伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ43

2018-05-25 08:00:37 | ジャコシカ・・・小説
 言われて千恵は三平皿を手に、ストーブの傍に移動した。

 ほどなく清子も戻り、テーブルに着いた。

 妹のトックリのセーターに対して、こちらは白のカッターシャッの上から、レンガ色のVネック

セーターと、長めの紺のフレアスカートだ。

 若い娘が二人加わると、やはり座は急に華やぎ総勢7人の部屋は、一杯の賑わいに満たされた。

 食が進み盃が重ねられると、会話はとりどりに往き交い活気付く。この家の食卓は主人夫婦の人

柄のせいか、陽気で賑やかだ。

 中でも千恵の声が一段と弾んで、笑顔もしきりと弾ける。

 早目に始まった今日の夕餉で、猛の焼酎のピッチは常より早い。

 「いつもながら前浜の魚は、どれも最高だ。特に今のこの寒い時季がいい。鉄さん手がいる時は

いつでも声をかけてくれ。熊みたいに冬眠は無しだよ」

 「そのつもりだけれど、冬は年中しける。今年は峠から若い助人も来てくれたことだから、いつ

もよりはちよっとはやれると思う」

 「酷使したら逃亡すると思います」

 千恵が上目使いに、高志を見て言った。

 「それは大丈夫だ。冬のあそこは流人の島みたいなものだから、脱走は無理だ」

 猛さんは楽しそうに声を上げる。

 「でも峠の旅人はどこへだって歩いて行っちゃうと思います」

 千恵のその言葉で、皆の眼が一斉に高志に集まった。

 一瞬の沈黙の後で猛が唸りながら言った。
  
 「それはあり得るなあ」

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