コンプライアンス狂時代

大阪地検特捜部の主任検事が証拠のデータ改ざんをしていた…という。





地検特捜部と言えば、どんな大物でも名前を聞いただけでビビル機関である。

アメリカ映画を観てると、ＦＢＩが絡むと手ごわい悪人も「うう、やばいっ」という表情をするが、今の日本では特捜部がそんな感じだと思う。

そんな「無法者をとっ捕まえる立場」の、しかも飛び切りの権力を持っている人が無法なことをしている…というのは、とても怖い。





数年前なら、こんなニュースを聞いても、私はほとんど何も感じなかっただろう。

しかし、今やちょいと事情が違う。

私のような末端の現場労働者でも、四六時中「コンプライアンス（法令遵守）に気をつけろ！」と、ビビラされているからだ。





何か事故が起きてみろ。行政や警察が調べにくるぞ！

そんなことして訴えられたらどうする！守りを固めろ！危機管理しろ！

というわけで、私たちは「万が一の事態」に備えるよう、厳しく頭に植え付けられている。

その結果として、どんどん入居者の自由を奪うことになる。

歩いて転ばれたら大変だ…。

好きなものを食べて食中毒を起こされたら…。

やたらと「知らない面会者」とは会わせられない…。

といって、「本人が望むことをさせない」なれば、それはそれで、重大な人権侵害だ…。

いったいどうすれば良いのだ？と、途方にくれることがしょっちゅうなのである。





とはいえ、やはりスキャンダルは怖い。

何がきっかけで新聞ネタにでもなるかわからない。

仮にそれが事実でなくとも、そんな醜聞がたったら、われわれ現場労働者などひとたまりもない。

だから「現場のこと何もわかっちゃないなア！」と内心で舌打ちしながらも、本社コンプライアンスに何か言われたら、下僕のように従うのである。





特に我々の業界は、「お上の威光」にはことさらに弱い。

区役所、警察、消防、保健所…。これらの方々の機嫌を損ねぬよう、日々神経をすり減らしているのである。

もちろん、地検特捜部などは雲の上の存在、主任検事さんのお顔をまともに見たものなら目も潰れる…と、刷り込まれているのであった。

でも、その雲上人が、あんなことをされてるとはねエ。

今回の件だって、被疑者が中央官庁の局長というまた別の「権力者」だから世に出たのでは…？と、下々の者は勘ぐってしまうところがある。

もし民間人だったら…。いわんや我々末端労働者だったら…。

何を言われても身の潔白を証明するスベもないのではないか？

そう考えると、やはり何やら恐ろしい。





法令順守はもちろん大事でしょう。

でも「良いこと・悪いこと」の判断はまた別にあって、それは地位や立場とはほとんど関係ないような気がします。





どうも、お粗末さまでした。
















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