Tedのつゆ草の旅

母校関西学院ラグビー部とアメリカンフットボール部の試合を中心に書いているブログです。

X,sの季節

2017-12-05 14:55:42 | ブログ

そろそろ、街中でX,sソングが流れる季節になりました。

イブに愛の告白などする人もいるかと・・

【僕の好きな讃美歌】

 

「賛美歌320番」主よみもとに近づかん (心が洗われる讃美歌!)

https://www.youtube.com/watch?v=94XDAo7T1FU

 

 

「賛美歌312番」いつくみし深き(お馴染みの賛美歌!)

   https://www.youtube.com/watch?v=Bo-Cmd3JM4c

 

 

「賛美歌405番」神と共にいまして また会う日まで Goodbye(さよならの語源)=God be with you

(世界で一番美しい旋律で泣ける(?)讃美歌!)

https://www.youtube.com/watch?v=fkPJOog7h90

 

 

「讃美歌453番」きけやあいのことばを(心が弾む讃美歌!)

 https://www.youtube.com/watch?v=w_X67JwGd4M

 

 

 Il Divo -「 Amazing Grace」(世界中で歌われている讃美歌!)

https://www.youtube.com/watch?v=GYMLMj-SibU

 

 

        関西学院クリスマス礼拝

 https://www.youtube.com/watch?v=XPwouTrCKY0
    


関西学院ラグビー部プレイヤー外伝

2015-08-08 14:31:05 | ブログ

掲げた目標は、昨年以上の成績を挙げること。昨シーズンは一つの頂に立った。背負う看板に、周囲からの比較の目も、今年のチームには注がれる。主将・徳田健太(商4)らの言葉で紡ぐ、2015年シーズン前半の戦闘譜。


■徳田組『ネクストレベルへのステップ』
 

 

 


 これまでに関学ラグビー部が刻んできた歴史を鑑みて、野中孝介監督はこう説いたことがあった。


 「関西制覇を達成して、その翌年も優勝もしくはリーグ上位につける。そして、ずっと大学選手権に出続けられていること。そのことは大事にしていかないといけない」


 2014年度、チームは関西全勝優勝を命題に、果たして戴冠を遂げた。5年ぶりとなる『関西王者』の看板がかけられ、臨む翌シーズン。新チーム『徳田組』が掲げたのは「関西全勝優勝」そして「打倒関東」だった。


 リーグ戦では無敗も、全国の舞台では一つの白星もつけられずに終わった昨季。それを超えることを使命とした。


 ただし、頂への登山道は裾野から厳しさを伴った。昨年の『鈴木組』はそれこそ下級生次からトップチームを経験してきた面々が並んでおり、黄金世代が存在を示したシーズンであったことは明白。新戦力のプレーヤーの台頭は見られたが、当時の中心選手が卒業したことで今年の顔ぶれは大きく変わった。そのことを、他でもない今季の上級生たちは意識していた。主将に就いた徳田は「自分らの代でゼロからのスタートになる」とハッキリと口にした。


 むろん、自分たちのラグビーを作り上げることへの〝スタート〟の意味合いも含んでいただろう。自陣からでもボールを継続しリズムよく、かつ粘り強く攻め込むスタイルを昨年は実行した。今年はそれに加えてキックによる陣地獲得を手段として増やし、徳田いわく「蹴る判断もパスの判断も求められる、去年よりも考えるラグビー」を目指している。


 シーズン初戦は4月19日、対するは京産大。前半は拮抗も、後半は連続トライにくわえ相手の攻撃をゼロ封(5219)。走り勝つという前年度の強みも継承され、初陣を飾った。


 「内容は良くなかった」と主将は辛く口にしたが、この時点では春の一発目。長所も欠点も明るみになってしかるべき。だがチームはここから混迷を極めることになる。


 同志社大に黒星を喫すると(4月25日/3145)、近畿大を相手には「攻めるたびにターンオーバーを許し、カウンターから失点」し敗北(5月17日/3552)。5月5日の関学ラグビーカーニバルの天理大戦は市橋誠(商2)の活躍はあれど、全体を通して見ればなす術無く終わった内容だった。


 その試合後に副将・石松伸崇(商4)は激白した。


 「徳田がね投げる相手がいないと言ってるんです」



 ポイントが生じれば何度も顔を出し、ボールをさばき、攻撃にリズムをもたらす。一年生次からトップチームの『9』番を着け、この3年間つねにチームのタクトを振るって来た。


 徳田が漏らした嘆き。改めて本人に聞いてみた。


 「今年は新しいメンバーで臨む試合も多くて。なかなか良いアタックが出来てない。FWの形だったり、シェイプだったりが上手くいってないですね。

 こっちに合わせてもらうくらいに、どんどんFWに要求していきたいと思います」


 フィットネスしかり、個々の強さしかり、前年度を基準として見れば確かにそれらは上がっているという。走れるし、強さも伴っている、ただしピッチ上で昇華されていない。


 徳田組が抱えるウィークポイントとは。その答えの一つは、主将が口にした「新しいメンバー」という台詞にあるだろう。


 新戦力を交えて臨むぶん、その彼らには大学トップレベルでの経験値が少ないのである。

 オープン戦とはいえども、対するはAチーム。激しさやプレッシャーも異なり、勝負所の見極めも求められる。フィールドに立つ誰もがリーダーシップを発揮し声を張り上げチームを鼓舞する必要がある。


 しかし今季のチームでは、それらを体現できる者が限られている。「点を取られたり、やられたら落ち込んでいく。うるさいくらい、しゃべっても良いと思うんです」とは石松の証言だ。


 春シーズンゆえに、セットプレーの精度、選手ひとりのフィールドプレー、チームの連携面も発展途上なのは当然。けれど、それ以外に備わるべき点が不足がちなのは、経験不足も一重に関係してよう。


 関学ラグビー部の長年の課題である、試合の立ち上がりの部分で先手を打たれてしまうことも。「相手の様子を見てから、それで〝受けて〟しまうのが悪い部分」と徳田は言う。


 自分たちのリズムでプレーし、試合のペースを早々から握ること。そのために必要なのは日々の修練であり、そこで築かれる自信。


 「自信をつけていくには時間もかかるけど、そんなことも言うてられないんでね。個人の自覚とか、それこそ4回生がどれだけラグビーに取り組めるか、とか。まだまだ甘いんじゃないかと。

 焦りは無いことはないです。ベストゲームというかうまくいってる試合がここまで無いんで。練習でもすごい良い練習が出来る日と、落ちてしまう日があって。

 早い段階から取り組めるようにならないと、危ないんじゃないかと思います」


 白星が遠のき春シーズンも半分を消化した5月。主将は焦燥感と危機感を隠さずに、しかし翌月に迫るファーストジャージを着用しての連戦に気持ちを向けていた。


 「関東の大学との試合だったり定期戦があって、これまでの練習試合とは意味合いも違ってくるんで。アンガスとも話してて、絶対に勝ちにいこう、と。これからは勝利という結果が大事になってくるので、そこにこだわって戦っていきます」



 上半期の最終月。6月7日の京都大との定期戦を皮切りに、徳田組は4週間連続でファーストジャージを着用した。


 京大戦では4回生を中心としたメンバー編成で臨み、「タフチョイス=辛いことに率先して取り組んでいく」テーマを、それこそ4回生たちが徹底させる。一つの被弾も許さず、一方で最後まで走り切り圧勝する。(970)


 翌週は神戸大との交流戦(7912)に加え、兵庫県フェニックスラグビーフェスティバルのメインカードとして慶応義塾大と対戦。リードこそ奪うことは出来なかったが、一進一退の攻防を演じてみせる。バックス陣の妙技が光り、また大型新人FL野村祐太(社1)のトライなど見所の多い試合だった。(1233)


 6月も下旬に入り、朱紺の闘士たちは関東の地へ繰り出した。21日は青山学院大との定期戦。新しいグラウンドのこけら落としとなった一戦は、徳田組がペースを離さず。FW、BKがともに強さを見せ敵地で白星を掴んだ。(4514)


 春シーズン最後の対外試合は27日の関東学院大戦。ニッパツ三ツ沢スタジアムのスタンドでは相手チームの部員にくわえ地元のラグビースクール生からの声援が飛び交い、まさに「カントウ一色」の気配。


 そんなアウェイのムードが影響してか、こちらカンガクは持ち味を発揮はするものの得点を重ねることができない。試合時間も残り10分を数え、リードを許す厳しい展開となる。


 「受け身になってしまう課題です。アウェイだったことも余計にそうなったかも。気にしないつもりだったんですけど。

 いける感覚はずっとあったけど、試合を通じて、はがゆい感じでした」(徳田)


 敵陣で攻撃を仕掛け、残り時間もわずかのところで途中出場の山田一平(商2)が逆転のトライを決めると、ロスタイムで野宇倖輔(経3)がとどめの一撃を見舞う。劇的な勝利で、春シーズンを締めくくった。(3524)


