薬害エイズを忘れない!

1500名の被害者を出した薬害エイズ事件が一応の終結を見て早10年。「薬害エイズってなあに?」と言う若者が増えています

単一のAIDS錠剤が実現に近づくのはありうるのか?

2007-06-27 11:30:00 | HIV治療情報
1)長年にわたり、効果的な抗レトロウイルス薬の投与では、HIV陽性患者は健康維持のために毎日多数の錠剤やカプセルを服用する必要がありました。
副作用抑制のための薬も含まれば、今だってそうではないでしょうか?
しかるに米国では、「今ややそのような時代が終わりに近づこうとしている」と楽観的な見方が現れているようです。

2)出所はやはり製薬業界ですが、そのの支援を受けた非盲検試験では、
治療を受けていないHIV陽性患者517人
標準的な組み合わせの抗レトロウイルス薬療法(zidovudine=AZT、lamivudine=3TC=エピビル、efavirenz=ストックリン)
または新しい治療法(tenofovir=ビリヤード、emtricitabine=エムトリシタビン:もしかするとtenofovir+emtricitabineの合剤でツルバダ、efavirenz=ストックリン)を行う群
にランダムに割り付けたそうな。
いずれの治療法でも1日3個の錠剤を投与したそうだ。

3) 治療48週間の時点で、
zidovudine群の73%とtenofovir群の84%でウイルス量が検出されず(400copies/mL未満)
平均CD4数はそれぞれ158および190 cells/mm3増加したそうな。
これらの差はいずれも統計上有意。
治療を制限する副作用は、貧血がもっとも多かったが、zidovudine群でtenofovir群より有意に多かったそうだ。


■ アメリカにはエファビレンツ(日本ではストックリン、アメリカではサスティ
バというのが商品名。いちいち覚えられないよう(T_T))は1錠600mgの製剤があり(普通は200mg.を3錠飲むのね。日本人はストックリンの血中濃度が異常に上昇して、精神神経状態がひどくなる人が多いから、いきなり600mg.錠を飲ませるのは非常に危険だと思うなあ)、
ツルバダ1錠+サスティバ1錠を1日1回という飲み方ができます。
有効性と安全性と利便性の3つが、どれも他の治療法より上回れば、それは推奨に値する治療法と言ってもいいけど、そう簡単には見つかりません。
「カレトラ(ロピナビル+リトナビル)+ストックリン(エファビレンツ)」だけでもウイルス量50コピーズ未満、CD4陽性細胞数400~500を保っていて、副作用もさほどではない・・・という人も現実にはいますが・・・・。

新規抗レトロウイルス薬はHIVの治療選択肢を広げる可能性がある

2007-06-04 11:25:13 | HIV治療情報
Journal Watch General Medicine May 10, 2007に掲載されたBruce Soloway, MD博士の報告「A Novel Antiretroviral Agent May Expand HIV Treatment Options」を広島大学の高田昇先生が翻訳・紹介されたものです。

■この10年間、HIVに対してもっとも効果的な抗レトロウイルス療法は、3クラスの抗レトロウイルス薬から選択した薬物の併用療法に基づいたものであった。
多くの治療を受けた患者では、これらのクラスの多くの薬物に忍容性がないか、ウイルスの耐性のため効果がなくなっていた。
新規のメカニズムと耐性パターンを持つ新しいクラスの抗レトロウイルス薬は、治療選択肢を広げる可能性がある。

■このメーカー支援による多施設試験では、抗レトロウイルス薬の主要な3クラス各々で少なくとも1種類の薬物に耐性のあるHIVに感染した既治療患者178人において、HIVインテグラーゼ阻害薬として知られる新しい治療クラスの最初の薬物であるraltegravirの安全性と効能を評価した。
各患者の個別の治療歴とウイルス耐性検査をもとに「最適なバックグラウンド抗レトロウイルス療法」をデザインし、次に患者を3用量のraltegravirまたはプラセボ(偽薬)のいずれかを投与する群にランダムに割り付けた。

■24週間後、プラセボ群の患者と比べ、raltegravir群の患者ではHIVウイルス量が有意に減少し(-1.84 log10対-0.35 log10)、ウイルス血症が検出されない割合が有意に高く(62%対13%)、CD4細胞数が有意に増加した(+90cells/μL対+5cells/μL)。アウトカムは3用量のraltegravir群すべてで同等であり、副作用はプラセボと同等であった。
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コメント:raltegravirは、既存の抗レトロウイルス療法を使い果たしてしまったHIV患者の選択肢を拡大させる、新しい時代の到来を告げている可能性がある。
インテグラーゼ阻害薬などの新しい薬物は、最終的に初期のHIV治療に対する既存のパラダイムにも挑戦する可能性がある。

高田先生のコメントです。

<コメント>
■ ラルテグラヴィア(日本ではラルテグラビルになるかも)は前にも紹介しま
したが、HIVの増殖サイクルのうちインテグラーゼ阻害という新しい作用点を
持った薬ですから、これまでの薬剤に耐性になったHIVの治療に期待が持たれ
ます。

■ 有効性、期待できそうです。しかし単剤での効果を考えるのは、これまで
の経験から難しく、当面は併用療法での臨床試験が積み重ねられていきます。
その後、いけるとなったら、どういう組み合わせが良いのかが比べられるでし
ょう。それこそ2剤なのか3剤なのか4剤なのか・・・・。並行して初回治療として
はどうなのか、という臨床試験があるでしょうね。メルク社としてはあわよく
ば自社製品でと考えるかもしれません。

■ 安全性、大いに興味があります。新しい作用点を持った薬というのは、逆
に言うと人間の体内で何をするかわかりません。インテグラーゼに似た構造を
持つ体内の細胞と酵素が必死で探されたでしょう。本来の作用が副作用に繋が
る場合と、思っても見なかった副作用があるかもしれません。

■ これまでに記載された副作用も、腹部不快感、頭痛、全身倦怠感、掻痒、
下痢、便秘、鼓腸、発汗など、関係があるかないかどうとも取れるようなもの
になっています。

■ 本剤の拡大治験の募集サイトがありました。メキシコ、ブラジル、ベネズ
エラ、ペルーなどが参加できるのに、日本が入れないのは残念。

http://www.benchmrk.com/secure/index.html

高田 昇