少し前の話になりますが、夫からとあるラジオ番組内での話を聞きました。
ある芸人の方が首を寝違えて鍼治療を受けたそうです。今回だけでなく過去にも鍼治療を受けたことがあり、その際は直接痛いところをやらず、離れたところに鍼を刺されたけれど効かなかったとのこと。今回は直接痛むところを刺してもらい、よく効いたという話でした。
私もタイムフリーで番組を聴いたところ、鍼灸師は離れたところを治療したがる、カッコつけている、という表現がありました。確かにそう取られても不思議ではないし、効果が出ればいいけれど効果がでない場合はただのカッコつけだと思われても仕方のないことなのかなと思います。
しかし、実際はカッコつけたくてやっている訳ではありません。離れたところに鍼をする理由があるのです。
基本的に、特に急性の痛みが出ている部位に対していきなり鍼を刺すことは禁忌です。
(最初から患部に直接刺す方もいるかもしれませんが、私は禁忌と教わりました。)
まずそもそも痛みがある部位のため、鍼の刺激に対しても過敏になっていることが多いです。万が一、鍼の刺激で余計に患者さんの痛みを強くしてしまうと、その後の治療を継続すること自体が難しくなります。
もちろん直接刺すだけで痛みが緩和することもあるのですが、刺してからしばらくの間は効果が続いたとしても、数時間も経てば元に戻るか、元より痛くなってしまうことがあります。
私の経験上のことではありますが、離れたところを刺しても効果が持続しなかったり痛みが強くなってしまうことがあります。ただ痛みのある部位に直接さした場合に比べて一時的なもので治まることが多く、その後次第に楽になっていくことがほとんどです。
また、痛みのある部位に最初に鍼をして効果が出なかった場合は、他のツボを使っても効果が出にくくなるというデメリットもあります。
痛みと関係なさそうなツボを用いるメリットとしては、痛みのある部位から離れたツボを用いる方がじっくり丁寧に調整できて、ゆっくり症状を改善に向かわせられるということ。
また、痛み方や体質を踏まえてより効果の高いツボを選び、適切な刺激を与えることができると、速やかに痛みを取ることも可能です。
ツボを探すには患者さんの身体に触れて探していくわけですが、痛みの出ている部位と関係のある経絡(ツボの通り道)上にツボが出現していることが多いです。もちろんツボが出現していないこともあるし、刺してみたけれどイマイチ効果が現れないこともあります。そういう時は間接的に関連している経絡上でツボを探したり、ツボという概念を一旦置いておいて筋肉の繊維を細かく探って反応のあるところを探したりします。
症状を改善させるために次々とツボを刺せばいいわけではなく、やりすぎると必ず症状を悪化させてしまうので、効果が顕著でない場合はある程度で治療を終了とします。
私の場合は、その後患者さんが日常生活をする上で気を付けた方がよいことをアドバイスしたり、痛みがぶり返してきた時の対処方法を幾つかお伝えするようにしています。1回の治療でさっと良くなるのがベストではあるのですが、実際にはなかなかそのようにいかないこともあります。
今回この話を聴いて、より少ない回数で改善に向かうよう、患者さんの症状に合わせて最善の治療ができるよう、さらに学んで技術を高められるよう努めていきたいと改めて思いました。
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