今日のオレ流建築の歩き方。
前回に引き続き長野県松本市編。同日2008年12月16日夕方のことです。
松本城の北、およそ徒歩10分くらい離れた位置に建つ「旧開智学校」。
松本城天守閣からも良く見えます。
松本城天守閣より
もともとは市内の中心部を流れる女鳥羽川(めとばがわ)沿いに建っていましたが河川改修工事のため、昭和30年代に移築されてきました。
松本城が安土桃山時代を代表する城郭建築なら、こちらは明治時代を代表する学校建築です。
開智学校正面
明治9年竣工。日本は西洋の文化を取り入れて急速に近代化へと突き進んでいた頃。
未来を担う子供達の学び舎としてもっともふさわしい形とは?
開智学校の設計者であり大工棟梁でもあった立石清重、アイデアを探しに東京まで出てます。
立石清重
練りに練って出てきた答えは、洋風と和風を混ぜた擬洋風建築。
正面
縦長の窓に観音開きの雨戸、角の隅石、そして一階と二階の間の水平線「コーニス」。
外観説明
一見すると欧州生まれのルネサンス様式ですが、でも所々に日本様式が入っています。
玄関上の唐破風、漆喰塗りの外壁、桟瓦葺きの屋根。
これらは日本の伝統様式です。
外観説明
「ざんぎり頭を叩いてみれば、文明開化の音がする。」と言われた時代。
ここ松本にも響いてきた文明開化の音。
でも西洋一色に染まるのではなく、日本の文化の音色も程よく取り入れているところに棟梁 立石清重のこだわりが感じられます。
中に入ると白い壁に白い天井。まっすぐ伸びた廊下は無機質過ぎて学校という感じがしません。なんだか病院といったほうが合うような気がします。
校内廊下
校舎の中央付近にまわり階段がありますが、現在の建築基準法では認められそうもないかなりの急勾配。上から見下ろすと崖のようです。
上り下りしてみたかったのですが通行禁止との事。
まあ、危ないですからね。
回り階段一階から 回り階段二階から
中のデザインもまた和と洋の共演。悪く言うと継ぎはぎのような気もしますが・・・。
洋風を特に意識させるのは照明器具のデザインと二階の講堂にはまる小さなステンドグラスです。
天井の照明(一階)
二階講堂
かなり唐突にでてきますが、扉の竜の透かし彫りは芸術品の如く立派です。
和を意識してのことでしょうか。
扉の龍の透かし彫り
開智学校は当時としては最先端のデザインでありながら、環境に対しても易しいエコ建築でもあります。
というのも使っている材料はリサイクル品。
柱は廃寺となった近くの寺院のケヤキの古材を転用しています。
古材利用の説明書きです
「地球環境を守りたい」。
現在のようなスローガンがあったかどうかはわかりませんが、この学校の工事費の約7割は松本市民の寄付により賄われたもの。
無駄にはできないといった必然性から、今につながるエコ建築の先走りとなったのかもしれませんね。
この後、松本城入口前のそば屋で、今日二回目のそばを食べて帰りました。
そばは信州にかぎる!?