8月5日のLancet誌によると・・・
過去10年間のHAART治療でHIV感染患者の死亡率は改善せず
HIV treatment response and prognosis in Europe and North America in the
first decade of highly active antiretroviral therapy: a collaborative
analysis. The Lancet 2006; 368:451-458
HIV感染の治療法としてHAART(Highly Active Anti-retroviral Therapy、強
力な抗HIV療法)が10年前に導入されました。
この文献は、ヨーロッパと北アメリカでHAARTを開始したHIV感染患者の特徴の
トレンドと、治療反応性と短期の転帰を調べた結果を報告しています。
研究者たちは、1995-1996年、1997年、1998年、2000年、2001年、2002-2003年に
未治療の状態からHAART治療を開始したHIV-1感染成人22,217人のデータを解析
し、HIV-1 RNAコピー数が6ヶ月以内に500/mL未満となる確率とCD4細胞数の変
化を解析しました。
この調査のプライマリーエンドポイントは、HAARTの最初の1年間の全死亡とAIDS
のハザード比です(つまり、かなり大雑把な効果ありと評定する基準みたいなものですね)。
調査の結果、異性愛での感染患者割合は1995-1996年には20%であったのが2002-2003年には47%に上昇しました。また、女性感染者の割合も16%から32%に上昇しました。
■ これは十分予想されたことです。同性愛者の病ではないということですね。
HAARTスタート時のCD4細胞数は1995-96年には170copies/だったのが、1998年には269copiesに上昇し、その後およそ200コピーズ/μLに減少しました。
■つまり免疫機能値は、98年頃までは上昇したが、その後は減少傾向にあるということです。全く同一人たちを対象にした研究ではないので、「近年は最初から多剤耐性ウイルス感染が増えている」「いきなりエイズが増えている」など様々な背景が考えられます。
1995-96年には、6ヶ月までにHIV-1 RNAコピー数が500/mL未満を達成した割合は58%であったのに対し、2002-03年には83%まで上昇しました。
■これは血中ウイルス量を抑え込めている人が増えているということで,グッドな傾向です。
1998年に比した1995-96年と2002-03年のAIDSの調整ハザード比はそれぞれ1.07
(95% CI 0.84-1.36)と1.35(1.061.71)でした。
1998年に比した1995-96年と2002-03年の死亡の調整ハザード比はそれぞれ087
(0.561.36)と1.35(0.061.51)でした。
以上の結果から、HAARTを開始してからウイルス反応は年々改善したものの、その改善は死亡率の低下には反映されていませんでした。
■ どういう調整を行った危険指数かわかりませんが、抗HIV薬が大きな成果を挙げていること自体を否定するデータではありません。公衆衛生的な要素が強いデータだと思います。
過去10年間のHAART治療でHIV感染患者の死亡率は改善せず
HIV treatment response and prognosis in Europe and North America in the
first decade of highly active antiretroviral therapy: a collaborative
analysis. The Lancet 2006; 368:451-458
HIV感染の治療法としてHAART(Highly Active Anti-retroviral Therapy、強
力な抗HIV療法)が10年前に導入されました。
この文献は、ヨーロッパと北アメリカでHAARTを開始したHIV感染患者の特徴の
トレンドと、治療反応性と短期の転帰を調べた結果を報告しています。
研究者たちは、1995-1996年、1997年、1998年、2000年、2001年、2002-2003年に
未治療の状態からHAART治療を開始したHIV-1感染成人22,217人のデータを解析
し、HIV-1 RNAコピー数が6ヶ月以内に500/mL未満となる確率とCD4細胞数の変
化を解析しました。
この調査のプライマリーエンドポイントは、HAARTの最初の1年間の全死亡とAIDS
のハザード比です(つまり、かなり大雑把な効果ありと評定する基準みたいなものですね)。
調査の結果、異性愛での感染患者割合は1995-1996年には20%であったのが2002-2003年には47%に上昇しました。また、女性感染者の割合も16%から32%に上昇しました。
■ これは十分予想されたことです。同性愛者の病ではないということですね。
HAARTスタート時のCD4細胞数は1995-96年には170copies/だったのが、1998年には269copiesに上昇し、その後およそ200コピーズ/μLに減少しました。
■つまり免疫機能値は、98年頃までは上昇したが、その後は減少傾向にあるということです。全く同一人たちを対象にした研究ではないので、「近年は最初から多剤耐性ウイルス感染が増えている」「いきなりエイズが増えている」など様々な背景が考えられます。
1995-96年には、6ヶ月までにHIV-1 RNAコピー数が500/mL未満を達成した割合は58%であったのに対し、2002-03年には83%まで上昇しました。
■これは血中ウイルス量を抑え込めている人が増えているということで,グッドな傾向です。
1998年に比した1995-96年と2002-03年のAIDSの調整ハザード比はそれぞれ1.07
(95% CI 0.84-1.36)と1.35(1.061.71)でした。
1998年に比した1995-96年と2002-03年の死亡の調整ハザード比はそれぞれ087
(0.561.36)と1.35(0.061.51)でした。
以上の結果から、HAARTを開始してからウイルス反応は年々改善したものの、その改善は死亡率の低下には反映されていませんでした。
■ どういう調整を行った危険指数かわかりませんが、抗HIV薬が大きな成果を挙げていること自体を否定するデータではありません。公衆衛生的な要素が強いデータだと思います。