地方新聞の果たした役割
■ 高裁判決を二日後に控えた平成19年10月28日高知新聞朝刊に、世論を「警察側の事故形態」に誘導し、審議な しの即日結審で《逃げ切り》を企てる警察・検察の冤罪確定を幇助する、およそ報道の中立公正とはかけ離れた記事が掲載される。
■ 見出しと写真に込められた作為
大見出しには 『双方の見解 隔たり大』とある。弁護側、検察側それぞれの主張する事故形態は、「一方が真実なら一方は全体が丸ごと虚構である」というコインの表裏のような関係である。コインの表にある2つの主張相互の『隔たり』を争う訳ではない。この詐術は『虚構のスジガキをあたかもコインの表に配置 する』かのような錯覚を読者にもたらし、対立の構図を曖昧にする。大見出しは、記事全体の作為性を予告してい
る。
■ 中見出しで『捜査側 動いていたバスに衝突/弁護側 スリップ痕証拠ねつ造』と双方の主張を示している。しかし、これは裁判での争点ではない。裁判の争点を簡潔に対比させたければ、『捜査側 車道に侵入してきたバスが白バイをはねる/弁護側 右折のために停止していたバスに白バイが衝突』となるだろう。記事は『捜査側 動いていたバスに衝突』と白バイが能動態で書かれている。ここにも「加害者は白バイ」であると含みをもたせ、「だが、交差点に停止していたバスの過失が大きい」と遁走用の伏線を埋め込む。争点を曖昧にし、コインの表(真実の側)に踏みとどまろうとする姑息さがみられる。
■ 中見出しではもう一方の弁護側の見解を唐突に『スリップ痕証拠捏造』としている。日頃、警察とは無縁の一般市民は、法と証拠に基づき犯罪を摘発するはずの捜査機関が証拠を捏造するはずがない、事故形態を改竄するはずがないと考えることだろう。また、情報を公正かつ正確に伝えるための公的な報道機関である高知新聞が「捏造されたスリップ痕」を実在したかのように掲載するはずがない、と考えることだろう。法治国家を構成する一員であり、市民社会のセーフティーネットを担うと自覚する多数の市民は、自身の所属する信頼できる社会の内に警察があると考え、市民としての責任や隣人に対する信頼を無自覚のうちに、警察やマスコミにも投影している。高知新聞を通して伝えられる歪曲された冤罪ストーリーに対し て、果たしてどれだけの読者が事故の真相を読み解くための客観的な判断を保つことができただろうか。
読者は捜査機関は証拠を捏造しないという思いこみから、『スリップ痕は捏造』と主張するバス側支援者を「どこかうさんくさい特異なアウトロー集団」と感じ、主張は信用できないのではないか、という予見を植え付けられることになる。一般読者の社会への信頼ゆえの「盲点」を突き、世論を欺き「法廷の外」でバス側の目撃証言、弁護士の主張を脆弱化したのだ。
■ 記事には警察・検察の主張する事故形態の説明図しか載せておらず、バス側の説明図は載せていない。もちろん虚構の事故イメージを読者に植え付ける効果を狙った欺罔である。
■ 「見出し」、「事故説明図」、「捏造スリップ痕を撮影したという写真」と『本紙記者が事故から約1時間15分後に撮影した写真。路面にはバスのタイヤ 痕がはっきり 写っている』という写真説明によって、記事本文を読む前に読者は「バス側主張こそが虚構」であるとの印象を持つことだろう。
平成19年10月28日高知新聞朝刊(全文) ※青字は作者の注釈
昨春、吾川郡春野町でスクールバスと県警交通機動隊の白バイが衝突して、隊員=当時(26)=が死亡した交通事故をめぐり、業務上過失致死罪で起訴され、一審で禁固一年四月の実刑判決を受けた元運転手、A被告(53)=同郡=の控訴審判決が三十日、高松高裁で言い渡される。被告側は「県警に証拠をねつ 造された」として無罪を主張しており、「警察のねつ造疑惑」を軸とする同被告の支援活動がインターネットなどでも盛んに繰り広げられている。 事故の経緯と裁判の争点を検証、整理する。
※検察、裁判所、高知新聞と一体となり冤罪ストーリーを強弁で貫き通 した高知県警は、インターネットの普及により、偽りの権力・権威の壁を 軽々と突破し、この「権力犯罪」の真実が伝わるのではないかとその拡散力に怯えることになる。ネットでは新聞とは比較にならないほど解像度の高い写真が公開され、その捏造の真偽や目撃白バイ隊員の証言の矛盾などについて議論は白熱した。ネット上の議論の深まりと拡散を沈静化させようと、地方紙の記者も警察擁護の書込をしている足跡が捉えられた。
