Tedのつゆ草の旅

母校関西学院ラグビー部とアメリカンフットボール部の試合を中心に書いているブログです。

関西学院プレイヤー外伝

2014-11-28 10:46:44 | スポーツ

血気盛んな司令塔がボールを持ち出し、攻撃を仕掛ける。外へ開く、と思いきや背後からその進行方向とは逆に駆け込んでくる大きな影が。CTB金尚浩(キム・サンホ/総政4)の加速がいよいよ止まらない。この男、デコイにして、脅威につき。


■金尚浩『Can't stop,Won't stop moving』
 

 

 ロッカールームに引き上げて、スパイクを脱ぎながら、何やら軽快に口ずさんでいる。


 「
Shake it off,Shake it off~」


 どうやら人気の女性シンガー、テイラー・スウィフトの新曲『Shake it off』のメロディ。チームの勝利後とあってか、キム・サンホは上機嫌だった。11月1日、リーグ第4節の試合終わりに、彼は自身のパフォーマンスについて話した。


 「CTBとしての動きが分かってきた。SOとか、BK内での連動は出来るようになってきたと思います」


 ラストイヤーにして本格的に取り組んだ、新しいポジションへの確かなる手応え。彼の大学4年目は長期のリハビリから始まった。春シーズンの終わりに復帰するも、夏を前に別の箇所を負傷する。菅平合宿では少しだけの試合出場に留まり、完全復調まで2ヶ月あまりを要した。


 それでも自らの役割を明確に思い描きながら、リーグ戦へ挑んだ。「一番良い状態で臨めている」と語ったサンホは戦いのなかで、その使命を徐々に色濃く、ピッチ上で体現していくのである。



 開け


 そうコールがかかったのは10月5日の関西大学Aリーグ開幕戦も前半20分の場面。相手がオフサイドの反則を犯しプレーが一旦、区切られる。マイボールでリスタートを切るにあたって、SO清水晶大(人福2)は一瞬の隙を見逃さなかった。


 左隅を見ると、相手プレーヤーはしゃがんでいたり、よそみをしている。ならば、と外に構えるWTB中野涼(文3)、そしてサンホにむけ「開け!」と叫んだ。


 相手のディフェンス網の整備を待つわけもなく、そこから大きく振られたパスは、最後サンホの元へ渡る。


 「自分の得意なライン際。ボールもらった瞬間に、コースが見えて、これイケるな、と」


 リーグ開幕戦、「何が何でもトライを」と狙っていたサンホは自身第一号を挙げる。それは、もとに就いていたWTB時代の彼を彷彿とさせるプレーだった。


 大型プレーヤーの活かし方において、アンドリュー・マコーミックHCが発揮する相馬眼。WTBからCTBへコンバートした松延泰樹(現東芝/商卒)に代表されるように、配置転換によってBK陣にさらなる攻撃的エッセンスをもたらしてきた。その点でサンホのCTB起用は、十分に考えられるプランでもあった。(事実、3年生の春シーズンでCTBに取り組んだことも)


 ポジションを変えても、トライへの嗅覚と意欲は変わらなかった。そのことを証明したオープニングゲームでの一撃。


 それらのソフト面はサンホの強みではあるが、やはり魅力的に映るのはハード面だろう。チームのBK陣でもひと際大きな体格と、それをもってして繰り出される豪脚。その武器の活かし方はWTB時代と今とでは少し違う。自身の役割を交えてサンホは言う。


 「WTBのときはお膳立てされていた。いまは逆に、それを作ってあげないとダメで。抜けそうにないところでも何とかこじあけて」


 それまでは味方が相手ディフェンスを崩し、大外へいるサンホへボールを渡らせていた。そうしてトライを決め切るのが役割だった。いまは、そのシチュエーションを作ることが求められている。大型プレーヤーとして、スピードに乗り、防御網に風穴をこじあけること。


 「起点になるのが一番の仕事」ときっぱり述べ、不敵に笑いながら彼は口にするのである。


 「僕が来るのが、相手も嫌がるだろうし、ね」



 サンホのビックヒットから生み出される好機。目に見えて効果的なそれは、そのぶん彼の存在を明るみにしている。開幕戦ですら、敵チームは激しく、この大型CTBに執着してきたという。「だいぶ相手のマークが強くて」と試合後には語っている。それでも「地道に身体をぶつけて。愚直にボールをキープし続けたら」と前に突き進むことだけを見据えていた。


 〝活かされる側〟から〝活かす側〟へ。その決意は最後のリーグ戦で確固たるものとして、サンホの胸にある。


 確たるものといえば。これまでに積み重ねてきたハード面の強化を、リーグ戦の半ば、彼はこう説いていた。


 「身体の芯の強さは前提として必要でして。

 外までボールを回して、ディフェンダーが前からやってきて『外は無理だ』と思ったときに、内に切り込むんです。相手としては弱い方の肩にプレーヤーがくるので、タックルにもいきにくい」


 『ナイフ』というキーワードで称されるその動作で、敵との衝撃はむろん生じるが、それを制する強さはチームとして備わっている。スピードも強さも持ち得るサンホとあれば、いっそうにである。


 「WTBからCTBになってボールを持つ機会も増えて。自分はコミットしてナンボですから!」


 そう語気を強めた彼の、なんとも頼もしきことか。


 リーグ戦を経て、円熟味を増す『CTB金尚浩』。それはチームが目指す頂への挑戦権を得た大一番で存分に発揮された。11月23日、宝ケ池球技場で行なわれた第6節・同志社大戦。ゲームの流れを引き寄せた転機があった。


