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金沢ミステリ倶楽部

金沢ミステリ倶楽部の公式ブログ。

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『乱れからくり』

2015年11月25日 00時00分00秒 | ミステリin金沢
『乱れからくり』 泡坂妻夫 幻影城 1977
 海外旅行に行く直前、降ってきた隕石で社長は死亡する。
 その後社長の家族に起こる連続殺人事件。
 からくりづくしの本格ミステリ。 

「真棹(まさお)さん、逆立(さかだち)人形という名を聞いたことがありませんか?」
 「逆立人形――ありますわ」(略)
 「大野(おおの)弁吉(べんきち)――。からくり師なんですか?」
 舞子が興味深そうに聞いた。
 「というよりも、もっと広範(こうはん)な学問を身に付けた科学技術者でしょうね。(略)
 大野弁吉は金沢の人で、若くして長崎で蘭学(らんがく)を学んだことがあります。金沢の平賀源内とも言われて、四条流(しじょうりゅう)の絵や彫刻(ちょうこく)をよくし、木彫(きぼり)や竹細工、金細工(きんざいく)、焼物からガラス工芸、蒔絵(まきえ)などの作品が残っています。学識(がくしき)は医学、理化学を始め、薬学、天文、暦学(れきがく)、航海術(こうかいじゅつ)にも長(ちょう)じていたというんです」
(p198~199)




 金石の大野弁吉が出て来て、11章「斬れずの馬」では金石の大野弁吉記念館が舞台となり、銭屋五兵衛と大野弁吉について書かれます。
 ただ金沢には実際には「大野弁吉記念館」はありません。
 その代り「石川県金沢港大野からくり記念館」があります。
 そこではお茶運び人形のからくりを観られたり、エレキテルを体験できたりします。他にもからくりづくしで楽しめます。

『乱れからくり』は「おすすめミステリ」でも紹介しました。
http://red.ap.teacup.com/lovelib/26.html

『金沢W坂の殺人』

2015年11月24日 06時51分00秒 | ミステリin金沢
『金沢W坂の殺人』 吉村達也 光文社  1993
 現場はかの文豪・室生犀星が愛したW坂。
文字どおりW字形に折れ曲がった坂道で、深夜、4人の屈強な大学生が、同時刻、同一犯人により、別々の方法で殺された…。

 「(略)きみも」
 「W坂はここに描いた絵のとおり、ジグザグになった四つの直線から構成されている。Wという字が四本の直線からできているようにね」
 田丸は、自分が描いたスケッチを指さした。 
「この四つの部分に分かれるW字型の坂道に、高台(たかだい)のほうから順番に、レスリング部の学生、ボクシング部の学生、空手部の学生、そして陸上部の学生が殺されて倒れていた」
 「………」
 「しかもだ、レスリング部の学生は首を絞めて殺され、ボクシング部の学生は頭を鈍器(どんき)で殴られて死に、空手部の学生は青酸カリを飲まされて中毒死、そして陸上部の学生は頸動脈(けいどうみゃく)を鋭利(えいり)な刃物でスッパリ切られて出血多量により死亡していた」
 「……信じられませんね」
(p15)

 ちなみにW坂については五木寛之さんが『新金沢小景』の中で次のように書いています。

 桜橋のたもとから寺町台(てらまちだい)に通じるジグザグの坂。「W坂」という呼び名は旧制四高(きゅうせいしこう)の生徒たちによってつけられたといわれている。 
 正式な名を「石伐(いしきり)坂」という。
(p160)



凱旋祭

2015年11月23日 00時20分00秒 | ミステリin金沢
先日紹介した『銀杏坂』http://red.ap.teacup.com/lovelib/35.htmlには
「明治のころ、この像のまわりで日本の戦勝(せんしょう)を祝う祭りが行われ…」

という箇所がありますが、それは泉鏡花の「凱旋祭」に書かれています。

 紀元千八百九十五年―月―日の凱旋祭は、小生が覚えたる観世物の中に最も偉なるものに候ひき。先づ巽公園内にござ候記念碑の銅像を以て祭の中心といたし、ここを式場にあて候。
 この銅像は丈一丈六尺と申すことにて、台石は二間に余り候はむ、兀如として喬木の梢に立ちをり候。右手に提げたる百錬鉄の剣は霜を浴び、月に映じて、年紀古れども錆色見えず、仰ぐに日の光も寒く輝き候。
 銅像の頭より八方に綱を曳きて、数千の鬼灯提灯を繋ぎ懸け候が、これをこそ趣向と申せ。一ツ一ツ皆真蒼に彩り候。提灯の表には、眉を描き、鼻を描き、眼を描き、口を描きて、人の顔になぞらへ候。


ここで書かれているのは兼六園の大和武尊の銅像ですが、鳥がよりつかないということで、イグ・ノーベル賞を受賞しています。

11月例会

2015年11月22日 00時16分00秒 | 例会
11月21日に11月例会が開催されました。
近況報告で上がった本やドラマのタイトルを列挙します。
『新車の中の女』『ナイルパーチの女子会』
『バイバイエンジェル』「相棒」
『この作家この10冊』『私は呪われている』
『シンデレラの罠』『市川昆と「犬神家の一族」』
『カールの生誕祭』『ハヤカワ文庫SF総解説2000』『破壊者』「古畑」
『ロシア紅茶の謎』「ぼんくら」
『対訳 コウルリッジ詩集』
『すべてがFになる』『コンビニたそがれ堂』
『46番目の密室』
『荒木飛呂彦の漫画術』『スクリプトドクターの脚本教室』『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』『掟上今日子の忘備録』
飛鳥部勝則の作品、『魔法飛行』『螺旋階段のアリス』『掌の中の小鳥』『沙羅は和子の名を呼ぶ』
『陽気なギャングは三度数えろ』
「電気風呂の怪死事件」『被害者は誰?』『亡霊館の殺人』「幽霊トンネルの怪」『見えないグリーン』「メンタリスト」「CSIサイバー」「進撃の巨人中学校」

近況報告の後でメンバーの短編を読んで合評しました。
次回は『ロートレック荘事件』(筒井康隆)です。

『銀杏坂』

2015年11月21日 00時00分00秒 | ミステリin金沢
『銀杏坂』 松尾由美 光文社 2001
 架空の都市、香坂市を舞台に幽霊や超能力が登場する5つの事件を中年の刑事木崎が解決する連作ミステリ。
 作者は金沢出身で、この作品で金沢市民文学賞を受賞した。 

神話上の人物をかたどった巨大な銅像が建っているちょっとした広場だった。明治のころ、この像のまわりで日本の戦勝(せんしょう)を祝う祭りが行われ、敵兵の生首を模(も)した提灯(ちょうちん)などが飾られる奇怪なものだったという――
いや、あれは事実ではなく、水沼霜月(みずぬましもつき)の小説の中の出来事だったろうか。
(p288)