切れ切れ爺さんの徒然撮影&日記

主に寺院や神社等を中心に、文化財の撮影と紹介。
時に世の中の不条理への思いを発言していく。

独居癌爺さんのつぶやき・・・・エーリヒ・フロム      2022.4.15

2022-04-16 00:06:48 | つぶやき


 今朝まで雨が降っており日中はずっと曇りの状態。昼間も外は薄暗く何か気分が滅入るような感じになる。もちろんこんな日はカメラ持って、お寺などの撮影に行くことはできず、昼頃に車で出てコンビニでいつものおむすび一個と缶コーヒー一本を買い、車内で食べる。たったこれだけが私の今現在の昼食の実態だ。どこかの牛丼店やラーメン店に入って食べるということは長い間していない。理由は簡単で、普通のどこの店でも単品で頼んでも、結局は自分自身の胃が約1/3切り取られており、出されたものを完食出来ないからだ。従っていつのまにか、おむすび一個という昼食になってしまった。考えてみれば実に惨めなものだ。

 今日はこのような昼食をセブンイレブンで終えて、山科の醍醐にある大規模ショッピングセンターに行ってきた。目的はここにある大垣書店だ。全国的なチェーンの書店ではあるが、結構幅広く揃っている。
 書店内に入って大体回るコースが決まっている。他の書店では置かれていない「軍事研究」と言う書物に目を通す。気になる表題があれば少し立ち読み。現役の自衛隊幹部や防衛省の関係者が対談や執筆している部分もある。日本の現状の軍事分析の状況が少し分かる。
 続いて歴史書のコーナーに行く。この間しばらくの間は主として、古代史あるいは縄文時代の本を見たりしていて、興味の向いたものは購入していた。今日は「日本の仏像」という書物が目につき、内容をパラパラと見ているとかなり興味深い解説などがあって、どうしようかと考えながら先に他のコーナーへ行ってみる。
 今、ロシアによるウクライナ侵略戦争が行われていて、それを直接扱った書物がないか見てみるが、さすがに2月下旬に始まった戦争なので今のところ、新刊というものはないようだ。ただ旧著のプーチン氏やロシアに関わる書物がある程度並べられていた。片っ端から目次と気になる項目のところを選んでみてみる。その中で一冊選ぶ。「ロシアの軍事戦略」という書物だ。出版されてからまだ比較的新しい書物であり、第二次世界対戦後の一定の時期から最近に至るまでの、ロシアの戦略がどのようなものであるのか、時系列的にまた分析的に書かれているようだ。購入することにした。

 この本を持ってすぐ横の新刊コーナーのところに行ってみると、文庫本や新書本、一部ハードカバーの書籍が平積みで並んでいる。その中に思わぬものを見つけた。「エーリヒ・フロム」という著者の名前だ。本の題名は聞いたことなかったので忘れてしまったが、とにかくエーリヒ・フロムという名前にずいぶん久しぶりに出会えたのに、ある意味懐かしさを覚えた。

 記憶は一気に約50年前にさかのぼる。当時高校3年生だった私の高校時代は、それこそ暗い3年間といってもいいような状態で、自分で勝手にニヒリストなんて思っていたものだ。中学時代の友人とは3年間一緒のクラスになることもなく、家庭がまさしく弩貧乏であったことがひとつの劣等感として、自分の心の中にそれが大きく棲み着いており、他中学出身者の同級生とはなかなか話がしづらいような思いを持っていた。したがって学校に行っても、帰るまで一言も口をきかないといった日も結構あったように思う。

 高校3年の時に倫理社会の授業があり、担当の比較的年を召した先生が夏休みの課題として一枚のプリントを皆に配った。それは100冊以上に及ぶ書名と著者名が一覧表で書かれたものであり、先生は「このリストの中から2冊の本を選び、その感想文を書いてきなさい。」と言われた。
 高校3年の夏休みといえば、そこそこの進学校であった私の通う学校では、大半の生徒が受験勉強に本腰を入れる時期であったはずだ。たぶん多くの生徒はそんな時に2冊も本読んで感想文とはどういうことだ、という気持ちがあったんではないかと思う。しかし私は大学受験などというものは全く頭になく、かといってどこかに就職するのかという思いも何もなかった。否定的な意味で無関心であったということだ。そういうことで受験勉強などというものは全く何もしていなかった。
 その分時間があったのかもしれない。学校近くの書店でリストの中から本を選ぶということだが、何を選んでいいのかさっぱり分からない。つまり我が家には文学なり歴史書なり、中学生や高校生が読める本というものが、教科書以外には存在しなかったのだ。とにかく貧乏だったのでそういう本が買えない。いやそれ以前にそのような本を読むと言うこと自体が考えられない状況だった。