 新幹線での移動が伴う2週連続での遠征という例年とは違ったタイトなスケジュールだった。「疲れや試合への入り方、修正しきれなかったとこはある」とは主将の振り返りだが、「大学選手権では、そんなことも言ってられない」と語気を強める。この経験が活かされる場面が半年後には訪れることは、あり得ない話ではないだろう。



 〝結果にこだわった〟6月はトップチームのメンバーもほぼ固定されていた。シーズン当初から培った経験を最もフィールドで昇華できる顔ぶれが揃った。右へ左へテキパキとボールが回されるパスワークも、春シーズンを通して磨かれた部分だった。


 「ペナルティでボールを獲ったら、すぐゴールにいくことだったり、動く意識はあるので。他大学に比べて身体が大きくないぶん、相手のいないところを見極めてボールを動かして」


 関東学院大戦後に主将は、目指すスタイルを実現できつつある確かな実感を語った。だが、まだ物足りない様子。それは、この試合で徳田自身がボールを持ち突破を図ろうとする姿勢が幾度と見られた点について。


 「極力、持っていたくはないです。けど、人がいないんで、結局行ってしまう。

 あいにく自分が警戒されているんで、もうちょっとランナーがいてくれたら、もっと上手く使えると。そこは夏合宿で確認していきます」


 コンバートによる化学反応も、ニューフェイスの台頭も見られた徳田組の春シーズン。背中には関西王者の看板が掲げられているものの、今年は今年ならではの挑戦が待ち受けていた。


 そこに立ち向かっていくための『伸びしろ』が、このチームを表すキーワードになるか。そして、この春の経験をさらに活かしていくことを。


 「色んなメンバーを試して、選択肢も増えてきたと。そのなかでもAチームならではの厳しさだったり、逆に甘えも残ってたりするので、そこは経験した者がビシッと締めて。それを継続的に伝えていきたい」(徳田)


 関学ラグビー部を一つ上の次元に押し上げるために。徳田組は経験を積み重ね、糧としていく。

 


関西学院ラグビー部プレイヤー外伝

2015-07-21 22:32:59 | ブログ

思えば、今年のブレイクを予言したかのようなMVP受賞だった。あれから半年が経ち、彼はトップチームに君臨。走ってはトライを、蹴ってはだ円球をポストの間に通過させた。市橋誠(社2)、この男、二年目にして徳田組のキープレーヤーにつき—。


■市橋誠『ブレイクを楽しんでゆけ』
 

 

 


 込められた期待は、翌年に待つブレイクへの予言だった。


 いま関学ラグビー部では、ファーストジャージを着用する試合の後にそのゲームのMVPを選出するのが一つの習わしになっている。表彰された選手は『ゴールデンエッグ』と名付けられた金色の手札をもらう。実はそれ、学内の定食屋で利用できる食券だ。


 2014年12月21日、全国大学選手権セカンドステージ第3戦。チームの戦いが幕を閉じた。そのラストゲームで、悔しくも逆転負けを喫したものだったが、一人の闘士が『ゴールデンエッグ』を受け取っている。


 出場時間はわずか。公式戦でのトップチーム入りは全国大会に入ってから。今後の期待を寄せて、野中孝介監督は全部員の輪のなかで「市橋誠」の名前を高らかに読み上げた。


 あれから半年が過ぎ、彼は2015年シーズンを戦う『徳田組』のキープレーヤーとなっていた。



 フィニッシャーとして存在感を光らせたのは5月5日の天理大戦だった。春シーズンの初戦こそ白星を飾ったものの、チームはそこから苦戦が続いていた。それは関学ラグビーカーニバルのメインカードでも。徳田組は序盤から受け手に回ってしまい、4連続トライを許す展開となる。


 ようやく関学のスコアに得点が刻まれたのは後半9分。敵陣でのラインアウトからSO清水晶大(人福3)がボールを持つと相手ディフェンダーが引きつけられる。そこからパスを受けた市橋は、「前に誰もいなかった」と中央へ悠々とトライを決めた。


 これで反撃の狼煙(のろし)といきたいところだったが、さらに追加点を許し終盤へ。試合は決していたが、市橋は最後に一矢報いる一撃を見舞う。ラックからボールをつなぎ、中央へもう1トライ。チームがマークしたトライの2発ともが市橋のものだった。(結果は1238)


 一人、気を吐いた。スコアカードに刻んだ市橋誠の名前。自身のトライシーンを事細かに振り返るも、それ以上に彼は冷静に自身の出来を口にした。


 「自分の課題としてはディフェンスのところが。前の同志社大戦(4月25日)でタックルに5回いって4回外されてしまった。ディフェンスを意識してやって前回よりは良かったと思います」


 それからもアピールは続いた。6月21日の慶應義塾大との一戦ではWTBらしさ全開のビックゲインを披露。守っては、ターンオーバーを許し独走する相手に追いつく場面も。コーチ陣も「彼があんなに速く走れるなんて」と目を丸くさせたほどだった。


 そして春シーズン最後の対外試合となった6月27日の関東学院大との定期戦。この試合でもSO清水とのサインプレーから追撃のトライも挙げた。くわえて当初から任されていたプレースキッカーとして、コンバージョンキックを全弾成功させる百点満点の出来映え。ゲームは土壇場で逆転勝ちを収める展開だったが、彼の脚が稼ぎ積み重ねた得点なくして白星もなかった。


 こうして、走って、守れて、蹴る事もできる存在として彼は2015年上半期を乗り越えたのである。



 ルーキーイヤーでは春先に膝を故障。夏に復帰を果たし、それを機にポジションもそれまでのFBからCTBへ転向。シーズンが本格化した秋はCTBで臨んだ。


 特段にポジションに対するこだわりはないと本人はいう。もとより中学1年生まではFWであり、高校時代も1年生次はSO、肩を怪我したのちに復帰後はCTBへ、3年生次はFBに、と経験してきたポジションは多彩だ。


 昨年は層厚き関学BK陣が立ちはだかった。そのなかで揉まれ続け、最後には〝黄金色の未来〟を託された。


 期待が募った今シーズン、市橋が就いたのはWTB。同じく中野涼(文4)、FB川上剛右(経3)とともに強豪・東福岡高校出身者でバックスリーを形成する。昨年とは違って、スタメンでフル出場を果たす試合が多くなったが「上の人も仲良くしてくれる」なか、プレーする様は躍動感に溢れる。


 「今年は色々なポジションをやらせてもらっている。少しでもAチームに定着できるように」


 2トライを挙げた天理大戦後、そう口にしていた。見せたレギュラーへの意欲、しかし対象的に、彼は温和な雰囲気を醸し出す。性格もあるだろう、謙虚で落ち着いている。とにかく泰然なのだ。


 関東学院大戦にてどの位置からも成功させたコンバージョンキックも「緊張はしない。とくに蹴り方にこだわりもないですし自由な感じで」と微笑む。


 ただし、一つの質問に対しては、返答に長い時間を要した。それは自身の強みについて聞いたときのこと。


 「強みですかよく分からないっスね


 それまでプレーのこと、試合のこと、チームのことを分析も交えながら話していたにも関わらず、悩ましい表情を見せた。そして、答えをひねり出した。


 「ラグビーって、ひとりひとり役割がある。色々な種類の人が戦って、チームを作っていきますよね。一人ひとりの持ち味が出てくる。そのなかでチームに活気が出るような、勢いのつくプレーがしたいんです」


 ボールを持って走ることも、相手選手に果敢にタックルにいくことも、キックでしっかりと加点することも。市橋は目の前にある自身の役目を果たす。それによってチームにもたらす影響は、この春に証明された。それでも夏にむけ、飽くなき向上心をうかがわせた。


 「結果だけで見たら、この春は出来ていると思うんですけど、でも全然自分のプレーには満足していないです。夏に合宿を挟んで、もっとゲイン出来たり、フィニッシュ出来るようになりたいと思います」


 7月のウエイト期間には体重増加と下半身の強化をにらむ。そうやって自身に成長を促すアクションもすべて「楽しんでいます。とくに今年は色んなことが出来ているので」


 楽しみたい。はにかみながら口にした言葉はそれこそが、ブレイクの要因であると言っても違いはないだろう。


 ますますの笑顔を、この闘いのフィールドで。




関連リンク

▶市橋誠プロフィール


関西学院プレイヤー部プレイヤー外伝

2015-06-29 00:59:58 | ブログ

いつだってオーラを放っている。のぞかせる白い歯と、はじけるような笑顔がグラウンドでキラリと光る。そんな二人、LO笹井宏太朗(教4)とCTB村田賢大(経4)が京都大との定期戦でキャプテンに就いた。


■笹井宏太朗/村田賢大『前向きという名の強さ』
 


 
6月7日、関学ラグビー部は今シーズン初めての朱紺のジャージを披露した。昨年までなら大学創立125周年とあって、記念ロゴが飾られた特別仕様だったが、それも無くなり今年からは通常の戦闘服。とはいえども、この日行なわれたのは京都大との定期戦。伝統の趣が宇治のグラウンドで感じられた。


