山登り・里歩きの記

主に関西地方を中心とした山登り、史跡巡りの紹介。要は”おっさんの暇つぶしの記”でんナァ!。

六甲全山縦走(三日間) 1

2018年03月09日 | 山登り

2017年11月 三日間かけてですが六甲全山縦走に挑戦した時の記録です。

 六甲全山縦走路とは  



六甲山には、神戸市に近いだけあって沢山の登山ルートがあります。その中で「六甲全山縦走路」は、六甲山の西端(神戸市西部)から東端(宝塚市)までを踏破する最も代表的な登山ルート。関西での山歩きの象徴にもなっています。
山歩きといっても、通常の登山とはやや趣が異なっています。六甲山は神戸の裏山で、早くから開発され尽くされた山。要所には茶屋が設けられ、観光施設、別荘、ホテル、ゴルフ場が点在します。そして眼下を望めば、神戸の街並みが広がり、瀬戸内海、淡路島、明石海峡大橋、さらには阪神間の市街や大阪方面まで展望できる。反対側には裏六甲の街並みが広がっている。展望を楽しみながら歩くハイキングといった感じさえあります。しかし平坦だけではありません。低山とはいえ300m~500mの山を幾つも登り降りし、ドライブウェイを歩かされ、時には平地の街中を歩かされる。ゴロ石の急坂、急階段もあり、たいへん変化に富んでいる。
神戸市西部の山陽電鉄塩屋駅からスタートし、六甲連山を登り降りし、海抜931mの六甲最高峰を越え、宝塚市へ降りていく約56キロの登山コース(逆のコースもあり)です。
この六甲全山縦走路を有名にしたのが大正末期から昭和初期にかけての登山家、和田岬にある神港造船所のエンジニア・加藤文太郎という人。「地下足袋の加藤」とも呼ばれていた。新田次郎の小説「孤高の人」のモデルでもある。小説では、奥様の要望で本名で登場します。若者と老人の会話から始まる冒頭に「加藤は生まれながらの登山家であった。彼は日本海に面した美方郡浜坂町に生まれ、15歳のときこの神戸に来て、昭和11年の正月、31歳で死ぬまで、この神戸にいた。彼はすばらしく足の速い男だった。彼は20歳のとき、6時に和田岬の寮を出て塩屋から山に入り、横尾山、高取山、菊水山、再度山、摩耶山、六甲山、石の宝殿、太平山、岩原山、岩倉山、宝塚とおよそ50キロメートルの縦走路を踏破し、その夜の11時に和田岬まで歩いて帰った。全行程およそ百キロメートルを17時間かけて歩き通したのだ」と書かれています。ほぼ史実だと思う。単独行だけだった登山家・加藤文太郎は、結婚し初子が生まれた正月、友にせがまれ初めて複数人による冬の北アルプスに挑んだ。そして二度と初子の顔を見ることのできぬ帰らぬ人となってしまったのです。

神戸市と市民団体の主催で、「六甲全山縦走大会」が毎年11月の第二日曜日と23日の休日(勤労感謝の日)に開催されている。スタート場所は、塩屋ではなく近くの須磨浦公園となっている。多くの人が集まるので、集合場所の問題かと思われます。早朝5時にスタートし、時間制限の夜10時40分までに宝塚に到着することを目指す。
この六甲全山縦走大会のコースに挑戦してみることにしました。挑戦といっても、一日でという訳にはいきません。眺望を楽しみ写真を撮りながら、たっぷり時間を掛けての踏破です。そのため三日間かけてとした。天候を見ながら、1日目(11月5日、日曜日)は山陽電鉄塩屋駅から神戸電鉄鴨越駅まで、2日目(11月16日、木曜日)は、鴨越駅から六甲ケーブルまで、3日目(11月24日、金曜日)は六甲ケーブルから宝塚までを歩きました。
一番の難所は、高取山を降りて丸山町の住宅街抜け。二番目の難所は、最後の宝塚へ降りていくアスファルトの坂道。あの舗装路は二度と歩きたくない。山歩きとは関係ない場所が難所なのです。山歩きそのものは、大変眺望がすばらしく、ハイキング気分で歩けました。

