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Tedのつゆ草の旅

母校関西学院ラグビー部とアメリカンフットボール部の試合を中心に書いているブログです。

rugby

2013-12-26 11:06:16 | ブログ

畑中組の集大成を有終の美で飾った。関学ラグビーを展開し続け50―0で勝利。全国の舞台で3年ぶりとなる白星を挙げるも、セカンドステージ通算1勝2敗で敗退となり、日本の頂点への挑戦は幕を閉じた。日本一という目標は後輩たちに託された。

 大学選手権で、3年ぶりとなる勝利を手にした。キックオフ直後からトライを決めるも、追加点獲得に苦しみ2トライで折り返す。気持ちを切り替え臨んだ後半では関学ラグビーを展開。朝日大に得点のチャンスを与えず、50ー0で完封勝利を収めた。
 前半開始直後WTB中井剛(経3)がいきなりトライを決める。だが、その後は追加点を奪い切れない場面が続いた。しかし鍛えたディフェンスで相手を阻止し、10ー0で前半を折り返す。
 後半は、関学の得点力が爆発した。全6トライを奪う活躍を見せ、50ー0で完封。畑中組の集大成を有終の美で飾った。
今シーズンはメンタル面での波が目立った。そこからチャレンジャー精神を持ち、挑むことの大切さを学んだリーグ戦。関西4位で全国の舞台に立った。
 大学選手権では、関東の大学相手にこの1年間重点を置き、取り組んできたブレイクダウンが通用する場面もあり、確かな手応えをつかんだ朱紺の選手たち。日本の頂点への距離は年々確実に縮まっている。
 キャプテンとして畑中(商4)は、「本気で勝つ」という気持ちを持つことの大切さをチームに残した。さらに「努力し続け、最終的に目標を達成してほしい」とメッセージを送った。日本一になるという目標は後輩たちに託され、関学ラグビー部は今新たな一歩を踏み出す。                                


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2013-12-12 00:32:21 | ブログ

大東大との大学選手権初戦。関学は敵陣でプレーを繰り広げ、リードして前半を終える。だが、後半に逆転を許し、24ー45で敗北を喫した。日本一を目指す畑中組にとって厳しい船出となった。


 一度はつかみかけた勝利を惜しくも手中からこぼしてしまった。関東リーグ3位の大東文化との一戦。前半は関学がリードする。しかし後半に大東大の反撃を受け、24―45で敗れた。
 試合開始後から互いに譲らない熱戦が繰り広げられた。関学は大東大のキックオフから、一気に攻め込み同5分に浅井(商3)がトライを決める。直後には得点を奪い返されるも、高陽(経3)が連続でトライ。17ー12とわずかにリードし前半を折り返す。
 リードを守り切りたい関学。しかし、後半は大東大に主導権を握られ5トライを許した。試合終了間際に意地を見せトライラインを超えるも、時すでに遅く試合終了の笛が鳴り響いた。24―45で敗れ黒星発進となった。
 「自分たちのタックルなどのミスで、大東大を勢いに乗らせてしまった」と主将・畑中(商4)は後半の大量失点の一因を挙げた。タックルの甘さから相手ペースの試合展開となった。
 また、「前半の関学の敵陣に入ってプレーするのは良かったが、後半のディフェンスが受け身になったところが敗因だった」と高は語った。
 次戦の相手は同大会4連覇中の帝京大。「課題はディフェンス。相手にどこまで食らい付いていけるかが鍵となる」と高。鍛えたディフェンスで相手を抑え、次戦こそ関学ラグビーを十分に発揮するに違いない。学生王者に日本一のチャレンジャー精神で臨む。                           

                                                     

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2013-11-29 22:33:19 | ブログ

前節の敗北から、気持ちを切り替え迎えたリーグ最終戦。大学選手権への出場が懸った大一番で、関学の地力を発揮した。得点を量産し続け、55―7で勝利。大学選手権への切符を手にし、リーグ戦を戦い抜いた。

 笑顔でリーグ戦を締めくくった。試合開始から関学の得点力が爆発。55―7で今リーグ4つ目となる白星を手にした。
 力強いアタックで相手を仕留め、エリアを着実に広げた関学。フェーズを重ねる試合展開で得点を量産し続けた。前半、WTB金尚(総3)が、同13分に今リーグ初トライを決めると、25分にもトライラインに飛び込み追加点を奪った。相手に得点のチャンスを全く与えず、29―0と大差をつけて前半を折り返す。
 続く後半も攻撃の手を緩めなかった関学。チャンスを生かし切り得点を重ねた。無失点で試合を終えるかと思われたが、同37分に隙を突かれ失点。しかし、計9本のトライを決め、55―7で勝利を収めた。この結果により、関学は大学選手権への切符を手にした。
 「フェーズを重ね、ボールをキープし続けられた。体が大きい相手にも何度もアタックしていくことができ結果につながったと思う」と主将・畑中(商4)は笑顔で試合を振り返った。

<波乱のリーグ戦>
 通算4勝3敗でリーグ戦を終えた畑中組。黒星スタートとなった今シーズン。「チャレンジャーとしての気持ちを失ってしまうと、勝てる試合でも負けてしまう」と野中監督が語ったように、今リーグ戦で勝因を分けたのは、技術的な面以上に精神的な部分での浮き沈みだった。事実、第5節では全勝で首位を守り切っていた立命大から白星を奪い、関学の強さを見せつけた。しかし、その1週間後には、天理大にノートライで敗北を喫した。気持ちの緩みが結果に表れた一戦だった。
 リーグ戦の順位は11月30日に行われる、立命大と天理大との結果次第だが、リーグ5位以上に与えられる大学選手権への切符を手にした関学。昨年は、一勝も挙げることができなかった関東の大学から今年こそは勝利を奪う。
 「日本一になる」ことに焦点を当て、挑み続けてきた畑中組の集大成となるチャレンジが始まる。


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2013-11-27 01:46:54 | ブログ

前節の敗北から、気持ちを切り替え迎えたリーグ最終戦。大学選手権への出場が懸った大一番で、関学の地力を発揮した。得点を量産し続け、55―7で勝利。大学選手権への切符を手にし、リーグ戦を戦い抜いた。

 笑顔でリーグ戦を締めくくった。試合開始から関学の得点力が爆発。55―7で今リーグ4つ目となる白星を手にした。
 力強いアタックで相手を仕留め、エリアを着実に広げた関学。フェーズを重ねる試合展開で得点を量産し続けた。前半、WTB金尚(総3)が、同13分に今リーグ初トライを決めると、25分にもトライラインに飛び込み追加点を奪った。相手に得点のチャンスを全く与えず、29―0と大差をつけて前半を折り返す。
 続く後半も攻撃の手を緩めなかった関学。チャンスを生かし切り得点を重ねた。無失点で試合を終えるかと思われたが、同37分に隙を突かれ失点。しかし、計9本のトライを決め、55―7で勝利を収めた。この結果により、関学は大学選手権への切符を手にした。
 「フェーズを重ね、ボールをキープし続けられた。体が大きい相手にも何度もアタックしていくことができ結果につながったと思う」と主将・畑中(商4)は笑顔で試合を振り返った。

<波乱のリーグ戦>
 通算4勝3敗でリーグ戦を終えた畑中組。黒星スタートとなった今シーズン。「チャレンジャーとしての気持ちを失ってしまうと、勝てる試合でも負けてしまう」と野中監督が語ったように、今リーグ戦で勝因を分けたのは、技術的な面以上に精神的な部分での浮き沈みだった。事実、第5節では全勝で首位を守り切っていた立命大から白星を奪い、関学の強さを見せつけた。しかし、その1週間後には、天理大にノートライで敗北を喫した。気持ちの緩みが結果に表れた一戦だった。
 リーグ戦の順位は11月30日に行われる、立命大と天理大との結果次第だが、リーグ5位以上に与えられる大学選手権への切符を手にした関学。昨年は、一勝も挙げることができなかった関東の大学から今年こそは勝利を奪う。
 「日本一になる」ことに焦点を当て、挑み続けてきた畑中組の集大成となるチャレンジが始まる。 


