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ジニーの、今日も気まぐれな感じで・・・

気負わず、気取らず、ありのまま。
ゆるりと思ったことを書いていってます。
お気に召したらうれしい限り。

宮下奈都 『ふたつのしるし』 読了

2019年03月06日 23時23分19秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。


2月は結局、3冊読み切れませんでした。

ま、そんなときもあるでしょう。
それでも読書は続きます。


そんなわけで3月の1冊目。
宮下奈都さんの「ふたつのしるし」。

『ハル』という響きの名を持つふたりの男女の恋愛小説です。


この作品、普通の恋愛小説とはちょっと違っています。

いわゆる一般的な恋愛小説って、出会いがあり、波乱があり、
理解が生まれ、ハッピーエンドを迎える形ですが、
本作では、最後の最後まで二人は出会いません。

それぞれの生い立ちをなぞりながら、物語は進み。
出逢ったかと思えば、次の章ではもう結婚してしまっています。


でも全く奇をてらった感じはないんですよね。
むしろ、とても自然な感じがしました。



恋愛小説の醍醐味って、やはり出会いや、波乱や、ハッピーエンドですよね。
でも、そこに至る人生があっての物語なのです。

本作はそこをとても大切に切り取っているのです。


出会いって、意味があるわけです。
振り返るとその出会いが、出会いとして成立するための、気づきがあって
それは時にとても苦い痛みだったかもしれないし、周囲の誰かとのズレだったの
かもしれません。
大切なのは、それを経験したから、その時、出会いに意味を見いだせたのです。


突然なものなんてないんですよね。
ずっと積み重ねてきたものが、実を結ぶ時があるのです。



すごく、深いものを感じることができた作品でした。
出会いという大きな事件ではなく、そこまでの過程をちゃんと生きてきたのか、
ということの大切さを説いてくれているように感じます。

生きるということは、傷つくことだと僕は考えています。
傷つくということは、気づくことだと考えています。

その時、その時をちゃんと生きることで、将来ほんの些細な「しるし」に
気付いて、出会いを生み出すことができます。



きっと「しるし」は至る所にあって、
人それぞれの呼び方や、形があって、
それでも全部同じようなものであって、
不思議にそれに気付けるものなんだと思います。



「生きる」。
生きていればこそ、その先にある「しるし」

光る未来を手にするのは、傷つきながらも生きているあの日があるからでしょう。

そう考えると、希望が胸に生まれてきます。


物語の二人の出会いにも、奇跡ではなく、安らぎを感じるのです。




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