伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ168

2020-12-08 16:56:37 | ジャコシカ・・・小説

 居間で無垢の楢(なら)材で作られた、大型の座卓の前で茶を淹れながら、その後の暮らし振りのことを

 

楽し気に話す。

 

 昔風の広い空部屋のふす間の仕切りを払って、週に2回は手芸教室を開き、一日は先生を招いて

 

の書道教室、二日は油絵を描いている。

 

 

 その他にも茶道の教室にも通っているというから、とても孤独で寂しい生活とは思えない。

 

 「あやちゃんが来たら楽しくなるね。もちろん私に付き合わなくてもいいけれど、傍にいて一緒

 

に暮らしてくれるだけで、私は何倍も楽しくなる。

 

 貴方は貴方で、ここで遣りたいことを遣ればいいのよ。若いんだからどんどんやればいいのよ。

 

貴方はそういう女なんだから」

 

 彼女は何の気負いもなく、さらりと言う。

 

 それがあやの心を落ち着かせた。

 

 何だか優美と会うことが楽になった。

 

 少なくとも拘りは持たずに話せそうだ。

 

 

 永い冬の明けた札幌の街は、どこも陽の光が溢れている。

 

 街路樹の柔らかな緑は溶け出して、街中に滲んでいく。大通公園の欅(けやき)と楡(にれ)は一際盛大にビルの

 

連なる辺りを染め上げる。

 

 足下の花々も負けじと、色とりどりに波立つように広がっていく。

 

 あやは忘れかけていた記憶の中を泳ぎながら、優美との待ち合わせの場所に向かった。

 

 大通公園に面した、今風のホテルのロビーは、ここが北海道の中心都市であると同時に、一大観

 

光地であることを、気付かせてくれる造りだ。

 


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