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2013-11-15 12:03:49 | ブログ

畑中組にとってベストバウトになる予感がした。リーグ戦の首位を走る立命館大を相手に、悠々と試合を進めていく。そこにあった、プレーヤーたちの〝狙い〟の一撃。しかし事態は急転し、思わぬ展開に。その果てに掴んだ重き1勝を振り返る。

 

■観戦記『理想の70分間と混乱の10分間

 


 

 ラグビーは人生の縮図、とはよく言ったものだ。ゴールを目指し、立ちふさがる壁にも果敢に挑んでいく。そこには一人ひとりの執念もあれば、支えあう仲間たちと一丸となることも。また、準備を重ね、イメージを深めて臨んだ本番では、そのビジョンを実現させ、結果を手にする。一方で浮き出た課題には目を逸らすことなく向き合う。

 11月9日、関西大学Aリーグ第5節。ここまで全勝を続ける立命大との一戦は、開始5分での失点で幕を開けた。立ち上がりの悪さを露呈する形となったが、起きてしまった以上は、すぐさまチームは気持ちを切り替える。このゲームで自分たちが意識すべき点は何か、それらを徹底していくべし、と。

 チーム全体としてそれらを実践していくことで、ここから畑中組は試合の流れを掌握する。そのなかでプレーヤーたちも、それぞれに与えられた使命もさりながら、〝狙い〟すましたプレーを見せた。

 開始早々の7点ビハインドも、まずは追いつくことから。前半8分、相手ゴール手前まで攻め込む。生じたラックに人が集まり、その密集から少し離れた位置にいたHO浅井佑輝(商3)にパスが送られる。

 「狙えるかなと」。このシチュエーションを彼は、そう捉えていた。ゴール前での得点チャンス。自身にとっては何としても、ものにしたかった。

 彼が振り返るに、前節の同志社大戦(10月27日)。同じように相手ゴールを目前にした場面で、彼はノックオンを犯してしまい得点機会を逃した。攻めども結果的にトライを奪うことは出来ず、こぼしたボールと同様に、勝ち星を一つこぼしてしまった(12-25)。

 今度こそは、取り切る。目の前にいた相手ディフェンダーをもろともせずに、浅井はインゴールへと飛び込む。文句なしのトライは、反撃の狼煙を上げる一発となった。

 前節のリベンジも含め、浅井はリーグ戦において、反省と修正を行なってきたプレーヤーである。昨シーズンの暮れにAチームに抜擢されてから、レギュラーとして臨んだ3年目。背番号2番を譲ることなく、リーグ戦を迎えたが、開幕戦では苦い思いをした。試合前のアップ時からボールに手がつかず、セットプレーは不安定のまま、ゲームへ。結果、「あんなにミスしたら勝てないです。。。」と敗戦の責を一身に背負った。

 おそらくは公式戦ならではのプレッシャーだったのだろう。それでも試合を重ね、またレギュラーに同学年の選手が多いことも手助けし、その不安材料も次第に解消された。

 立命大戦にあたっては「久しぶりに緊張した」と浅井は話す。この試合、FWの8人全員に3回生を配した。これまでにないメンバー構成は、セットプレーに影響してくる。しかし、その懸念材料も練習の成果が試合本番で発揮できたことで打ち消された。

 1週間前に設けられたトップリーグの神戸製鋼コベルコスティーラーズとの合同練習で、FWはスクラムについて学ぶ機会を得た。そこでは、組む際に相手にまっすぐ当たっていくのではなく、潜るように低く姿勢を取るという、より「相手が嫌がる」組み方を習得。そして、それを立命大戦で実践し、まさに効果を挙げたのである。

 セットプレーから優位に立てたことは、試合の流れを掴めた一因。と同時に、この試合については、一つのキーワードを意識づけして臨んでいた。それは、『敵陣でプレーする』ということ。

 SO平山健太郎(人福4)という、冷静にその右足でエリアマネージメントを図れる存在が頼もしかった。前半23分、相手のペナルティからボールを得ると、平山が敵陣深くまでボールを蹴りこんだ。そこからのラインアウトをFW陣がしっかり成功させると、次はBK陣の出番。流れるようなパスワークを展開し、相手ゴールへと迫る。最後は、前節で今季リーグ戦初トライを挙げたWTB畑中啓吾(商4)がきっちりとフィニッシャーとしての役目をまっとうした。

 目覚めたエースWTBは、このゲームにむけての狙いを、こう明かした。「対策のなかで、立命大の外側、WTBはディフェンスが良くないと。内に寄ったり、ずれたり。それで健太郎(平山)とも話してたんです。『外、いけるで』って」

 敵のウィークポイントを攻略の糸口とするのは勝負の世界では常套たる手段。それを踏まえ、確実にしとめることがBK陣とりわけWTB畑中に与えられた使命だったのだ。そうして前半終了間際には、これと同じような形でさらなる追加点を畑中は奪った。

 ポイントを作ったFW陣から、大外のフィニッシャーまでボールを繋げる過程は、リーグ戦も半ばになり成熟している。前節でのトライ・シーンを、畑中は「内側たちの選手たちが上手かったです」と開口一番に振り返っていた。WTB金尚浩(総3)の逆サイドでの走り込み、CTB水野敏輝(人福3)や鳥飼誠(人福2)のパス、それらを称えた。「ああいう状況になれば、取り切る!」。そう明言したとおりの、続く立命大戦での2トライであった。

 「BKも早めに仕掛けていけば、トライを取れるんで。そこは自信を持って、攻めれたらと思います」

 得点という明確なる結果が、自信をさらに深めていくのだ。

 前半を終え、24-7。開始早々の被弾はあったが、それ以降は関学ペース。優勝候補筆頭と評される立命大との一戦が、このようなスコアになると想像した人はそう多くはいまい。しかし畑中組としては、まさに目論みどおりであった。主将は、対戦チームをこう分析していた。

 「立命大は、一つひとつのプレーがしっかりしている。アタックも特別難しいことをしているわけでもなく、とくにFWも強いわけでも。自分たちにも勝てるだけの絶対的な力はある、勝てる!と思って臨みました」

 あとは残りの40分間も前半で見せたパフォーマンスを継続できば、おのずと白星を掴むことが出来る。

 そのためにも、後半の入り方は重要だった。ホイッスルが鳴ってすぐの、チームが不得手とする時間帯。

 後半も5分を過ぎたあたり、自陣深くまで攻め込まれるが、ゴールを割らせない。やがては相手のオフサイドを誘い、ピンチを脱した。転じて攻撃では、念頭に置いた『敵陣でのプレー』を徹底。フィールドの中盤付近でフリーキックを獲得した場面でも、相手にルール上で一定の距離を後退させるのではなく、あえてスクラムを選択し、引きつけたところから敵陣奥までボールを蹴り込む作戦を取った。

 テーマを着実に具現化していき、後半で先にスコアを動かしたのは朱紺のジャージ。後半21分にSH徳田健太(商2)がゴールポスト下へボールを叩き込む。

 勢いそのままに敵陣でプレーを展開し、その3分後。今度は陣地回復を図る立命大のキックに、猛然と駆け込んだCTB水野がチャージに成功した。はじかれて点々と転がるボールはインゴールへ。水野がボールを押さえ込み、さらなる追加点を挙げた。