 そんなところに授業で出てきた一部の書物名はあったものの、大半が聞いたこともないような書物であったし、著者名でもあった。しかしとにかく2冊選ばなければならない。書店で対比させながら探してみたが、時間がかかるばかりで選べず、一冊は短時間で読めそうな薄い本。もう一冊は少し本格的な本と言うわけのわからない選び方で購入するようにした。
 その結果選んだのが、一冊目が親鸞の「歎異抄」もう一冊がエーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」だった。


 
 歎異抄は確かにページ数が少なく、比較的短時間で読めたが何分にも鎌倉時代の親鸞聖人が著したものであり、一応現代語訳ではあったもののもう一つ内容がピンとこない面があった。しかし読んでいくと「善人なおもって往生す、いわんや悪人においてをや」と言うあまりにも有名な一説があり、所謂悪人正機説のことだが、これが妙に心に残ったのを覚えている。実際に感想文には何をどのように書いたのかは全く覚えていない。感想文の原稿用紙の枚数もだいぶ少なかったように思う。しかしこの時に歎異抄を選んだことそのものが、後に一部ではあるものの、仏教学を勉強することに繋がっていたのかもしれない。

 エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」ははっきり言って自分なりに読みやすいように思った記憶がある。そこそこ分厚い書物だったが、一気に読んでしまった。全部を通して読んだのは一回だけ。後は部分的に二度読み三度読みしたところはあるが、なぜかわりと頭に入ってきたのか覚えている。
 そして感想文もなぜだかわからないが、スラスラと書けた。結局原稿用紙約30枚分にもなってかなり枚数オーバーになってしまったが、そのまま提出した。
 なぜこんなにスラスラ読めたのか。それまでにこのような本格的な書物を読んだことなど全くなかったのに、自分でも不思議な感覚だった。
 大半の人はすでに小学校の時代に絵本や簡単な物語などを読んでいるだろうし、中学生にもなるとそこそこ有名な文学作品なんかも読んでる人が多いだろうと思う。さらに高校生になると岩波文庫や岩波新書などを中心に、本格的なものを読んでる人もかなり多い。
 高校3年のある日、同級生の家に招かれたことがあった。とんでもない大きな家で彼は自分の個室を持っていた。優に10畳以上はあったと思う。そして驚いたのが彼の書棚にずらりと立派な本が並んでいる光景だった。こんなにも多くの書物を持っており、受験勉強もしながらこういう本も読んでいるのかとびっくりしたのだ。彼は受験勉強なんか全然できてないと言いながら、結局は現役で神戸大学に合格していった。
 貧乏家庭の私は羨ましいとか自分も読んでみたいなどという感覚も全くなく、ただただ唖然としていたのを覚えている。

 9月に宿題を提出してしばらくした頃、倫理社会の授業で先生が読書感想文の採点を終えてそれを教室に持ち込んで来られた。一人ずつ返していくが私の場合歎異抄の感想文だけが返されて、「自由からの逃走」の感想文が戻ってこない。すると返し終わった先生は私の名前を呼んで前に出るように言われた。
 あなたの感想文はなかなか素晴らしいのでみんなの前で読んでもらいます、と言う。まさかと思って正直気持ちが焦った。どこがどのように素晴らしかったのかはわからない。しかし発表するように言われて半分仕方なく教壇に上がって、長い感想文を淡々と読んで行った。クラスの同級生たちがどのように思っていたのかは全くわからない。そんなものを見る余裕なんて全くない。読み終えて席に戻ると、先生がこの感想文の何がどのように良いのかという説明をされたが、そのことは全く今や覚えていない。しかし褒められたことそのものは事実だ。私が高校の3年間で褒められたのはこの件と、もう一件は美術の授業で描いている最中の私の絵を見て、先生がこれは面白い、と言われたこの2件だけだ。

 歎異抄を読んだことが、後に大学で仏教学の一端を学ぶことになった。それと同じくエーリヒ・フロムを読んだことが大学で哲学を専攻することになった。自分で意識したわけではないが、やはりそういったものに自分なりに惹かれるものがあったんだろうと今となっては思う。
 ちなみに大学ではやはり親鸞を少し勉強したが、歎異抄と違って一般的な仏教学入門の内容そのものが案外難しくて、相当構えないと勉強にはならないと感じたものだ。そこから仏教と言う1ジャンルに止めるのではなく、もっと幅広い意味で哲学全般の中から、自分が追い求めたい内容を探し出して勉強の対象にする方が良いのではということになって、結局は広い意味での論理学を勉強するような方向になっていった。エーリヒ・フロムについては再び読むこともなかった。

 尚、エーリヒフロムの「自由からの逃走」の内容は、今現在の覇権主義国家ロシア及び独裁者プーチン氏、そして大半がそれを支持しているロシア国民の社会集団のあり方をそのまま見事に表しているように思えてならない。エーリヒ・フロム、1941年の著作だ。

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