雑記録X

備忘録

「行政寄り判決の舞台裏」へこたれない人々 生田暉雄弁護士

2009-03-24 12:58:20 | 雑記録
「行政寄り判決の舞台裏」へこたれない人々 生田暉雄弁護士
2009.03.24 Tuesday
へこたれない人々 生田暉雄弁護士 東京新聞
「行政より判決の舞台裏」

 お上相手の裁判では上級審になると、民の側の分が極端に悪くなる。
 昨年一年を振り返っても、大阪府内の住民が原告の基本台帳ネットワーク差し止め訴訟は三月、最高裁で逆転敗訴。一審でも無罪だった立川反戦ビラ事件も四月、最高裁で有罪が確定した。
 行政訴訟に限ると、住民側の勝率は約15%とされる。無力感が漂う。そのためか、ドイツでは年間五十一万件もある行政訴訟が日本では二千件にとどまる。
 「元凶はヒラメ裁判官にある」。高松市の弁護士で元裁判官の生田暉雄(六七)はそう断言した。
 裁判官は憲法で一人一人独立を保障されている。でも、大半の裁判官が上昇志向から最高裁に統制され、お上に従順だとみる。上ばかり見ている、これが「ヒラメ」の名の由縁だ。
 生田は昨年来、著書「裁判が日本を変える!」などで裁判官の実態を"内部告発"してきた。聖域に扱われがちな裁判所だが、生田が描く裁判官の境遇は上司の顔色に敏感なサラリーマンのそれとうり二つだ。
 三権分立が建前でも最高裁は予算などで時の政権との波風を嫌う。その最高裁が裁判官を操る術は報酬と人事。生田は「よほど良識がないと、自主的にゴマすりになってしまう」と話す。
 具体的にどうなっているのか。まず、報酬。一般に裁判官の報酬は等級の四号(別表参照)までは定期昇給するが、およそ二十一年目から選別されていくという。
 同期でも、その後十年で一号まで上がる人もいれば、四号にとどまる人もいる。その差は年額一千万円。退職金や恩給まで含めれば、総額で億単位の違いになる。
 人事もこの三十年で大都市中心の優等生と地方周り組みに分けられるようになったという。それは都市手当ての有無で報酬にも反映される。
 裁判所では刑事、民事とも三人ほどで一つの部をつくる。部長(裁判長)が部下を評価し、部長は所長が評価する。その所長の人事考課は最高裁が担う。裁判長は所長の威光に配慮した判決を考え、所長は最高裁の意を酌んだ人事をする。
 三号で無いと裁判長にはなれない。生田は「通常、誰でも裁判長を目指す。だから若いうちからゴマすり判決をするしかない」と指摘する。
 ただ、ゴマをすらない人達もいる。一九七三年な長沼ナイキ訴訟の一審で、自衛隊を違憲と判断した福島重雄(七八)もその一人だ。だが、彼は退官までの十二年間を地方の家裁で過ごした。
 法曹界の改革を訴える青年法律家協会や良識派裁判官の勉強会「裁判官懇話会」の会員も「最高裁の目の敵にされた」と生田は語る。人事での"不遇"がそれを示す。
 「裁判官同士の話題は第一に人事。次に健康。そして担当事件。政治の話はご法度で、家庭の話も出したがらない。自分の価値観や思想、弱みは見せず当たり障りのない話に終始しがちだ」

元裁判官の"内部告発" - 弁護士・生田暉雄さん(67)
 いくた・てるお 弁護士。1970年に裁判官に任官し、大阪高裁判事などを勤め、92年に退官した。裁判による主権の回復を訴え、愛媛、栃木、横浜、杉並(東京)の「教科書裁判」で原告代理人を務める。41年、神戸生まれ。
[写真] - 「市民が司法を文民統制するべきだ」と語る生田暉雄弁護士 - 高松市で

最新の画像もっと見る