 「狙ってました。あそこのワンダッシュだけに集中して。時間的にも、もう1トライ欲しいし、良いプレーして良い流れにしようと。1プレー、頑張りました」

 『敵陣でのプレー』とは、相手に前進させないだけのプレッシャーを与えるということでもある。チャージという捨て身のプレッシャーは、相手の陣地挽回をはね返すばかりか、一転して、そこに絶大なる好機を生む。

 予兆はあった。前節の同志社大戦でも、水野は同じようなシチュエーションで一つ、チャージに成功している。ただ一点だけに狙いをすませる嗅覚を研ぎ澄ませていたのだ。

 その水野も、リーグ開幕戦では表情に影を落としていた。思えば、あのときの京産大戦では相手の前に出るディフェンスに受身になってしまった。展開して人数を余らせても、自分たちのミスで攻撃を手放す、負の連鎖に陥っていた。水野も先制トライこそ挙げたが、局面を打開できぬままに終わった。「相手の思い通りやったかも」と彼は試合後に口にした。

 自分たちがなすべきラグビーが出来なかったことへの悔しさに苛まれた。リスタートを切ったチームで、水野も徐々に調子を取り戻していく。コンディション調整の一環で体重は減らしたが、「当たり負けしない程度」の肉体に。丁寧かつ絶妙なパス回しは熟成するBK陣のなかで輝きを放つようになった。

 立命大戦の前半で見せた畑中の2トライ。「BKでパスを回して、WTBがトライを決める。理想的なプレーだったんで、BKの士気も上がりました」。そうしてユニット全体でムードを押し上げたうえで、個々としても、チャージという一瞬で熱を生じさせるプレーを繰り出したのである。

 組織と個々が、まさに狙い通りのパフォーマンスを発揮する。その結果が、時計の針も30分に差しかかろうとしていた時点での387というスコアであった。

 それは、「29点差を空けよう」と意識していたセーフティゾーンに至るまでのゲーム運びをチームが実現できた瞬間だった。

 試合も残すは10分ほど。リザーブも投入し、最後までフィットネスが途切れることがないようにフレッシュな戦力をピッチに送り出す。

 だが事態は急転する。後半29分に自陣で獲得した関学のアドバンテージ。キックで相手を押し返すが、返した刀、トライを許す。つけられた一つの割れ目が、ここから〝ダムの決壊〟を引き起こす。あふれだした水は、勢いを増し、手をつけられないほどに。あれよあれよと10分間で計3本ものトライを決められるのである(コンバージョンキックも全て成功)。

 「インゴールで話もするんですけど攻められているということに対してパニック状態に。もはや何を言っても響いてなかった」

 突如として訪れた局面を、主将はそう振り返った。セーフティゾーンに到達したことで逆に「気が緩んだ」という。

 点差も把握していたそうだが、それもパニックを助長させたのかもしれない。試合終了が刻々と近づくなかで、ほんの10分前までは31点あったリードは3点差にまで縮んでいた。

 出来ることは、ただ一つ。ひたすらディフェンスに集中することだった。

 ゲームも終盤、けれども立命大はミスを犯すこともなく、継続してボールを運び、陣地を広げてくる。やがてハーフウェイラインも越え、関学陣内へ。よもやの不安と、一方で興奮とが交じり合った空気が会場に蔓延した。

 ロスタイムも優に過ぎ、立命大のボール。だが、敵がどのような手を繰り出してこようとも、朱紺の闘士たちは必死に食い止める。やがて、立命大がペナルティを犯しようやくノーサイドの笛が鳴り響いた。

 安堵の表情を浮かべる、見ている側の面々。それも、すぐさま勝利の喜びに覆われ、選手たちと同様に歓喜の声をあげた。

 最終スコアは38-35。終わってみれば、水野のあのチャージが、貴重という言葉では表しきれない大きな決勝点だった。

 「めちゃくちゃしんどかった。けど、そう思っているヒマもなく。良い経験でした。

 最後の15分間は修正せなアカンとこ。日本一になるチームは、こんな展開にならない、と」(畑中)

 優勝候補の筆頭、リーグ首位の相手を破った一つの金星。そこでは、目論みを実行に移すことが出来た事実から、自分たちのラグビーに対する確信を覚えた。一方で、ほんの少しの油断が引き起こしたパニックの恐怖をまざまざと味わった。

 主将が述べたように、最後の時間帯は教訓と捉えることが出来るだろう。そのうえで、見た者は『最後の時間帯さえ除けば、ベストゲーム』と評するに違いない。

 けれども、実のところ畑中組にとって、必死で猛攻を食い止めたあの時間帯は〝教材〟であり、かつ、一つの〝成果〟でもあった。

 今年の上半期のオープン戦にて、チームは始動してから初の黒星を近畿大に喫した。その試合では後半開始時から一気に3本のトライを許した。勢いづいた相手のテンポに遅れを取り、為すすべなく防御網を破られる。ベースとしてディフェンスを掲げていただけに、チームは一種の混乱に陥った。この一戦を機会に、もっともそれより前から説いてきたことではあるが、主将はチームに『リアクションの早さ』を常々、口にするようになるのである。辛く、厳しく、チームに説いた。

 立命大戦での混乱の10分間は、ようやく、そのことが活かされたのではなかっただろうか。あの局面までに至ったことはむろん反省点ではあるが、ピンチのなかで相手の猛攻に対して迅速なるリアクションを発揮できたことは、一つの〝成果〟といえる。

 出しうるパフォーマンスを形にした濃密なる一戦だった立命大戦。ただし、克服できていない課題は山積みだ。

 それは立ち上がりの悪さしかり、ひとたびの隙しかり。試合に先立ってマコーミックHCは、こんなゲキを飛ばしていた。

 「80分間の、勝ちたい気持ちを、まだ見てないよ!」

 畑中組のベストバウトを、次こそ。


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2013-11-13 11:59:23 | ブログ

関学が大金星を挙げた!関西大学Aリーグで開幕から唯一4連勝だった立命大を38―35で破り、リーグ3勝目を手にした!前半に得点を量産し、24―7と大量リードで迎えた後半。立命大の猛追を受けるも、最後まで粘りのプレーが光り、首位の立命大に土をつけた。


 気迫あふれるプレーで、これまでリーグ戦負けなしの立命大から、38―35で3季ぶりとなる白星を奪った。
 劇的な一戦となった。「関学がやれることは全て出し切った結果だと思う。最高のチャレンジができた」と野中監督が語るように、関学は果敢に攻め続け勝利を手にした。
 前半、先制点を奪ったのは立命大だった。しかし、その直後HO浅井(商3)が今季初トライを決め試合を振り出しに戻す。ここから、関学の攻撃に火が付き主導権を握り続けた。同13分、ナンバー8徳永(商3)がこぼれ球から約60㍍の独走トライで逆転成功。そして、主将・畑中(商4)が連続でトライを決め会場を沸かせ、24ー7で前半を終えた。
 続く後半も、攻撃の手を緩めなかった関学。同25分までにさらに2トライを奪い31点差を付けた。このまま大量リードで試合を決めるかと思われたが、後半終了10分間、立命大の猛追を受ける。立て続けに4トライを許し38ー35まで迫られた。ロスタイム、一弾逆転のチャンスを狙う立命大。関学は今まで以上に体を張ったディフェンスで相手の行く手を阻み続けた。ノーサードの笛が鳴り響いた瞬間、選手は満面の笑みを浮かべガッツポーズを見せた。38ー35で勝利を収め、今リーグ戦負けなしの立命大に土をつけた。
 畑中は、「あと2分時間があれば、結果が分からなかった試合だと思うが勝ててよかった」と勝利を喜んだ。リーグ首位に立つ相手から勝ち取ったこの一勝は結果以上に選手たちの自信となったに違いない。


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2013-10-16 19:38:27 | ブログ

投稿日時:2013/10/16(水) 12:00rss

 苦杯をなめたリーグ開幕戦から2週間。彼らは再度、自分たちを見つめ直した。そうして挑んだ第2戦、掴んだ初勝利で見せた畑中組の真の姿。

 

■観戦記『この1勝にFOCUSを当てて

 


 

 赤鬼が、ほえた。

 「ディフェンス! これで満足しちゃダメね!

