国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

助動詞46~その11~

2019-05-05 18:57:03 | 国語

傍線部に注目しよう。


33 今日は人の上 たり といへども、明日はわが身の上 たる べし と、その態度、堂々たりと見えたり

34 この紙に何を書かまし

35 いかでその琴聞か







【実戦・直前】
33 今日は他人の身の上(他人事)であったと言っても、明日は自分の身の上であろう(であるはずだ・であるにちがいない)と言う、その態度は堂々としている。
「人の上たりし」・・・「名詞+たり」の「たり」は断定の助動詞。「し」は過去の助動詞「き」の連体形。
「名詞+たりし」は「であった」。
「身の上たるべし」・・・「名詞+たる」「たる」は断定。「べし」推量、当然。今日と明日で対比的に文脈をとる。
堂々たり(漢語+たり)・・・形容動詞。「いと」がつけられる。
「見えたり」・・・「たり」は完了の助動詞
34 この紙に何を書こうかしら。  未然形+まし・・・ようかしら。ためらいの意志。
35 どうにかしてその琴を聞こう(聞きたい)
  「いかで ①どうして ② どうにかして」疑問の副詞があるので文末の「む」は連体形。意志と願望は似ている。





【参考】
33
●今日と明日で対比的に文脈をとる。今日は過去の助動詞「き」が、明日は推量・当然の「べし」がそれぞれに用いられている

◆「たり」の識別
・体言+たり・・・断定
・連用形+たり・・・完了
・漢語+たり・・・形容動詞の活用語尾
  ※漢語の場合の名詞か形容動詞の語幹かの区別は「いと(とても)」がつけられると形容動詞。
   例 いと机たり× 「机」は名詞で「たり」は断定
     いと堂々たり〇 「堂々たり」で形容動詞
  ※形容動詞「漢語+たり」は鎌倉以降の和漢混交文に多い。

◆已然形+ど・ども・・・逆接の確定条件(けれども)
◆終止形+と・とも・・・逆接の仮定条件(ても・としても)

34
「まし」の確認
・一人称の「まし」・・・ためらいの意志(しようかしら)
◆反実仮想
もしAだったら B だろうに。(裏の意味→AでないからBでない)
  ※「もしAだったら」という条件部分が省略されることがある)
A(未然形)+ば B まし
Aせ(「き」の未然形)ば B まし
Aましかば B まし
Aませば B まし(奈良時代に多い)
◆この=こ(代名詞)+の(助詞)(連体詞ではない)

35
  いかで < いかでか < いかでかは(字数が多いほど意味が強くなる。反語になりやすい)

① 〔下に推量の語を伴って〕どうして。どういうわけで。どのようにして。▽疑問の意を表す。
② 〔下に推量の語を伴って〕どうして…か、いや、そんなことはない。▽反語の意を表す。
③ 〔多く下に願望・意志の語を伴って〕どうにかして。ぜひとも。なんとしても。▽強い願望の意を表す。
例文 いかで合格せむ
    どうして合格するだろうか。(疑問)
    どうして合格するだろうか、いや、そんなことはない。(反語)
    なんとしても合格しよう(合格したい)。(強い願望)

◆意志と願望は似ている。例 来年は大学に進学しよう≒来年は大学に進学したい






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