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フィンランドの教育 教育講演会より

2008年03月17日 | 育児
佐藤隆 都留文科大学教授 シンポジウムの傍聴報告。

1、フィンランドに日本の探し物がない
フィンランドには、教育に関して日本人が調べたいもの探すものも何もない。ことさら取り上げるものがないが日本人の世界観・教育観を問い直す契機となるといい。問われているのは、今までの競争文化や学校体制が問われている。いじめや学力低下の問題を教師力で解決しようとするのは、おかしい。
2、PISAのテスト趣旨
PISAのテストに関して言えば、学力を問うテストではなかったにも関わらず、マスコミが学力テストに見えるような一部分を取り出して、全体的に学力低下があったかのような表現をし、日本全体がそれにのっている。PISAのテストの趣旨はもっと異なるところ、学習への興味や関心・学習の意義・学校の意義・自分の未来など広範なテストであったが、矮小化された。

3、PISAのテストの中での日本の生徒の傾向
選択の中から選ぶ問題でなく、自由記述のテストにおいては、あきらめる・やろうとしないというものであった。特に、数学への意識は、やる意志も意義もないと感じる生徒が多いのも日本の子供たちの傾向であった。

4、PISAのテストの中での日本の子供の学習の意識
日本の子供の学習の意識は、出来るけれど意味が理解できない、苦役としての勉強、その時だけはわかるというもの。そのような意識を育てた指導する側の学力観が問われている。PISAは、知識や技能を実際の生活においてどのように生かすことが出来るのかを今回のテスト項目とした。

5、フィンランドの教育行政
フィンランドの教育の特徴は、病院や歯科まで学校内部にある徹底した無償制と平等性である。また、地方分権が徹底され授業の組み立て方や教科書の選定など教育に関する大部分を現場の裁量に任せている。問題が起きた場所で問題を解決する仕組みがとられている。教育委員会はその解決を支援する立場。学校は、午前8時~2時という驚くべき短さである。義務教育における留年も可能であり、留年した人は、いっぱい勉強したという評価の対象。一クラスは20名以下。

6、フィンランドの大人と子供
フィンランドは、世界一汚職の少ない国。ジェネレーションギャップはあるが、大人たちの生き方も悪くないと思い故郷に戻り住む人がいる。小中学生の学び方は、人から学ぶ、人の生き方から学ぶというものである。読み聞かせは、父親の役割。つつましく静かな生き方を継承している。

7、フィンランドに特別な教育なし
小中学校はドリルや百マス計算など特別な訓練なし。母国語を中心とした総合学習が全ての教科を覆っている。ゆったりと語り合う中で物語を読み成熟させていくことを極めて大切にしている。

8、読書
家庭は、勉強することではなく本を読むことを大切と考えている。図書館が沢山あり読み聞かせの環境も整っている。小学生の低学年に本を好きにするのが学校や家庭の仕事。子供は、夏休みに自分の読んだ本についての話をするのが楽しみ。

9、競争原理
 取材ビデオの中での高校生は、「一人ひとり違うから競争しても意味がない、勉強で競争という意味は、以前の自分と比べて成長しているのかしていないか」と話す。親から『一番』というような期待は託されていない。

10、Voiceの中の大前研一の見たフィンランド。
90年代、日本の白物家電との競争に敗れたフィンランドは、ITに官民のエネルギーを注ぎノキアで成功。ノキアの売り上げの99パーセントは海外、自国は1パーセント。日本と反対である。公用語はフィンランド語とスェーデン語だが、小学校から英語を教えている。ノキアは、国際社会で伍して仕事が出来る人のみ採用とある。

最後に
「この世に誕生した子供を余すことなく幸せしてあげよう」という誠実な思いが、憲法における教育の無償制と平等性につながっているのだろう。
ノキアという世界で最大の携帯会社を持ちながら、昔ながらの地域社会の文化を継承しているのは、地域を捨てながら一極集中的に発展する日本と対象的と感じる。
今回のフィンランドの教育に関する講演会での特徴的なことは、この国の老若男女全体を覆う読書への伝統と競争原理の意識されない平等と無償で貫かれる学校教育の二つである。
日本の教育行政は、文科省・教育委員会・教員の三位一体化した保守的体質の中で変化できない残念な状況。しかし、明治維新と戦後を見ればわかるように、日本はコペルニクス転回の特異な国。大胆な教育改革に向けて機は熟している。
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