伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ110

2019-04-10 12:10:32 | ジャコシカ・・・小説
最後の方は大声になり、言い終わるとさらに大きな声で笑った。

高志も笑った。笑いながらさすがに小畑さんのアンテナは優秀で鋭いと舌を巻いた。

 今の話しは是非美奈子に話してみたいと思った。


通りにはところどころに、汚れた雪山が見られるだけになった。

 街路樹の新芽が綻び始めたと思ったら、その後は息もつかせぬ勢いで、新緑が霞のように拡がり

始める。

 高志は落ち着かなかった。

 春の訪れにわくわくと胸が躍りだすに連れ、背後からせき立てる声が聞こえ始めた。

 日毎にその声は大きくなっていく。

 目的がある訳でもないのに、これから向かう先の何処かが、早く来いと呼んでいる。

 次第にその声に不安と焦燥感が絡み始める。


 仕舞いには唯もうやみくもに、ここにいては駄目だと思い始める。

 ようやく長い冬が終わり、辛い雪かきからも解放され、街は美しく新緑の息吹きに満ち始めた。

 職場にも慣れ、仕事にも何の不満もない。その上美奈子は優しく、この上もなく魅力的だ。

 一体何の不足があって去らねばならないのか、まるで分からない。

 しかも行く先には宛もなく、知り会う人もない。

 今では美奈子がいない生活など余りに非現実的だ。彼女なしで唯一人、見知らぬ土地に流れて行

く意味などない。

 一番大切なものを置いて、一体何を求めているのか、いくら自問を繰り返しても、高志には答え

が分からない。

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