 序盤から一進一退の攻防を見せた試合は、しかし互いに自分たちのミスで攻め手を欠いていた。まずは外に展開しようと踏んでいたチームも、予想以上に押し上げてくる相手のプレッシャーがあってか上手くボールをつなげられない。そこでピッチにいたBK陣、なかでも4回生を中心に修正を施した。内に切っていこう、と。


 すると、面白いようにこの転換がはまった。ディフェンスラインを次々と突破するBKたち。前述のナイフも、文字通り防御網を切り裂く一手となる。「練習でしてきたこと。強みでもあるし」と、その切れ味にサンホは得意気な表情を浮かべた。



 そして彼自身の動きも切れ味十分だった。〝司令塔〟SO清水とのコンビプレー。


 「アキは自分からいくタイプで。相手はそこに釘付けになる。

 僕がそこに入ることで、相手はどこを見たら分からんようになる」


 清水は果敢にラインブレイクを図っていくタイプ。彼がボールを持てば必然に相手の視線は集まる。そこにサンホが、ときに交差するような動きで駆け込む。ボールを受け取り、サンホがキャリアとなれば、自身の「シンプルに強さと速さ」を繰り出す。


 突破力のある彼がプレーに絡んでくることで、相手はそちらも警戒しなければならなくなる。が、清水がボールを持ったままの選択肢もある


 同志社大戦では、幾度とこの場面が見られたのである。そうして清水もサンホもビックゲインを見せた。コンビネーションの相方、若き司令塔との連携を踏まえて、サンホは改めて自らの役目を話した。


 「僕をダミーとして使っていくという。『抜けてトライ』じゃなくて、『僕が起点に』です。そうして、BKが機能していると」


 WTBとしてのトライゲッターから、ポジションを移し、自らに課す使命は変わった。アタックの起点に、本人曰く『デコイ=囮』役を買ってでて、フィールドを駆け回っている。だが、そのさきのインゴールを目指すという姿勢は変わらず、ましてや、より強くなったとさえ感じさせる。


 「やってきたことを出せば、トライも取れるしディフェンスもできる。

 いまCTBで試合に出ている4年生は僕だけで。今年からCTBやのに、『オレらの分も』ってメールくれたりで。そいつらの気持ちを背負って、身体を張って。負けられないなと」


 そう意気込み試合を戦うサンホは、シーズンの佳境へと挑んでいく。これからは相手のマークも厳しくなるだろう。それでも、強い意思と肉体をもってして


 試合が終われば、口ずさんでいるかもしれない。テイラー・スウィフトの曲の歌詞を。


 【
But I keep cruising,Can’t stop,won’t stop moving


 キム・サンホは止まらない、誰にも止められない。

 


関西学院ラグビー

2014-11-25 22:24:17 | スポーツ

 

全勝優勝まであと1勝! 3位同大との一戦は前半から白熱した展開に。SH山戸椋介(社3)のトライを皮切りに後半も得点を量産し26―14でリーグ戦6勝目を手にした。
 
 
 チーム全員でつかんだ勝利だった。優勝を争う同大との大一番を迎えた関学。相手の得意とするセットプレーで主導権を握り続け序盤から攻守で圧倒する。その後も80分間運動量を絶やすことなく26ー14で勝利し全勝優勝に王手をかけた。
【キーマン】
  この勝利は山戸の活躍なしには語れない。関学SHには1年生時からスタメン出場している絶対的存在のSH徳田(商3)がいる。しかし、徳田がけがで今試合に欠場となったためAリーグ初となるスタメンの座を任された山戸。「思い切りやろうと思った」と気合を入れて勝負に臨んだ山戸は前半23分、貴重な先制トライを挙げる。その後も巧みなパスさばきでテンポを作り出し一躍勝利の立役者となった。
【二人の涙】
 山戸は1年生時の2月に左膝の前十字靭帯を手術し1年間実戦練習から離れていた。「ライバルとして刺激的な存在」と復帰後は徳田の背中を追い練習を重ねた山戸。試合終了後、「最高やった」と声を掛けた徳田の涙に誘われ山戸の頬にも涙がつたった。
【あと1勝】
  リーグ戦無敗で臨む京産大との頂上決戦。勝利か引き分けで優勝が決まる一戦を前に主将鈴木(商4)は「万全の準備をして臨む」と気を引き締めた。全勝優勝まであと1勝。関西の頂点はすぐそこだ。

関西学院ラグビープレイヤー外伝

2014-11-25 15:41:00 | スポーツ

エースSHの離脱。リーグ戦も大詰めを迎えて、チームに訪れたのは『緊急事態』か、いや『新たなる衝撃』だった。目標に王手をかける大きな白星の立役者となったのはSH山戸椋介(社3)。代役? ナンバー2? もはや、そんな枕詞を誰がつけられよう—


■山戸椋介『シンデレラストーリーは必然に』
 


 お互いに顔をくしゃくしゃにさせながら、試合終わりのゴール裏へと歩いていく。肩を取り合っていたのは山戸椋介と徳田健太(商3)の3回生同士、ポジションをSHと同じくする二人だった。


