九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

琵琶湖博物館の庭を歩いていたモモスズメの幼虫

2015-09-27 23:55:07 | 日記

琵琶湖博物館の庭を歩いていたモモスズメの幼虫
 2015年9月22日、昼食時に中川さんのいる生活工房へ行った武田さんから博物館の庭で見つけたスズメガの幼虫が届いた。これは体長約60mm、緑色のモモスズメ終齢幼虫で、この時期サクラやウメ、モモなどに発生するスズメガはこの種だけである。体側の気門の前方から黄色の小さな隆起あるいは突起物が背面に向かって斜めに線状に並んでいるので7本の斜線が認められる。写真の幼虫は緑色一色だが、黄色を帯びる幼虫もある。九重昆虫記第3巻144ページに示したように、黄色の幼虫はそれぞれの斜線の前、背面に近い部分が茶褐色を帯びることがある。同書では2黄色幼虫の褐色斑紋の写真を示した。このような色彩変異は、九州ではよく見られ、実験的に確かめてはいないがおそらく高温時に見られる黒化の一種ではないかと思う。涼しくなってから見られるモモスズメ幼虫は緑色系が多い。モモスズメの幼虫で緑色のまま褐色の斑紋が現れることは私の経験では一度もない。必ず黄色の幼虫に褐色斑紋が現れる。また体色の緑から黄色への変化は中齢以後の脱皮時に現れるようだ。われわれはそれぞれの幼虫の色彩斑紋の出現は、その表現型に対応する遺伝子によって支配されていると考えている。しかし、一部のシャチホコガ科幼虫の体側の線は晩秋に出現する幼虫では黄色だが、夏出現する幼虫のそれは赤みを帯びる。どちらの色も同じ遺伝子の指示により作られる同一色素だが、生成される量が低温時と高温時で違い、それが見かけの赤と黄となって表れると理解するべきだろうか。それとも他の説明があるのだろうか。幼虫時の色彩は成虫になると季節型として影響を残すことも考えられる。
 成虫は初夏と盛夏の年2回出現する。1化の雌が産んだ卵から飼育した経験によると羽化するまで50日近くかかっている。つまり秋に見られる幼虫は蛹で越冬する。