こばさん

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富士登山記(その4)

2007-07-26 19:26:59 | 富士登山記




「胸突き八丁」という言葉がありますよね。
物事を達成する直前の最も苦しいところのことを言いますが、
もともとは、富士登山で頂上までの8丁(約872m)の険しい道のことを言います。
まさしくこの胸突き八丁の苦しさを味わいました。

八合目の江戸屋を出てすぐは、下山道との共有道になっています。
さっそく、下りてくる人たちに出会いました。
外国人でした。その人はそのまま僕のところに来て、
「五合目へはどう行けばいいんだ?」と訊いてきました。英語でですよ。
ちょうどここは河口湖口と須走口の下山道の分岐点なので
迷いやすいところです。
それに対して僕は、登ってきたところであまり自信がなかったので、
江戸屋を指差して、
“You had better ask the hotel man of that hotel.”
と答えました。
“Oh, I see.”
“Good Luck.”
そして僕は右へと曲がりました。

このころからだんだんと寒気を感じるようになりました。
気がつけば、グローブをし忘れていました!
岩場を登るときにも防寒のためにも必要なものですが、
素手で登りきってました。
思えば中学卒業からは、真冬の寒さでも手袋なんてしたことがありません。
その習性がついてしまってますね。
今から出そうかと思いましたが、もうすぐ着くからいいや
とそのまま登り続けました。


標識に「下は絶景」なんて書いてあったんですけど、



何も見えません!!
確かに晴れた日は夜景がきれいらしいんですけどね。


江戸屋を過ぎてから5分くらいたったころからでしょうか。
体がだんだんと重く感じられるようになってきました。
思いっきり力を入れることができません。
歩幅も小さくなっていきます。
そのうち、一歩を10cmほどしか歩くことができなきくなりました。
明らかに今までの登りとは違います。
く、くるしい~~。

ああこれが胸突き八丁かと身をもって感じました。
そして目的地まで「あと30m」という看板が登場。



30mなんてほんのちょっとですよ。
ですが体が全く言うことをききません。
一歩歩いては立ち止まり、また一歩歩いては立ち止まる。
そんな調子です。
そしてまた雨が降ってきました。


ようやく目印である鳥居が見えてきました。



これをくぐればもうすぐです。
しかしほんのわずかずつしか進んで行けません。

鳥居のところまで着ました。
そして、ほら、もうすぐもうすぐ。



なのに最後に階段が!
一つの階段を上がるのに、4歩要します。
ゆっくりゆっくり。
そして、



17時半、ようやくたどり着きました!
本八合目、胸突江戸屋さん。
このときには、頂上まで行ってみようかというさっきの思いつきは否定していました。


江戸屋さんに着くと、
靴を脱いで、雨具を脱いで、部屋に連れて行ってもらいました。
部屋と言っても、ホテルのような部屋を想像してはいけません。
共同のベッドがあるだけです。こんな感じ。



寝床以外には何もありません。
そして僕の領域がここ。



一番左端。横に窓があります。
太い足が僕の足。

この広いベッドに幅30cmほどの枕が隙間なく敷き詰められています。
ここは300人収容できる山小屋なのですが、
つまり300人入ったときはこの30cmの領域しか与えられないわけで・・・
閉所恐怖症の僕としては、耐えられません。
でもこの日の宿泊者は50人くらい。
枕2つ分くらいのスペースをもらいました。

五合目からここまで、休憩を入れて5時間ちょっとかかりました。
山小屋の方と話をしたら、「早い方ですよ」と言われました。
登山前に富士山関係のHPを見ていると、
山小屋の従業員は横柄だと書かれているものが多かったのですが、
この胸突江戸屋さんに関しては全くそんなことありませんでした。
とても丁寧に応対してもらいましたよ。

それからトイレ。
とても臭いという評判でしたが、
臭いなんて全くありませんでした。
非常に快適に過ごすことができました。
今度行くときもお世話になりたいくらいです。

さて登山中のことですが、書いていた通り、
上は雨具を着ていたのですが
雨具の下は穿いていませんでした。ズボンだけ。
でも登山用のズボンは本当によくできています。
雨に濡れても素早く乾きます。
歩いているときは全く不快に感じません。

ですが山小屋に着いて座っていると
さすがにじとじと感じます。
そこで着替え用に持ってきたジャージに穿き替えました。
ただ一応言っておきますと、更衣室なんてないですよ。
その場で着替えるしかありません。
速攻で穿き替えました。

本当は下着も替えたかったのですが、
そこまでの度胸はありませんでした。。
でもブラジャーを干している女性がいましたよ。
外国人の方でしょうか。
その割には小さかったのですが・・・。
でも個人的には、小さい方が好みです。

さてさて、この場でしばらくじっとしていたのですが
ちょっと吐き気がしてきました。なんだか頭痛も。
あれ?高山病??
そう思ったので食べる酸素を。
でもあまり気分はよくありません。

そうしているうちに、夕食の時間が来ました。
夕食は山小屋定番のカレーライスです。
僕は結構早食いの方なのですが
いつもであれば5分もあれば食べきってしまうくらいの量です。
でもあまり食欲がないので、ゆっくりゆっくり、20分くらいかけて食べました。
ゆっくり食べたら体調の方も少し落ち着いてきました。

その後、外の空気を吸いたいなと思って外に出てみました。
すると・・・



あああ、なんと素晴らしい光景。
向こうに見える光がとてもきれいです。
そしてここで初めて気がついたのですが、
そう、もうここは雲の上なんです。
目の前に広がる雲海。
これは絶景です。
これを見られただけでも、ここまで来た甲斐がありました。
明日は絶対晴れる!、そう確信しました。

小屋の中に戻ると、時刻は19時。
山頂でご来光を見る人たちはもうすでに寝ています。
僕はここで見るのでもう少し起きていようと思い、
ココアを頼みました。400円。
それを飲みながら1時間ほどまったりと。
そして20時に床につきました。

ですが、

ここの江戸屋さんは、大きな布団1枚を
3人くらいで分け合って寝るのですが、
自分の右隣が、自分よりちょっと若いくらいの女性でした。
あら。女性と同じ布団に寝るのって、いつ以来でしょう?
・・・たぶん子供のころ母親と寝て以来ですね。

それに僕はいつも右向きに寝るのですが、
この日はちょっと無理でしたね。なのでなかなか寝付けず・・・。
おまけに時刻はまだ20時。
こんな時間じゃ小学生だって寝やしません。

そんな感じでただ横になってボーっとしていたのですが
そのうち時計を見てみると、22時。
いつもだったらまだ仕事をしています。
0時まで寝られなくても仕方ないやと、
周りの人たちのいびきを聞きながら思いました。

しばらくすると、山小屋の方が宿泊者を起こしに来ました。
「ただいま2時10分です。山頂でご来光をご覧になる方は3時半までには出発してください」
結局こんな時間まで寝られませんでした。
そして周りの人たちがガサゴソと行動し始めます。
僕の隣の女性も起きて準備しています。
余計に寝られなくなりました。

でもその人たちが出て行くと、少しゆったり。
隣も空きましたので、のびのび布団が使えます。
ちなみに布団は、ここ最近天気が良くなかったということで
ジメジメしていました。
でもさほど気になりません。
なぜなら、いつも寝ている布団もジメジメしているから。

そしてそれから、ちょっと寝られたようです。
でも20分くらいでしょうか。
時計を見ると4時20分。
もうこんな時間かと思い窓の外を見ると・・・
こ、これは!!!???


そのとき彼が見たものは何だったのか?
そして彼はいまだかつてない光景を目にするのであった。

つづく



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