 やがてクールダウンが終了して、報道陣が山戸を取り囲む。いましがたピッチ上で描かれたシンデレラストーリーに注目が集まった。


 事態は急転した。リーグ戦も終盤に差し掛かった11月15日の第5節・立命大戦。激しい試合のなか、SH徳田が負傷した。手術を要するほどの症状で、その日の時点では復帰までに数週間はかかる、急いでも大学選手権か、などの見方が取られていた。


 とはいえども、次の試合は翌週に迫っている。少なからずのざわめきがチーム内に広がった。


 なんせチームの枢軸を担ってきた存在である。プレースキルの高さは言わずもがな、一年生次からトップチームに君臨、U20日本代表を経験し、今季のリーグ戦では関西ラグビー協会が選ぶマン・オブ・ザ・マッチに2試合連続で受賞されるほど。ここにきての負傷離脱は、痛手と見て当然だった。


 一方でエースSHが抜けたいま、こちらも当然に白羽の矢が立った名前があった。これまでの試合にてリザーブとしてベンチ入りを果たしていた山戸である。



 「特別、Aチームの先発だからと、いつも以上に考えずにはいました」


 11月23日、第6節・同志社大戦にて『9』番を着けた山戸は堂々とフィールドに足を踏み入れた。ジュニアリーグでは先発を任されていたが、Aチームでスタメンは初めてのこと。


 これまでの途中出場では限られた残り時間を突っ切ることだけを考えていた。では、スタメンのときは。キツさ自体は同じでも、時間が経つにつれて馴染んでいき、やがて本人曰く〝ランナーズハイ〟のような状態になるのだという。


 試合前、チームメイトたちには「80分間、持つかな」なんて漏らしていた。だが大一番で、彼自身がそんな疑心を吹き飛ばしてみせる。


 開始早々、試合の流れがどちらにも往きかねる時間帯。先手を打ったのは鈴木組だった。敵陣も深くはポスト下、ディフェンス網を割ってゴールラインへ山戸が飛び込む。が、がっちりと足を掴まれており、こぼれたボールにノックオンの笛が鳴った。逃した決定的チャンス、それでも


 「きわどかったです。けど、あのノックオンでいい意味で吹っ切れて。取り返そうと」


 前半、同志社大は積極果敢に攻撃を展開。元気な状態の相手を見定めたSHはチームにリズムをもたらすべくボールを配らせる。「そこで関学がアタックに消極的になったら、いままでやってきたことが無駄になる。相手を疲れさせるためにもアタックし続ける」


 そうして前半25分、待望の先制点が挙げられる。ボールを持った山戸がゴール手前で相対した相手FBをステップで交わす。最後の砦を華麗に切り裂き、トライを奪った。


 ポスト裏へボールを置いた山戸のもとへ一斉に駆け寄る仲間たちは喜びを隠し切れない。観客席の応援団たちも総立ちだ。その歓声のなか、当の本人は。


 「あまり覚えてないんです。。。無意識にプレーしてて。歓声も聞こえず、無我夢中でした。

 コンバージョン蹴ったときくらいに歓声が聞こえました」



 喜ぶスタンドから、フィールドを駆け回り先制点を我が手で獲得した背番号『9』の姿に感情を押さえ切れずにいたのは、他でもない徳田だった。序盤のあわやトライというシーンから泣きそうになっていたという彼の涙腺は、このとき決壊した。


 同期で同じポジション。SHという一つしかないポジションで、スタメンを飾るのはレギュラー争いを勝ち抜いた一人だけ。ウエイトトレーニングも一緒に入るなど切磋琢磨してきた関係を徳田は「頼りになる大きい存在です」と話す。自分が離脱し、そこに就いた同期の活躍ぶりに心を打たれていた。


 ピッチ上で体現した鈴木組のSHとしての役割。トライもさることながら山戸は80分間、チームに攻撃のリズムをもたらした。それは「テンポにパス、徳田にひけをとらなかった」と主将・鈴木将大(商4)が目を丸くさせるほど。もっとも「全然心配してなかったです」と笑ったキャプテンの期待に存分に応えるプレーだった。


 「初スタメンなんで不安の方が大きかったです。練習で不安を少しでも減らしていくしかなかった。そこは意識して」


 そう語る山戸本人が抱いていた不安を挙げるとすれば、徳田が担っていたトライ後のコンバージョンキック。ただ、それも横に頼もしい先輩が寄り添っていたことで、緊張も和らいだ。ジュニアチームも含めて、ともにキッカーを務めていた野崎勝也(経4)がキックティを持ち運ぶ補助係に。コンバージョンの際には「楽に蹴り」と声をかけてもらい落ち着いて蹴ることができたという。



 1トライに3ゴール、まさに大車輪の活躍で同志社大から勝利を奪う立役者となった山戸。自身が不安していたプレー時間も終わってみれば80分間を走り切った。「終わった瞬間は勝てて良かった、が大きかったです」


 安堵に浸りながら、仲間たちが待つスタンド正面へ。すると、目に飛び込んできたのは、目頭を熱くさせている徳田の姿だった。その涙につられて、山戸も熱き涙が溢れ出た。二人で肩を組み、クールダウンへと向かう。囲うようにチームメイトたちも歩き、80分間の戦いを讃え合った。