 オフェンス! ミス、ノックオンが無ければ、こんな点じゃない!」

 これからの後半40分にむけ、ピッチへ繰り出す23人の輪になかでアンドリュー・マコーミックHCが、げきを飛ばす。

 「いきましょう!!」

 指揮官に鼓舞された選手たちは高らかに声を上げ、グラウンドへ向かった。

 10月13日、関西大学Aリーグ第2戦。ハーフタイムにおけるチームトークの場で、畑中組は熱を帯びていた。それでも

 前半を終え、スコアは19-0とリードしている。それでも「まだセーフティ(=安全圏)ちゃうからな!」とチームに寄り添う山内健士郎(教4)が語りかける。「ここからね。0-0で」とCTB 鳥飼誠(人福2)が引き締める。こうも冷静にあろうとした理由。意識下には、きっとあったことだろう。後半開始早々の魔の時間帯がもたらした、あの苦い記憶が。

 しかし、そうではなかった。彼らは、ただひたすらに、この試合で勝利することだけを見つめ、闘志を燃やしていたのだ。

 2週間前、9月29日のリーグ開幕戦にて畑中組は黒星を喫した。

 京産大を相手に前半2トライを奪ったものの、どこか掴めない流れ。それもそのはず、セットプレーを含め、パスワークも乱れるなど、ミスを連発していた。前半で相手の京産大に許した失点がPGの2本だったことからも数字上で伺える。

 むかえた後半。京産大FBの動きに翻弄されるなどして、防御網を打ち破られる。ものの10分ほどの間に2本のトライを取られ、逆転を許してしまう。「ディフェンスで人数を余られたシチュエーションは無かったけど一瞬の隙をつかれた」とCTB水野俊輝(人福3)は唇を噛みしめた。

 転じて攻撃では、こちらが人数で優位になる場面もあったが、そこでパスミスを犯し結局はターンオーバーを許すことの繰り返し。ブレイクダウンでも、相手のプレッシャーをはね返すことが出来ず、終始劣勢のまま時計の針は過ぎていった。結果、19-30という完敗。まるで、そのフィールドに朱紺のジャージなど無かったかのような錯覚をも覚えさせる敗戦であった。

 開幕戦を落としたという、覆らない事実。そこでは自分たちのラグビーを微塵も見せることが出来なかった。猛省と危機感を抱いたリーダーたちは、試合後すぐに意見を交じ合わせた。主将・畑中啓吾(商4)は振り返る。

 「すぐに話し合って、月曜日には試合に出た23人を集めてミーティングを。負けは負けなんで、引きずってても仕方がないと。切り替えることを早めにしました」

 浮き出た課題に正面から向き合い、修正を施す。当然のことではあるが、戦いの本番が始まった以上、他に手立てはない。

 京産大戦、グラウンドレベルでいえば、チームとして『なすべきこと』を皆が共有できていなかった。「チームとして、どうするかを統一できず、迷う場面があった」とはSH徳田健太(商2)の分析だ。

 現に、試合に臨むにあたり「関学らしい試合が出来なくなったときは、自分たちの強みであるディフェンスに返ろう」と主将はメンバーに説いていた。しかし、漠然としていたが故に混乱を招くことに。「ディフェンスなら、いくら選手が固くなって発揮できると。固くならないのが一番ですけど」と話していた主将の想定が悪しくも現実となったのだ。それは、オフェンスでも同じだった。

 そして、もう一つはチームとして戦いに挑む姿勢そのものに盲点があった。主将は語る。「京産大だけを見れてなかった。もちろん日本一という目標は持っておかないとだめですけど目先の相手を見れてなかった」

 目の前にある一つの勝利を重ねていく先に、目指す頂がある。いよいよリーグ戦が幕を開けたことへの高揚感が、いっそうにチームを浮き足立たせ、その普遍の定理を隅に追いやってしまったのだった。

 畑中組として、前に進むために余儀なくされた再スタート。ここでチームを後押しするシチュエーションが待ち構えていた。次の試合までの期間は2週間。そのなかで設けられた全てのカテゴリーの対外試合の相手が関大だったのである。つまりはトップチームがリーグ第2戦で戦う相手。再出発のキーワードは決まった。『全員で関大に勝ちにいこう』と。

 そうして中の週で行なわれたDチームの勝利(50-7)を発端に、コルツ(57-17)、ジュニアチーム(52-17)と快勝を収めていく。あとはAチームが関大からリーグ初勝利をもぎ取るのみ。まさにチーム一丸となり、聖地・花園ラグビー場へと乗り込んだ。

 試合開始を1時間後に控え、アップに励む選手たち。その様子を見ながら、野中孝介監督は口にした。

 「やることをやる。一戦一戦、目の前のゲームを勝つだけだよ」

 ホイッスルが鳴り響き、試合開始が告げられる。さっそく得点のチャンスを掴んだのは、関大だった。関学の反則を受け、PGを選択する。が、ボールはポストを外れた。

 互いにミスは目立っていた。ゆえの均衡、決め手に欠く立ち上がり。しかし朱紺のジャージは次第に、本来の動きを取り戻していく。それは前節では見られなかった、ゲーム内での整頓作業。

 「焦らず、しっかりと敵陣に入って。ディフェンスも修正できていてみんな早くセットして整備できていました」(畑中)

 自分たちのスタイルをいま一度フィールドで発揮する。ディフェンスからゲームを作っていくことを。加えてセットプレーで優位に立てたことも、流れを引き寄せた。前半8分、相手スクラムでボールを奪取することに成功。相手ゴール前でのラインアウトからSH徳田が先制トライを挙げた。

 FWを中心にリードを奪った前半。けれどもマコーミックHCがメンバーに喝を入れたように、決して納得のいくスコアではなかった。徳田は話す。「もっとトライを取れるところもあった。そこは精度高めていかないと」

 ただ、試合を通じて、自分たちのラグビーを遂行できつつあったのも事実。だからこそ、ハーフタイムでチームは再度、冷静に確認しあったのだ。いま倒そうとしている相手は関大、そして、勝つ為に自分たちは何をすべきか、を。

 この2週間、リスタートを切ったチームは対戦する関大だけを捉え、準備を重ねた。ビデオで対策を練り、相手の持ち味である部分に心した。対して、フィールドで繰り出すラグビーを明確にした。「早い段階から意識統一した」と徳田は振り返る。

 残された40分間。開始のキックオフで畑中がボールを外に蹴り出してしまうミスを犯し、果てはトライを許すなど嫌な立ち上がりとなった。それでも、この日のチームは冷静さを失うことは無かった。それは意識統一の賜物だろう。そうして、ボールを持つ時間帯が増えていくにつれ、しっかりと準備してきたことを形にしていく。

 オフェンスでは、フェイズを重ね前進を図る。ポジション問わず全員が走り、ピッチの横幅を最大限に使ってボールをつなぐ。前半はポロポロと見られた手痛いミスも影を潜め、そうなれば必然として相手ゴールを陥れることにつながる。後半40分間でコンスタントに5本のトライを積み重ね、やがてノーサイド。最終スコアは54-5の完勝だった。

 こうして掴んだリーグ戦初勝利。主将は安堵の表情を浮かべた。

 「ミス無く、しっかりとしたプレーをすれば、良いゲームが出来る。あらためて実感しました。準備してきたことが、今日は出せて良かったと思います」

 チームとしても、自分たちのラグビーを発揮したうえで白星という結果を生んだことは、自信にもつながっただろう。継続してフェイズを重ねればトライに結びつくこと、早くセットすればディフェンスから前に上がれること。

