九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

1.琵琶湖博物館のハンノキで大発生したオナガミズアオ

2015-09-03 21:59:07 | 日記

1.琵琶湖博物館のハンノキで大発生したオナガミズアオ
オオミズアオとオナガミズアオについて
 オオミズアオActias aliena (Butler, 1879)とオナガミズアオActias gnoma (Butler, 1877)はどちらも滋賀県に産するが、どちらかというと前者は普通だがオナガミズアオは個体数が少ない。私は少年時代、オナガミズアオを彦根城で1頭採集したことがある。ラベルは11. VI. 1955となっている。九州からは両種とも記録があるが、オナガミズアオは熊本県と大分県の山地帯で若干採れているだけである。本種は北海道では個体数が多い。九州のオナガミズアオの記録は山地のハンノキが生えている場所で6月、熱心な採集家が本種を狙っておこなった夜間採集で採れたものである。
 オオミズアオの幼虫はよくわかっていたが、オナガミズアオの飼育記録は保育社から1965年に出版された「原色日本蛾類幼虫図鑑上」に服部伊楚子さんが詳しく書いている。採卵して飼育したという記事であり、ハンノキの葉は、偶然、多分、彼女の勤務先農林省農業技術研究所か自宅の庭に植わっていたものを与えたらしい。彼女はおそらく他の植物も食べるだろうと書いている。しかし、九州の採集家は九州山地の高いところでも低いところでもオオミズアオしか採れないので、ハンノキに目をつけて夜間採集をやったところオナガミズアオが熊本県と大分県で採れた。九州で最初にオナガミズアオを採ったのは熊本の吉崎一章氏で1986年6月10日、熊本県高森町鍋の平である。複数頭採れその一つは私がいただいて、現在、琵琶湖博物館にある。つまり誰いうとなくオナガミズアオはハンノキやヤマハンノキしか食べないと信じられていた。ちなみに宮田 保さんは(1987)「日本産オオミズアオ属(ヤママユガ科)の地理的変異と亜種間交雑、蝶と蛾、38(2)73-85.」という論文で、オナガミズアオはハンノキだけにつくと述べている。一方、オオミズアオはハンノキにもつくことは間違いない(大塚勲さんの話)。また古川雅通さんから2005年5月4日、大分県由布市庄内町西大原でオナガミズアオを採集したというメールをいただいた。そこにもヤマハンノキが自生している。多分、それが九州第二の産地である。
琵琶湖博物館の武田滋さんも博物館の庭で一度オナガミズアオの成虫が記録されており、ハンノキがある生活工房の中川さんとハンノキを監視していて今回その幼虫を発見した。
 まずオオミズアオの幼虫から示そう。本種の幼虫は様々の樹木例えばアラカシなどブナ科やオオモジを食樹としている。この図版は大分県産のオオミズアオの終齢幼虫である。体長約70mmである。写真1は側面、2は背面である。3は顔面である。