九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

「九重昆虫記の世界」展の終了と所蔵標本の行先

2011-08-27 17:26:16 | 日記
「九重昆虫記の世界」展の終了と所蔵標本の行先
 「九重昆虫記―昆虫の心を探る―第10巻」の原稿が2011年春に完成した記念として、「九重昆虫記」展を2011年7月20日から8月21日まで大分県九重町九重森林公園スキー場ホールで開催しました。開会式は丁度台風が接近していた時とぶつかり風雨が激しく、町の関係者も来ることができず、集まった人々だけのささやかな式になりました。それから2-3日は悪天が続き、会場が海抜1200mを超える場所なのと、また宣伝も行き届かず、大入り満員とは言いにくかったが、とにかく無事に終わりました。
 会期中に大分県のみならず近県から、またインターネットでこの展覧会のことを知って、関東から駆けつけて下さった昔馴染みを九重自然史研究所に泊め、長崎大学熱帯医学研究所で共に過ごした青春時代の話に花が咲き楽しい一時を過ごすことができました。また九大昆虫学の多田内教授が中国の農業大学昆虫学教授らを数人伴って来てくれ、私の説明に耳を傾けてくれたことも嬉しいことでした。その数日前、台湾からも子連れの来訪者があり熱心に話を聴いてくれました。
 九重自然史研究所にとっては11年目の記念行事であり、また個人的には75歳の節目でもありました。まずは応援して下さった九重町、九重町教育委員会、九重森林公園と遠路はるばる見に来て下さった皆さんに厚くお礼申し上げます。また報道機関の好意的な報道にも感謝しています。
 展示されたパネルは約300枚で、それぞれ2-8枚の写真が使われているので正確な写真の枚数は数えていませんが、2000枚近くと推定されます。また所蔵標本の10%にあたる50箱を初めて公開しました。今回の展示は半翅目、膜翅目、双翅目、鞘翅目などの生活史に関するパネルが102枚、鱗翅目に関するパネルが約160枚でした。宝泉寺昆虫館では鱗翅目昆虫の生活史のパネルを約500種展示しました。今回はチョウ約40種、そのうち2種は外国で遭遇した面白い生活史を持つチョウ、またガは小ガ類やメイガ類の興味深い生活史を多数展示しました。
 また会場での私の説明も双翅目、膜翅目、脈翅目、鞘翅目および半翅目などに偏り、鱗翅目はビークマークとチョウやガの翅はわざと破れやすい方向に進化したという宮田説に触れるだけに留めました。普通の昆虫の本には決して出てこないオリジナルな面白い話をすることができたと自負しています。
 ところでこの展覧会で私なりの区切りがついたので、今年中に九重自然史研究所所蔵標本(原生動物鞭毛虫類トリパノゾーマ属のタイプ標本約40種を含む)と関係資料の行先を決めたいと考えています。昆虫標本はできれば大分県に残したかったのですが、大分県は理系に弱わく自然史系博物館はありません。ちなみに会期中に大分県に科学館を作ろうと運動されている方々が来られ、熱い思いを聴きました。私がもう10歳若ければそれが建設されるのを待つことも、その運動の中心になって働くことも可能ですが、今は長い間背負っていた荷物を下ろす時期に来ています。大分に私の標本が残せないのは大変残念ですが仕方ありません。
 ところでこのブログは今後も続けます。私は未発表の研究成果を「九重昆虫記」に執筆することに決めており、学会誌には投稿しなくなりました。しかし、残念ながら九重昆虫記の編集者の体が弱いこともあって発刊が著しく遅れています。そこで未発表のデータのうち重要なものはブログで少しずつ記録することにします。ブログであっても公開された記事は引用できます。次回はツクシボダイジュで飼育したガの話を書く予定です。

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1 コメント

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仁坂氏の消息 (廣川 輝誉嗣)
2012-05-29 11:05:47
本日記へのコメントでは在りませんが、宮田氏への連絡方法が分からない(九重自然史研究所の電話0973-73-3817は「使われていない」)ので、ここに挙げました。
悪しからず。
九重昆虫記1 P75 を見てのことです。
お探しの「仁坂吉伸」氏は、おそらく、現在和歌山県知事をなさっている方だと推察します。
鱗翅学会に、与那国島のオナシアゲハに関する論文を書かれています。
既に、他所から知らされていらっしゃることでしょうが、念の為書きました。
                以上

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