最近まったく更新できていないのには3つ理由がある。
①大学の課題が重なって忙しすぎる
②授業の課題で指定された論文をたくさん読まなければならず、生物ネタになる面白い論文を読むことができない
③最近政治で話題になっている増税・TPP・普天間基地などはスケールが大きすぎて、この場で語れるほど自分の持つ知識が少ないし、以前のようにいろいろ調べている暇もない(ちょっとだけTPPについて言うと、かつてのイギリスの食料自給率改善政策が一つのモデルになるのではないか。広い農地に乏しい点など、日本と状況が似ている気がする)
というわけで残るは映画くらいしかない。ところが、最近レビューを書くよう頼まれた「中国超人インフラマン」(1975)―あの最低映画祭上映作の1本―は論評するのが至難の業で、何をどう書こうか悩んでいる間にこんなに日が経ってしまった。
(以下、ネタバレを含みます)
中国の科学研究所の前に突如、震度12の地震とともに現れたドラゴン形の岩山。氷河魔王女が世界征服を狙っているのだ。そして研究所も氷河魔王所が送り込んだ怪物に攻撃される。研究所のリュウ所長は、戦闘員の一人レイ・マ(ダニー・リー)に手術を施し、中国超人インフラマンとして反撃させる。インフラマンとなったレイ・マは次々と現れる敵たちと戦い、ついに氷河魔王女のアジトに潜入する。
知る人ぞ知る、中国の特撮ヒーロー映画である。セットの雰囲気などは、どう見ても日本のウルトラマンや仮面ライダーから絶大なインスピレーションを受けていると思われるが(笑)、重大な違いが一つある。ずばり、緩急のなさ。日本の特撮では、ヒーローが登場して最初は威勢よく戦うが、そのうちにだんだん敵が強くなり、クライマックスではピンチに陥るのが常。そしてここぞというときに必殺技で打ち勝つ、というのがセオリーだ。ところがインフラマンの場合、計5体以上の怪人と勝負するのだが、1人目と戦う時点ですでに必殺技「超人ビーム」(スペシウム光線と同じポーズで赤い極細レーザー光を出す)を使ってしまう。普通なら初戦は八つ裂き後輪のようなサブ必殺技でフィニッシュすべきなのに、全く光線のありがたみがなくなってしまうのである。おかげで、続く敵と戦うときも超人ビーム乱発、ヒーローに必須のカタルシス要素は完全に無と化してしまう。そのうえ、3人目、4人目あたりの中ボス的位置づけにいる敵がかなり弱く、なんのピンチもなく延々となぐり合っているだけ。あのばね男たちは何のために出てきたのか、理解に苦しむ。
もちろん、特撮お楽しみの新たな必殺技も登場する。まずは「超人キック」。いうならばとび蹴りなのだが、恐ろしいことに、ジャンプして伸ばした足から炎が噴出しているように見えながら、体は普通に前方へ進む。謎の推進力。次は所長のいきな計らいで生まれた最強兵器「稲妻パンチ」。要はマジンガーZのロケットパンチだ。物語半ばで紹介しておいて、最後の戦いまでじらすところは合格点。しかしいざ使用した時の映像クオリティの低さがあまりにも肩すかし。そして、所長から何の説明もなかったのに最後の最後で突如使用した「雷電ビーム」。両手を斜めにクロスしてやっぱり赤い極細レーザー光。超人ビームとの差を感じないし強そうにも見えない。というわけで、軒並み技のかっこよさに欠けているのも致命的な欠陥といえる。
そしてもう一つ大きな欠点は、戦闘中に音楽がないこと。なぐり合う体のぶつかり合いとインフラマンのセリフ、多少の効果音意外に音がなく、やけに淡々とバトルが進む。「ダークナイト」のカーチェイスのようなリアルかつ骨太なバトルでは、音楽の排除は緊張感を高める効果があるが、この映画のバトルでは効果が上がるはずもなく…。ただし、レイ・マがインフラマンに変身するシーンではいつも決まった音楽が流れ、若干テンションが上がる。ところがここでも不可解な点があり、変身したインフラマンは毎回バック宙をし、そして1秒にも満たない時間飛ぶ。いや、飛んでいる最中と思われる映像が説明もなしに挿入される、といったほうが正しい。しかも毎度同じ映像の使いまわし。誰がどう見たって、飽きることこの上ない(笑)。そう、説明不足もこの映画を象徴している。先ほど言った雷電ビームもその例に漏れない。確かに、説明が多すぎると「戦国自衛隊1549」のように話の流れが止まってしまうが、全く説明がないと、それはそれで理解できない。その塩梅をうまく調整するのが脚本家というやつなのだが、分かっていない方々も多いようで(笑)。
