黒猫亭日乗

題名は横溝氏の「黒猫亭事件」と永井荷風氏の「断腸亭日乗」から拝借しました。尚掲示板が本宅にあります。コメント等はそちらへ

ころころろ

2009年12月16日 | Weblog
畠中恵

評価・☆☆☆

テレビシリーズでもおなじみ、しゃばけシリーズ第8弾。今日も元気で寝込んでる、お江戸一番の病弱と巷でも有名な若だんなが、とうとう盲(めしい)となってしまう。
妖怪人情推理帖だったはずの本作だが、推理帖の文字が外れてしばらく経つ。今回も謎解き噺はあまり無い。若だんなの子供の頃の甘酸っぱいお話「はじめての」、そして若だんなの目が見えなくなる「ほねぬすびと」、若だんなの目を治そうと東奔西走する仁吉が遭遇するちょっと切なくなるお話「ころころろ」、同じく佐吉の「けじあり」、そして若だんなの目と関係のあると思われる神様、生目神と対時する「物語のつづき」の全5話からなる。
「はじめての」はただの初恋談義ではなく、盲となる出来事の前振りであり、物語が大きく動く「ほねぬすびと」へと突入する。しかしながら、気配には敏感な筈の仁吉や佐吉が、ただの人間が侵入していた事に、全く気がつかなかったというのは変な話だ。佐吉が若だんなではなく嫁と暮らしている「けじあり」だが、これは本来作者が書きたかったのとは違う話になったのではないかと私は思う。そうでないと、「ころころろ」で佐吉を助けに行ったはずの貧乏神・金次が、摩訶不思議な事にその後どこにも出てこない事の説明が出来ない。「物語のつづき」で神様ホイホイを作って生目神を捕まえるのもいささか強引。
しかしながら、神とは人とはものの感じ方が違う、と言っていながら、このお話にでてくる神は実はものすごく人間くさい。おなじみの妖の面々も安定した活躍をしてくれる。安定して楽しめたので、評価も安定した☆☆☆。


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