 山陽電鉄・塩屋駅から  


11月5日(日)、まず山陽電鉄・塩屋駅からスタートし、旗振山から鉄拐山を目指します。なお、神戸市と市民団体の主催の「六甲全山縦走大会」のスタート地点は須磨浦公園駅となっている。塩屋駅周辺には多人数が集まる場所が無いからです。本来の六甲全山縦走の基点は塩屋です。
駅の向こうに見えるのが旗振山でしょうか?。山側の出口を出ると、そこはもう迷路のようだ。早朝の7時15分、早出の勤め人に出会うが、登山道の入口を知っている人などいてません。自力で見つけるしかない。

塩屋の街中を抜け、六甲全山縦走路の登山道に入るまでが判りにくい。案内標識もありません。駅の出口から左へ(西側)左へと歩き、川に出合う。そして川に沿って北上します。「毘沙門」の石柱を頼りに歩く。持参の登山地図に毘沙門天が載っているからです。街中の坂道を登っていきます。この辺り、郊外の新興住宅地で、山を削った斜面に家屋が建てられている。

ここが問題の分岐点だった。この写真のとおり、左の坂道、真ん中の道、右に曲がる道と、3道に分かれている。どれが正解でしょう?。標識も見えなかった(この時点では)。思案したうえ、真ん中の道を選びました。奥へ奥へと進んで行ったが、どうも怪しくなってきた。心配になって分岐点まで引き返すと、坂道を降りてきたハイカーおばさんと出会う。訊ねると、この坂道だとおっしゃる。後で考えると、山登りだから坂道を選ぶべきだった。20分ほどここでロスしました。
坂道だと分かった後で周りを見回すと、何と々「旗振山登山道」の標識がぶら下がっているじゃないですか。”もっと判りやすい場所に置けよ・・・”とつい叫んでしまった。ここで教訓を得ました。六甲全山縦走路では、道が分からなくなった時は、周辺をよく見回す、ということです。これが後で役立ちました。
坂道を少し登ると、電柱脇に木製標識が傾いている。なぜ坂道の手前に置かないのか・・・。

やっと住宅街を抜け、山へ入って行く。山へ入ればほぼ一本道なので、迷うこともない。「六甲縦走路西基点」が大きく目立つ。もう少し早い地点で案内してほしいものです。
この先に山王神社と社会福祉法人「神戸少年の家」がある。神戸少年の家のグラウンド奥に源平合戦供養塔があるので寄り道してみる。この辺り、一の谷の合戦場に近く、多くの犠牲者がでたようです。
「神戸少年の家」から旗振山を目指して山へ入っていく。まだまだ平坦な道が続き、山登りしている感じはありません。地元の方と思われるジョギング姿の人とよく出会う。旗振山といっても250m位の山で、道の勾配も緩やかで、朝の運動にはちょうど良いのでしょう。旗振山まで0.9Kmの標識が立つ。山に入って初めての「六甲全山縦走路」の標識に出会う。全山縦走路を完歩するのが目的なので、この標識に出会うと、間違ったコースに入り込んでいないのだと、安心します。

 須磨浦山上遊園・旗振山(はたふりやま、252.6m)  



しばらく歩くと、紅葉に染まった施設が」見えてきました。地図で確認すると、須磨浦山上遊園の手前にある「ドレミファ噴水パレス」らしい。ここで初めて紅葉の秋を感じました。

ここからの眺めが素晴らしい。明石大橋、その先にボンヤリと淡路島の島影が眺められます。プールで泳ぎながら明石大橋を眺める、なんて楽しい所だと思っていたら、これは水遊びのプールではありませんでした。噴水プールだった。噴水や明石大橋を眺望しながらバーベキューを楽しめるようです。
すぐ上に須磨浦山上遊園がある。噴水パレスも須磨浦山上遊園の一部なのです。シートなどが被せられているので、この時期は閉園中なのでしょうか。それとも早朝のせいでしょうか?。ウォーキングで登ってきた数人のおじさんが景観を楽しんでいるだけでした。
山陽電車の運営で、山陽須磨浦公園駅に直結する須磨浦ロープウェイを利用してこれる。毎年行われている六甲全山縦走大会では、須磨浦公園をスタートし、この辺りまで石の階段を登ってくるそうです。