良い点を挙げるとすれば、さすが中国だけあってカンフーアクションのキレ。主人公のレイ・マ役のダニー・リー、インフラマンのスーツアクターの動きもよいが、もう一人の隊員、シャオロン役のレイ・シューロンのアクションが頭一つ抜けている。彼はあのブルース・リーの後継者として一時期有名になった人らしい。ついでに、ダニー・リーといえば、ジョン・ウーの香港ノワール映画でも相当な人気を誇る「狼 男たちの挽歌・最終章」でチョウ・ユンファを追い詰め、そして共闘する熱血刑事を演じ、伝説のスプラッター映画「八仙飯店之人肉饅頭」では監督兼出演という、なかなかの一流俳優である。そんな彼がデビューから間もないころにこんなマニア映画に出ていたとは。ほかにもキング・コングをリメイクした「北京原人の逆襲」(日本のWho are you?ではなく)にも出演しているらしい。いやいや、中華映画界も奥が深いものだ。
本作で最も驚いたところといえば、序盤の科学研究所内の効果音。あの特徴的な音は…なんと「2001年宇宙の旅」で宇宙船を操縦していた時の音ではないか!完全なパクリ。アレンジのかけらもなくコピペで挿入している。警報のアラームも宇宙船のアラームそのままじゃないか!これは訴えられるだろ。でもこうしてちゃんと出回っている。相手にされなかったか、存在すら知られていなかったか(笑)。
とまあ、いろいろとつまらなくも衝撃的な本作。レンタルショップでDVDをレンタルしたのだが、傷があるらしく初めの数分間が再生に支障をきたしていた。まあ新しいものと交換してくれることもないだろう。オープニングはなかなか衝撃的というか、安っぽいのかかっこいいのかわからない感じで、結構好きだったりするのだが。いや、散漫な展開に飽きる前だから楽しめていただけか。
個人的評価:☆
①大学の課題が重なって忙しすぎる
②授業の課題で指定された論文をたくさん読まなければならず、生物ネタになる面白い論文を読むことができない
③最近政治で話題になっている増税・TPP・普天間基地などはスケールが大きすぎて、この場で語れるほど自分の持つ知識が少ないし、以前のようにいろいろ調べている暇もない(ちょっとだけTPPについて言うと、かつてのイギリスの食料自給率改善政策が一つのモデルになるのではないか。広い農地に乏しい点など、日本と状況が似ている気がする)
というわけで残るは映画くらいしかない。ところが、最近レビューを書くよう頼まれた「中国超人インフラマン」(1975)―あの最低映画祭上映作の1本―は論評するのが至難の業で、何をどう書こうか悩んでいる間にこんなに日が経ってしまった。
(以下、ネタバレを含みます)
中国の科学研究所の前に突如、震度12の地震とともに現れたドラゴン形の岩山。氷河魔王女が世界征服を狙っているのだ。そして研究所も氷河魔王所が送り込んだ怪物に攻撃される。研究所のリュウ所長は、戦闘員の一人レイ・マ(ダニー・リー)に手術を施し、中国超人インフラマンとして反撃させる。インフラマンとなったレイ・マは次々と現れる敵たちと戦い、ついに氷河魔王女のアジトに潜入する。
知る人ぞ知る、中国の特撮ヒーロー映画である。セットの雰囲気などは、どう見ても日本のウルトラマンや仮面ライダーから絶大なインスピレーションを受けていると思われるが(笑)、重大な違いが一つある。ずばり、緩急のなさ。日本の特撮では、ヒーローが登場して最初は威勢よく戦うが、そのうちにだんだん敵が強くなり、クライマックスではピンチに陥るのが常。そしてここぞというときに必殺技で打ち勝つ、というのがセオリーだ。ところがインフラマンの場合、計5体以上の怪人と勝負するのだが、1人目と戦う時点ですでに必殺技「超人ビーム」(スペシウム光線と同じポーズで赤い極細レーザー光を出す)を使ってしまう。普通なら初戦は八つ裂き後輪のようなサブ必殺技でフィニッシュすべきなのに、全く光線のありがたみがなくなってしまうのである。おかげで、続く敵と戦うときも超人ビーム乱発、ヒーローに必須のカタルシス要素は完全に無と化してしまう。そのうえ、3人目、4人目あたりの中ボス的位置づけにいる敵がかなり弱く、なんのピンチもなく延々となぐり合っているだけ。あのばね男たちは何のために出てきたのか、理解に苦しむ。