 試合前のベンチ。アップから引き上げた出場メンバーたちが、ファーストジャージの袖に腕を通し、戦闘態勢を整えていく。その集団のなかで一人、椅子に腰掛けた笹井宏太朗は目を閉じてはうつむき、かと思えば天を仰ぎ、口元をきゅっと締める。明らかに緊張していた。


 「吐きそうでした。緊張して。

 今年に入ってグレードごとに試合はやってきたけど、ファーストジャージでやる定期戦のキャプテンになって」


 もともと公式戦などでは緊張するタイプと明言する笹井。ファーストジャージを着用する、いわば『代表戦』のゲームキャプテンを指名されたのは1週間前のことだった。


 「オレか!と。やるからには、やってやろうと思いました」


 気合いは十分、それでもやっぱり緊張は隠せなかった。


 チームが『出陣の歌』を響かせたのち、ピッチは朱紺のジャージが彩りを放つ。ボールポゼッションは大半を関学が支配、悠々とトライを積み重ねた。


 だが序盤はハンドリングエラーが目立つ場面も。ゲームキャプテンは「やりたいポジショニングが出来てなかった。焦ってミスを生んでしまった」と振り返る。FW陣のミスの多さに反省を口にする一方で、互いに軌道修正を図った味方の名前を挙げた。


<笹井宏太朗>

 この日、バイスキャプテンを務めたのはCTB村田賢大。今季初のファーストジャージに「気負いすぎたかも」と漏らした村田だったが、ゲーム前はいつもの穏やかな表情。それもピッチに立てば、気迫を前面に押し出す。笹井とともにフィールド上のリーダーとしてフル出場を果たしチームをけん引した。


 「やってきたことをやる、というのが共通意識であって。スピード、テンポで勝負することは実践できたので。走り勝てたのは良かったです」


 CTB洪泰一(国4)の大車輪の活躍もあり、大量得点・無失点勝利を飾ることが出来た。結果とゲーム展開には納得の口取りも、どこか不満げだったのは自分自身のことがあったから。


 「バイスキャプテンとして、ゲームのなかでチームがキツくなったときや雰囲気が悪くなったときにそれをどう打開していくか。それが今日はあまり出来なかったかなと。

 個人的にもディフェンスが。この前の関大戦よりは良くなったけど、まだ内側を抜かれすぎる」


 彼自身、要因は分かっている。シーズンも春先をむかえ、さぁまずは手始めに部内マッチを、というタイミングで村田は負傷離脱した。「ぶっつぶそう!と気合い入れてたのに


 およそ1ヶ月間の離脱を経て、復帰したのは4月も終わりの頃。だが、怪我をするより以前と比べると、本来の動きを繰り出せぬ自分にもどかしさを感じた。ある日の練習では「いざ、やりたいというステップに取り組もうとしたときに全然、カラダが動かないんです」と阿児嘉浩S&Cコーチに相談を持ちかけている。


 復帰してから1ヶ月、アタック面に関していえば「思いどおりに、このくらいのレベルかなというところまではきてる」。だが京大戦を踏まえ「ディフェンスや、スピード感というかゲーム勘は自分が思っている、戻したいところまで戻ってない」とジレンマは拭えていない。


 スタートダッシュでつまづいたのは確か。そのせいか、本来の動きをいまだに披露できていない。けれども、これまでの間も村田は自分らしさを損なわずに過ごしていた。


 「焦るべきなんでしょうけど、まずはそこでカラダを大きくしようと」


 プレーは出来ずとも、自分に出来ることを模索した。試合ではベンチ際に寄り添い、出場メンバーたちにアドバイスや激励の声をかけた。


 「自分のプレーが100パーセントのところまでいってないんで。なら、声でチームを引っ張るべきなのかなと。入学してからずっとですけど、チームへの貢献というか、沈んだときにチームをどう盛り上げるかは考えてます」


 いわばムードメーカー的存在。彼が発する言葉で背中を押されることもあれば、逆に彼がピッチに立つ際は頼りがいを感じさせる。そうさせるのは、常に前を向く姿勢があるから。


 阿児S&Cコーチに相談をもちかけた際、村田がグラウンドに配置したのはラダー(縄はしごの形状をしたトレーニング器具)。「今まではスピードを強みにしていたけど、コンタクトにフォーカスして、ウエイトも重いのを最大限に挙げたりして。それに加えてアジリティ(機敏さ)の動きの部分も意識して、それで阿児さんに聞いたんです」


 この身体の重さのわりにはと京大戦後に、にやけた村田。万全のパフォーマンスを発揮する日は、そう遠くないはずだ。



 村田と共闘し、伝統ある定期戦のゲームキャプテンを務めた笹井もまた、笑顔を絶やさない存在である。浅黒い顔から、白い歯がのぞく。


 しかし明るい表情と同じくして、彼には常に怪我のイメージがつきまとっていた。松葉杖を片手に、それでも笑顔を見せていたのだが


 「正直、去年(3年生次)はヤバかったです。自分ラグビーやってる意味あるんかな、って」


 一年目からAチームでプレーする機会を得るなど、期待されてきた笹井。だが、一度負傷した箇所は次第にクセとなってしまい度々、離脱することに。3年生次の秋シーズンも出場は2試合ほどに終わった。


 忌みじくも『ガラスのボディ』を備える格好となってしまった。手術の提案を受けたこともある。それでも、長期離脱を避け、プレーする道を選んだ。そうして大学生活最後の今季は、春先から順調に過ごしている。ゆえにラグビーが出来るいまの状況が


 「幸せっスね!」


 いつもの、白い歯が光った。


 どん底さえも経験した。が、たとえ負傷しても、それをはねのけプレーすること自体は笹井の持つイメージでもある。関学高等部時代、全国大会では日本航空石川高校との一戦にて外国人プレーヤーに強烈タックルを見舞われた。肋骨を折るほどの衝撃。呼吸すら困難そうだったとはチームメイトたちの証言である。それでも痛み止めを打ち、笹井はその後も出場を果たしている。


 ガッツあふれるプレーに豊富な運動量。フィットネスを持ち味に走り続けてきた。4年目をむかえたいま、度重なる怪我を経て、笹井は今の自分に適したスタイルを落とし込んでいる。


 「最初の2年間のイメージが残っているんですけどね。でも、やろうとしても出来ない。2年前を忘れてゼロから。

 もともと持ち味はフィットネスだったけど身体も大きくなったりで。前線でカラダを当てる、に変えつつです」


 プレーが出来るという幸福感を胸に、〝新生〟笹井宏太朗は誓う。「今年は最後までやりたい」と。



 京大戦は4回生を主体としたメンバー編成が組まれた。普段のカテゴリー別とは違った形。けれども「大事にしないとあかんことは変わらない」と笹井は頭に入れていた。ディフェンスではコールを出し合い連携を保つこと、アタックでは相手に間合いを与えないように手を繰り出すこと。加えて、キーワードとして掲げていた『タフチョイス』をチームに徹底させた。それは自らにも。体力の限界まで挑んだ果てに、試合後は疲弊した表情を見せた。


 「しんどいことをしていこう、それがチームとして決めたことだったので。

 試合の展開がしんどかったのもあるけどまだまだ上を目指していかないと!」


 微笑みながらも、台詞は厳しく。村田も意を同じくした。チームの現状について


 「Bチームの押し上げ、プレッシャーがまだまだ少ない。Bチームでエエやろ、って空気を感じる。数が多いのを活かせていない。

 Aチームにプレッシャーをどれだけ与えられるか。もっと、おびやかさないと」


 最上級生としてチームに促すは、さらなる向上心。そのためには厳しく、そして貪欲にあらんとする。


 どうやらリーダーとしての気概が、彼らをさらに奮い立たせているようだ。いま自分が立っている現在地を、誰よりも自分自身が分かっているからこそ。挫折を味わい、ジレンマを抱えながらも、彼らは常に前を向いている。


 そこで見せる微笑みがチームを明るく照らし、チームをまた一つ押し上げていく。二人を見ていると、そんな気がした。



<村田賢大>

関連リンク

▶笹井宏太朗プロフィール
▶村田賢大プロフィール
■一回生特集『疾走するニューカマーたち』


関西学院ラグビー部プレイヤー外伝

2015-06-29 00:56:49 | ブログ

誰もが口を揃えていた。〝持っているモノ〟—ポテンシャルの高さは折り紙つきだと。だからこそ、彼の躍動を心待ちにしていた。それは当の本人も。FB川上剛右(経3)、飛躍のときはきた。


■川上剛右『GONNA FLY NOW』
 


 描いたイメージがシンクロした。


 相手ゴール前で獲得したスクラムからSH徳田健太(商4)がSO清水晶大(人福3)へパスを渡らせる。そのとき、遠くから叫ぶ声が聞こえた。


 「アキヒロ、キックパス!」


 声の主は逆サイドのライン際にいたFB川上剛右。ゴール手前、大外に構えていた。手前には相手選手とWTB中野涼(文4)がいた。すぐさま清水が右足を振り抜く。


 ボールは空高く放物線を描き、川上のもとへ。ただ、落下地点はサイドラインぎりぎりのあたり。エリア外に出そうになったボールをめがけ川上が飛び上がる。


 「タップ!」


 その中野のコールが川上に聞こえていたかは定かではない。だが、川上は精一杯に伸ばした手でボールをはじくと、だ円球は中野の腕のなかへすっぽり。あとはインゴールに飛び込むだけだった。