 かくして、チームが関西制覇への切符をかけた大一番で、シンデレラストーリーは綴られた。


 監督に続いて、記者たちが殺到した山戸は「人生で初めてで、何言ってるか分かってなくて。テンパりながらも、しっかり話せたかな」と、そのときの様子を振り返る。その姿を見ながら、目元を赤くした徳田は口にした。


 「やりすぎ出来過ぎです()。ほんと良かったです」


 笑みを含ませ、おどけた表情を浮かべたが、喜びと驚きと、そして少なからずの危機感がエースSHの胸に芽生えたか。「来週にはいけるかも」と徳田は早々の復帰を明言し、取材陣の要望もあって、山戸との2ショット撮影に応じていった。


 自分たちのラグビーをピッチ上で実現することにおいて、攻撃にリズムをもたらすSHの存在。欠かせないピースがまた一つ、ここに誕生した。


 しかし、その表現ももはや失礼かもしれない。己の立つフィールドで、いつどんな場面でも態勢を彼は整えていた。突然ともいえるスタメン抜擢にも、平常心で自分のプレーをやってみせた。


 「関学のSHは徳田だけじゃないということを証明できました!ちょっと調子乗るんですけど(笑)」


 生来の性格からか謙遜し、山戸は微笑んだ。いやいや、断言しても構わない。それにふさわしい活躍を、君はしたのだから。

 

 


関西学院プレイヤー外伝

2014-11-20 21:58:01 | スポーツ

 

その座を巡る競争のもとで、お互いに切磋琢磨しこれまでを過ごしてきた。3年生次にレギュラーに座った古城宙(社4)と、ラストイヤーでスタメンを勝ち獲た原田陽平(経4)。二人の思いが最後のリーグ戦で交錯する。


■古城宙/原田陽平『モチベーションという名の友情』
 

<左>古城宙/<右>原田陽平
 

 寒さは吹き飛び、熱気がこみ上げた。試合を見守りながら声を張り上げ応援するスタンドから注がれた歓声。


 11月15日の関西大学Aリーグ第5節も後半28分、チームはメンバー交代のカードを切った。ピッチに投入されたのはSH山戸椋介(社3)と、LO古城宙だった。


 このとき試合は関学が敵陣に侵入し、マイボールのラインアウトを獲得した場面。ライン際に集まり、FW陣が列を作る。そこに向かう古城と交錯するように、交代を告げられた原田陽平がベンチの方へ向かう。相対した瞬間、原田は古城の身体に手を当て、少しばかり立ち止まり、そうしてラインの外へ出た。


 やがてFW陣の横列にたどり着いた古城へ、ピッチにいたメンバーたちから矢継ぎ早に声が飛ぶ。


 『ふるき、サイン分かる!?』


 ラインアウトで古城が投入されたポジションは、ちょうどジャンパーの位置だった。「あとは取るだけ」。自身のファーストプレーにて、しっかりとボールをキャッチした古城は、久しぶりに踏み入れたフィールドを再び駆け始めた。



 ちょうど一年前のリーグ、奇しくも第5節の対立命館大戦から。スターティングメンバーに「古城宙」の名は確たるものとして刻まれるようになった。3年生次の春にトップチーム入りを経験。層厚きFW陣でレギュラーを獲得すべく、実に10キロもの増量を自らに課し、まわりとの違いを生み出した。そうして秋のリーグ戦半ばからはスタメンを飾るまでに。「狙っていたところなんで、うまくいったな」と喜ぶと同時に「すごい上出来やった」というシーズンだった。


 レギュラー獲得を何より念頭に置いていた3年生次を経て、やがて「チームが勝つ為にどうするか」を考えるようになる。味わったことで芽生えたトップチームの矜持を胸に古城は大学ラストシーズンに臨んだ。


 春先こそは一つ下のカテゴリーで出発したものの「トップのメンバーに身体で負けることはなかった」とレギュラー奪回に意欲を見せていた。しかし6月に入ろうかという時期に、患っていた怪我が悪化。輪をかけるように併せて腰のヘルニアを抱えてしまう。強いられた長期離脱。「めげそうになっていた」と古城はこのときの胸中を明かした。


 そのレギュラー経験者である同期と争って、春からアピールを続けてきたプレーヤーがいた。同じくLOの原田陽平だ。3年生次にわずかながらも公式戦出場を果たし、最後の年へ。「自分の強みを出していって切磋琢磨していくことがチームの為になる」そう心に決めて、レギュラー争いへ挑む。背番号『5』番の一番手として春シーズン、そして夏の合宿を乗り越えた。


 リーグ戦を直前に控え負傷し、開幕戦は外れたものの、第2戦にはベンチ入り、第3戦で定位置であるスタメンに返り咲いた。


 トップチームで戦うこと。ここに、昨年の経験を踏まえて原田には一貫して抱く思いがある。それはファーストジャージを着てピッチに立ち、試合前に校歌を歌う際のこと。スタンドから自分たちにむけて視線を送る仲間たちの姿を見て、「ゲームに出れない人のぶんまで戦う」、そう意気込むというのだ。


 ラストイヤーで本格的にブレイクを果たした原田。もとのポジションはFLだったがLOへのコンバートを打診され、レギュラー争いの激戦区へ身を投じた。LOとして戦い抜くと覚悟し、果たしてその座を獲得した。


