九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

高島市朽木柏の蛾の同定

2017-09-09 08:16:52 | 日記
高島市朽木柏の蛾の同定
武田さんから同定依頼された標本は水か油性のシミがあり標本の状態が良くないので、同定できない種が多かった。同定できた種も自信がないものがあるので?つけた。博物館などで展示するための標本でなければ、小さなガは即効性の毒たとえばクロロホルムで殺し、現地で背中から針を刺し、標本箱に隣の虫と翅が接触しないよう並べて持ち帰ると、小蛾が生き返っても傷みが少なく同定しやすい。
以前、九大の三枝さんが環境調査のため採集し、見てくれと取り出した標本は大蛾類も前後翅を腹側で閉じた蛾の背中から針を刺しただけの標本がずらりと並んでいた。蛾は前翅表面さへ見ることができれば大部分、おそらく80%の種は同定できる。彼もそのことに気づいていたのだと感心した。さらに後翅表面もあれば、大体100%同定できる。環境調査は無理に時間をかけて展翅する必要はない。むしろ個体数を多く持ち帰ることを勧める。ご存じの通り環境調査は種数だけでなく個体数の多少も重要である。多くの標本を扱うと油が出ないよう、しっかり乾燥することが大切だ。私は梅雨時などには日が当たると、車をわざと日当たりに止めて窓を閉めっぱなしにした車の座席に蓋を取った標本箱を並べて乾燥させたこともある。以下は同定できたものです。
1. クロクモエダシャク、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
2. フタヤマエダシャク、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
3. ハラゲチビエダシャク、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
4. ウスアオエダシャク?、高島市朽木柏、24. VI. 2017
5. カギシロスジアオシャク、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
6. キオビベニヒメシャク、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
7. バラシロエダシャク、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
8. トサカフトメイガ、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
9. コヨツメノメイガ、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
10. コガタシロモンノメイガ、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
11. オオウスベニトガリメイガ、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
12. フタスジシマメイガ、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
13. ツトガ、高島市朽木柏、24. VI. 2017
14. クロモンキノメイガ、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
15. チョウセンツマキリアツバ、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
16. コウンモンクチバ、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
17. コブヒゲアツバ、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
18. アカテンクチバ3ex.高島市朽木柏、19. VIII. 2017
19. ヒメムラサキツマキリヨトウ、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
20. シロマダラヒメヨトウ、高島市朽木柏、22. VII. 2017
21. ハジマヨトウ、高島市朽木柏、22. VII. 2017
22. ヒメケンモン4exs. 高島市朽木柏、19. VIII. 2017
23. キクビゴマケンモン、高島市朽木柏、24. VI. 2017
24. カラフトゴマケンモン、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
25. サクラケンモン、高島市朽木柏、19. VIII. 2017
26. アトテンクルマコヤガ、高島市朽木柏、19. VIII. 2017

彦根東高校が甲子園で活躍おめでとう

2017-09-01 19:08:58 | 日記
母校彦根東高校野球部夏の甲子園大会に出場及び甲子園での1勝おめでとう!
 この夏、夏の甲子園大会に母校彦根東高校が出場し、長崎県の波佐見高校と対戦し6対5で甲子園で初めて1勝しました。二回戦は青森山田高校と対戦2対6で破れました。私は1953年彦根東高に入学し彦根の球場で開かれた彦根東高校とライバル膳所高校と対戦の応援に行きました。彦根東高校のエース中川さんは後に大毎オリオンズに入った人で、彦根東の応援団も一生懸命応援し接戦になりました。相手校の選手がアウトかセーフかで彦根側が承服できず、ベース付近に選手が座り込み彦根東高校は連盟から除名され野球部は解散になりました。判定を下した審判が膳所高出身者だったことが、騒ぎが大きくなった理由です。私たちにとっても実に後味が悪い不快な思い出です。膳所高校側も同じ思いだったでしょう。
 なお長崎に住んでいたころ焼き物の町波佐見市を訪ねたことがあります。唐子の絵が入った有田より古い陶器の町です。
「九重昆虫記」が絶版になってから唯一その本にまつわる嬉しいことは合計11巻とフィリピン探検記(12巻)を読み直し訂正および加筆する機会ができたことです。1巻から読むと地蔵原で始めた自然観察力と思索力が巻を追って次第に進歩しているのが自分でもわかるからです。しかしこの7月23日で80歳になり、机の前のコンピュータの画面を2時間続けると眼が疲れ1時間ほど休むか眠ると回復します。正月から既刊1~9巻を訂正・加筆し終わりました。ただ出版してくれる本屋はまだ決まっていません。集中して何かに取り組んでいるとブログが書けないのです。
 

