第648話.気になった音楽(284) 久石譲 『おくりびと~memory~』

2021-12-05 23:19:06 | 気になった音楽
湖畔人です。

前回に引き続き、久石譲さんです。

今回は、前回、久石さんの曲紹介をするキッカケとなった映画『おくりびと』の主題歌、 『おくりびと~memory~』のご紹介です。

この映画は、ご遺体を化粧直しして綺麗にして納棺する役目、所謂、"おくりびと"こと、納棺師のお話でしたね。

音楽家だったが劇団が潰れ、しかたなく帰省し、仕事を探す中で見つけた仕事が納棺師で、はじめは嫌うもその仕事に意義や誇りを段々と感じ始めるも、妻の反対にあったり、色々と葛藤を経験するも、何とか折り合いをつけられた頃、生き別れ、恨んでいたはずの父の亡骸と向き合う事になり、最後は、恨んでいた父を許して見送る、そんなお話でした。

小さいころ、大好きだったはずの父。幼少時は河原によく行き、気に入った石を交換し合っていた優しい父でしたが、外に女性を作り出て行ってしまいました。それ以来父を恨み許さずにいましたが、亡くなった父は一人海辺の町でひっそり亡くなっていました。遺体の引き取り依頼の連絡が入るも、なかなか納得がいかず一度は納棺の役割を拒否をするも、意を決し、父の亡骸に向き合う覚悟を決め、父の遺体をおくりに行きます。恨んでいた父も、その亡骸の手には石が握られていました。幼少時、主人公が父に手渡した石です。父はずっと息子を気にかけ、遠くから思い続けていたようです。そんな父の気持ちを知った主人公は、父を許し、そしてみおくるのでした。そんな素敵な映画が本映画です。この映画はまた中国で再流行しているそうで、ホント良かったですよね。希望が持てます。政権が変わればきっと良い未来が来るでしょうね。

こんな素敵なシナリオを書いた小山薫堂さんはやはり天才ですね。
監督の滝田洋二郎もすばらしいけど、やはりこの素晴らしい曲を書いた久石さんも天才だと思いますね。

父親との葛藤を持つ人は数多くいるかと思います。実は私もその一人でした。

父親の兄、叔父さんが事業をしてはたたみ、また立ち上げて、と、何度も起業をしてはその度に借金を増やし、親戚中に迷惑を掛けていました。我が家もその影響からは逃れられず、母親も働きずめの毎日でした。父は兄を守る事を選び、自分の家には負担と無理を強いた格好です。結果、随分と家庭内に軋みが生じていたのです。そんな父にあまり良い思いを持つはずもなく、大分否定的な子供でした。大分反抗的な青春期だったかと思います。

でも、大人になるにつれ、彼の気持ちも段々と分かるようになり、あまり責める気持ちも無くなりました。遠方に郷里を持つ父は、単身母の実家近くに居を構え、一人で頑張っていました。唯一の身内となった遠方の兄を見捨てることなど彼には出来なかったのでしょう。

数年前、実家に正月に戻ったとき、妹と互いの子供たちの事について話をしていました。”自分自身に関しては誇れるものは全くないが、でも、よい二人の子達に恵まれたことは本当に誇れるし、本当に幸運な事だと思う。心の底からありがたく思っているんだ”と私が妹に向かって言うと、うたた寝をしていたはずの父が突然目を覚まし、会話に入って来て”俺も同じだ。俺もそう思っているんだよ”と言うのです。
それは、妹と自分が彼にとってはありがたい存在だ、と言う意味で言っていたのです。いくらボケが始まっていたとはいえ、突然、自分の子供二人を目の前に、そんな事を面と向かって言うなんてどうかしているな、とその時は思ったのですが、でも正直嬉しかったし、父が亡くなる前に、父の気持ちが聞けて良かったなと思っています。今世、父の子として生まれられてホントに良かったなと、今はそう思っています。

今頃どうしている事やら判りませんが、笑顔しか思い出せない父は、何とか明るい世界に帰っていればいいなと願いながら、今日もこの曲を聴いている所です。

本当に良い曲かと思います。お薦めします。

久石さんは夏にまつわる良い曲も多いので、また暖かくなったら久石さんの曲をやってみたいと思います。

では。

湖畔人

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