 トップチームの矜持を宿しプレーする一方で。彼は、その場所を争ったライバルへの思いを巡らせていた。復帰にあえぐ古城に、原田は言ったという。


 「戻ってこい」


 練習終わりも、ともに近くの銭湯へ行くほどの間柄。ポジション争いの上では一番のライバルである存在を、古城はこう表す。「僕の味方ですからね、一番分かってくれている」


 その同志の激励とトレーナー陣のサポートを受け古城は戦線に戻ってきた。4ヶ月間のブランクを越え、リーグ第5戦にてリザーブに名を連ねた。


<原田陽平>

 後半28分、FW陣の列に向かう古城は、前からやってきた原田から声をかけられた。けれども、自身のカムバックもあってかいっそうに増した大歓声と、加えて選手たちから飛んできたコールによって、かけられた言葉はかき消されてしまっていた。


 試合後に原田はこのときかけた言葉をこう明かしている。「『頼むぞ』って言いました」


 チームメイトからバトンを託された古城は、難なくセットプレーをこなす。試合が始まる前は緊張していなかったと話すが、いざ出番がやってくるとこみ上げてきたか。残り時間は15分だと自身に言い聞かせゲームを乗り切ったという。


 実のところ、試合前からあらかじめ『バックローの選手を交代する際は古城を投入する』と決められていた。


 「古城が返ってきて交代したのは嬉しかったです。最後まで出たい気持ちはありましたけど、安心できますし」


 そうベンチに引き上げた際の気持ちを語った原田の言葉に、二人の〝ライバル関係〟が存分に表れている。ポジション争いを繰り広げた同志とつむいだ言葉。


 「『どっちがレギュラーで出ても、全力で応援する』って言ってて。僕自身も、あいつがリザーブやから怪我しても大丈夫や!って思ってます」


 古城もまた、お互いのことをこう話した。


 「どっちがレギュラーでも全力を出せる、者同士です」



<古城宙>

 試合後、古城の頬のあたりには血と傷の跡が。プレー中、オーバーに入ろうとしたところ、味方の足裏のスパイクが顔面を直撃したのだという。流血に一瞬だけドクターとトレーナーがピッチ内へ駆け込んだ。それに続くように原田もベンチコートを脱ぎ、再び出動態勢を取ろうとした。だが、まもなく「大丈夫です!」との声が届き、原田は安堵にも似た表情を見せてベンチへと引き返した。


 仲が良いもの同士で作られたライバル関係。古城は「引き離してやろう」と息巻いてラストシーズンに臨み、原田はコンバートした以上「二人でポジション争いするのは分かっていた」と承知の上だった。


 シーズンを経て、スタメンにリザーブと、立場は逆転した。それでも、変わらぬものがある。それは、お互いの存在が、全力プレーを生み出すモチベーションになっているということ。


 サバイバルの果てに二人はいま、ともにファーストジャージを着て、リーグ戦の舞台に立った。戦友たちは、友情を互いの力に変えて、これからも戦火をくぐり抜けていく。

 



 


関西学院ラグビー

2014-11-20 21:54:34 | スポーツ

無敗の関学がまた全勝優勝へと一歩近づいた。昨年関西制覇を成し遂げた立命大との一戦は前半から関学ペースに。後半も流れを渡さず、33―10で開幕5連勝を果たした。
 
  昨年度関西王者を力でねじ伏せた。第5節を迎え佳境へとさしかかる関西大学Aリーグ。ラグビーの聖地・花園ということもあってスタンドは多くの観客で埋め尽くされた。第1試合で優勝候補である同大が京産大との全勝対決に敗れ会場の盛り上がりは最高潮に。続く4連勝中の関学と連覇を狙う立命大のビッグゲームに観客の期待がさらに高まった。
 前半に試合の主導権を握る鍵となったのはディフェンスだった。「練習通り全員で前に上がることを意識した」とFL中村(社4)。序盤関学は立命大にボールを奪われ攻めあぐねてしまう。しかし、粘り強いタックルから相手になかなかゲインラインを越させない。徐々にペースをつかみ始めた関学はWTB中野(文3)のトライを皮切りに得点を重ね前半を21―3で折り返した。
 後半に入ってもWTB中井剛(経4)のゲインで相手のインゴールに何度も迫るなど1対1での勝負で関学は立命大を圧倒する。運動量が落ちた試合終了間際にトライを許すもリードを保ち33―10で勝利を手にした。
 リーグ戦も残るはあと2節。同大、京産大との優勝を争う戦いは接戦が予想される。「毎試合決勝戦のつもりで臨む」と野中監督。5年ぶりの優勝へ。朱紺の戦士たちが歓喜の「空の翼」を響かせる。  


関西学院アメリカンフットボール

2014-11-12 01:30:46 | ブログ

「関西学生アメフット、関学大17-10関大」(9日、神戸ユ)

関西学院大が関大を17-10で下して、開幕6連勝。5連覇へ、23日に大阪市・キンチョウスタジアムで、同じく6戦全勝の立命大と優勝をかけて対戦する。

 関西学院大は白星は増やしたが、笑顔のかけらもなかった。1TD差で、今季初めて先制も許した。WR横山の42ヤードレシーブを皮切りに、主将RB鷺野(4年)のTDで逆転したが、
鳥内監督が「あんだけ反則したら次は無理!!」と、吐き捨てるほど反則も目立った。主将も試合後、喝を入れた。「立命やったらどうなるねん!!」。それに続いて「自分が反則を消す」と、宣言したのが主務の飯田(4年)だ。

