
"Wisky"
2004年ウルグアイ/アルゼンチン/ドイツ/スペイン
監督)フアン・パブロ・レベージャ パブロ・ストール
出演)アンドレス・パソス ミレージャ・パスクアル ボルヘ・ボラーニ
満足度)★★★★★ (満点は★5つです)
DVDにて
ウルグアイで親から譲り受けた小さな靴下工場を営む独り者の兄ハコボ(アンドレス・パソス)とブラジルに渡って妻子ももうけ幸せに暮らす弟エルマン(ボルヘ・ボラーニ)。
エルマンが久しぶりに帰郷することになり、独り者であることを恥じたハコボは工場の従業員マルタ(ミレージャ・パスクアル)に弟がいる間だけ夫婦の振りをするよう頼む。
ウルグアイの映画が日本で紹介されるのは初めてのことだそうです。それだけでとても興味深いのですが、この映画はそういう興味を超えて味わい深い面白い作品です。
映画の冒頭、車のフロント・ガラス越しに見えるまだ夜も明けきっていないモンテビデオの街。やがて車は薄暗い、そしてくたびれた風情の街の中に滑り出してゆきます。運転しているのはハコボ。いつも通りの単調で冴えない一日がまた始まることが暗示されます。
冴えないレストランで冴えない朝食を摂り、冴えない女性従業員(マルタ)が待つ冴えない靴下工場に通う。いつも時間通り。その細かい仕草までが測ったように毎日繰り返される。
この感じがすごく好もしいんです。
毎日繰り返されることによって洗練の域に達しているかのごとき一挙手一投足が、ものすごく心地良い。いさぎよい。
この、ある意味調和した生活に波紋を起こすのが弟エルマン。ブラジルで成功した彼に見栄を張るべくマルタに夫婦の振りをすることをお願いするハコボ。ここからどこまでも静かな心理劇が始まります。
うきうきするマルタ。
マルタに対して感情が揺れ動くハコボ。
この静かで慎ましやかな二人の心の動きがセリフで語られることはありません。あくまでも微妙な仕草や表情から漠然と二人の心の動きを読み取るしかありません。
この慎ましやかさが、すごくチャーミングです。
余韻を残すラスト・シーンと言い、抑えに抑えた演出と言い、そこはかと漂うユーモア感と言い、僕にとっては文句のつけようのない作品です。
今年観た中では間違いなく上位に入る、素晴らしい映画。
良い映画でしたよねー・・・
地味な方ばかりで地味なお話。
最近観た中ではとっても地味目な映画ですけど
じわーーっと心に残る素晴しい作品でした。
あれからマルタはどうしたのでしょうね?
いろいろな想像が膨らみます。
でで、ラストですけど、、
あの唐突な終わりはホント、凄いと思いました。
あれで締めくくるとは、鮮やかというか見事ですよねー
そうなんですよね、じわーっと心に残るんですよね。「手紙には何が書いてあったんだろう?」とか「マルタのその後は?」とか色々余韻が残ってよかったです。
DVDに入っていた監督インタビューで「ウルグアイの人はブラジル人と比べて性格も地味なんだ」と言ってらっしゃいましたが、「まさに」な映画でありました。
地味な国から来た地味な映画、何か愛おしいです。
良い映画だったことを思い出しましたよ。
登場人物の心持ちがはっきりとしめされないだけに
いろいろなパターンの話しを想像してしましました。
あのラストだから、いろいろ考えさせられちゃうっていうのもあると思いました。
>良い映画だったことを思い出しましたよ。
その気持ち、わかります。
決して自己主張の強い映画ではないので強烈な印象が残る訳ではなにのですがしみじみ良くてたまに思い出したように観たくなる、そんな作品ですよね。
この控えめな感じ、すごく好きです。
最後にマルタの行動を想像させる演出がにくいですよね~
色々と考えさせる映画って好きです。
ハコボがどこまで彼女のことを気にしてるのかも気になりました。
みんなあんまり喋らないから色々なことがよくわからんいんですよね、とにかく(笑)。
>慎ましやかさが、すごくチャーミング
本当にそのとおりですよね。
ラストはどうなったか考えるのも楽しいです。
私と友人はマルタは帰ってこない、別の地で別の人生を歩き出すんじゃないかな?という予想です。
こういう場合やっぱり女性の方が一歩を踏み出す勇気があるような気がします。
DVDでご覧になったということは、映画のパンフレットはご覧になっていませんよね。
パンフレットに書かれていたことから紹介させていただきますね。
ウルグアイではマテ茶が一般的な飲み物で、街を歩くとお湯を入れた魔法瓶と茶葉が入った壺のようなものを持ち歩いている人がたくさんいるそうです。ストローでマテ茶の回し飲みをすることが親しさの証だとか。
だから、映画でのハコボが一人でマテ茶を飲み、弟にもマルタにも勧めないシーンでは、ハコボが二人に心を開いていないことをあらわしているそうです。
この映画はカメラを動かさずに撮影しているらしくて、それが一種独特の味になっているのでしょうね。
ウルグアイでは110年の間に50数本の映画しか作られていないし、自国映画のあることをしらない人も・・・ でも、この監督の出身地のモンテビデオにあるシネマテークは、月3ドルで映画見放題なのだそうです。だから監督は世界中のいろいろな映画をいっぱいみているらしいですよ。まだ30代のお若い監督さんなので、これからが楽しみですよね♪
初コメントで、長々と失礼しました。
また、来させて下さいね。
マルタさん、迷った末に工場に戻ってきてまた何事もなかったように淡々と働き始める、なんていうのもこの映画の続きらしくて良いですね。ハコボも何も言わない、マルタも何も言わない、という感じで。
DVDについていたメイキングによると、マルタさんの過去にも大まかな設定がされているようです。それによると彼女は過去に男関係で結構苦労されているみたいでした・・・。
Fine Day様、
実はこの映画、映画館でも観ていてとても関心してしまいDVDも思わず買ってしまったのです・・・。
そうそう、パンフレットにマテ茶のこと、載ってましたね!僕はこういうあまり知らない小国の文化とかの記事を読んだり観たりするのが好きです。映画は、普段馴染みのないそういう国について知るきっかけにもなって良いですよね。
>監督は世界中のいろいろな映画をいっぱいみているらしい
30代でこんな枯れた映画を撮れてしまう、というのはやはり色々な映画を浴びるように観てきたからなのかもしれないですね。
でしたら、「氷海の伝説」という映画はご覧になってますか?
イヌイットのことが少し解ったような気になれた映画です。これも、限られた予算で、手作りされた、凄い映画でした。