▼最大の争点
事故が起きたのは、昨年三月三日午後二時三十五分ごろ。仁淀中学校の卒業遠足でバス運転手を務めたA被告は、春野町弘岡中の国道56号沿いのレストラ ンで食事を終えた生徒二十二人、引率教諭三人を乗せ、駐車場から右折して国道に進入する途中で、右側から来た白バイと衝突した。
※「国道に侵入する途中で衝突」というのは検察側主張である。
隊員は胸を強く打ち、約一時間後に死亡。バス側にけが人はなかった。
同被告側は「左右の安全を十分に確認してから国道に入った。右折先の車線を来る車をやり過ごすため、道路中央で停止中に白バイが高速で衝突してきた。 過失がないので、罪は成立しない」と主張。
※弁護側は『被告人には公訴事実で指摘された過失は存在せず、業務上過失致死罪に該当せず、 無罪の判決を求めるものである』と弁護要旨で主張している。『過失がないので、罪は成立しない』という記事のこの部分にも中見出しと同様遁走用の伏線をしのばせている。
一方、検察側は「安全確認を怠り、国道の中央分離帯に向けて低速で進行中だった」とし、公判では、バスが衝突時に動いていたか、それとも止まっていたかが最大の争点となっている。
検察側は事故後、同被告の逮捕前に撮影したとする現場写真を公判に提出した。そこには、バ ス前輪が路面に付けたとみられるスリップ痕(長さ約一~ 一・ 二メートル)や、衝突後に白バイがバスに数メートル引きずられたような擦過痕が写っており、検察側は「バスが動いていた証拠」としている。
しかし、同被告側は事故時、「バスは停止中で急ブレーキはかけていない」と反論。事故後の実況見分の際、同被告は現場でスリップ痕を見ていない上、警 察官からも確認を求められず、「逮捕から約八カ月後の検察の取り調べ段階になって初めてスリップ痕を見せられた」とする。
また、ほぼ同型のバスと車体重量を用いて独自に実験を行った弁護側は「相当の速度が出ていないと一メートル以上のスリップ痕はつかない」と主張。 スリップ痕がつくほどの急制動を事故時に感じた生徒はおらず、スリップ痕などは「身内をかばう県警が白バイ側の過失をなくすため、偽装、ねつ造した」 と訴え、具体的には「何 らかの液体をタイヤや路面に塗ったか、写真を加工した」としている。
※これらの捏造を証明するため証拠写真のネガの開示が求められたが、検察側はかたくなに拒絶した。
本紙はバスに乗っていた生徒のうち、二十人から対面で話を聞いた。
ブログ 永久保存版 高知白バイ事件より
2013/10/3(木) 午後 2:29
... 白バイとバスの衝突で飛散した破片の散乱状況を画像の輪郭 ... つぶやき 高知白バイ衝突死事故に関して元運転手は無罪であると主張するブログから、いくつから引用してみました。ただし、それらの主張はできれば最高裁以前に高裁などにに証拠とし ...
2013/10/1(火) 午後 3:20
... 1億7000万円支払判決が出た津波バス幼稚園児死亡事故。 幼稚園側は、この程、判決内容に不満があり控訴。 …徹底抗戦ですなぁ。 ... 今回のは予想外だったのだからしょうがねぇだろうという主張だろう。誰も想定してなかったじゃねぇか、と。 ...
2012/6/19(火) 午前 6:59
<関越道バス事故>観光庁、ツアー企画会社から聴聞へ 46人が死傷した関越道の高速ツアーバス事故で、観光庁は18日、ツアーを企画した旅行会社「ハーヴェストホールディングス ... 被害者の補償にも影響する」と主張した。 また、観光庁は手続きの中で ...
2010/3/6(土) 午前 6:48
数日前に、2006年の3月に高知県高知市(事故当時春野町)で発生した、白バイとスクールバスの交通事故に関する番組が流れた。 この事故は、結構前からちょっとした話題なので ... 何故だかその主張が裁判官の心に届くことはなかったようだ。 ...
2007/7/15(日) 午前 1:25
... この記事の内容は、バスの運転手の話、および第1回公判、第2公判で私が直接聞いたものを、それなりに要約してます。 それぞれの主張の違い ◎ 警察、検察の言い分。 事故の状況について 検察主張の衝突 1, バスの運転手(以下運転手)はレストラン ...