 3年春までの選手経験を生かし、練習中は審判の役割も果たす。シーズン序盤からの課題克服へ、審判が立つ位置を変えるなど工夫してきた。大一番へ、選手やOBの力を借りながら、今まで以上に目を光らせる覚悟だ。

 23日の最終戦は2年ぶりの全勝対決。昨年は0-0と、立命DFを相手に無得点に終わった。「勝たないと進めない。死ぬ気でやる」と主将。「日本一を反則で崩されるのは嫌だ」という主務の思いを体現することが、天王山を制する近道となる。


関西学院プレイヤー外伝

2014-11-11 22:45:47 | ブログ

普段の修練がプレーに昇華される一方で、試合中に頭に浮かぶ自問自答。いま自分に出来ることは何か。不運から、ひとり遅れてリーグ戦を開幕させたFL中村圭佑(社4)が、フィールド上で出した答えとは。


■中村圭佑『野獣の咆哮』
 

 

 プレイグラウンドからだとゴールラインの反対側、インゴールをさらに深く奥へいった場所にカメラマンは並ぶ。そこにいても、その声ははっきりと聞こえた。


 「相手の方がしんどいんやから!!」


 後半も半分を過ぎた頃だ。敵陣に侵入し、ゴール前での相手スクラム。ぞろぞろとセットに向かうFW陣に対して、手を叩き、そう声を張り上げた男がいた。やや停滞感を漂わせつつあったチームを鼓舞したのはFLの中村圭佑だった。


 その一週間前、大学Aリーグ第3節を制した部員たちは試合が終わり会場の外で笑顔を見せていた。勝利の喜びと安堵から会話を弾ませるなか、井之上亮(社4)、金尚浩(キム・サンホ/総政4)らが中村を讃えた。


 「キレたら、目が変わるんです。外国人みたいに」

 「吠えてたもんな」

 「けーすけが吠えたら、試合もイケるな、って」


 つい先ほどまで繰り広げていたゲームは最後まで手に汗を握る展開だった。そこで中村が吠えた

 が、当の本人はあまり記憶がない様子。ただ、白い歯をのぞかせながら第3節、天理大との一戦をこう振り返った。


 「チームを締めようかと思ってて。自分が動けてないのは分かってたんで、声で。しゃべろうと」


 第3戦、中村は思うように身体が動かないことを自覚していた。ゲーム感覚の麻痺か、公式戦ならではのプレッシャーか。自身も嘆くような、とうてい納得のいかないパフォーマンス。実は、この日の天理大戦が中村にとってのリーグ開幕戦であった。



 10月4日、翌日には関西大学Aリーグの開幕を控えた晩のこと。夕食も済ませ、いすから立ち上がろうとした刹那、身体に激痛が走った。そのまま2、3分間は動けず。それは経験したことがないほどの痛みだったという。


 症状は、ぎっくり腰。すぐさま長瀬亮昌トレーナーが家に駆けつけ処置は施したものの、翌日の試合出場は不可能との判断が下された。


 「近大戦は一人で家におってツイッターで試合速報を見てました。

 やってしまったと。開幕直前でチームに迷惑をかけてしまった」


 試合の前日、それも晩である。緊急事態だったものの、チームは層の厚さによってカバー。鈴木組は開幕戦白星を飾った。


 翌週はスタンドからチームの2連勝を見届けた。今年の春には「怪我してポジションを獲られるのは嫌」と口にしていたところから、リーグ戦への思いを巡らせていたことだろう。そうして1週を空けてのリーグ第3戦。中村圭佑の名がスタメンに並んだ。


 自身にとっての開幕戦。疲労感に支配されながらフル出場を果たした。「今日は緊張しました」と一息つく。


 下級生次、周囲からは「緊張せんな」との印象を持たれていたが、本人いわく「してるつもりなんですけど、態度に出てない」。ラストイヤーはまた違った緊張が、試合に臨むにあたって胸にこみあげている。


 「正直、1、2、3回生と積み上げてきたものが薄かった。4回生になって気持ちの変化というか。『最後』がちらつく」


 リーグ戦を戦うなかで、中村はこうも話している。「4回生なんで出れる試合も限られる。一試合一試合、大事にしよう」と。


 春のパフォーマンスは出せなかった、と天理大戦は悔しげな表情を浮かべていた。それでも闘いに身を投じた実感を手に、その視線を次に向けていた。


 「天理大戦のために準備してきた。準備する大切さを持って。

 個人としてもパフォーマンスは上げないとダメですし、勝ったのは嬉しいですけど、次の準備が大切だと。しっかり準備して臨めば、良い結果につながるので」


 臨んだ翌週、11月4日の第4戦。万全の態勢をもってしてゲームに挑んだ中村の姿があった。



 試合が開始してまもないチームのファーストアタック。ナンバー8徳永祥尭(商4)が防御網を突破しゴール目前へと迫る。生じたラックからボールを持った中村の視界にゴールラインはしっかりと映っていた。横から止めにきた相手選手をかいくぐるように頭を下げて飛び込む。


 このときポストに頭を激突させながらも、インゴールへボールをねじ込んでいた。開始1分でのオープニングトライ。近くにいた仲間たちは鈍い音の正体に気づき、中村の頭部をさすりながら得点を喜んだ。