クロモンキリバエダシャクの幼虫について

2017-09-01 18:53:36 | 日記
クロモンキリバエダシャクの幼虫について
以前、私のブログ:九重自然史研究所便りに「大津市でシキミに発生した後腹部背面に一対の角を持つシャクガ幼虫」の正体がわかったので訂正する。
 シャクガ科の幼虫は食樹の小枝や茎に擬態している。その結果この科の幼虫の多くは小枝のような色彩や形を持っている。しかしこの図版に示すシャクガ幼虫の腹部表面両側から生えている1対の立派な角状の突起を持つ例は、私も初めて見るものだ。この図版の幼虫は2016年5月9日武田さんが大津市和邇の自宅近くでシキミ(シキミ科)から見つけ届けてくれたものだ。
ただ講談社版「日本産蛾類生態図鑑」にはフタキスジエダシャクGigantalcis flavolineariaの幼虫の写真が3枚掲載されており、シキミのエダシャク幼虫もそれと幾分似ているが明らかに別種である。またその種はマメザクラ、ズミ、アズキナシなどバラ科に固有の種であるという。
 今日お見せする図版の幼虫は、バラ科固有のフタキスジエダシャク幼虫と同じくシャクガ科幼虫としては異例の腹部第7節背面両端に立派な角状突起を持っている。両幼虫は明らかに別種である。なぜならバラ科固有の幼虫の突起は先端に向かってまるで剣のように細くなっている。
一方、シキミの幼虫の突起は鹿の角のように頑丈で、先端部が二股に分かれている。特に写真6では明瞭に二股になっている。角の枝は正面から見ると前後に並んでおり写真5では一本の角に見える。この突起は武器として使うことはなさそうだが、腹部背面前半は黄色に彩色されており、その面を見ると写真3と5のように敵を威嚇する効果はあるらしく、黄色部を前方に向けて静止していることが多い。
 写真1と2は他の写真よりもやや小さく5月14日に体長20mm以下でおそらく3齢幼虫らしい。他の4枚はもう1齢進んだ5月17日の撮影で体長40mm4齢幼虫らしい。届いたときのシキミは硬い去年の葉がついている枝の先端部に新芽が伸びつつある状態であり、届いた幼虫は新芽ばかりを食べていた。この幼虫は同時期に体長が違う数幼虫がおり、明らかに独居性で5月24日最大体長約40mmに達した幼虫が5月30日にまでに順に3幼虫が蛹化した。蛹は黒みがかった褐色で、本来は葉を綴り合わせた繭内で尾端を糸で繭の天井に固定し蛹化するらしく、順調に育った1幼虫はそのように蛹化した。しかし飼育下では残りの2幼虫は容器底で葉の下で蛹化していた。
 幼虫戦争と呼ばれるガの幼虫研究者がしのぎを削った時代にシャクガ科幼虫を続々と報告された佐藤力夫博士に送って、ご意見を求めるとクロモンキリバエダシャクかもとメースが来たが自分が幼虫を続々記録したのは昔のことで怪しいとあった。図鑑類にはこれと一致する写真がなかった。角の生え方など良く写っていないからだ。残念ながらこの蛹は羽化せず、正体不明なので私の昆虫記に掲載するのは止めようかと思った。最後にインターネットで探してみると、時間が経過したせいか「私の違う」という強い思い込みが薄れており、クロモンキリバエダシャクとして掲載する。本種は早春に出現する種で、私は彦根付近の山地で採集している。既知食樹はクヌギなどブナ科、ヤナギ科、クスノキ科、バラ科、カエデ科、草本植物のタデ科も上がっている。シキミ(シキミ科、モクセイ目)は初めて記録される食樹である。