里村専精師の「浄土真宗にようこそ」No77をお届けします。
世親菩薩の学びは、その生涯の歩みそのものでした。
それは「世尊我一心 帰命盡十方 無碍光如来 願生安楽国」と言う言葉に全部宿されています。
「一心」という宗教精神が、「帰命」という仏道の姿勢に限定されます。
そしてそれは、「願生」という生存決定に極まっています。
説一切有部と呼ばれているサンガでは、「三世實有・法体恒有」と学びます。
経量部では、「意識はあるが意識のような外界はない」と学びます。
唯識の基本ですが、世親菩薩は「阿毘達磨倶舎論」を製作します。
が、その世親を大乗に転身させたお兄さんがいました。
アサンガ=無着は、世親を大きく転身させます。
世親の学びは、菩薩道によって大きく成長します。
仏道的な求道者として、そのままに大乗の菩薩としての生存が確保されます。
華厳の十地品に基づいて、その生命の学びが展開して、瑜伽唯識の学びも完結します。
そして、世親は更に転身して「無量寿経」の論を書き上げます。
ここで語られている世親の学びは、大乗によって包まれる総ての人間の救済でした。
それが「浄土論」ですし、ここに仏道の極地があります。
その冒頭の「世尊我一心 帰命盡十方 無碍光如来 願生安楽国」こそ、
総ての人間の仏道的な救済の、そのリアリティーなのです。
「一心」「帰命」「願生」は、親鸞によって浄土教の原点として確定されています。
「一心」が「帰命」に限定されて、私たちも世親と同じ仏道に在ります。
そして「願生」が、他力信心の究極的な生活になります。
如来のスケールでの人間の大乗的な歩み、それが他力と呼ばれる仏道実践です。
それは救済の歩みなのですが、私たちを凡夫に突き落としている総ての問題を踏みしめるのです。
「願生」とは、凡夫を果てしなく如来の仏道に転身させる歩みのことだと言えないでしょうか。
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