歩くことは難しい

　或る病院の整形外科でリハビリのお仕事をされているＪさんは時々忘れたころに来院されます。リハビリの仕事も当院での施術と重なるところがあるので、施術後に少しお話することがあります。

　先日は、病院で腰の手術をして痛みが無くなったのに手術前と同じように足を引きずって歩く患者さんが多いのは何故か？というちょっと深い話をしてしまいました。

　人は長年の癖というのがなかなか抜けないものです。恐らく手術前に長年、足を引きずるようにして歩いていた方は、その歩き方が小脳にインプットされ、腰や足の痛みが無くなっても以前と同じような歩き方になってしまうのでしょう。

　以前にアレクサンダーテクニックの本で似たようなテーマを扱っていたのを思い出しました。少女が腰の手術をし、医師は良くなったと言うのだが、少女自身は以前よりも歩けなくなったと感じ、アレクサンダー先生の指導の下、歩く練習をしたところ改善したという内容だったと思います。

　その時、面白かったのが少女に自分で歩く練習をさせず、必ず先生の指導のもとで歩く練習をさせたことです。先生の軽い補助があると非常に調子よく歩けるので少女は嬉しくなって先生の指導の後、こっそり自分で歩く練習をする。そうすると以前の悪い癖で歩くので、また元に戻ってしまいガッカリしてしまう。

　そこで少女は先生に言われた通り、先生の指導の元でしか歩かないようにした。それで少女は自分の癖でなく、正しい歩き方を習得できた。メデタシめでたしという内容だったと思います。

　病院でのリハビリでも同じようなことが出来れば良いのでしょうが、ちょっと難しいかもしれません。リハビリではありませんが、私も武術の稽古で歩く稽古をしています。こちらも超難しいです。本当に正しく歩くことは難しいですね。

　　　　杉並区西荻窪の整体・木村均整院