 6月14日、兵庫県フェニックスラグビーフェスティバルのメインカードとして行なわれた慶應義塾大との一戦。前半22分に挙げたチーム最初のトライは、そんなファンタスティクな一発だった。


 「取る気はなくて。内側にいるWTBの姿は見えてました」


 大胆に、司令塔へキックパスを要求。蹴り上げられたボールは自身のやや後方に、取るとそのままラインを割ってしまう。とっさに、川上はボールをはじくイメージを描いた。ジャンプ一番、味方へむけタップしよう。


 それは動画配信サイト『YouTube』で常に、川上がチェックしているラグビーリーグで見られるような一連の動作だった。そしてタップを要求した中野もまた、この瞬間に海外のプレーをイメージしていた。目の前にきたボールに反応が出来たのも、描いたプレーがあったからこそ。


 試合後に関係者からは「スーパーラグビーのようなシーンだった!」と感嘆の声も聞かれた。その場面を演出してみせたうちの一人が、川上だった。



 大学3年目となる今シーズン。川上にとっては自分らしさを存分に発揮できている。対外試合が始まった春先からトップチームのFBとしてピッチに立つ。


 チャンスがあればアグレッシブに攻める自らの強みを最大限にプレーに昇華できるポジション。ボールタッチの回数を増やしていき、ステップとスピードで勝負する。「もともとやりたかったポジション」、そう言ってはばからないFBに就いたのも1年ぶりのことだ。


 昨年はWTBに挑戦した。ボールタッチの回数を増やそうと意識はしていたものの、しかしポジション柄の動きを意識しすぎたあまりに、「上手くいかず」。相手プレーヤーとの距離感が狂い、ボールをもらっても何もできずにいた。


 ポジションは変われども自分のやることは変わらない、それなのに出し切れない。やがてシーズンが深まり、ゲームの出場機会こそ与えられたものの、果ては怪我を抱えてしまった。


 「チャンスをもらえていたのに応えられなかった。で、チャンスを逃して。アンガス(マコーミックHC)の信頼も損なって、何も出来ずに終わったシーズンでした」


 ただただ悔しさに打ちひしがれた2年生次。そのぶんFBに復帰した今年は気合いも並々ならない。春シーズンの開幕を迎えて、意識を高めた。


 「むちゃくちゃ気持ちが入ってました。涼さんが怪我して、たまたまAチームに入れたのもあるけど

 この春は、けっこうしんどくて。どうしたらAチームに上がれるんやろ、って。

 でも、そう自分が思ってる時点で結局は上がれないんですね。もっとポジティブに、と。そしたら部内戦で調子も良くて、AチームのFBに入れた」


 今季のオープニングゲームとなった4月19日の京都産業大戦。3トライを挙げて、チームの勝利に大きく貢献するFB川上剛右の姿がそこにはあった。


 「まわりが走ってくれてフォローにいてくれたから。トライしたのが自分なだけであって、まわりのおかげでアピールできました」


 試合後、そう振り返った川上は晴れやかな表情を見せた。



 例年以上に走り負けないことを。今シーズン、チームが持つべき大前提の部分をより実践すべく、春先からフィットネス、そしてランプレーに重点を置いた。


 その一環として、セブンス(7人制ラグビー)の大会へむけメンバー編成を施した。そのメンバーに川上は選出されている。大鷲紀幸BKコーチがスペシャルメニューを組み、ランニングの部分を磨いた。チームとしても出場する大会では優勝を目指し、普段の練習終わりからセブンスのメニューに取り組むことも。


 4月12日の関西セブンスフェスティバルでは悔しくも準優勝に終わったが、その経験自体は大きな財産となった。


 「あくまでも15人制の延長線上に7人制、のスタンスでやってましたけど、もっと準備できていたら優勝できたかも(笑)

 一人ひとりのゲインする量も違いますし、相手との間合いも広くなる。一日3ゲームもあるし、むちゃくちゃ良い経験になりました」(川上)


 ランニングスキルを磨き、よりアグレッシブさは増した。次に川上が掲げたのは、身体面でのこと。「走るからといって、体重は落とさずに」そう意識し、去年は82キロだった体重もこの春には最大で90キロまで上げた。


 「最初は重く感じててこんなんでラグビーできるんかな?って(笑)」。シーズンに入り、87キロ前後に落ち着かせ、増量した身体にも慣れてきた。そのうえで、もっとスピードを出せるように。「まだまだ課題はあります」と口元を締めた。


 くすぶり続けた大学生活前半から抜け出し、いま羽ばたかんとしている。勝負の年、川上は誓った。


 「レギュラーで自分がチームを勝利に導けるように。まずはレギュラーに定着することから。信頼を勝ち取りたいと思います」



 

 定着の兆しを見せつつある今春。6月14日のビックゲームでトライを演出し、一躍、主役に躍り出た。積極果敢に相手ラインを縫おうとする姿勢も幾度と見られた。


 しかし、試合も終盤をむかえ事態は暗転する。相手選手のシンビン(10分間の一時退場)で数的有利に立った状況で、今度は川上がペナルティを犯してしまう。練習時から無意識にしていたプレーが、実戦では反則の対象に。残り時間7分のところでシンビンとなり、試合終了の瞬間をベンチで過ごすことになった。


 「申し訳なさ過ぎて」と、辛らつな表情を浮かべた。


 反省すべき点であることは確か。それは本人が重々分かっている。目も背けたいような苦い記憶、だが逃げることなくチャレンジする気概を持つことを。慶応大戦の試合後、川上は前を向いた。


 「今日ダメだったんで来週、青学大戦でチャンスをもらえるなら、しっかりとアピールしたいです」


 ヒーローからヒールへ。それでも川上の姿勢と、彼が持ちあわせるセンスあるプレーはこの試合のハイライトだった。大鷲コーチも「東福岡高校出身者らしい全員が出来たらオモシロいよね」と微笑んだ。


 3年生とはいえども、彼はサクセスストーリーを歩み始めたばかり。誰もが、そして自身が待ち望んだ飛躍を今年は遂げることができるか。


 その翌週、6月21日の青山学院大戦でトライを挙げた姿に、川上剛右の〝可能性〟という名の翼が見えた。



関西学院アメリカンフットボール

2014-11-12 01:30:46 | ブログ

「関西学生アメフット、関学大17-10関大」(9日、神戸ユ)

関西学院大が関大を17-10で下して、開幕6連勝。5連覇へ、23日に大阪市・キンチョウスタジアムで、同じく6戦全勝の立命大と優勝をかけて対戦する。

 関西学院大は白星は増やしたが、笑顔のかけらもなかった。1TD差で、今季初めて先制も許した。WR横山の42ヤードレシーブを皮切りに、主将RB鷺野(4年)のTDで逆転したが、
鳥内監督が「あんだけ反則したら次は無理!!」と、吐き捨てるほど反則も目立った。主将も試合後、喝を入れた。「立命やったらどうなるねん!!」。それに続いて「自分が反則を消す」と、宣言したのが主務の飯田(4年)だ。

 3年春までの選手経験を生かし、練習中は審判の役割も果たす。シーズン序盤からの課題克服へ、審判が立つ位置を変えるなど工夫してきた。大一番へ、選手やOBの力を借りながら、今まで以上に目を光らせる覚悟だ。

 23日の最終戦は2年ぶりの全勝対決。昨年は0-0と、立命DFを相手に無得点に終わった。「勝たないと進めない。死ぬ気でやる」と主将。「日本一を反則で崩されるのは嫌だ」という主務の思いを体現することが、天王山を制する近道となる。


関西学院プレイヤー外伝

2014-11-11 22:45:47 | ブログ

普段の修練がプレーに昇華される一方で、試合中に頭に浮かぶ自問自答。いま自分に出来ることは何か。不運から、ひとり遅れてリーグ戦を開幕させたFL中村圭佑(社4)が、フィールド上で出した答えとは。


■中村圭佑『野獣の咆哮』
 

 

 プレイグラウンドからだとゴールラインの反対側、インゴールをさらに深く奥へいった場所にカメラマンは並ぶ。そこにいても、その声ははっきりと聞こえた。


 「相手の方がしんどいんやから!!」


 後半も半分を過ぎた頃だ。敵陣に侵入し、ゴール前での相手スクラム。ぞろぞろとセットに向かうFW陣に対して、手を叩き、そう声を張り上げた男がいた。やや停滞感を漂わせつつあったチームを鼓舞したのはFLの中村圭佑だった。