もちろん、特撮お楽しみの新たな必殺技も登場する。まずは「超人キック」。いうならばとび蹴りなのだが、恐ろしいことに、ジャンプして伸ばした足から炎が噴出しているように見えながら、体は普通に前方へ進む。謎の推進力。次は所長のいきな計らいで生まれた最強兵器「稲妻パンチ」。要はマジンガーZのロケットパンチだ。物語半ばで紹介しておいて、最後の戦いまでじらすところは合格点。しかしいざ使用した時の映像クオリティの低さがあまりにも肩すかし。そして、所長から何の説明もなかったのに最後の最後で突如使用した「雷電ビーム」。両手を斜めにクロスしてやっぱり赤い極細レーザー光。超人ビームとの差を感じないし強そうにも見えない。というわけで、軒並み技のかっこよさに欠けているのも致命的な欠陥といえる。
そしてもう一つ大きな欠点は、戦闘中に音楽がないこと。なぐり合う体のぶつかり合いとインフラマンのセリフ、多少の効果音意外に音がなく、やけに淡々とバトルが進む。「ダークナイト」のカーチェイスのようなリアルかつ骨太なバトルでは、音楽の排除は緊張感を高める効果があるが、この映画のバトルでは効果が上がるはずもなく…。ただし、レイ・マがインフラマンに変身するシーンではいつも決まった音楽が流れ、若干テンションが上がる。ところがここでも不可解な点があり、変身したインフラマンは毎回バック宙をし、そして1秒にも満たない時間飛ぶ。いや、飛んでいる最中と思われる映像が説明もなしに挿入される、といったほうが正しい。しかも毎度同じ映像の使いまわし。誰がどう見たって、飽きることこの上ない(笑)。そう、説明不足もこの映画を象徴している。先ほど言った雷電ビームもその例に漏れない。確かに、説明が多すぎると「戦国自衛隊1549」のように話の流れが止まってしまうが、全く説明がないと、それはそれで理解できない。その塩梅をうまく調整するのが脚本家というやつなのだが、分かっていない方々も多いようで(笑)。
良い点を挙げるとすれば、さすが中国だけあってカンフーアクションのキレ。主人公のレイ・マ役のダニー・リー、インフラマンのスーツアクターの動きもよいが、もう一人の隊員、シャオロン役のレイ・シューロンのアクションが頭一つ抜けている。彼はあのブルース・リーの後継者として一時期有名になった人らしい。ついでに、ダニー・リーといえば、ジョン・ウーの香港ノワール映画でも相当な人気を誇る「狼 男たちの挽歌・最終章」でチョウ・ユンファを追い詰め、そして共闘する熱血刑事を演じ、伝説のスプラッター映画「八仙飯店之人肉饅頭」では監督兼出演という、なかなかの一流俳優である。そんな彼がデビューから間もないころにこんなマニア映画に出ていたとは。ほかにもキング・コングをリメイクした「北京原人の逆襲」(日本のWho are you?ではなく)にも出演しているらしい。いやいや、中華映画界も奥が深いものだ。
本作で最も驚いたところといえば、序盤の科学研究所内の効果音。あの特徴的な音は…なんと「2001年宇宙の旅」で宇宙船を操縦していた時の音ではないか!完全なパクリ。アレンジのかけらもなくコピペで挿入している。警報のアラームも宇宙船のアラームそのままじゃないか!これは訴えられるだろ。でもこうしてちゃんと出回っている。相手にされなかったか、存在すら知られていなかったか(笑)。
とまあ、いろいろとつまらなくも衝撃的な本作。レンタルショップでDVDをレンタルしたのだが、傷があるらしく初めの数分間が再生に支障をきたしていた。まあ新しいものと交換してくれることもないだろう。オープニングはなかなか衝撃的というか、安っぽいのかかっこいいのかわからない感じで、結構好きだったりするのだが。いや、散漫な展開に飽きる前だから楽しめていただけか。
個人的評価:☆