が買っていたから忘れない。15年もたつのにおかしいと思うでしょう。でも今も毎日、なぜ助けられなかったのかと悔やむのです」

 息子は85年、帝京大病院で投与された血液製剤でHIVに感染した。発症後に病院で受けた仕打ちは忘れない。ろくな治療も受けられず、介護用品は不潔だった。医師はカーテン越しにのぞき込むだけで近寄ろうともしない。なのに、息子が苦しみ死んで行く過程は医学論文に使われた。「実験材料にされた」という怒りがよみがえる。

 東京HIV訴訟弁護団の説得を受け、96年、血友病やエイズの権威として君臨していた帝京大の元副学長、安部英医師を告訴した。当時、10代も含めた若い人たちが、ウイルスの影響による肉腫(にくしゅ)や脳症に侵され、家族もみとることを許されないような悲惨な闘病の果てに次々と亡くなっていた。同年8月、安部医師は東京地検に逮捕された。だが1審で2001年3月、安部医師は無罪判決を受けた。検察は控訴したが、2審の結論を見ないまま、安部医師は昨年4月に死去した。

 被害が問題化した当時、エイズは「死の病」と言われた。血友病患者や家族が受けた偏見、差別はすさまじかった。幼稚園入園や就労が拒否され、医師ですら診療を拒んだ。母親は今も、親友にも親族にも息子の死因は言えない。「怖いのです。どうしても」。今も時々、病院に「どうして人間扱いしてくれなかったのか」と叫びたい衝動にかられる。最近は独り暮らしの自宅でふさぎ込むことが増えた。



10年間で死亡202人
 被害者自らが仲間の回復や支援のため設立した「はばたき福祉事業団」(東京)によると、原告1371人のうち、これまでに586人が死亡した。この10年間だけで202人に上り、昨年の死者は前年のほぼ倍の21人だった。

 エイズの治療法は発達したが、被害者の9割以上はC型肝炎ウイルス(HCV)に重複感染しており、最近は肝疾患による死が増えている。

 国は和解後、病院や薬局に副作用報告を義務づけ、医薬品の安全性チェック強化のための独立行政法人を創設するなど、再発防止策を講じてきた。同事業団理事長の大平勝美さん(57)はこうした取り組みを評価をしながらも、国や医師、日本赤十字社などがもっと協力し被害者の抱える問題に取り組んでほしいと指摘する。「今も30、40代で亡くなる人があり、遺族は心の傷が癒えないまま高齢化してゆく。こんなことは絶対に二度と繰り返してはならないんです」

(2006年3月27日 読売新聞)

■一般論ですが、血友病患者の母親たちは「この子が弱い体に生まれたのは私のせいかもしれない」+「伴性劣性遺伝である血友病は母親の家系に血友病素因がある場合が多いという負い目」+「目の前で痛いよ、痛いよ、どうして僕だけこんなに痛いの、と苦しむ患者を目の前にした母親の胸の引き裂かれるような思い」+「この子が内出血したのは、お前の見張りが足りないせいだ。お前に責任があるんだから病院のことはお前に任せる、といった伴侶の無理解・責めるような言動・非協力」+「社会的孤立」に苦しみます。
その上、理不尽な内出血の痛みを軽減するため、自分が息子に打った非加熱血液製剤。そのせいで息子が理不尽極まりないHIVに感染し、わけも分からないうちに、悲惨なエイズ症状を起こして悶絶死したとするならば・・・。
その上、一番信頼していた専門医・看護婦の裏切り的な偏見差別に満ちた非科学的扱いが追い討ちをかけるとしたならば・・・。
そのような母親が全国にたくさん生きています。
当時の医療について誠実に謝罪した専門医・医療機関はわずかです。

2原告国が和解拒否…薬害エイズ 「投与20年以上前」除斥期間理由に

2006-06-06 01:51:55 | 薬害エイズに関する情報
非加熱製剤でエイズウイルス(HIV)に感染した血友病患者らが国と製薬会社に損害賠償を求めた薬害エイズ訴訟で、最初の和解から10年が経過したが、東京、大阪両地裁で係争中の1人ずつが、国から和解を拒否されている。

  薬害エイズ訴訟は、1989年の初提訴以来、原告1380人の和解が成立しており、弁護団は「全面救済が一つの大きな節目になる」としている。

 訴訟は96年3月29日、国と製薬会社が責任を認めて謝罪し、和解が成立した。和解確認書には、被害者1人当たり4500万円の和解金などが盛り込まれ、未結審原告と未提訴者も「本件和解に準拠する」と規定された。和解成立直後から提訴が相次ぎ、救済が進んだ。

 ところが、2人は非加熱製剤を投薬されたとみられる日から20年以上経ていたため、国は除斥期間が過ぎていると主張し、判決で決着をつけなければならない可能性もある。(注記 少なくとも一人の患者は提訴する20日ほど前に東京の国立国際医療センターの中にあるエイズ治療研究開発センターを受診して初めて感染が発見され、告知されたと言う。ああ・・・)

 薬害エイズの被害は和解後も続き、死者は計600人近い。松本剛・大阪HIV訴訟弁護団長は「後に続く被害者に救済の道をつけるとの趣旨を込めた和解だったのに、今さら除斥を持ち出すのは理不尽。国の謝罪はいったい何だったのか」と話している。

(2006年4月7日 読売新聞)

コメント 数年前から鎧の下に見え隠れしていた「幕引きのロジック」。これが認められると、首班の事情で感染に気づかないままこの日まで来た人、提訴したくても踏み切れなかった人たちは「救済から切捨てされる」ことになる。

日本の八方すくみ

2006-05-11 01:27:56 | 薬害エイズに関する情報
抗HIV 薬研究・開発分野の世界的第一人者である満屋裕明先生はある座談会で次の
ようなことを述べたそうです。
「先進国で唯一HIV 感染患者数が増加を続ける状況にあって、
教育が悪くて、若者が悪くて、ジャーナリズム、医療行政、政治が悪くて、医者も悪い。
この日本の“八方竦み――近い将来たいへんなツケが来ます」

これはどういう意味であるかは、毎年日本エイズ学会に参加しているとよく分かります。各地に素晴らしい人材、NPO,根深なドクター、行政担当官がいるのです。
世界的水準から見て素晴らしいのです。
なのに・・・厚生労働省を始め国は一切旗を振ろうとはしない。
国家的戦略、ヴィジョンがない。
旗振り役がいない。
要するに総理大臣なり厚生労働大臣が先頭に立って、(5年、10年後まで専横駆使感染を広げた末多くの日本人がエイズ発症するのは目に見えている)この状況を今から変えよう! 一人でも多くの人を巻き込み、若者たちのパワーを終結して国民の・国内在住者の命と健康を守ろう!(そのほうが医療費コストは安くて済むのだし・・・)・・・ということがない。

素晴らしい人材が十分活用されない、十分な評価が与えられず、活躍が限定されてしまう・・・もったいないなあ、何と言う贅沢を日本は生かせない国なのだろう。

無責任国家日本は「健在」です。