ヒマジンの独白録(美術、読書、写真、ときには錯覚)

田舎オジサンの書くブログです。様々な分野で目に付いた事柄を書いていこうと思っています。

コロナショック後の近未来。ーその2(コロナショックの特異性)

2020年04月24日 16時51分11秒 | コロナ
これまでの歴史では災害や戦争により社会生活に大きな停滞が生じたことはたびたび起こってきている。戦地になった地域では工業地帯が爆撃を受け生産設備が壊されてモノの生産が出来なくなった。また生産設備に被害が受けないまでも生産に携わる人員が確保できなく、物の生産に支障がきたしたことがあった。
学校で習ったことを思いだしてみよう。
「土地,資本,労働」という言葉がある。これを生産の3要素という。第一の「土地」は言うまでもなく生産工場を置く場所を言う。第二の「資本」とはその土地に建てられた工場の建物や生産設備や原材料の購入に充てられる運営資金である。この資金は事業主が自前で用意することもあるが、それが不足する時には銀行などからの借入資金の場合もある。第三の「労働」とは工場に出勤してそこで働く労働者の事である。
今のコロナショックが大きく影響を与えているのは、第二と第三の分野である。
ここで寄り道をして、「資本」がどのように生まれるかをおさらいしてみる。資本はモノが生産されそれが消費される時、製造原価以上の価値が付与されることにより生まれる。その剰余が積もり積もって原資となったのが資本である。それゆえ、資本は原則的にはモノが消費されないと蓄積されない。「お金が回らないと、経済は停滞する」と言われる所以がここにある。モノの消費が経済の自立的な活動では期待できない時、政府は荒療治をすることがある。歴史を振り返れば、世界大恐慌の時にアメリカ政府により採用された1930年代の「ニューディール政策 」があった。これは冷え込んだ消費の拡大を図る為に、政府が「公共投資」に大金をつぎ込み、経済の立て直しを図った政策であった。この政策が一応の成功を納め、その後アメリカは第二次世界大戦の勝利と相まって世界一の経済大国となっていった。

さて、話を今のコロナショックに戻そう。コロナショックはインバウンド消費の全滅や、国内経済での日用品を除いた消費の停滞を招いている。この消費の停滞の原因は政府による「外出自粛」もあるが、さらに悪い事には生産現場でのサプライチェーンの断絶と労働者が生産現場に出勤できない事がある。
労働力を持たない「労働者」を別の名では「失業者」という。失業者は旺盛な消費活動をしないので、この悪循環はますます消費の低迷を招く。モノが消費されない事は商品経済にとっては死活問題である。
今のコロナショックは戦争や大災害での経済活動の停滞とは、根本的に違った様相を呈している。戦争では工場が破壊されたり、労働者は戦場にかり出され、資本は兵器の製造以外の分野につぎ込まれることはなかった。それ故一般品の生産と消費は不可能だったのである。
コロナウイルスは生産の3要素の何に影響を与えているかを考えてみよう。土地に影響を与えているだろうか。資本にはどんな影響を与えているだろうか。コロナウイルスは土地や資本を直接には攻撃していない。コロナウイルスが標的とするのは労働者や消費者という人間である。
土地と資本が残っていても労働が無ければ経済活動は行えない。
人はいるのに「労働者」がいない。人はいるのに「消費者」はいない。このような特異な現象が、いま世界で起こりつつあると言える。






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