伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ124

2019-10-02 15:56:35 | ジャコシカ・・・小説

 野良猫みたいな男だから、気が変わったらふらっと、またどこかに出て行くはずだ。

 

 今のところはおとなしく、わしの仕事を手伝ってくれている。

 

 めし付き家(やさ)付き給料ナシで、お互い満足している。名前は岸元高志、ワルではない。

 

 見掛けとは違い学もあるし紳士だ」

 

 「ユニークな人なのね、小父さんの紹介の仕方のせいかも知れないけれど。でも見掛けだって素

 

敵な人に見えます。とても野良猫には見えません。

 

 私のことはもう聞いているかも知れませんが、この家の娘で影山あやです」

 

 あやは動じぬ視線を高志に投げた。

 

 彼女のその言葉で3人はようやく、玄関口の立ち話しを切り上げて部屋の中に入った。

 

 あやの足は三和土で佇み、居間で正座をし、流し場で井戸ポンプを漕ぎ、それからそっと襖を開

 

けて次の間に入り、最後の奥の間に辿り着くまでに10分以上を要した。

 

 その間、鉄さんはストーブに火を入れ、高志は茶を入れる支度を整えた。

 

 ようやく彼女が戻った時には、既に湯は沸き茶は淹れられていた。

 

 卓袱台に着いた彼女は沈黙のまま茶をすすり、深く息を吐きようように、口を開いた。

 

 「カレンダーはあの日のままだったのね。

 

 何も変わっていない。時間が止まっていたみたい。私はずっとここにいたんだわ。

 

 ねぇ鉄小父さん、私暫くここにいていいかしら」

 

 鉄五郎はさして驚いた顔も見せずに言った。

 

 

 「もちろん、いいに決まっているさ。ここはあやの家だ。わしは留守番をしているだけだから、

 

気の済むまでいたらいい」

 


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