 その一週間前、大学Aリーグ第3節を制した部員たちは試合が終わり会場の外で笑顔を見せていた。勝利の喜びと安堵から会話を弾ませるなか、井之上亮(社4)、金尚浩(キム・サンホ/総政4)らが中村を讃えた。


 「キレたら、目が変わるんです。外国人みたいに」

 「吠えてたもんな」

 「けーすけが吠えたら、試合もイケるな、って」


 つい先ほどまで繰り広げていたゲームは最後まで手に汗を握る展開だった。そこで中村が吠えた

 が、当の本人はあまり記憶がない様子。ただ、白い歯をのぞかせながら第3節、天理大との一戦をこう振り返った。


 「チームを締めようかと思ってて。自分が動けてないのは分かってたんで、声で。しゃべろうと」


 第3戦、中村は思うように身体が動かないことを自覚していた。ゲーム感覚の麻痺か、公式戦ならではのプレッシャーか。自身も嘆くような、とうてい納得のいかないパフォーマンス。実は、この日の天理大戦が中村にとってのリーグ開幕戦であった。



 10月4日、翌日には関西大学Aリーグの開幕を控えた晩のこと。夕食も済ませ、いすから立ち上がろうとした刹那、身体に激痛が走った。そのまま2、3分間は動けず。それは経験したことがないほどの痛みだったという。


 症状は、ぎっくり腰。すぐさま長瀬亮昌トレーナーが家に駆けつけ処置は施したものの、翌日の試合出場は不可能との判断が下された。


 「近大戦は一人で家におってツイッターで試合速報を見てました。

 やってしまったと。開幕直前でチームに迷惑をかけてしまった」


 試合の前日、それも晩である。緊急事態だったものの、チームは層の厚さによってカバー。鈴木組は開幕戦白星を飾った。


 翌週はスタンドからチームの2連勝を見届けた。今年の春には「怪我してポジションを獲られるのは嫌」と口にしていたところから、リーグ戦への思いを巡らせていたことだろう。そうして1週を空けてのリーグ第3戦。中村圭佑の名がスタメンに並んだ。


 自身にとっての開幕戦。疲労感に支配されながらフル出場を果たした。「今日は緊張しました」と一息つく。


 下級生次、周囲からは「緊張せんな」との印象を持たれていたが、本人いわく「してるつもりなんですけど、態度に出てない」。ラストイヤーはまた違った緊張が、試合に臨むにあたって胸にこみあげている。


 「正直、1、2、3回生と積み上げてきたものが薄かった。4回生になって気持ちの変化というか。『最後』がちらつく」


 リーグ戦を戦うなかで、中村はこうも話している。「4回生なんで出れる試合も限られる。一試合一試合、大事にしよう」と。


 春のパフォーマンスは出せなかった、と天理大戦は悔しげな表情を浮かべていた。それでも闘いに身を投じた実感を手に、その視線を次に向けていた。


 「天理大戦のために準備してきた。準備する大切さを持って。

 個人としてもパフォーマンスは上げないとダメですし、勝ったのは嬉しいですけど、次の準備が大切だと。しっかり準備して臨めば、良い結果につながるので」


 臨んだ翌週、11月4日の第4戦。万全の態勢をもってしてゲームに挑んだ中村の姿があった。



 試合が開始してまもないチームのファーストアタック。ナンバー8徳永祥尭(商4)が防御網を突破しゴール目前へと迫る。生じたラックからボールを持った中村の視界にゴールラインはしっかりと映っていた。横から止めにきた相手選手をかいくぐるように頭を下げて飛び込む。


 このときポストに頭を激突させながらも、インゴールへボールをねじ込んでいた。開始1分でのオープニングトライ。近くにいた仲間たちは鈍い音の正体に気づき、中村の頭部をさすりながら得点を喜んだ。


 のっけからのフルスロットル。チームも中村のトライを号令にしたかのように攻撃を展開する。


 「相手が、試合の入りに失敗したのも。圧力もかかってこなかったと。アタックもゲインも出来てて、継続したら点が取れる」


 試合開始からコンスタントにトライを重ねた一方で、迷いも生じていたという。悠々と突破しボールもつながる、そんな「うまくいき過ぎた」状況に、楽なプレーを選択しがいがちになっていた。


 ゆえに「前半は考えすぎた」と中村は話す。後半は、プレーする位置が近いナンバー8徳永のコンディション状態を汲み取り、自分からより積極的に動いた。


 チームは大きく点差を開けての白星を挙げた。中村は前週に引き続きフル出場。「前よりも動けたかなと個人的には思います」と試合後に述べた。


 ボールを持てば豪快に、相手のキャリアにも猛然と打ち当たっていく。これまでにも幾度と奪ってきたトライも今季第一号を決め、FL中村の健在ぶりをアピールしたゲームだった。


 「良かったです。トライ取りたかった。先週はバテバテだったんで」


 代名詞でもあるトライゲットも彼にとっては、持ち合わせる欲望の一つ。本人が話すに高校時代は違うタイプのプレーヤーだったとか。大学に入ってからも、BK陣にクリーンなボールを出すことを意識してやってきた。ただし、念頭に置き、むしろ溢れ出んばかりに、プレーに昇華されるのは「目立ちたい」という思いだ。自らトライにいくことを「下心が出ました」、なんて表現したりも。それも含めて、中村は明言する。


 「納得のいく貢献の仕方をしたい」


 フィールド上で描くは、ひたすらに勝利への貢献。第4節の大体大戦では自身が準備してきたことに「ボールを持ったら前進すること」そして「声をかけること」を掲げていた。


 だからこそ、試合時間が経過しようとも、自らの身体が動かなくともピッチに立つ限り、彼は声を張り上げていたのである。


 今シーズンの始め、中村はラストイヤーへの意気込みをこう語っていた。


 「これまでは先輩に頼ってた部分があった。それこそ言われるがままだった。

 今年はキャプテンばっかりに背負わせるのではなく、助けられるように。プレーだったり、コールだったりで」


 トライにディフェンスと、闘志をたぎらせ繰り出すプレーはもちろんのこと。魂の込められた雄叫びよ、ピッチに響き渡れ。


 

 


関西学院ラグビー

2014-11-04 23:17:14 | ブログ

注目の若手選手が勝利を引き寄せた。リーグ戦開幕後負けなしと不屈の強さを見せている関学。大体大とのリーグ第4節でも好調をアピールした。なかでもSO清水晶大(人2)が2トライを決めチームを盛り上げた。
 
 負けない関学ここに健在! 天理大との激闘を制した一戦から1週間。大きな自信を手に入れた朱紺の戦士たちは強力FW陣を擁する大体大とのリーグ第4節に臨んだ。ボールを継続し流れをつかんだ関学は61ー14でまた一つ白星を手にした。
<FW>
 FW陣の健闘が勝負の行方を左右した。体格の大きな選手が多い大体大。関学FW陣の活躍が光り、相手を撃破した。「新チーム始動時からFWのユニットを重点的に取り組んだ。試合以上に厳しい練習をしてきた」と主将鈴木(商4)。試合後半でも衰えない体力と強靭(きょうじん)な精神力は血のにじむような努力のたまものだ。
<BK>
 BK陣では、今シーズン開幕戦から4戦連続でスタメン出場を果たしている清水が2トライを決めるなど存在感を示した。「昨年のように悔しい思いは絶対にしたくない」と清水。固い決意を胸に迎えた大学ラグビー2年目の年。清水は本格的に増量とウェイトトレーニングに取り組み、入学時と比べ12㌔の増量に成功した。当たり負けしない体を作り上げ、ハンドオフも強くなった。躍進を遂げる活躍に期待が高まる。チームの司令塔として朱紺のユニフォームに記された10番は誰にも譲らない。


藤島大さんのコラムより

2014-10-22 22:52:01 | ブログ

学校スポーツの最良の機能は「無私」である。このことはラグビーでなくサッカーの現役最長老記者、賀川浩さんに教えていただいた。丸い球のフットボールをこよなく愛する現在89歳の大先輩に過去幾度か話をうかがい、そのたびにスポーツの根源的なとらえ方に気づかされた。ちょうど10年前、その人はこう言った。

関西学院大学

「そこにいる人間と差し違える。全身全霊を傾けて、こいつらを育ててやろう。そういう気風というのは、どうしても学校に強い。いまラグビー、それから野球の一部に残ってますね。Jリーグにはない。プロは情をかけたら首斬れないんやから」

  そして、こう続けた。

「18歳でプロのクラブに入る。見知らぬ土地へ行き、ワンルームマンションを借りて、午前中2時間だけの練習をする。あとはフリー。外国人の監督は自分の目の届く範囲外の自主練習を嫌うから、ひとり残ってシュートを何十本も打つようなことは許されない。ところが大学のサッカー部に入れば、そこに濃密な人間関係があり、また指導者だけでなく、ストライカーならストライカー、さまざまな領域の卒業生の名手が、楽しみな後輩が入ってきたと、自分の持っているもののすべてを手取り足取り伝えようとする」