 のっけからのフルスロットル。チームも中村のトライを号令にしたかのように攻撃を展開する。


 「相手が、試合の入りに失敗したのも。圧力もかかってこなかったと。アタックもゲインも出来てて、継続したら点が取れる」


 試合開始からコンスタントにトライを重ねた一方で、迷いも生じていたという。悠々と突破しボールもつながる、そんな「うまくいき過ぎた」状況に、楽なプレーを選択しがいがちになっていた。


 ゆえに「前半は考えすぎた」と中村は話す。後半は、プレーする位置が近いナンバー8徳永のコンディション状態を汲み取り、自分からより積極的に動いた。


 チームは大きく点差を開けての白星を挙げた。中村は前週に引き続きフル出場。「前よりも動けたかなと個人的には思います」と試合後に述べた。


 ボールを持てば豪快に、相手のキャリアにも猛然と打ち当たっていく。これまでにも幾度と奪ってきたトライも今季第一号を決め、FL中村の健在ぶりをアピールしたゲームだった。


 「良かったです。トライ取りたかった。先週はバテバテだったんで」


 代名詞でもあるトライゲットも彼にとっては、持ち合わせる欲望の一つ。本人が話すに高校時代は違うタイプのプレーヤーだったとか。大学に入ってからも、BK陣にクリーンなボールを出すことを意識してやってきた。ただし、念頭に置き、むしろ溢れ出んばかりに、プレーに昇華されるのは「目立ちたい」という思いだ。自らトライにいくことを「下心が出ました」、なんて表現したりも。それも含めて、中村は明言する。


 「納得のいく貢献の仕方をしたい」


 フィールド上で描くは、ひたすらに勝利への貢献。第4節の大体大戦では自身が準備してきたことに「ボールを持ったら前進すること」そして「声をかけること」を掲げていた。


 だからこそ、試合時間が経過しようとも、自らの身体が動かなくともピッチに立つ限り、彼は声を張り上げていたのである。


 今シーズンの始め、中村はラストイヤーへの意気込みをこう語っていた。


 「これまでは先輩に頼ってた部分があった。それこそ言われるがままだった。

 今年はキャプテンばっかりに背負わせるのではなく、助けられるように。プレーだったり、コールだったりで」


 トライにディフェンスと、闘志をたぎらせ繰り出すプレーはもちろんのこと。魂の込められた雄叫びよ、ピッチに響き渡れ。


 

 


関西学院vs大体大観戦記

2014-11-05 13:24:31 | スポーツ

リーグ戦も折り返し地点へ。鈴木組は着実に歩を進めている。前節を乗り切り、第4節の大阪体育大戦の勝利で弾みはついたか。チームの強さと課題を紐解く。


■観戦記『倒れない男たちの行進曲』
 

 

 

 じかに味わった苦い思い出があればこそ、それを経験として活かすことができる。戦いの記憶は、また次の戦いの糧となる。


 一年前の関西大学Aリーグ戦にて、関学ラグビー部はまさに天国から地獄へと突き落とされた。のちに関西王者となる立命館大を相手に演じた(それこそスリルをはらんだ)勝利に歓喜した翌週。その天理大戦ではペースを掴めるまでもなく、結局はノートライでの完敗を喫し落胆した。そこにあった気の緩みをピッチに立った誰もが自覚していた。


 それから一年が経ちリーグ戦を戦うは鈴木組。開幕から2連勝を飾り、10月26日の第3戦では天理大から命からがら白星を勝ち取った。そのあまりにドラマチックなゲームにチーム一同、喜びを爆発させた。


 と同時に、そのシーンに既視感を覚えた人も少なくはなかっただろう。去年の記憶が重なった。


 だが、それも杞憂にすぎなかった。


 昨シーズンからトップチームを経験してきたメンバーの多くが今季も戦っている。刻まれた苦い記憶を、しかと教訓にしていた。


 11月1日、リーグ第4節。鈴木組の面々はプレーで、そのことを証明してみせる。



 立ち上がりはどこか慎重、ときには受け身にもなってしまうのが長年の課題である関学だが、この日はゲームが始まった瞬間からトップギアだった。開始1分にFL中村圭佑(社4)がポスト下にトライを決める。FW陣を代表する攻撃手のオープニング弾に導かれるかのように前半半ばで5本ものトライを重ねた。


 「相手が入り失敗したと。圧力もかかってこなかった。ばんばんトライが取れて。でも相手が強いのは分かってたんで締めていこうと」


 試合の入りをそう語った中村は、自分たちのアタック力を再認識した。


 「アタックもゲインも出来てて。継続してたら点が取れると」


 悠々とゴールを割っていく攻撃陣。それ以上に目立ったのは、トライを奪うまでの過程だった。今季のスタイルであるボールをつなぐ「継続」ラグビー。この試合では、インゴールまでの道筋がいっそうに、流れるように展開された。


 相手ディフェンダーが立ちはだかり、絡まれようとも、彼らは倒れなかったのである。そうして一歩でも二歩でも前進し、サポートに入る味方へボールをつなげる。


 倒れず、足を掻き出すこと。『レッグドライブ』がこの日チームが掲げたテーマだった。


 その狙いを、とくに〝倒れなかった〟プレーヤー、CTB金尚浩(キム・サンホ/総政4)は「こっちが早く倒れてしまうと、ラック側でペナルティが増えてしまう」と話した。加えて、自身が身を置くBK陣がそうすることへの重要さにも言及した。


