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備忘録

isuzu社員供述書

2011-05-02 17:36:47 | 雑記録

isuzu社員供述書

2011年04月28日 15:18


 高知いすゞ社員が「時速10kmでもブレーキ痕がつく場合がある」という供述をしています。この供述書を検察側には重要な証拠として再審意見書にて取り上げています。

 この供述書は原審判決・控訴審判決でも専門家の意見として重要視されています

 供述書は全文5pで構成されて、ABSのシステムの概要が書かれていますが、その内容は供述書と同時に提出されたサービスマニュアルの丸写しです。                                                                                                                                                                                    

 気をつけておかなければならないことは、この供述書が社員の証言通りに作成されたものかどうかというところです。不要な空白・空欄がなく供述書が一気に書かれていること。また、ABS装置の目的について『専門家』らしからぬ大きな間違いがあります。

 供述書の写しは 
監視委員長さんのブログにあります

 いすゞ社員は一通りABSの作動原理を述べた後に、低速時のタイヤロックについて以下のように述べています。

 
社員の供述 ()内はLMの補足

 ・・・・しかし、低速度であれば速度の落ち込みの差が開かず、(ブレーキ圧の)コントロールバルブを制御することなく車輪がロックされたままになることもあります。

 ただ、
その速度がきっちり数値として何キロメートル以下の場合はしますと明確にはあらわされていません。

 参考とするのであれば、トラブルシューティングマニュアルでABS作動状況の点検要領が示されており、車両を20~30km/hで走行させて、急ブレーキをかけて確認することとなっておりますので、点検要領からすれば、この
数値以下ではABSの作動状況が確認できないことになります。

 あくまで、(ABS装置は)いかに安全に短く停止できるかの制動装置ですので、ロックさせた場合の方が制動距離が短く出来る場合もあります。

 
ですから、10キロメートル毎時前後の速度であってもABS装置車でもロックすることがありえるとお答えしているものであります。

 以上の通り、録取して読み聞かせたところ誤りのない事を申し出て証明押印した。 
 前同日 土佐警察署 司法警察員 警部 〇×▲

(以上甲25号証より転載)


 この供述書にも不可思議なところがある
 
  「その速度がきっちり数値として何キロメートル以下の場合はしますと明確にはあらわされていません」

 こんなことはありえない。

 ABSはコンピューター制御なんだから、数値を特定しないとプログラムが組めないだろう?他のメーカーでは時速何キロ以下ではABSの作動をカットするすると明言している。 参考ブログ→
監視委員長


 ABS装置の目的は「いかに安全に短く停止できるかの」、つまり制動距離を短くさせるためにあるのではない。一般にはそういう誤解も少なからず見られるが、この供述書と一緒に提出されたISUZUのサービスマニュアルには以下のように記載されている。

 
ガーラミオ 中型リアエンジンバス サービスマニュアルより抜粋

 ABSはタイヤと路面間の摩擦力に対応してブレーキ作動中の車両の安定性を確保し.車両を制動する装置です。

 即ち 前輪がロックした場合に車両が操縦不能となり、後輪がロックした場合には車両が尻振りを起こすことがあります。

 もし、いずれかの車輪がロック傾向にあればABSコンピューターがABSコントロールバルブに信号を送り、直ちにブレーキ気圧を調整し車輪のロックを防ぎます。

 ABSはタイヤと路面間の摩擦力に対応してブレーキ作動中の車両の安定性を確保し.車両を停止させる装置です。

                                      以上

 つまり、ブレーキキング中の車両の安定がABS装置の目的であって、最短距離で車両を停止させるものではないのですが、社員は「短い距離で停止させるための装置」と言う認識を持っている。専門家どころか素人そのものではないか。

 また、社員は「ロックさせた場合の方が制動距離が短く出来る場合」もあるから、
「10キロメートル毎時前後の速度であってもABS装置車でもロックすることがありえる」と供述している。

 確かに、ロックさせた方が制動距離が短くなる場合もあるが、ABSコンピューターはそんなことを判断材料として装置を作動させているのではない。ABSが作動するのは車両速度と車輪速度の差が一定の値を超えた場合だけだ。ABSが『ロックさせた方が短く停車できる』という判断をすることはない。

 この供述内容を高知地検は

低速度で進行する状態では,車両速度と車輪速度との間に差が問かずにABSが作動せず,車輪がロックされたままになることもあり、時速10キロメートル前後の速度であっても車輪がロックすることがある」と供述したものである

 としているが、見事なロジックです。

参考意見の「20~30km/hからの急ブレーキによるABS作動テストをするのだから、それ以下の速度ではABSの作動確認はできない」という、社員の判断をこじつけている。社員は「ABSの作動確認」はできないといっているのであって、ABSが作動しないとは言ってはいない。

ただ、「10キロメートル毎時前後の速度であってもABS装置車でもロックすることがありえる」というのは事実で、私達の走行実験でもABSは作動しつつもタイヤ痕はついた。ただし、ブレーキ痕は停止直前に、長さが30cmほどついたのであって、1mを超えるものはつかない。 

 
時速10kmで1mのスリップ痕が横滑りだろうが急ブレーキだろうが、乗客に衝撃を与えないままにつくかどうかは、バスの走行検証をすれば一発で答えが出る。

 高知地検は二言目には『原審で認められている』と逃げるが、こちとらその原審判決が間違っているとして再審請求しているのだから、判決に頼らずに、片岡さんを起訴した証拠を具体的に、科学的に説明するべきじゃないのか。




 



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