 むろん反省点はある。ミスやペナルティで自らチャンスを潰す場面はこの試合でも幾度とあった。「立ち上がり悪かったですしね。挙げたら、きりがない。そこは認めて、修正して」と主将は省みた。

 だが、何よりも畑中組が最も大事なことに気付いたのが関大戦での収穫だ。それは、準備の大切さ。相手を見据え、気構えを整え、試合に臨む。目先の1勝に狙いを定め、自分たちのプレーを発揮するべく意識を一つにすること。

 なんてことはない、今年の関学ラグビー部・畑中組のスローガンそのものであったのだ。

 リーグ開幕戦にて味わった挫折と、そこから転じて導き出した解。

 一戦必勝。これこそが、『FOCUS』を掲げた畑中組のラグビーの真髄だったわけである。

 試合後に主将は述べた。「未来にむかって出来ることは準備しかないんで。良い準備をして、次に臨んでいきたいですね!」

 この先も戦いは続く。次なる相手に照準を合わせ、そこでも我らのラグビーを見せるとしよう。


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2013-10-16 00:53:05 | ブログ

関大を下し、うれしいリーグ戦初白星を挙げた。前半8分SH徳田(商2)が先制トライを奪うと、続けて得点を追加し19―0で前半を折り返す。後半に入りミスから関大に得点を許すも、すかさずFL中村(社3)がトライ。その後も関学は得点を重ね後半だけで5トライを挙げ関大を圧倒し、54―5で勝利した。


 畑中組が本調子を取り戻した。リーグ2戦目の相手である関大は、今年32年ぶりにAリーグに復帰し、初戦で昨リーグ4位の近大を破って波に乗るチーム。京産大戦での敗北から2週間、関学はチャレンジャーとして関大戦に臨み、関学らしい積極的なプレーで54ー5で快勝した。
 両者共にリズムに乗り切れずミスもあったが、試合を動かしたのは関学だった。前半8分、モールから抜け出したLO竹村(人3)から徳田へパスが渡り、先制点を挙げる。さらに関学は2トライを奪い、守備では粘りのディフェンスで関大を無得点に抑えて19―0で前半を折り返す。
 関学リードで迎えた後半。立ち上がりにミスが続き関大にトライを許すも、失点後すかさず中村が得点を追加する。嫌な流れを完全に断ち切った関学は、フェーズを重ねたアタックでトライを量産し、関大を引き離すことに成功。54―5と大差を付け関大に勝利した。
 「アタック、ディフェンス共にいいプレーができた」と主将・畑中(商4)。初戦の敗北を素直に認め反省点を修正し、関大にフォーカスを当て練習してきた関学。自分たちのプレーができた一戦だった。「1勝したことでチームに大きな自信が付いた」と畑中。「来週からも試合は続くので、今回の勝利に安心せず、しっかり準備していきたい」と気を引き締めることも忘れなかった。
 次戦の相手は、初戦で昨年の優勝校・天理大を下した大体大。FWに定評があるチームだが、対策を練り1週間後の試合に臨む。自分たちのラグビーを徐々に形にしつつある関学の勢いはもう止まらない。


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2013-07-03 16:33:04 | ブログ
 春シーズン最後の一戦となった同大戦。相手の勢いを止めることができず関学は12―26で敗北した。露呈したいくつもの課点。この敗北は日本一を目指す畑中組にとってさらなる躍進のため価値あるものとなった。


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【価値ある一戦】
 畑中組の春シーズンが終わりを迎えた。終始同大の勢いに押され12―26で春シーズン最後の一戦を黒星で終えた。 
 前半は互いに1トライしか奪うことができず5―7で試合を折り返す。後半に得点を量産したい関学だったが、同大の勢いを止めることはできなかった。セットプレーの巧みさやスクラムの強さなどで相手に屈し得点を許す。最後まで流れをつかむことができず12―26で敗北した。
 この日の同大のプレーには勢いがあった。だが「タフな練習をしてきた自分たちは勢いだけで負けるチームではない。今日の課題点は絶対にどうにかする」と夏シーズンに向けて主将・畑中(商4)は意気込んだ。
 春シーズンは昨リーグ戦で敗れた相手にリベンジを果たすなど確実に成長を遂げた畑中組。今試合では勝負どころで課題点が露呈し敗北を喫したが、さらなる躍進のために価値ある一戦となった。 
【日本一への夏】
 課題点の修正、そしてこれまで培ってきた技術にさらに磨きをかけ、秋リーグに備える。日本一という決して揺るがない目標に焦点を当て畑中組の熱い夏が始まる。


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2013-06-27 23:25:35 | ブログ
 ライバル立命大に26―24で辛勝した。昨年のリーグ戦では惜しくも敗北を喫した相手だけに負けられない一戦だった。点差は大きく開かなかったものの、最後まで勝ちにこだわる粘り強いプレーで関学が勝利した。

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 畑中組の春シーズンが終わりに近づいている。今試合の相手は昨年のリーグ戦で惜敗を喫した立命大。関学は粘り強いプレーを繰り広げ26―24で勝利を手にした。
 立ち上がり、立命大に主導権を握られ先制点を奪われる。しかし、その後モールからSH徳田(商2)が持ち出しトライ。立命大に追い付くもその後は互いに一歩も譲らない激しい試合を展開。だが、前半終了間際に得点を許し12―19で前半を折り返した。
 後半、勢いよく敵陣に攻め込んだ関学は、ゴール前でCTB水野(人3)からCTB金尚浩(総3)へ見事なパスをつなぎトライ。同19分にも関学は追加点を奪い26―19と逆転に成功する。このまま逃げ切りたい関学だったが試合終了間際、立命大に攻め込まれ点差を詰められる。しかし相手のキック不成功で同点を免れ26―24で辛勝した。
 春シーズンの試合も残すところあと1試合となった。今シーズン強化してきたディフェンスを武器に、昨年敗北した相手を破るなど確実に成長を遂げている関学。6月30日に行われる同大との一戦を制し、日本一へ向けさらなる弾みをつけたい。

OB独占直撃『朱紺の闘士たちの現在 ~黄金の巨人と深緑の雷撃~

2013-06-22 20:04:00 | ブログ
 かつて朱紺のジャージを着て時代を彩った歴戦の勇士たちは、さらなる高きステージへと身を移し、闘球に興じている。その日、グラウンドには連なる4世代の面々の姿があった。懐かしさと興奮が入り混じる時間が流れた。

 

■OB独占直撃『朱紺の闘士たちの現在 ~黄金の巨人と深緑の雷撃~

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 朱と紺のストライプ柄以外の姿を見たのはこれが初めてだったと思う。6月某日、訪れるは東京都府中市。そこにサントリーサンゴリアスのクラブハウスがあった。

 言うまでもない、日本ラグビー界の頂点に君臨するチーム。母体会社名の一部を冠名に、太陽とギリシャ神話の巨人を掛け合わせた名前を持つチームは、近年のラグビーシーンにおいて燦然たる輝きを放っている。トップリーグ2012-13シーズンで成し遂げた無敗優勝は記憶に新しいだろう。

 その王者のクラブハウスは、やはりユニフォームの色彩と同じような、クラブの栄光を示す黄金色のトロフィーやレリーフが多数飾られていた。隣接するグラウンドには、練習試合を控えた選手たちがアップを始めている。お目当ての選手はというと。どうやら二人は確認できた。

 しばらくして、クラブハウスの正門から隊列がやってくる。深緑のチームジャージを身に纏ったラガーマンたち。この日行なわれる練習試合のもう片方の相手、トヨタ自動車ヴェルブリッツの一行。ほどなくして、本稿の主人公の一人が姿を現す。メンバー表を見ると、なんとスターティングメンバーに名があるではないか。こちらに気づくや、記者の名前を呼び、駆け寄ってくる。あどけない笑顔は数ヶ月前のそれと変わりがない。