  賀川さんは、日本サッカーの発展を生涯の主題としている。Jリーグの発足と発展、その結果としての日本代表の強化を心から喜んでいる。否定するはずもない。また発言より10年が過ぎて環境も変化したはずだ。ただ、学校のスポーツも悪くない、そこにも美徳はある、と述べたのだ。

  ずいぶん昔、電車にぼんやり乗っていたら、自分の卒業した高校のラグビー部員がひとりドアに寄りかかっていた。ぺしゃんこのボールをカバンに突っ込んでいてすぐわかった。全寮制の学校だから帰省の途中かもしれない。ひどく人見知りする性格なのに、つい「ラグビー部?わたしは12期生です」と声をかけてしまい、さらに普段はあまり好きでない言葉を口にした。「がんばって」。あの瞬間に理屈はない。ちょっとコーチの心得があったので、もしラグビーを教えてくれ、と頼まれたら、次の駅で降りて、どこかの公園でパスを交わし、帰りにチャーシューメン大盛りとギョウザをごちそうしただろう。

  先日、関西学院大学ラグビー部ОBの宮城利行さんが天へと召された。68歳だった。商社マンとして鳴らし、モバイル通信分野の経営で盛名を得て、ジェイ・スポーツの会長も務めた。この人もまた「無私」の精神で母校を愛した。何度か「関西学院のさらなる強化」について意見を求められた。遠慮せずに考えをぶつけると、ビジネスの成功者は「そうかもしれませんね」と穏やかに聞いてくれた。関学ラグビーを語れば少年の純真に満ちていた。そこに一滴の欲もない。なんら見返りを求めず。ただただ後輩のために動き、考えた。それが「学校のスポーツ」の価値なのだ。

  母校愛そのものは閉じている。しかし閉じたクラブと閉じたクラブが誇りをかけてぶつかる時、そのスポーツは開く。ジャパンの戦法を全国一律で行うほうが効率的、というような見解は、むしろ文化のふくよかさを奪う。「無私」の思いの深さが全国の校庭やグラウンドに染み込んで、競技を志す者の選択肢もその数だけあって、中標津でも宮古島でも、列島のあちこちのラグビーの土壌を豊かにする。トップリーグと学校のラグビーは削り合わない。

  最後に。9月23日、東京朝鮮高級学校グラウンドによい光景があった。東京都立北園高校が実力校の早稲田実業学校高等部に気迫と信念のラグビーで挑み、なお散った。応援の「ОB」に知った顔を見つけた。4年前、北園と都立新宿高校と二松学舎大学附属高校は「合同I」として、この日と同じ全国大会予選に臨んだ。1日だけコーチをした。 その時のナンバー8、新井雄大主将(北園)とバックスを率いた10番の大倉拓也(新宿)が、まるで同じ高校の卒業生のように揃って「後輩」を励ましている。北園の宍戸亮太監督が言った。「あの連中は変わらぬ友情をずっと続けている」。本稿で触れた「母校愛」とは、正確には、「真剣に取り組んだひとつのチーム愛」だ。


rugby

2014-10-12 09:48:09 | ブログ

鈴木組の戦いがついに幕を開けた。初戦の相手は近大。先制点こそ奪われた関学だったが、得点のチャンスをものにし52ー19でリーグ開幕戦を初白星で飾った。関西全勝優勝に向け上々のスタートを切った。

 4季ぶりにリーグ開幕戦勝利を収めた! 昨年のスタメンが多く残る関学。4年生を中心とした豊富な戦力で近大との関西大学Aリーグのオープニングゲームに臨んだ。左膝のけがから復帰したFL徳永(商4)のトライを皮切りに得点を重ね、52ー19と近大を大きく突き放した。
 「関西全勝優勝」を目標に、チームスローガンONEのもと鈴木組は練習に励んできた。実力が拮抗(きっこう)し混戦が予想される関西大学Aリーグ。一戦も負けるわけにはいかない戦いを前に主将鈴木(商4)は「良い緊張感をもって初戦に臨めた」と語った。緊張からか、試合開始直後はプレーが安定せず前半12分に先制を許した。しかし、徐々に関学ラグビーを発揮。31ー12で前半を折り返すと後半には鈴木が2トライを奪いさらにリードを広げる。最後は途中出場のLO岡部(人2)が走り切り52ー19で近大を下した。
 「フェーズを重ね、テンポの速いラグビーをすることができれば得点のチャンスはあると思っていた」と野中監督。一方でFWを強みとする近大に苦戦し、モールのペナルティが目立った場面も見られ次戦に向けての修正点も明らかになった。
 5季ぶりの関西制覇へ一歩近づいた朱紺の戦士たち。今年、関西学院創立125周年のメモリアルを彩る偉業達成なるか。「優勝の手応えはある」。鈴木の言葉に二言はない。


rugby

2014-06-28 23:23:32 | ブログ

かつてアタックセンスを見出された若きCTBは、着実にステップアップを果たし、不動の地位にまで上り詰めた。ラストイヤーで見せるパフォーマンスは〝鈴木組のダイナモ〟と名付けるにふさわしい。水野俊輝(人福4)が放つ熱。■水野俊輝『ダイナモ宣言』140623p1

 寸前までベンチに腰をかけていた。いや、据えていた、という表現の方が合っているかもしれない。  さぁ後半40分がまもなく始まる。もう回りのメンバーたちはグラウンドに繰り出している。最後に腰を上げ、水野はようやくピッチへと向かった。  「前半、めっちゃ暑くて。ぎりぎりまで日陰おって…みんなスゴいなと。動けなかったです。熱、冷ましてからいこう、と(笑)」  初夏だというのに、酷暑を極めた6月1日の立命館大とのオープン戦。前半40分間で強烈な日差しに打たれた体を、日陰で休ませていた。  だが、いま思えば、ぎりぎりまで休んだ効果だったのだろうか。それからものの数分後、我々は暑さも吹き飛ばすシーンを目撃する。  後半開始早々、相手のほぼファーストプレー。チームとして全面的に押し上げるディフェンスでプレッシャーをかけていき、水野がインターセプトに成功する。手にしたボールを若干ジャッグルさせたが、しっかり収めるとそのままインゴールへまっしぐら。ときおり後ろから迫る敵に目をやりながら、振り切りポストへ到達。静かにボールを置き、後半最初のトライを飾った。  「練習から内からどんどんスペースをつぶしていく動きを。上げていく、その意識を持ってたんで。練習の成果が出ました。  (ボールを手にした瞬間は)出来るだけ冷静に。キャッチしたあとのことを考えて。あのときは、自分が行き切る方が良いなと思って、しっかり走りました」  試合前に野中孝介監督が「タフなゲームになる」と話したように、昨年度の関西大学王者との一戦は前半から拮抗そのものだった。14-7という一撃差で折り返し、後半の立ち上がりはゲームの主導権を握るうえで大事な時間帯。そこで相手の隙を突き、点差を引き離す一発を水野が挙げたのであった。 140623p2_2  予感はさせていた。この日の前半、反撃に打ってでるなか、今年のテーマである「継続」のままに自陣からボールを繋いでいく。FB高陽日(経4)からバックフリップでボールをもらった水野は、相手ディフェンスを翻弄するかのようなライン取りで前進を図る。一人二人と裏をかいては防御網をかいくぐり敵陣へ。捕まりはしたが、行けるところまで突き進み、味方へパス。そこからFW陣がつなぎ、最後はPR野宇倖輔(経2)がゴール中央へ飛び込んだ。  「僕が行き切るよりも…レベルの高いチームが相手だとブレイクダウンが強いのは分かっているので、簡単にこけないように。ステップ切って、味方がフォローする時間を稼げるから…空いているとこも見ながら。それが良いトライにつながったのは自分のなかで良いプレーが出来ているかなと。そこは継続していきたい」  すいすいとゲインをする様は軽快にも見えるが、相手の防御を崩していく点で豪快にも。一歩でも前に、ひと時でもボールを保持し、仲間へ渡らせる。水野の走りは、チームの「継続」ラグビーのなかでも強烈なアクセントとなっている。  もとより攻撃的な姿勢が評価されてきた。2年生次の春からトップチームに名を連ねるように。層厚きCTB陣において、現役時代のポジションを同じくするマコーミックHCの眼鏡にかなった。  3年生次の春先にはニュージーランドへのラグビー留学も経験。スキル面での上達や肉体作りもさることながら、ラグビーへの接し方も変わった。主力選手としてスタメンに定着し臨んだリーグ戦の最中。「ニュージーランドでは全員がラグビーを楽しんでいると感じた。プレッシャーもあるんですけど、楽しんでプレー出来るようになった」と語っている。  その変化がプレーではよりオフェンスシブに、凄みを増して発揮された。リーグ戦では開幕から2試合連続でトライ、中盤では2試合連続でチャージ(そのうち一本はトライに直結!)を決めた。  むかえた自身にとって大学生活最後となる今季。チームが例年以上に攻撃的要素を標榜するなか、当然に彼のパフォーマンスは求められた。そうして、いまや不動のCTBとして君臨している。   140623p3 立命大戦後のインタビュー。  「最近、自分でボールをもらって、突っ込むプレーが無かった。僕がキャリアとしていくのが、自分も活躍できるかなと。 ボールタッチを多くしよう、とやってます」  チームからの要求に最大限応えるべく、水野はさらに積極的な姿勢を見せている。加えて、プレースキッカーの役も務めるようになった。  一番手のSH徳田健太(商3)の離脱もあって、立命大戦ではコンバージョンキックを任された。過去に経験はあり、二番手の意識はありながらも「いつでも蹴れるように」との意欲。その右足がゴールを量産することになれば、水野の〝攻撃参加〟がまた一つ増えることになる。  自らの強みと今季に懸ける思いを水野はこう話す。  「自分の強みは『12』番、『13』番どっちも出来て、キックも蹴れること。安定する意味でも常に良いプレーをしたい。出来るだけ軽いプレーはしないよう決めてるんで。CTBのポジションは…譲れないです」  自身を見出したマコーミックHCから「プレーで引っ張っていって欲しい」と託されたCTBは呼応するように言う。「もうラストイヤーなんで…誰よりも引っ張っていく」と。そのためには―  「運動量ですね! 多くしようと。今シーズン通しての目標です。運動量を増やしていきたい」  まさしく〝ダイナモ〟宣言。その熱で、チームを勝利に導いてくれ。140623p4


