Tedのつゆ草の旅

母校関西学院ラグビー部とアメリカンフットボール部の試合を中心に書いているブログです。

rugby

2012-11-30 15:59:35 | ブログ

リーグ最終戦にて、たどり着いた境地。つまりは『カンガク・ウェイ』。いま、藤原組は一つの答えを導き出した。

 

■観戦記『藤原組のファイナルアンサー ~近大戦~』

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 試合後のチームの全体集合。部員150人が集う輪に向かってマコーミックHCが前に出る。開口一番、「イエス!!」。その顔は、普段から見せる笑顔よりもさらに高陽している様子。そのわけは、やはりこの日のゲーム内容にあるだろう。11月25日、リーグ最終戦で藤原組が見せたラグビーとは。

 消沈ムードに突入しようとしていた。前半開始から許した連続トライ。相手ペースになっていたわけではない。ただ、歯車に微々たる狂いが生じていた。グラウンドコンディションとのミスマッチもあったという。しかし主将・藤原慎介(商4)が要因に挙げたのは「意思疎通」だった。ディフェンス面、とりわけ組織的な守備に関してはシーズンを通して培ってきた部分。ディフェンスにあたり「誰がどこを見るか」、そこで生じた歪みを近大に突かれた形だった。

 だが、序々に組織面での本来の動きを取り戻す。それにつれて、ボールを持つ時間帯も増えていく。チャンスをものに出来ない場面が続くが、逆襲の時はいままさに訪れようとしていた。そうして前半33分、今季大活躍のWTB畑中啓吾(商3)が、持ち味のスピードとパワーをミックスさせたプレーでインゴールを割る。トライゲッターが決めた一撃が持つ効力か。直後、攻撃に転じてBK陣がボールを前へ運ぶなか、CTB松延泰樹(商4)があわやノックオンのぽろりと思いきや、〝幸運の左足〟でチップキックの形に。インゴールへ転々とする楕円球を松延が押さえ、あっという間に同点となったのである。前半を終え、14-14の同点。反撃ムードで充たされた前半最後の10分間の好転は、残り40分間で繰り広げられる協奏曲のプロローグに過ぎなかった。

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 この試合、初めてSOとして先発出場を果たした春山悠太(文4)は話した。「近大も良いディフェンスするチームで。前半はこっちが攻めて攻めて」、それでも取り切れずに、ああいう内容になったのだと。後半に臨むにあたって「やっとスイッチ入ったな、と」。前半40分のスコア上の拮抗なぞ、どこへやら。後半、怒濤のトライラッシュが幕を開けた。

 その攻撃は、相手の気力を奪い、足を止めてしまうまでのものだった。リーグ戦を通して幾多のトライを上げてきた面々が、この日も攻撃のフィニッシュを飾る。もはや得点シーンは、リプレイを見ているかのごとく、一つのパターンとして繰り出されたものだった。

 言うならば。春山は端的に述べる。「フィットネス。それが自分たちのやりたいラグビー」。グラウンドに立つ全員が攻守両方の場面で走ること。ボールキャリアーが前に出る。相手のディフェンスにより止まる。そこに走り込んでくるFW陣。ボールを確保し、態勢を整える。広がるBK陣へボールが渡る。ボールの動きとともに、展開しゴールラインまで走り切る。

 その動きが、途切れることが無いのだ。フェイズを重ねること、いやそれもあるが、40分間一時もこちらの足が止まることが、無かった。それが相手の心を折った一因だろう。

 予兆はあった。前半最後の10分間、反撃の狼煙となったプレーもまさに同じような展開だった。後半の40分間、その展開をやり続けた結果が、実に7トライにだったのである。このアタック面について主将はこう語る。

 「とにかく順目順目に。FWも一生懸命走って、ポイントを作って、空いたスペースにBKが働いてくれる。FWが頑張って走れば、BKがトライを取ってくれるという信頼感があります」

 FWとBKが織り成す剛柔多彩の波状攻撃。それはまるで、協奏曲の如し。FW陣も身体を張り、ときにボールを運ぶこともいとわない。最たる例は一列目の男・PR幸田雄浩(経4)だ。前節の京産大戦でも見せたように、ボールを持ち自ら突き進むシーンがこの日もあった。相手ディフェンダーとの衝突ありきのそれを〝剛〟と呼ぶならば、〝柔〟はやはりBK陣なかでもバックスリーだろう。スピード、テクニックそして強さも相まって決定力はもはや言うまでもあるまい。松延、畑中を筆頭にフィニッシャーとしての役目を存分に果たしている。

