あしたはきっといい日

楽しかったこと、気になったことをつれづれに書いていきます。

いのちを受け取る

2008-04-27 22:30:29 | 本を読む
「自殺は伝染する」と、とあるホームページに書かれていた。
自殺を考えたことがないかと聞かれれば、正直に「あります」と答える。そのとき、その気持ちを思いとどまらせたのは何だったのだろう。残された家族に迷惑をかけたくないのと、生きることへの未練だろうか… 僕の命は、僕だけのものではない。ありきたりの言葉だが、ある本を読んでそれを実感した。

今年に入り、書店の店頭にいつも平積みされていた、小川糸さんの『食堂かたつむり』を買ったのは先々週になってからだった。そのタイトルと、ほのぼのとした感じのイラストに、映画『かもめ食堂』のイメージをダブらせたのは僕だけではないと思う。

ある出来事がきっかけで故郷に戻ってきた主人公が、自分の持つ唯一といえる能力である「料理づくり」によって独り立ちしようと歩き始める。けれども、それは決して独り立ちではなく、たくさんの人たちによって支えられていたということにやがて気付き、そしてそこからまた歩き始めるといた物語である。

僕も、一人で生きているという錯覚に陥ることがある。けれども、人は決して一人では生きていけない。無人島などでサバイバルのように生きている人もいるが、それは、生き物として生きているのであって、人として生きているのとは違う。僕らは、命をつないでいくリレー走者でしかない。そう、それは人の命だけではなく、他の動物や植物などの命を食することによって、さまざまな生命を受け継いでいる。

先週初めに、主に電車の中で読んでいたのだが、周囲にいる人々の視線を思いつつ、あふれる涙を堪えずに読み進めた。

先週末に参加したイベントや、ドラマ『ちりとてちん』に通じるものを感じたことが気持ちを共振させたのは事実であるが、それ抜きでも、心がホッと温まる作品だった。そして、誰かはわからないが、その誰かに対して腕をふるった料理を振舞いたいと思った。

自殺をするというのは、そうした命のバトンリレーを途切れさせてしまうものだ。確かに苦しいことはある。死んでしまったほうが楽だろうと思えるときもある。でも、違う道を歩くという選択もある。孤独に押しつぶされそうな夜もあるけれど、僕も、そしてあなたもきっと、一人ではない。だから…
コメント (7)
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