木村長人(きむらながと)。皆さんとつくる地域の政治。

1964年(昭和39年)千葉生まれ。元江戸川区議(4期)。無所属。

高齢者の生きがい事業/彩(いろどり)事業(徳島県上勝町) その3

2011-09-06 00:11:40 | 地方自治
 上勝町の葉っぱビジネスが全国に知られるようになったのは平成17年ごろからだそうです。無論、同事業がメディアによって放映されたのと時期を同じくしています。今では、上勝町の彩事業のビジネスモデルはあまりに有名となりましたから、ノウハウ自体は誰でも語ることができそうです。

 そのようにノウハウを知られながらもなお、上勝町がシェア8割を誇っているというのは凄いことではないでしょうか。しかし、実際には、他のまちが同様の取り組みをしようと試みても、おそらくなかなか追いつくことはできないのではないか思われます。

 と言いますのも、この彩事業は口で語るほど簡単ではなさそうだからです。多年にわたる経験とヒトとモノの投資、また農家、農協、株式会社いろどりの三位一体の協力関係が機能してきたことが大きな成功の秘訣ではないかと思われるのです。どこのまちで適用しても同様に成功し、機能するビジネスモデルだとは言いきれないのではないでしょうか。

 他のまちが同様の希望を抱いて、高齢者の生きがい事業や地域の産業振興を追及したとしても、結果が表に現れるまでには、例えば、木々が商品に値する葉っぱを収穫できるようになるまでの年月、全国販売ルートの開拓営業などに要する時間など、いずれにしても長い年月が必要となります。またその長い年月の間に幾多の労力を費やし、手間を積み重ねていかなければなりません。

 上勝町の場合、昭和61年の事業スタートから実に26年の歳月を経ているのです。その成功が広く知られるようになるまでにも、こつこつと20年の努力が積み上げられてきたわけです。

 また、木を栽培する人(農家)、販売ルートを営業したり、システムを開発する人(横石氏)に相当する人的資源がそろっているという前提条件ももちろん必要です。

 「あっ、うちの近所にもつま物になりそうな葉っぱがある」といって、きれいな葉っぱを少々集めてきても、今日明日でつま物市場に参入できるというものではないでしょう。

 二匹目のドジョウはそう簡単に収穫できるものではありません。やはり、上勝町の取り組みに刺激は受けつつも、同じことをまねるのではなく、異なるニッチを見出すことが必要なのだと思います。



 最後に、受注システムについてクローズアップしてみたいと思います。

 先ほど、株式会社いろどりが「市場が求めるその日の葉っぱ各種の注文品数を集約し、農家にファックスやオンラインで流します。」と記しました。ファックスでの受注はまだ紙媒体によるアナログメディアによるものですので、高齢者にとっての敷居はあまり高くないと思われます。

 ですが、オンラインによる受注は、高齢者がパソコンを自宅で操作する必要があります。当初、このオンラインによる受注には農家の抵抗が激しかったといいます。しかし、その際には、高齢者が簡単に操作できるシンプルなキーボードとマウス代わりのトラックボールを導入することで工夫をこらし、オンライン受注システムを普及させたといいます(今では光ファイバー網!)。

 それが、なんと今では、まだ試験的導入段階とはいうものの、タブレット端末(注)による受注システムの導入まで図っているといいます。彩事業ではアンドロイド端末を利用しているそうです。自宅での操作が基本となるパソコンとは異なり、収穫作業の現場での操作が可能となり、このシステムの普及導入が事業にどのような新たな変化をもたらすのか、今後、気になるところです。



 昭和56年の大寒波でまちの産業たるミカンを失い、どん底まで落ち込んでいた上勝町が、今では押しも押されもせぬ活気あるまちとなって復活したわけです。彩事業をきっかけに、まちに戻ってくる若者もいれば(Uターン)、また、新たに都会育ちの若者が上勝町に憧れ、Iターンしてくる現象まで出ているといいます。株式会社いろどりの社員はそうした若者たちで占められているそうです。

 彩事業のみならず、他にも、上勝町では、2020年までにゴミをゼロにする取り組み「ゼロ・ウェイスト」やバイオマス事業なども実行されています。今回の視察ではそれらを見聞する機会がありませんでしたので、ここでは割愛いたします。しかし、今回の視察を通して、上勝町が、彩事業のみならず、まち全体として工夫と努力と、そして魅力に溢れるまちであることを十分に感じ取ることができました。


(注)iPadに代表される端末で、画面を指タッチで操作する端末。アンドロイド端末やウィンドウズ端末などもある。




江戸川区議会議員 木村ながと
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