 「これまでタックル入られたときに倒れることが多かった。自分の13、15番、11番、14番が一発で倒れるとFWもそこに寄ってこれない。どれだけBKが我慢できるか、です」


 前節ではボールキャリアが孤立する場面も多く見られた。サポートが遅れたことも一因であるが、キャリア自身が立ち続けることでほんの少しでもボールを渡すまでの時間を稼ぐことができれば。攻撃は継続される。


 『倒れない』といえば、CTBの勝川周(経3)はそのことを代名詞とするほど。もちろん彼も自らの持ち味を最大限に発揮し試合のテーマを遂行した。そうして後半23分にはゴール前で相手ディフェンダーに絡まれながらも、身体を回転させ振りほどき、最後はナンバー8小林達矢(経3)へパスを放つ。


 そのパスを受けた小林も二人がかりで止めにきたディフェンダーを引き連れながら、インゴールへボールを叩き込む。まさしく〝倒れない〟男たちによるゴールシーンだった。


 豪快に相手の防御網をぶち破り、捕まれどオフロードパスで攻撃をつないでいく。最終的には9本のトライを奪い、大体大に勝利した。


 明確だった、倒れないことへの意識と、それによって実現したトライラッシュ。ただし文句のつけようがない快勝だったかというと、そうではなかった。


 「前半はうまくいく過ぎてて。一気にいこうとしてた反面、抜けたらどうしよう、って。簡単にいこうとし過ぎていました」とは中村の述懐だ。相手の圧力をはねのける強さはメンバー全員が持ち得ていたものの、その容易さゆえに時間が経つにつれ次第に緩みが。


 「いい流れでぽんぽんと点が取れて、テンポも出ていた。けれど、最後の時間帯は軽いプレーが増えて。軽いプレーが目立って、継続が出来ずに、テンポも出なかった」


 そう辛く口にした主将・鈴木将大(商4)の台詞は、トライ数も含め前半と後半で打って変わったゲーム展開を示していたか。



 このゲームを通じて実感したことがある。それは今年のチームが、例年以上に「実現する力」を持っているということ。試合に臨むにあたっての目論みを確実に遂行しているのだ。であるからにして。中村はこう言い切る。


 「勝つことへのプレッシャーよりも。今年は春から、それこそ4年間で一番キツい準備をしてきた。

 それをうまく出せるかです。出せたら絶対に、負ける試合はない」


 指し示された白星への道筋を着実に進む。大体大戦では『レッグドライブ』もさることながら、実のところFW戦でもそれが見て取れた。サイズに勝るヘラクレス軍団を相手に、スクラムそしてモールで優位に立とうと踏んでいた。そのたくらみどおりに、FW陣は一丸となって相手をうち破った。


 無傷の4勝という現状は、チームの実力を表している。「実現する力」をもってして、一戦ごとにチームを引き締めることをも、この日は実現できた。サンホは話す。


 「自分が1年生の頃からレギュラーで試合に出させてもらってたなかで、ここらへんで浮き出すくせが関学にはある。それを経験してきた人間がチームに伝えていけたら。今日を乗り越えられたのはデカい。

 次は1週間空くんで、天理大戦のときのようにしっかりと準備して。変に構えて、チャレンジャー精神を忘れちゃだめ。来週も再来週も声を出していきます」


 サンホがさらりと、しかし強く言い放った最後の言葉。声を出す。それこそが、果ては「実現する力」を左右する。


 第4戦を終えた後。いま一度、チームの課題を主将はこう挙げたものだ。


 「声ですね。点差が開くと、声が減る。それがハンドリングエラーにつながったりも。80分間、出し続けたいです」


 いかなる状況でも、しゃべり続けよう。叫ぶのもいいだろう。そうすれば、自分たちのラグビーがもっと実現できるに違いない。


関西学院ラグビー

2014-11-04 23:17:14 | ブログ

注目の若手選手が勝利を引き寄せた。リーグ戦開幕後負けなしと不屈の強さを見せている関学。大体大とのリーグ第4節でも好調をアピールした。なかでもSO清水晶大(人2)が2トライを決めチームを盛り上げた。
 
 負けない関学ここに健在! 天理大との激闘を制した一戦から1週間。大きな自信を手に入れた朱紺の戦士たちは強力FW陣を擁する大体大とのリーグ第4節に臨んだ。ボールを継続し流れをつかんだ関学は61ー14でまた一つ白星を手にした。
<FW>
 FW陣の健闘が勝負の行方を左右した。体格の大きな選手が多い大体大。関学FW陣の活躍が光り、相手を撃破した。「新チーム始動時からFWのユニットを重点的に取り組んだ。試合以上に厳しい練習をしてきた」と主将鈴木(商4)。試合後半でも衰えない体力と強靭(きょうじん)な精神力は血のにじむような努力のたまものだ。
<BK>
 BK陣では、今シーズン開幕戦から4戦連続でスタメン出場を果たしている清水が2トライを決めるなど存在感を示した。「昨年のように悔しい思いは絶対にしたくない」と清水。固い決意を胸に迎えた大学ラグビー2年目の年。清水は本格的に増量とウェイトトレーニングに取り組み、入学時と比べ12㌔の増量に成功した。当たり負けしない体を作り上げ、ハンドオフも強くなった。躍進を遂げる活躍に期待が高まる。チームの司令塔として朱紺のユニフォームに記された10番は誰にも譲らない。