 夕刻、サントリーサンゴリアスとトヨタ自動車ヴェルブリッツの練習試合がいよいよ迫った。アウェイに乗り込んできたヴェルブリッツの『13』番を背中に刻み、ピッチに立つはCTB春山悠太(文卒)。この春に卒業したばかり、昨シーズンの関学ラグビー部・藤原組において文字通りセンターを務めた男である。その彼が先にピッチに構え、ホームのサンゴリアスのメンバーを待つ。

 出場選手の入場シーン。クラブハウスからグラウンドへの飛び出し口に、他のメンバーが花道を作る。そのなかに、こちらも取材ターゲットの一人の姿が。こちらの存在に気づき会釈をしてくれた。FL西川征克(文卒)。関学OBのなかでも、いま最も名実ともに名立たるプレーヤー。昨シーズンにレギュラー入りを果たし定着、果ては大舞台の要所にてトライを決めるなど大ブレイクした。その彼が一角となった花道をくぐりぬけ、黄金色のユニフォームを着た選手たちがピッチに駆け出す。既述の二人も登場。こちらは『20』と『22』の番号を背に、二人ともまずはグラウンド脇で出番を待つ。

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 試合が始まった。繰り広げられるは、オープン戦といえども日本トップクラスのラグビー。ぶつかり合いで生じる熱、清流のように滑らかなパスワーク。前提とするから余計に、それでも普段目にする大学レベルとは段違いに感じられた。その激しいピッチに、緑のジャージ、CTB春山はというといた。

 およそ半年ぶりに見た彼のプレーは、勇躍そのもの。たしかに、自分がルーキーだろうと、まわりや相手がいかにレベルが高くとも、春山悠太が怖気ずく様など想像がつかない。ボールを持てばゲインを図り、転じて相手のボールキャリアーへは果敢にタックルをかます。らしさ全開のプレーを前半40分間で見せてくれた。

 後半はベンチへ退き、春山は試合を眺めていた。ときおり、アフターケアなのか身体を動かす場面も(学生時代は、練習終わりも体幹トレーニングに取り組んでいた)。半年ぶりに、話を聞いてみた。

 「今日は前半だけと決まっていました。試合前にメンバーの入れ替え等は決められていて。体力を残さず、出し切るという意識は自分のなかにあったんですけど(自分のプレーが)出来たかどうかは」

 聞くところによれば、オープン戦では前後半でメンバーをがらりと変える方針にあるとのこと。「新人なんでチャンスをもらえているだけ」(春山)とはいえ、ここまで全ての試合でスタメンで出場しているというのだから驚きだ。ただ本人が明かすに、この日の試合は格段浮き足だっていたらしく

 「今日とかびっくりしました。最初ついていけなかったです。すげぇなって」

 こちらの読みとは違い、胸中は王者相手に穏やかではなかったらしい。しかし、ピッチに立てば、使命感を抱き、ひたすらプレーに力を注ぐ。

 「意識せなあかんとこは意識しないと。自分のプレーどうこうよりも、チームで意識せなあかんところが何点かあってそこが出来ていない。

 トヨタって、頭を使うラグビーで。細かい決まりがあって、それを全員で実現していく。自分はアウトサイドCTBで、パスCTBとしてバックスリーに良いボールを供給していく」

 そういえば、彼の『13』番を見るのも久しい。学生時代のクライマックスは、主に『10』番での出場。司令塔たるポジションを務めた。社会人になってからもSOに就いたことはあったが、周囲とのレベル差に圧倒されたという。「全然レベルが違うっス」。いま一度、CTBとして研鑽に励む。

 「最初は何もかもがダメで。怒られてばっかり。この前やっと、『試合、頑張ってんちゃうか』って言ってもらえて。体も大きくなってきて、ウエイトの数値も上がってきている。最初が全然ダメだったぶん、いま伸びてきているかなと」

 学生時代、チームの中心だった男はここにきて「今までのラグビーとは違う」全く新しい次元での戦いに身を置いている。ガツンと頭を打たれても、それすら喜ばしく感じているようなストイックさ。だ円球を手にすれば、堅調な口取りになる春山悠太の一面は変わらぬままだった。

 「トヨタのベテランの選手も日本代表に選ばれている人が多い。このチームでレギュラーを獲ったら、日本代表とかも見えてくるかもしれないので。まずはそこを!」

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 オープン戦とあって、どのチームも戦力を磨いていく段階にある。新戦力の台頭が望まれるのは、どんなカテゴリーでも一緒だ。巡ってくる出番は、掴むべきチャンスを意味する。

 ベンチ横のアップスペースで出番を今かいまかと待つ2人の姿。後半もしばらくして、ヴェルブリッツがゲームを決定づけた頃。サンゴリアスの『22』番がピッチに足を踏み入れる。関学ラグビー部史におけるスピードスターといえば、真っ先に挙がるであろう、WTB長野直樹(社卒)だ。

 「今はどんどん若手にチャンスを与えている。僕はポジション柄、まわりも若くて。FBも1年目で、逆サイドのWTBも2年目と、僕が一番年上になる。バックスリーの連携の部分でしっかりコミュニケーションを取ろうと。そこは出来たのではないかと」

 社会人入りして3年目になる。チームとしては、主力選手の帰国やジャパンへの選出と、まさに戦力の底上げを図るに打ってつけの状況。そこでチャンスを掴まんと意気込む。同時に、後輩たちを牽引する立場にもなりつつある。日本トップクラスの環境における、戦いの日々を過ごしている。

 「もちろん厳しいですし、練習も大変なんですけど。上から降りてくるものが明確ですし、こうやったら試合に出れるっていうのがしっかりとヴィジョンとしてある。かなりラグビーに没頭できる環境ではあります。すごい、いま充実してます」

 まだ公式戦の出場キャップは無い。これまでにも「チャンスは何回かあった」(長野)が、掴めずにいた。「自分のなかで反省して。今年は頑張りたい」

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 その彼が高いモチベーションを保てているのも、同じ関学出身のチームメイトの2人だという。

 この日の出場メンバーに選ばれていたもう一人、『20』番を着けたのはSH芦田一顕(人福卒)だ。大学時代は1年目から不動のエースSHを張った。トヨタ戦では、試合終了間際での出場だった。わずかの時間だったが

 「今日に限って(笑)。前半とか悠太の動きを気になってました」

 サントリーのSHといえば、世界レベルのトッププレーヤーを筆頭にタレント揃い(どのポジションにも言えることだが)。そのなかで、芦田はルーキーイヤーだった前年、公式戦2試合に出場を果たしている。

 「緊張しました。最初、出るときにWTBと言われたんですけど、本当に嫌そうな顔したらSHでの出場に(笑)。秩父宮やし、ナイターやし、お客さんはたくさん、で。僕が入って早々に、抜かれてトライされた。固かったんかなと」

 苦い思い出も、貴重な経験として笑顔で振り返る。それは辛いことに対しても。芦田は話す。

 「『タフ・チョイス』といって、しんどいことを自分から選んでやるという。去年1年間しんどいことを、それも予想をはるかに超えた。けど、嫌じゃなかったし。そういうモチベーションにするのが、サントリーというチームは上手いのかなと。みんな冗談で文句は言うんですけどね、やるときは100パーセントで。やるしかない!という良いサイクルになっています」

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 チーム内での競争の激しさが、己を高めることにつながる。そうして全体が強くなり、最高の結果を生み出す。勝者のフィロソフィーが文化として築きあげられているのがサントリーというチームである。FL西川は、そんなチームで鍛え上げられた。昨年はリーグ開幕戦でスタメンに抜擢。その後の活躍は前述のとおりだ。

