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『黄色い星の子供たち』 その眼差しの先には?

2011年08月12日 | ヒリヒリした映画

原題:La Rafle(G)
2010年・フランス・ドイツ・ハンガリー(125分)
               
製作:イラン・ゴールドマン
監督/脚本:ローズ・ボッシュ
出演:メラニー・ロラン、シルヴィ・テスチュー、ジャン・レノ ほか


鑑賞日:2011年7月27日 (新宿)

鑑賞前の期待度:★★★


第2次世界大戦下、
ナチス・ドイツによって行われたユダヤ人迫害は
歴史的事実としてあまりにも有名。
だが、
時のフランス政府も積極的に関与していたという事実は衝撃だった。


映画の背景は、ヴィシー政権下のフランス。

1940年6月:ナチス・ドイツが侵攻し、フランスが敗れる。
         抗戦派に代わって和平派が政権を握り、
         親ナチス・ドイツのフランス政府が誕生。

  6月22日:独仏休戦協定締結

   7月1日:首都をヴィシーに移したことからヴィシー政権と呼ばれる。

ヴィシー政権は、ナチス・ドイツのユダヤ人政策をそのまま取り入れると同時に、
ユダヤ人身分法など独自の政策も施行。

1942年6月:ペタン首相は北部占領地区のユダヤ人に、
         <黄色星章>をつけさせるという措置をとる。
         (映画タイトルの“黄色い星”とは、このこと。)


1942年7月16日:ユダヤ人一斉検挙。
        1万3千人のユダヤ人がヴェル・ディヴ(冬季競輪場)に収容され、
        5日間放置される。

   そして5日後・・・収容所へ彼らの移送が始まる。

     
このヴェル・ディヴ事件は、長い間ナチスによる迫害の一貫とされ、
歴史の陰で多くを語られることがなかったが、
1995年、
時のシラク大統領がフランス政府の責任であると認めたことから、
改めて光が当てられた事件。

いったい、1942年7月16日に何が起き、
検挙された人々はどういう運命を辿ったのか。

元ジャーナリストのローズ・ボッシュ監督は、
3年に及ぶ綿密な調査、研究、証言、
奇跡的に生き残ったわずかな生存者へのインタビューを踏まえ、
この事件を正面から捉え、
圧倒される事実と真実だけを示し、
安易な同情や非難だけで終わることがないよう、
この作品を作り上げている。
観客は、検挙された彼らや子供たちと共に、この事件を追体験することになる。

冒頭で“ユダヤ人立ち入り禁止”のメリーゴーランドを見つめる少年ジョー。
ラストで再びメリーゴーランドを見つめるその眼差しは、
まっすぐ観客である私たちにもむけられている。
監督がその眼差しに託した想いを、しっかりと受け止めたい。

 

看護師役を演じたメラニー・ロランは、
役柄とはいえ、厳しい環境下で次第にやつれていく様を、
観ていてハッとするほど見事に演じていました。
それもそのはずで、
インタビューによれば、撮影中、本当に病んでしまっていたのだとか。
監督から「中止にしましょう。」と言われても断り、
看護師役を演じきった彼女からは、
役柄としての説得力と同時に女優としての迫力を感じました。


ホロコーストがフランスで行われた衝撃度:★★★★★★★★★★★★
それでも希望を持ち続ける人びとの姿:★★★★★★★★★★★★★
大人から子供たちへの想い:★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
フランス人自ら制作した勇気:★★★★★★★★★★★★
ノノの無邪気さが心に痛い度:★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

鑑賞後の総合評価:★★★★


今年12月には、
この映画と同じ7月16日に起きたユダヤ人一斉検挙を題材にした物語
『サラの鍵』が公開予定。
第23回東京国際映画祭で最優秀監督賞と観客賞を受賞した作品。
同じ事件を「謎解き」というカタチで描くと、どういう仕上がりになるのか。

未見のぼくとしては興味が惹かれるところ。

この作品も、必ず観に行こうと思う。



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