rugby

2014-06-08 23:03:09 | ブログ

京大との伝統ある一戦が今年も行われた。相手に隙を見せない試合を繰り広げた朱紺の戦士たち。WTB野崎勝也(経4)が4トライを決めるなど奮闘し88ー7で勝利を収めた。

 京大との伝統の一戦を制した。この定期戦は関学ラグビー部が創部された翌年、1929年から毎年行われている伝統ある試合だ。現在ではBリーグに所属する京大を相手に、関学は今年も出場選手の大半を4年生で固め挑んだ。
 前半2分、SH江嵜(経4)のトライを皮切りに関学勢は8トライを決め圧倒。53ー0で前半を折り返す。続く後半でも関学の勢いは止まらず得点を量産。完封勝利を収めたい関学だったが、後半21分自らのミスで京大にトライを奪われる。しかし、その後は関学ペースで試合を展開し88ー7で快勝した。
 「選手全員気合が入っていてよかった」と今試合4トライを決め、さらにキッカーを務めた野崎。後半ではディフェンスに甘い部分が見られるも「4年生の気を引き締める試合となった」と試合を振り返った。日本一という目標を掲げチームを引っ張る4年生の思いがプレーにも表れ、後輩たちに熱い思いが伝わった試合となった。
 リーグ戦への出場を果たすことを目標にしている野崎。1年生時に一度はBチームに入るも、その後は上位チームから遠ざかっている。「今は少しサイズが大きいファーストジャージだが、このサイズに合うくらい体を大きくしたい」と意気込んだ。熾烈(しれつ)なレギュラー争いを勝ち抜き、ラストイヤーにリーグ戦初出場を目指す。     


関西学院ラグビー

2014-05-08 11:50:03 | ブログ

 大学創立125周年と銘打たれた記念試合を鈴木組は勝利で飾ることができなかった。だが、なめた苦杯の味は忘れまい。秩父宮での戦いを終えた直後の、リーダーたちの言葉で紡ぐ始まりの歌。

 かつて、そこで観られたのはカーテンコールだった。舞台は秩父宮ラグビー場。関学ラグビー部にとって、関西リーグを戦い抜き、そして全国レベルとの差を味わい、散り、戦いを終える場所だった。

 「すがすがしさがあったかな。やれる部分は出し切ったという」

 さかのぼること8年前の記憶の断片を思い返したのは、松尾遼輔FWコーチ。学生時代、主将として関学ラグビー部を率い、全国の舞台へ。秩父宮で行われたトーナメント初戦で対峙したのは早稲田大学だった。

 「無我夢中やった」と話す一戦。点差を広げられようとも朱紺の闘士たちはぶつかっていった。なかでも、ナンバー8・松尾キャプテンは負傷しユニフォームを9番に着替え、頭部にバンデージを巻きながら一矢を報いるトライを決める。当時の「松尾組」は主将の意地の一撃という記憶を秩父宮ラグビー場に刻み、戦いの幕を閉じた。

 翌年も同じ場所で大学選手権一回戦に臨むが、東海大に敗れシーズンを終えている。この2007年を境に、関学ラグビー部がこの地に足を踏み入れることはなかった。

 経るは6年もの歳月。その間に2度の関西制覇、選手権での勝利も経験してきた関学ラグビー部が2014年、秩父宮のピッチに立った。大学創立125周年記念の冠のもと、慶應義塾大とのゲームが行われたのである。

 「バスに着いたときからですね。入り口には年配のOBや、近い年代のOBさんも働いて。その姿を見て、緊張感がグッと増したというか。無駄にできないなと」

 数日前は「当日になってみないと」と口にした主将・鈴木将大(商4)だったが、本番を迎え緊張感が湧いてきた。記念試合ならではの式典も執り行われ、普段の公式戦とはまた違った雰囲気が会場に流れる。この日は、まさに〝関学のための関学による〟一日だった。

 対戦相手の慶大は昨季、大学選手権においてファイナルステージすなわち全国ベスト4にまで進んだ。とはいえ、試合にあたってチームのなかで統一されていたのは、「自分たちのラグビーを出すこと」をまずは。

 主将は「2月からやってきたことを。自分たちのラグビーで慶大に勝つことを意識して」と意気込み、秩父宮のピッチへ繰り出した。

 プレッシャーはなく、ただいつもと違うムードは選手たちを高揚させたか。副将・金寛泰(キム・ガンテ=人福4)は「新チームになって、初めてのファーストジャージを着ての試合で。高ぶっていました」とゲーム前の胸中を明かしている。

 開始早々は、やや浮き足だっていた。文字通り、ボールが手につかない場面も。開始1分には先制点を許した。

 だが、すぐさま取り返す。キックで相手にボールを渡さず、自陣からでもボールをつなぐ、という原則を徹底し攻撃を仕掛けていく。そうして前半5分にはSO清水晶大(人福2)が鈴木とのパスワークから反撃の狼煙(のろし)を上げるトライ。その一発を皮切りに鈴木組はアタックを仕掛けていく。

 「テンポに乗ったら自分たちのラグビーができる」。そう、副将・中井剛毅(経4)が述べるように、攻撃を展開。ゴール目前でモールが組まれるとスタンドから沸き上がった『押せ!押せ』コールも後押しする。前半15分、25分とコンスタントにトライを重ね、前半も残すところ5分を切りスコアは19?7となっていた。

 すぐ取り返し、リードもしている。このまま前半を終わらせよう?

 そんな思いが脳裏によぎったときに、フィールドに立つ面々に異変が訪れた。

 「足が止まって集中力が切れた」(中井)

 38分に自陣でのスクラムからディフェンスの隙間を縫われ中央にトライを許すと、その3分後にはタックルミスを連発し、失点。あっというまに逆転され、1921のスコアで前半を終了した。

 「あきらかに、それまでの35分と違った」(金寛泰)

 自分たちのラグビーを実現できた35分間と、集中を切らして〝しまった〟5分間。金寛泰は失意を浮かべながら口にした。「自分たちでギアを落としてしまう。。。いつもの悪いクセが出てしまった」

 自然と口数すらも少なくなっていたという時間帯で犯した失態。そのダメージは決して小さいものではなかった。

 ハーフタイムを経て、臨んだ後半。こうなれば、重要となってくるのは残り40分への入り方。しかし、またしても開始1分でトライを献上してしまう。この場面、FWリーダーを務める竹村俊太(人福4)は振り返る。

 「後半の入りが重要と分かっていたけど締め切れなかった」

 気の緩みから落ちたエアーポケットを脱出することは出来ず。「取られてはいけない場面」(鈴木)での失点により、引導を慶大に明け渡したシーンだといっても過言ではないだろう。

 それからの40分は攻防ともに関学のミスが目立つゲーム展開だった。攻めても「相手のディフェンスが上手で。個々のエラー、イージーなミスが多かった」と中井は語った。

 後半16分にHO永沼桂典(社4)、終了間際にCTB水野俊輝(人福4)がトライを決めるも、開く一方だった点差を覆すまでには至らず。最終スコアは3354。メモリアルゲームと銘打たれた一戦を勝利で飾ることはできなかった。