 「エディ・ジョーンズさん(現ジャパンHC)が監督をされていた頃に、よく監督室に呼ばれたりして。サントリーの文化を作ろうとした人で、妥協を許さない人でした。一言で言うと、怖かった。

 でも、あれがあったから社会人として成長できたし、言われてるというのは期待されていることなんだと。そこの部分で頑張らなあかんと切り替えられたのが、今につながっています」

 今でこそ関学出身のトップリーガーは増えてきたが、西川はその先導者でもある。だ円球のフィールド、それも最高峰の舞台にいることの自覚を語る。

 「練習はつらいですけど、やっぱり僕の同期もトップリーグでやっているのは、太郎(松川=LO/NTTドコモ=)と僕だけ。同期には、やりたい、チャレンジしたいと思っているやつはいっぱいいると思うし。そのなかで自分が、まだ現役でやれせてもらっていることは感謝というか。まわりのサポートもありますし、やらせてもらえているから頑張らないな、というのが絶対あります」

 すべてはめぐり合わせが良かったのだと西川は話した。想像以上に激しかった環境、そこで授かった数々の薫陶。今後も続くかもしれない、サントリーへ入団するような後輩たちへエールを送る。

 「ずっと最近は優勝しているんで、勝つチームにいるという自覚があるし、それを踏まえて入ってくると思う。どんどんチャレンジして欲しいなと。覚悟はすごい必要だなと思います」

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 府中のグラウンドに集いし4人のラガーマンは、かつて朱紺の闘士たちだった。彼らは早くからレギュラーとして活躍。関学ラグビー部関西制覇の立役者たちであった。

 月日は流れ、次なるステージで各々の戦いに臨んでいる。そして、相手チームにも同胞の姿が見られるようになってきた。その対戦は今後ますます増えてくるだろう。

 「良い刺激にはなる。特別な思いはあるし、敵やけど頑張って欲しいと。試合ではつぶしてやろう、でも、どこかで応援してる」(長野)

 この日のサンゴリアスヴェルブリッツのカードでは、同じ時間帯での対戦は叶わなかった。次は、公式戦の舞台で、はたまた優勝をかけた大一番で?

 彼らの直接対決が実現したあかつきには、お互いの感想を聞いてみたいものである。


ラグビー定期戦vs京都大学

2013-06-06 03:10:38 | ブログ

伝統の一戦を制した!Bリーグに所属する京大との定期戦が行われ、関学は4年生中心のメンバーで挑み53―19で勝利を収めた。長年続く伝統の一戦に新たな歴史がまた一つ刻み込まれた。

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 京大との伝統ある一戦で、今年も関学が勝利を手にした。前半は思うように得点できず苦戦するも後半で一気に得点を量産し53―19で白星を飾った。
 「後輩にいいプレーを見せられるように頑張ろう」と試合開始前、今ゲームキャプテンを務めた湯浅(人4)はチームを鼓舞した。4年生中心で挑んだ今試合。中にはファーストジャージに初めて袖を通す者もいた。
試合開始後から関学は勢いよく敵陣に攻め込んだ。前半2分、LO三井(社4)のトライを皮切りに連続で3トライを奪う。好調な滑り出しを見せた関学だったがその後はうまく息を合わすことができずプレーがかみ合わない場面が多かった。2トライを返され19―12で前半を終える。
 しかし、続く後半では本来の実力を発揮する。「後半でうまく修正できた」と湯浅。終始関学が主導権を握り相手に隙を見せなかった。4年生としての意地を見せる活躍で後半は6トライを奪い53―19で伝統の一戦を制した。

 

 関学と京大の定期戦には長い歴史がある。その始まりは1929年、関学ラグビー部が創部された翌年であった。2003年に関学がAリーグ復帰を果たしてからもずっと続けられている。現在京大はBリーグに所属しているが、長い歴史ある定期戦として関学はファーストジャージを身にまとい臨む。
所属するリーグは異なるが、今もなお交流を深め、互いに切磋琢磨し合っている関学と京大。これからも伝統の一戦は行われ続ける。



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2013-05-08 11:34:56 | ブログ

昨年の関西王者・天理大を24―12で打ち破った。少ないチャンスを生かし得点を重ねた関学。強敵を相手に果敢に挑みつかんだこの勝利は畑中組の好調さを見せつけるものとなった。

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 畑中組が好調だ!昨年の関西王者・天理大を24―12で打ち破った。昨年15―17で敗北を喫した相手にリベンジを果たした関学。勝利の鍵となったのは継続的に鍛えてきたフィットネスを生かしたプレー、そしてFW陣の活躍だった。
 「前半は厳しい展開だった」と主将・畑中(商4)。前半、関学は自陣でのプレーが目立った。しかし、FW陣が攻撃を食い止め反撃に出る。同10分、一気にゴール手前まで詰めモールで押し込みPR南(祐)(人4)が右中間にトライ。その後、同点に追い付かれるもペナルティゴールを決め10―7で前半を終える。
 さらに後半12分、モールからNO8徳永(商3)が持ち出しトライ。追加点を奪い天理大を追い込んだ。焦りを見せる相手に対し最後まで粘り強いプレーで挑み24―12で勝利を飾った。
 80分間の大半、自陣でのプレーを強いられた関学だったが、攻め込まれても我慢強いディフェンスで食い止め、少ないチャンスを生かし天理大を倒した。「FW陣は厳しい練習の成果を発揮してくれた」と畑中は健闘をたたえた。今試合は春シーズンの好調さを見せつけた一戦となった。


関西学院創立125周年記念ラグビーvs慶応大学

2013-04-30 10:40:36 | ブログ


シーソーゲームの様相を呈した慶應義塾大学とのビックマッチ。最後まで粘り強くプレーした朱紺の闘士たちに軍配が挙がった。そのなかでも、反撃の狼煙(のろし)となった前半のトライを演出した2人にフォーカスを当てる。

 

■湯浅航平/井之上亮『意外性のコンビネーション

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 先制点を奪われ、追う展開となった関学。前半15分、相手のペナルティからマイボールを獲得すると、反撃に打って出た。

 テンポ良くボールを運ぶ軍勢の中心にいたのはSH湯浅航平(人福4)。そのポジション柄、ポイントが生じれば駆け込み、ボールをつないでいく。その一連の流れのなかで、ふとアクセントとなったのが、湯浅自らがゲインするプレー。相手ディフェンダーの体が横に流れるや、その隙を狙って突破を図る。一人二人とかわし、ゲインに成功すると、次のポイントを作り攻撃の起点となる。

 例年では見られなかったプレーについて、湯浅は語る。「もともと自分で行ったりするのは得意だったけど、関学のスタイルに合わなくて。自分で行くな、って去年も言われたり。今年はやりやすいかなと思います」

 今シーズン、SHに求められる仕事が増えたと湯浅は話す。アタックの場面、まずはSHが仕掛け、FW陣を活かしていく。昨年度もオフェンスに関しては、ハーフ団が中心となってチーム全体を動かすのがスタイルであった。今年はブレイクダウン(ボール争奪局面)にこだわりを持つぶん、ポイントでのプレーに重みが増す。ボールをキープすること、奪ってからボールをいかに動かすか、ということ。

 そこに湯浅は、封印していた自らラインブレイクを図るプレーをすることで、攻撃の幅を広げようというのである。

 ただ、自ら仕掛けるだけではない。この場面では、もう一つのアクセントが見られた。ポイントから湯浅がボールを動かそうとするやいなや、パスを渡した相手は、すぐ横に駆け込んできたPR井之上亮(社3)。敵にとっては突然現れた刺客のように映っただろう。ディフェンスラインを突き破る、まさに刺し込むようにドライブしてきた重量FW。防御網の隙を狙い、かつ当たり負けしない体躯の良さをもってして前進する。

