最近はバレーボールの狩野舞子さんに惹かれているけど、もう一人、気になるまいこさんがいる。その、瀬尾まいこさんの新刊『春、戻る』を一昨日買い求め、予定がなくなった昨日、お昼頃と夜で一気に読んだ。
主人公のさくらは30代半ばで、結婚を控え仕事を辞め料理教室に通ったりして、嫁ぎ先に入るまでの日々を送っている。そんなとき突然、「お兄ちゃん」だと言う男の子が目の前に現れる。さくらより一回りも下だという「お兄ちゃん」は、やがて嫁入り前のさくらにあれこれ構い出す。
はじめはいったい誰なのかと思っていたさくらだが、婚約者やその両親までも「お兄ちゃん」に違和感を持たないのもあったのか、少しずつ馴染んでいく。けれども、最後の最後で心を開けない。そこに「お兄ちゃん」と自分とを結びつけるものがあるとうすうす感じつつも。
お兄ちゃん、かなり強引な人だけど、どこか憎めない感じの人だ。そして、口は悪いものの人当たりがいい。でも、それを読んでいて、彼は寂しい人なのではないかと思った。僕もたまに人当たりがいいと言われることがあるけど、それは寂しがり屋だからだと思うからだ。そう思うと、彼を愛おしく感じた。
お兄ちゃんとさくらに、『男はつらいよ』の寅次郎とさくらを思い出した。こちらは世話を焼くのはさくらの方だけど、口は悪いけど人当たりがいいというのは寅さんにも当てはまる。器用なようで不器用なところもあるお兄ちゃんは、恋に不器用な寅さんに重なる。
恋に不器用な僕は、読み進めるうちにさらに「お兄ちゃん」に肩入れしていった。そして、ラストは涙が止まらなかった。その涙は、瀬尾さんの作品ならではの心地よいものだ。
瀬尾さんは寡作だけど、紡ぎ出された作品は読む人の心をほっこりとさせてくれる。そして、僕もちょうどほっこりを欲していた。そういう時に読む瀬尾さんの本は本当に温かい。
さて、この作品は僕に仕事に関するあることを気付かせてくれた。ただの思い込みに過ぎないのかもしれないけど、その気付きを今抱えている仕事の悩みを解消するのに活かしていけたらと思った。
雪のせいでいろいろ狂ってしまったけど、この週末は少し収穫もあったかな?