8時30分、旗振山の山頂に到着。「標高253米」の標識が建ち、「国境、←摂津の国|播磨の国→」とも書かれている。説明板には「旗振山は17世紀末江戸中期元禄時代から電信が普及される大正初期まで、畳一枚大の大きな旗を振って大阪堂島の米相場を加古川・岡山に伝達していた中継場所である事から「旗振山」と呼ばれています」とあります。

山頂だけあって、ここからの展望も素晴らしい。明石海峡大橋と淡路島が、東側には須磨浦海水浴場が広がり、その奥に神戸市内がかすんで見えます。


この山頂には旗振茶屋がある。昭和6(1931)創業で、六甲山で最も西よりにある茶屋。しかし平成7年(1995)の阪神淡路大震災で倒壊後、平成9年(1997)に再建されたそうです。主に土日祝日に朝7時から営業している。




 鉄拐山(てつかいざん、234m)  


旗振山の山頂の横に、六甲全山縦走路の案内がある。その下を通って、次の目的地・鉄拐山を目指します。
旗振山から鉄拐山まで700mと短く、また平坦な道が続く。全山縦走路の中では最も歩きやすい箇所かもしれない。そのうえ時々、樹林の間から裏六甲の街並みが見えて癒してくれます。
尾根筋が続きます。全山縦走路の標識が見えてきました。三叉路のようで、右に降りると「一の谷町」とあります。「一ノ谷・逆落とし」の案内板が建つ。右側の崖のような急坂を、寿永3年(1184)2月源義経を先頭とする騎馬軍団が駆け下り奇襲し、源氏に勝利をもたらしたという古戦場です。

かなり急な階段を登ると、陽光に照らされた頂上らしき平坦部が見えてきた。

鉄拐山(てつかいざん、234m)頂上です。9時なので、塩屋駅からここまで2時間ほどかけている。寄り道し、写真撮りながらなので、こんなもんでしょう。

神戸市内も、少しずつ大きく見えるようになってきました。

 おらが茶屋へ  



次は「おらが茶屋」を目指します。裏六甲を眺めながら長い階段を下りる。階段を降りると、尾根筋の平坦な道となります。途中、「至 高倉台を経て横尾山」と書かれた六甲山縦走路の標識が建つ。



標識「おらが茶屋 200m」を過ぎると休憩所が見えてきた。「市民山の会 おらが山登山会署名所」の看板がかかっている。ここからの眺めも良い。お菓子食べながら、しばらく休憩。11月初旬の山の上だが、歩きとおした体には寒く感じない。薄でのジャンパーで丁度良いくらいです。
休憩所から200mほど先に、おらが茶屋の白い建物が見えている。平成2年(1990)に建てられ、主に土日祝日に限り朝6時から営業しているそうです。今日は日曜日なので営業している。
1階にトイレがあり、トイレ横の階段で2階の喫茶店(おらが茶屋)に、さらに3階屋上の展望台へ登る。特に扉や柵のようなものは見当たらないので、何時でも自由に出入りできるようだ。喫茶店(おらが茶屋)だけが平日営業していないだけのようです。トイレがあるのが大変助かります。

3階展望台から、高倉台団地、さらに栂尾山、横尾山を眺める。いったん町へ降り、そこからまた山へ登っていくことになる。六甲全山縦走は、登って降りてまた登る、これの繰り返しなのです。
おらが茶屋と栂尾山との間、白い建物の高層住宅が立ち並ぶ所には、かって高倉山がそびえていた。高さ291mで、おらが茶屋や栂尾山の270mよりも高い山だった。神戸港を埋め立て人工島「ポートアイランド」造成のため、昭和41年(1966)から高倉山は削り取られ、跡形も無くなっている。140mほど山は削られ、現在は標高150mのニュータウンとなっている。自然を破壊したその報いは、その後神戸を・・・とは思いたくもないが。