 「練習の成果。計算どおりです!」

 そう満足気な表情を見せる井之上。よもやPRが走りこんでくるとは思うまいその意外性を突いたプレーである。

 「練習から常に狙ってて。湯浅さんがディフェンダーを引きつけて、まさかPRがくるとは、っていう。逆に、PRだけどイケるぞ、と思わせつつ、SHが自分で行ったり。どっちかが追われれば、どっちかが空く形で。得意技です」

 あまりにも見事に、9番と3番の連携プレーが決まっていた。そうして、最後は湯浅が相手ディフェンスをかいくぐり、ゴールラインに到達。やがて金星へと至る、反撃の狼煙が上げられたのである。

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 「だいぶ効きますね」。ポイント周辺から防御網を崩していくプレーに湯浅も手応えを感じている様子。「9-3」の連携プレーの相方を褒め称える。「井之上がラインブレイクもするしドライブ力もあるんで。敵がおってもゲインしてくれる」

 この日は、湯浅自身、ゲーム序盤にボールが手につかなかった。「緊張ではなかったですけど焦りというか」。ハンドリングミスで攻撃の機会を逸した。だが、次第に落ち着きを取り戻し、練習していたフォーメーションを用いた動きでトライを奪った。

 そのシステマチックなプレーは今年から新たに加えたものである。昨シーズンなどは個々のスキルアップに注力していたが、今は学生たちが主体となってシステム作りに取り組んでいる。自分たちで考えた、自分たちに合ったものを実行している形だ。

 考えたプレーを実現するためにも、湯浅は自身にSHとしてのレベルアップを課している。入学当初からトップチーム入りを果たすなど存在感を放ってきたが、昨年はレギュラーの座を1年目のSH徳田健太(商2)に奪われた。それはプレーヤー人生でも経験したことのなかった屈辱だった。「1、2年生の頃は先輩が出てて自分がリザーブでも、気にはしてなかった。けど、去年は後輩に先越されているのがショックでなかなか巻き返せなかった」

 現実にショックを覚えながらも、活躍する後輩の姿を見て、己に足りないものを明確にした。「徳田のプレーを見ていて、速いし上手いなと。それを認めて、そこを伸ばして。去年の終わりは収穫あったんでね。

 やっぱり今年も徳田の存在は頼りになるんで、思い切って僕も臨んでいけたら。徳田に劣っているテンポの部分、そこを伸ばしていきたいです」

 悔しさをばねにラストイヤーに臨む湯浅。自分の短所を埋めることで、よりチームの目指すスタイルにマッチすると考えている。

 「SHからチームをリードしていきたいですね!」

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 足りない部分を補うという点では、コンビネーションの相方を担った井之上も同じである。ポジションはPR。重戦車たるスクラムの一列目を形成する一人。かつては「スクラムしかやってなかった」と話すが、彼にとって転機があった。それは昨年にU20日本代表に選ばれた経験。

 「あそこから全部変わった。対外国人選手を相手に、ずらす動きとかを。PRでもショートステップを習ったりしたんで。あれで変われたと思います」

 その変化は、まさに今シーズンにチームが打ち出した方向性にアジャストしている。フィットネス”“スキル”“コンタクトの3拍子揃った選手をチームは前提として求めている。以前に、萩井好次アシスタントコーチが「PRだから走れない、とかは論外」と話した台詞はその最たる例。

 その点、井之上はフィールドプレーも出来る、一列目の男になった。そこは本人も自覚している様子。慶大戦でのSH湯浅とのコンビネーションプレー。まさかPRがくるとはと思わせる、その意外性こそ彼からすれば、してやったりという当然の産物だったのだ。

 「オフェンスは好きなんで、得意なとこは伸ばして。ディフェンスとかダメなとこはしっかりとやっていきたい」

 トライフェクタ(三拍子揃っているという意味を含んだ表現)と、それに付随するプラスアルファの部分。フィールドプレーを意識してか、彼が話すに自身のベストとする体重からわざと5キロほど落とした体重で今はいるという。現状は105キロで、「体脂肪を落として、筋力をつけてベスト体重の110キロに」持っていきたいと考えているそうだ。「徐々に増やしていきます」

 一方で、本職であるスクラムへのこだわりも忘れてはいない。慶大戦では試合前のロッカールームでPR安福明俊(教2)、HO浅井佑輝(商3)と入念に打ち合わせを行なっていた。

 「関西制覇したときはFWが強かったと聞いたんで。FWが強くてこそ、関学じゃないかなと。関東に勝てるくらいのFWを作りたいです」

 セットプレーでも、フィールドプレーでも。存在感を欠くことのない、新たなるPR像の誕生を井之上が予感させてくれる。

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 SH湯浅とPR井之上による連携プレーは慶大を相手に、反撃の一手となった。だが、試合そのものは展開が二転三転するタイトなものに。実のところ、2人とも試合を終えたあとは足をつるほどの状態にあった。

 そうして、反省点も。「ターンオーバーとか、取れたとこもあったけど取られたとこもあったんで」と井之上が話せば、後半にチャージを喫し同点を許した場面を引き合いに「システムも、まだやれていないとこが。エリアの取り方やキックの部分が」と湯浅も苦い顔を見せた。

 それでも、足りない部分を補完するという過程を自身の経験に刻んでいるこの2人なら、心配は無用だろう。リーダー気質の湯浅も、「今年が勝負」と意気込む井之上も、今シーズンのチームを率いる意欲がみなぎっている。

 関東勢相手に白星を挙げ、チームは昇り調子にある。ますます期待が集まるなか、湯浅がふと口にした台詞が気になってくる。

 「一番楽しみなのが、システムを作っていくのが。1、2年の頃から温めていた作戦とかもあるんで」

 この日、見せた「9-3」のコンビネーションは、その一端に過ぎない。次はどんなプレーで、相手チームの意表をつき、そして観る者をワクワクさせてくれるのだろうか。


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2012-12-19 01:19:48 | ブログ

全国大学選手権セカンドステージ第2戦、関学は29ー34で法大に惜敗を喫した。前半は決して悪い流れではなかった。しかし後半の終盤に点差を広げられ敗北した。

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試合後白色のセカンドジャージ―に身を包んだフィフティーンは肩を落とした。29―34で法大に敗れ、国立、そして日本一の夢はついえた。グループ戦2敗目を喫した関学にこれ以上失うものは何もない。
 先制点を奪ったのは関学だった。前半16分にCTB松延(商4)がハーフウエーラインからインゴールへ走り抜けトライ。24分にも再び松延がCTB水野(人2)のパスからトライを奪った。前半の流れは悪くはなかった。だが、「前半は必要以上にリスクの高いプレーをしてしまった」と語った萩井監督の言葉通り、外から大きくゲインを切りながらもトライに結びつけることができない場面が多く見られた。何度も迎えたチャンスを物にすることができず、14―17で前半を折り返す。
 3点差を追う後半も、一進一退の攻防が繰り広げられた。後半7分、WTB金尚(総2)が逆転トライで24―20とする。だがその後法大に連続得点を許し、再度逆転される。終了間際にHO浅井(商2)が意地のトライを決めるが追いつくことはできず、29―34で法大に惜敗した。
 「先週の慶大戦と同じ展開になった。負けを引きずっていたわけではなかったが、いろいろと考えてしまい、焦ってミスが多くなってしまった」と主将・藤原(商4)。前節と同じくミスの多さが敗北の一因となっただけに、悔やまれる結果となった。12月23日に行われる筑波大との一戦が藤原組にとってのラストゲームとなる。「あとは自分たちのラグビーをどこまで貫き通せるか。1年間の集大成を見せたい」。残すは筑波大との最終戦のみとなった。関東対抗戦王者である筑波大に勝利し、今シーズンを締めくくりたい。