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 今シーズン、新しくチームにやってきたマコーミックHCは藤原組に、彼らに見合ったスタイルを落とし込んだ。今年のチームに備える機軸。現在のラグビー日本代表を率いるエディー・ジョーンズ監督が提唱した『ジャパン・ウェイ』に倣った、『カンガク・ウェイ』なるもの。この夏の時点で、HCは言い放った。

 「1にフィットネス、2にディフェンス。3にアタックで4にコンタクト、そして5番目にセットプレー。これが『カンガク・ウェイ』になります。フィットネスは厳しく見ていて、走れないとトップチームに上がれないほどに。いまフィットネスを軽視する人は少ないです」

 とにかく、走れることをチームに求めたのである。技術や戦術よりも、動けること。メンバー選考でも、このフィットネスが重視されたという。そして、そこからチームのスタンスとして、守れることを第一に据えたのである。

 以前、主将は口にした。「走って、走って、ディフェンスして、勝つ」。春シーズンは、それらに終始した。対外試合はロースコアに持ち込むゲームプランを徹底して実践。練習時間はディフェンスの構築に費やしてきた。もとより、昨年の新里組のスタイルだったアタッキングラグビーの財産を引き継いだ点もあったが。それゆえに、攻撃面は度外視し上半期を乗り越えた。

 半年間を終えて、手応えはあったのだろう。それとも、チームの強化の工程表に組み込まれていたのか。夏からアタック面の増加に取り組んだ。秋、『カンガク・ウェイ』は、陽の目を見るところまで迫っていた。

 こうして藤原組はリーグ戦へと臨んだのである。一つの完成形を持ってして、大一番でもあった開幕戦に挑む、そのつもりだった。だが、強敵・天理大が相手だっただけに、チームはここで勝利至上主義のもと方針を変更する。主体としたのは、キックで陣地を獲得するもの。それが黒星という結果に直結したわけでは決してないが、自分たちのラグビーはなりを潜めていた。

 相手への対策を講じるばかりに、いつしか相手の土俵のなかでラグビーをしてしまうことになっていたのだ。リーグ戦の最中、チームは再度確認する。自分たちのラグビーとは、と。

 ようやく『カンガク・ウェイ』の実現がなされた。2勝2敗で迎えた11月3日の摂南大戦。順目に人とボールを動かすことを意識づけした。片鱗が見えてきた。

 続く京産大戦。ディフェンス面では課題が残る内容で相手との打ち合いになったが、80分間の最後の最後までメンバー全員が走り切った結果、大逆転勝利を収めた。

 そして、リーグ最終戦となった近大戦。後半40分間、相手に1つのトライも許すことなく、ねじ伏せた。

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 何度も言おう、走れることは前提だ。ディフェンス力、それは負けない為の絶対条件だ。そしてアタック力、勝つ為の必要条件である。

 上半期を経て、藤原組はディフェンスラグビーが機軸となると思われた。試合を見てきた者は、誰もそのことを疑わなかっただろう。しかし、どうだろう。封印してきた攻撃力が加味された今のラグビーは。そう、これが進化の証、藤原組が導き出した答え、『カンガク・ウェイ』なのだ。

 面白いことに、春シーズンでは幾度とパワーあふれるトライを見せてきた主将・藤原だが、このリーグ戦で奪ったトライ数は0。それだけ、いまはBK陣を中心に攻撃的な要素がチーム全体へ万遍に行き渡っていることを意味しているのではないだろうか。

 近大戦、チームの司令塔としてボールを配球した春山は振り返った。「チームがやろうとしたことが出せたのが、嬉しかったです」。

 リーグ戦が終わり、結果として関西3位。主将は「正直、悔しいですね」と漏らした。けれども、もう間もなく全国の舞台が藤原組を待ち構えている。

 「関学のスタイルを徹底すること。今から新しいことをしても仕方がないので。精度を上げていくことで。

 どの試合も勝たなければならないのは決まっている。自分たちのラグビーが関東に通用するか、それを試せるに十分な相手。楽しみ、だと」(藤原)