 「勉強や!!」

 試合を終え、開かれたアフターマッチファンクションもおひらきとなった後。クラブハウスを引き上げる際に、金寛泰は叫んだ。改めて試合のポイントを聞いてみる。

 「セットプレーの部分、スクラムもラインアウトも自分たちのやってきたことを出せずに終わった。

 ブレイクダウンは手応えあったけど精度とリアクションは違いを感じました。

 あと慶大はオフロードも確実なものしかしない。関学はオフロードもするけど、一か八かで。精度の差が出ました」

 とくに後半、如実だったのはボールの失い方だった。いとも簡単に相手にボールを渡してしまう、ターンオーバーから失点というパターンもあった。

 また、「簡単にボールを取られすぎましたね」と話した竹村は慶大の印象をずばり。

 「勝負所を分かっている感じでした」

 ゲームの流れを左右する、とくに重要な時間帯を乗り切ることができなかった関学と、仕留めてきた慶大。勝負の駆け引き、しかし80分もしくは40分間の集中力を保つことが出来るかの差が、そこに表れていた。

 大勢のファンが駆けつけた記念試合での敗北。「勝利という形で、感謝の気持ちを恩返しできなかったことに悔しく思う」と主将は述べた。

 ならば、この一戦で得たものを還元し、今後続く道のりで活かしていく他ない。

 金寛泰の叫びも。「課題は出たので。ポジティブに考えて、前向きになってやっていけたら」という中井が見せた意欲も。すべては来たるシーズン本番に通じている。

 「慶大とやれて良かったです。見習うべき点が多かった」(鈴木)

 自分たちのラグビーの良し悪しが明確になった。実力校とのゲームは、ファーストジャージを着て臨んだ鈴木組にとっても初陣でも。そして多くの声援を身にしみて実感した。

 「いい一日でした」と微笑んだ主将は最後に「また、ここでラグビーしたいですね!」と言い放った。

 歩む道のりの先に、いずれはこの舞台も待ち構えているだろう。4月26日のこの日、秩父宮ラグビー場は鈴木組にとっての始まりの場所となった。


関西学院ラグビー部

2014-05-01 16:15:07 | ブログ

きたる4月26日、秩父宮ラグビー場にて関西学院大学創立125周年を記念した試合が行われる。関西学院大学体育会ラグビー部と、対するは慶應義塾體育會蹴球部。

■プレイバック&プレビュー『創立125周年記念試合 vs慶應義塾大』

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【伝統校同士の戦いの系譜】

 関西学院にとって、タイガー軍団との対戦は常に自分たちの現在地を測るに絶好の機会となっていた。両校が交流試合と銘打たれて対戦したのは5年前のこと。

 このときは関西学院の創立120周年、慶應義塾大の創立150年および蹴球部創部110周年の冠の下、近鉄花園ラグビー場にて記念試合が催された。関西学院は前年度に51年ぶりとなる関西制覇を達成。「関西大学王者」の看板を背負い、関東の雄との一戦に臨んだ。

 しかし個々のレベルの違いを始め、展開ラグビーに終止振り回される。1トライしか奪うことが出来ず748の完敗に終わり、関東との差をまざまざと味わう結果となった。

 75年もの歳月を経て設けられたこの一戦を皮切りに始まった交流。ここから毎年のように練習試合、はたまた公式戦において対決が繰り広げられるようになる。

 2011年の関西ラグビーまつり東西対抗交流戦では関西学院が歴史的白星を挙げる(31?22)。その翌年は大会形式が変わった全国大学選手権のブロック戦にて激突。この年、関西学院は堅固な守備と豊富な運動量を持ち味としていたものの、慶應義塾大も最後まで走力が落ちることはなく。前半こそ同点で折り返したが時間の経過とともにパスミスといった精度の差が浮き彫りとなり、結果17?29で黒と黄のジャージに軍配は上がった。

 昨年は春に交流戦として対戦カードが組まれ、このときは関西学院が29?22で勝利を収める。一進一退の攻防のなかで、当時の副将・湯浅航平(人福卒/SH=現トヨタ自動車=)はこう話していた。

 「タフでした。こっちもフェイズを重ねて攻めたけど、相手の表情見たら、けろっとしていた。競る試合、タイトなゲームに慣れている印象でした」

 個々の強さ然り、プレーの激しさ然り。他大学とのせめぎ合いにおいて東西の大学勢でレベル差があるとはよく言われることだ。

 置かれた環境が違う。だからこそ関西学院は慶應義塾大との対戦経験を糧にして前進しているといえよう。

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【節目の年に狙うはタイトル獲得】

 大学設立125周年の節目の年に関西学院ラグビー部が掲げるは「関西大学リーグ全勝優勝」。ここ数年遠ざかっているタイトル獲得を狙う。今シーズンのチームを率いる主将・鈴木将大(商4/FL)はこう話す。

 「所属しているリーグで結果を出してこそ、選手権で戦うことができる」

 選手権出場、ひいてはまだ見ぬファイナルステージ(全国ベスト4)に進むためには、関西制覇はクリアすべきラインであるのだ。

 昨年、ファイナルステージ進出を果たした慶應義塾大と再び交わることが出来る今回の記念試合。「強豪校の胸を借りれるチャンスはありがたい」と野中孝介監督は語る。普段は目にすることのない関東のラグビーファンへ向けても、関西学院のラグビーをアピールする試合にもなる。

 ベースとするディフェンスに今季はオフェンスの強化にも力を入れ、攻撃的なラグビーを実現していく。例年以上に早い時期でのチームの完成をにらむなか、強敵を相手にどのようなラグビーを見せるかが注目だ。

 「学校から良くもしてもらってて、無駄にしたくない。勝ちにいきます」(鈴木主将)

 「自分たちのラグビーをしっかり出せるかが重要。ただ記念試合の冠を掲げた関西学院の主催試合なので、勝たないと示しがつかない。勝ちにこだわっていきたい」(野中監督)

 メモリアルイヤーに花を添える白星を。それは今年のチームを占ううえでの、重要な戦果となる。

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関西学院ラグビー

2014-04-03 18:38:49 | ブログ

関西学院にとって、タイガー軍団との対戦は常に自分たちの現在地を測るに絶好の機会となっていた。両校が交流試合と銘打たれて対戦したのは5年前のこと。140402_2 このときは関西学院の創立120周年、慶應義塾大の創立150年および蹴球部創部110周年の冠の下、近鉄花園ラグビー場にて記念試合が催された。関西学院は前年度に51年ぶりとなる関西制覇を達成し、「関西大学王者」の看板を背負い、関東の雄との一戦に臨んだ。関西制覇を達成し、「関西大学王者」の看板を背負い、関東の雄との一戦に臨んだ。 しかし個々のレベルの違いを始め、展開ラグビーに終止振り回される。1トライしか奪うことが出来ず、7-48の完敗に終わり、関東との差をまざまざと味わう結果となった。しかし75年もの歳月を経て設けられたこの一戦を皮切りに、以降毎年のように練習試合、公式戦において対決が繰り広げられるようになる。 2011年の関西ラグビーまつり東西対抗交流戦では、関西学院が歴史的白星を挙げた(31-22)。その翌年は大会形式が変わった全国大学選手権のブロック戦にて激突。この年、関西学院は堅固な守備と豊富な運動量を持ち味としていたものの、慶應義塾大も最後まで走力が落ちることはなかった。前半こそ同点で折り返したものの、時間の経過とともに精度の差が浮き彫りとなり、17-29で黒と黄のジャージに軍配が上がった。 昨年は春に交流戦として対戦カードが組まれ、このときは関西学院が29-22で勝利を収める。一進一退の攻防のなかで、朱と紺のジャージの選手の一人はこう話していた。 「タフでした。こっちもフェイズを重ねて攻めたけど、相手の表情見たら、ケロっとしていた。競る試合、タイトなゲームに慣れている印象でした」 個々の強さ然り、プレーの激しさ然り、東西の大学勢でレベル差があるとはよく言われることだ。140402_02 東西の大学は置かれた環境が違う。だからこそ関西学院は、慶應義塾大との対戦経験を糧にして前進しているといえよう。 節目の年に狙うはタイトル獲得 大学創立125周年の節目の年に関西学院ラグビー部が掲げるのは「関西大学リーグ全勝優勝」。ここ数年遠ざかっているタイトル獲得を狙う。今シーズンのチームを率いる主将・鈴木将大(商学部4回生/FL)は、「所属しているリーグで結果を出してこそ、選手権で戦うことができる」と話す。選手権出場、ひいてはまだ見ぬファイナルステージ(全国ベスト4)に進むためには、関西制覇はクリアすべきラインであるのだ。 昨年、選手権ファイナルステージ進出を果たした慶應義塾大と再び交わることが出来る今回の記念試合。「強豪校の胸を借りれるチャンスはありがたい」と野中孝介監督は語る。ベースとするディフェンスに、今季はオフェンスの強化にも力を入れ、攻撃的なラグビーを目指していく。例年以上に早い時期でのチームの完成をにらむなか、強敵を相手にどのようなラグビーを見せるかが注目だ。 「学校から良くもしてもらってて、無駄にしたくない。勝ちにいきます」(鈴木主将) 「自分たちのラグビーをしっかり出せるかが重要。ただ記念試合の冠を掲げた関西学院の主催試合なので、勝たないと示しがつかない。勝ちにこだわっていきたい」(野中監督) メモリアルイヤーに花を添える白星を。それは今年のチームを占ううえでの、重要な戦果となる。