ここからは360度パノラマ展望ができる。やって来た方向を振り返れば、旗振山、鉄拐山が望め、はるか遠くに感じられます。さらにその向こうには明石海峡大橋、淡路島の島影が。

 高倉台団地を抜け栂尾山へ(とがお山、274m)へ  


おらが茶屋の近くに下に降りる階段が見える。コンクリート製の階段で、両側には頑丈な鉄製テスリが設けられている。この長ーく急な階段で、真下に見える高倉台団地まで一気に降りるのです。六甲全山縦走路の山の一つ高倉山を削り潰したその代償に、この階段を設けたものと思われます。降りきると標識が建っているので、それに従って進む。車道をまたぐ歩道橋を渡り、高層住宅街の中心に入っていく。
高層住宅の中央を貫くメイン通りに入る。右側に食品スーパー「ピーコックストア」があります。パン類、弁当、おにぎり、惣菜など豊富な品揃えで、しかもお安い。ここで準備できるのは大変助かる。現在9時50分で、すでに営業していたので、朝9時(9時半?)開店と思われます。
メイン通りを突き進むと、正面にまた歩道橋が現れる。紅葉に染まる公園を過ぎるとまた歩道橋です。橋下は広い車道で交通量も多い。神戸市内と裏六甲を結んでいる幹線道路のようです。橋の先に見えるのが、次の目的地・栂尾山でしょうか?
橋を渡りきると突き当たりで、左に曲がれと標識が指し示している。左折し、幹線道路を左に見ながら細い脇道を歩く。細道を歩いていると、突然右側に細長い階段が現れ、登り口に「六甲全山縦走路→」の標識が。
おらが茶屋から高倉台へ降りるのに長い階段が設置されていたのと同様に、高倉台から栂尾山へ登るための階段を設置したのです。これも高倉山を削り取った代償です。こうして六甲全山縦走路は一応確保されている。

空中に突き進んでいくような階段。かなり急勾配で強風でも吹けば怖いでしょう。四百段もあるそうですが、途中の数箇所に踊り場が設けられ、休憩用の木製腰掛が置かれています。これは助かる。絶景を見ながらのどを潤す、いいですネ。

後ろを振り返ればこの絶景なので、辛い階段も耐えられます。高倉台団地、鉄拐山、旗振山そして明石大橋から淡路島まで見通せる。
階段を登りきると、平坦な尾根筋の道となりホットします。しかしすぐ急な山道となり、階段で疲れた体には堪える。すぐに木組みの展望台が見えてきました。ここが栂尾山(とがおやま、274m)の山頂です。10時15分到着。展望台の登り階段の横に、標識「栂尾山頂」が建っている。

もう見慣れてしまった景観ですが、やっぱり見とれます。六甲山の山登りは、これがあるから魅了されるのでしょう。

 横尾山(よこおやま、312m)  


次の目的地横尾山は高さ312mで、栂尾山より40mほど高い。しかし下ってゆきます。目の前に目指す山が見えているのに下っていく、これほど辛いことはありません。六甲全山縦走路はこれの繰り返しです。
この辺りから、風化浸食によりザラザラし滑りやすい道となってくる。須磨アルプスに近づいていることを示します。尾根道になるとホットしますが、登って降ってが繰り返される。我慢するしかありません。この辺り景観も楽しめず、わずかに裏六甲が望めるだけです。

11時前、見えてきました頂上が。ホットする一瞬です。横尾山は関西100名山の一つで、標高312.1m。二等三角点の山です。ザラザラした赤土は、見所の「馬の背」が近いことを示しています。
景観はそれほど望めません。神戸市内が見下ろせるくらいか。
横尾山から次の東山を目指しますが、その間に人気の須磨アルプスがある。六甲全山縦走路で一番楽しみにしている所です。
道が少しずつ険しくなってきました。花崗岩が風化によって削りとられ、草木も育たず、山肌がむき出しになっている。削られた小石や砂が道に散乱し、滑りやすい。これからは足元注意のエリアだ。危険そうな箇所にはクサリも張られている。

眼下に見えてきました、山肌剥き出しの須磨アルプスの一部が。その先に東山、さらに神戸市内が望まれます。


詳しくはホームページ

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