 『カンガク・ウェイ』を、今こそ見せつけてくれ。


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2012-11-15 01:47:52 | ブログ

逆転勝利でリーグ戦4勝目をつかんだ!12―19とリードを許したまま迎えた後半。後半に入ってもなかなか関学はペースをつかめずにいたが、後半32分に試合が動いた。ナンバー8中村(人2)のトライを皮切りに勢いづいた関学は、4連続トライで京産大を突き放し見事逆転勝利。3位への希望をつないだ。

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 関学はPR石川(社4)のトライで先制点を奪った。そのまま勢いに乗るかと思われたが、京産大に一気に3トライを許し、まさかの逆転。12―19で前半を折り返した。
 「もっとシンプルに丁寧に順目から攻めよう」。主将・藤原(商4)は仲間に声をかけた。後半開始早々、関学はPGで得点。そしてWTB金(総2)のトライで22―19と逆転に成功する。だが立て続けに京産大にトライを許し、22―33とまたもビハインド。流れは京産大へと傾きかけたが、残り時間10分、関学の逆転劇が始まった。中村のトライで4点差まで詰め寄る。その直後にはSO水野(人2)からパスを受けたWTB松延(商4)がインゴールへと駆け込みトライ。34―33と関学は再度逆転に成功した。松延に続き、CTB春山(文4)、WTB畑中(商3)が立て続けにトライを挙げ、48―33でノーサイド。「自分たちが逆転した後も慢心がなかったから、あの時間でも立て続けにトライを取れた。終盤のようなプレーを始めからできていれば」と松延は振り返った。関学は見事な逆転劇を演じ、貴重な白星を手にした。
 関学は最終戦で近大に挑む。勝者が関西3位となる。絶対に譲れない戦いだ。藤原は「1週間でしっかり準備をしたい。再度チーム全体でアタックの意識付けをする」と気を引き締めた。

【春山悠太】
 後半36分にCTB松延(商4)のトライで追い付き、逆転に成功した関学。その3分後、押せ押せムードの中、CTB春山(文4)が魅せた。
 「自分の持ち味はトライを取ることじゃない。でもできれば取りたいと思っていた」。敵陣10㍍のラックからパスを受け、相手をはねのけながらインゴールに飛び込んだ。試合を決定づける、今シーズン自身初トライを挙げた。周りを生かすプレーを持ち味とし、今季のWTBの躍進を支えている春山。最終戦も泥くさいプレーでチームを勝利に導く。

 

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2012-11-05 23:10:46 | ブログ

 関学が好調を取り戻した。前節の立命大戦では天候を味方にできず実力を十分に発揮できなかった。しかし、この日はWTB畑中啓吾(商3)が3トライを奪うなど関学が終始主導権を握る試合展開となった。前半を完封し、後半に失点を許すも摂南大に40―7で圧勝した。

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 「これ以上負けたくない」。熱い思いを語ったのは畑中だ。前節で今リーグ2敗目を喫した関学。これ以上黒星を重ねたくないというチーム全員の思いは勝利へつながった。 
 キックオフ直後から関学の攻撃力が光った。前半2分、WTB金尚浩(総2)がゴール左端にトライ。そして続く15分、22分には畑中が連続でトライを奪取し、28―0で前半を折り返した。 
 このまま関学が主導権を握り続けるのかと思われたが、後半10分に攻め込まれ失点。反撃を許した関学だったが、簡単には引き下がらなかった。再び関学に流れを引き戻したのは畑中だ。畑中  がボールを持つと観客が沸いた。その期待に応えるかのように後半13分SO安部(経4)からのパスを受けこの日3本目のトライ。試合後畑中は「安部さんや春山(文4、CTB)さんが周りをよく見て、的確なパスを回してくれたおかげでトライを決めることができた」と自身の得点シーンを振り返った。試合は40―7で摂南大を圧倒し、関学はリーグ戦3勝目を飾った。
 計6本のトライのうち3本を決め、キックでは6回中5回を成功させる大暴れでチームを鼓舞した畑中。しかし、その活躍の裏には前節の立命大戦で得点に絡むことができずに敗北した悔しさがあった。その悔しさを見事に晴らした畑中は、大車輪の活躍で勝利の立役者となった。