はりぶろぐ

鍼灸師のブログです。東京都国分寺市にて孔和堂鍼灸院を開業しています。
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お灸の思い出2

2015-03-07 22:45:35 | 鍼灸
愛媛で生まれ育った私にとって、子供の頃からお灸は身近な存在でした。
(ちなみにお灸のことを地元では「やいと」といいます。)

以前このブログで祖母とお灸のことを書きましたが、お灸と聞くと思い出す人もう一人います。

その人は私の祖父の叔母で、ばあば、と呼んでいました。
子供の足でも歩いて行けるところに住んでいたのでよく遊びに行きましたし、ばあばも家によく遊びに来てくれました。
いつ会っても綺麗で優しい笑顔のばあばが私は大好きでした。

私の記憶では、生まれて初めてお灸を見たのは、ばあばが私の家で母にお灸をすえていた時です。
ふわふわしたもぐさが入った箱。もぐさに火を付ける線香。気持ち良さそうに寝ている母の姿。
いつも1時間くらいかけてお灸をすえていたような気がします。
部屋中に煙が充満するので、「けむい、くさい」とよく言っていたのも覚えています。今思えば本当にくさいと思っていたのではなかった気がしています。逆に、その匂いで何だか分からないけれど落ち着いた気分になっていたのかな、と思います。

当時、母は弟を出産した後で体調が思わしくなく、ばあばのやいとのおかげで少しずつ元気を取り戻していったと聞いています。母の背中には、その時のやいとの痕がまだ残っています。(昔のお灸はしっかりと焼ききっていたので残るのですが、最近はなるべく痕を残さないようなお灸に変わってきています。)
母曰く、ばあばは灸点をおろす(お灸をすえるツボを見つけること)のが上手だったとのこと。そしてやいとが終わった後に背中や腰をさすってくれる時の手が、とても気持ち良かったと言っていました。

それから随分時間が経ち、私が鍼灸師になろうと決心し、ばあばにお灸のすえ方のコツや、灸点のおろし方、上手な触り方などを聞いてみたのですが、何度聞いても教えてもらえませんでした。
いつもの優しい笑顔で、「ばあばのやり方は自己流で適当。大したことないから何にも参考にならないよ。あなたはこれから学校でしっかり勉強するのだから大丈夫。」と言うだけ。

ばあばは私が鍼灸学校在学中に亡くなり、結局何も聞けずじまいになってしまいました。
しばらく残念で仕方がなかったけれど、今はばあばが教えてくれなかった理由がなんとなく分かる気がします。

お灸のすえ方も、灸点のおろし方も、触り方も、長年の経験の中で培ってきたもの。言葉で説明できるものではなかったのでしょう。
そして、何よりもばあばの優しさが手から伝わることによって、心地良さがうまれていたのではないかと。

もうすぐ鍼灸師になり6年経ちます。少しずつですが経験を重ねて、微妙な調整もできるようになってきたかなと思う今日この頃。
ばあばの優しい手に近づけるよう、さらにこつこつとやっていきたいです。
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