着物で文化人気取り

諸事情により最近は着物を着る機会が減り、
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思うままに書き綴っています

グラントリノ

2009-05-26 22:59:51 | 映画
クリント・イーストウッドは今ノリにノっている

俳優としても、監督としても

現在78歳。
80に手が届くほどの高齢なのに、画面からは全く衰えを感じさせない
老いてますます精力的に映画と関わっているように思える

話題の「グラントリノ」を観てきた。



あらすじ(Yahoo映画より)
妻に先立たれ、息子たちとも疎遠な元軍人のウォルト(クリント・イーストウッド)は、自動車工の仕事を引退して以来単調な生活を送っていた。そんなある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民の少年タオ(ビー・ヴァン)と知り合う。やがて二人の間に芽生えた友情は、それぞれの人生を大きく変えていく。(シネマトゥデイ)


やっぱり、イーストウッドの映画はハズレがないネ

知らなかったけど、70年代から既に監督業を始めていて、
作品数は結構な数に上るらしい。
彼の全作品を観たわけではないけど、私が観たものはどれも秀作揃い。

「ミスティック・リバー」
これを、見終わったあとの衝撃は忘れられない
心が痛い。
残酷すぎる結末にやり切れない思いがあとをひく。

この人の作品って、社会の底辺にいる人々を描いていることが多い。

世界の富を独占する一見華やかなアメリカの、
もうひとつの病んだ側面をさらけ出している

「ミリオンダラーベイビー」のヒロインもそう。
途中までは、
そんなヒロインが努力して栄光を手に入れる出世物語かと思わせる。
それが突然
すと~んと
奈落の底に突き落とされるんだ

生きていくって
何とむごいものかと思い知らされる

そして、
「父親達の星条旗」&「硫黄島からの手紙」

戦争の悲劇を描いた映画は星の数ほどあるけれど、
アメリカ人でありながら、
日本の立場にたって、あの戦争を描いたことは画期的だった

”アメリカの良心”
イーストウッドはそれを追い求めているのかもしれない。

そして今回の「グラントリノ」

未だに偏見や人種間の諍(いさか)いが絶えないアメリカの田舎町。
だからもちろん治安もヨロしくない

妻を亡くした主人公ウォルト(イーストウッド)も、
そんな偏狭とも言える環境で生きてきた。

隣に住む、アジア人一家や他の移民に向けられる差別的な言葉の数々。
「米食い虫」(米を主食にするからそう呼ばれるのね。もちろん日本人も。)
「イエロー」、「ブラック」
「ジャップ」
「イタリア野郎」

当初はそんな激しい差別語に戸惑うが、
ウォルトの抱える心の葛藤を知るうちに
それらが“愛すべき”毒舌・・・へと変化してくる。

むしろ異常なのは
ウォルトの息子家族たち

形式的に母の葬儀に参加はするけれど、
ウォルトの誕生祝いにかけつけ、本人の望まないプレゼントを渡すけれど
何かウソっぽい

挙句の果てが、
親切ごかしに「高齢者施設」への入居を勧める

彼ら息子や孫たちにとって、ウォルトはただ“頑固で石頭な老人”でしかない。

ウォルトの孤独や
若い頃、朝鮮戦争で味わった苦しみを
思い図り、理解しようとするものは、彼の身内には一人もいない

この映画もまた
人種問題とともに、
“家族の形の崩壊”という、アメリカが抱える問題のひとつを浮き彫りにしている。

そんなウォルトと少しずつ距離を縮める少年タオ。



ウォルトの行動や言動の変化は結構笑えたりもする。
その彼が、タオとその家族を守るために選んだ道は・・・
真の男の生き様に泣きました

切なくて悲しいラストではあるのだけど、
最近のイーストウッドの作品としては珍しく、
登場人物達に一筋の光を与えた終わり方になっているのは
救われる。
何となく清々しい気持ちが残る一本でした

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