"Oliver Twist"
2005年フランス/イギリス/チェコ
監督)ロマン・ポランスキー
出演)バーニー・クラーク ベン・キングスレー ジェイミー・フォアマン ハリー・イーデン リアン・ロウ エドワード・ハードウィック
満足度)★★★☆ (満点は★5つです)
ワーナー・マイカル・シネマズ市川妙典にて
19世紀末のイギリス。救貧院から葬儀屋に貰われたオリバー(バーニー・クラーク)は辛い仕打ちに耐えられず家出、ロンドンに向かう。
ロンドンに着いたものの疲れきって路傍に横たわるオリバーを助けたスリの少年アートフル・ドジャー(ハリー・イーデン)は、彼をスリ団の元締めフェイギン(ベン・キングスレー)の元に連れてゆく。フェイギンの元でスリの技術を覚えたオリバーは、ドジャー等とともにロンドンの街に出るが・・・。
原作はチャールズ・ディケンズの古典的名作小説。
チャールズ・ディケンズの小説、ひとつも読んだことは無いのですが、この映画を観る限り、すごいストーリー・テラーだと思いました。当時のイギリス人が熱狂し、それが古典として現代まで残っているのがよくわかる。
オリバー少年に次々と降りかかる苦難。魅力的な登場人物達。物語の中に無理なく溶け込んでいるちょっと皮肉な社会批判。物語としての基本的な魅力がガッツリ詰まっている小説なのだろう、と想像します。
というように、原作への興味は俄然湧いてくるこの映像作品なのですが、じゃあ映画も文句なしのマスターピースになるのかというとそうとは限らない訳です、当たり前ではありますが。
この映画、確かに面白いところは沢山あります。フェイギンを演じたベン・キングスレーを始めとした芸達者な役者達、活気に溢れたヴィクトリア期のイギリスの街並みの様子、そして何よりも物語のハラハラする展開。全然悪くない。だけどどこかが物足りない。
僕にとってその物足りなさがどこから来るのか?と考えると、肝心のオリバー少年にあまり個性が感じられなかったからなのかもしれません。オリバー君は「皆を惹きつけずにおれない無垢で真っ直ぐな少年」という設定で、だからこそオリバーを巡って物語がドライブしてゆくのだと思うのですが、どうもそれほどの魅力、というか個性が感じられなかった。
結果として、魅力的な物語ではあるのですがどこか説得力の薄い映画になってしまったような気がします。
多弁でアクの強い他の登場人物と比べると、オリバーのセリフってもともと少ないんですよね。それを存在感だけで魅せることが出来る子役俳優ってそうはいないと思います。バーニー・クラーク君だって決して悪い俳優だとは思わないし、むしろ雰囲気のある子だとは思うのですが、ちょっと難しすぎたと思います。
蛇足ですが、この映画の音楽結構良かったです(音楽・レイチェル・ポートマン)。
メイン・テーマをバックにオリバーがロンドンに向かって田舎道を歩く場面なんか素晴らしかったなあ。
私は、この作品ちっとものれなかったんですよ。かなり期待していたのですけど。お陰で記事も幾分辛口になっちまいましただよー。kenさんて心が広いんですね。お優しい言葉の数々...という印象だったのですがぁ。
>オリバー少年にあまり個性が感じられなかったからなのかもしれません。
コレ、何となくわかります。兄貴分のドジャー(でしたっけ?)の方が印象に残っているくらいです。他の方のブログで、おすぎさんがあんなにCMでおススメしている理由として。おかまさんとしてオリバーを演じたバーニー君に惚れただけでしょう。というのがありましたよ。バーニー君にダメ出しという訳ではなくて。のれなかった私は、その理由にかなり納得しました(苦笑)。
おすぎさん、いずれにしてもこういうクラシックな香りの映画好きそうですよね。
僕も(おかまじゃないけど)それほど嫌いな映画というわけではないのですが、いまいちパンチが効いていない印象。
仰るように、ドジャーとか、下手したら最初のほうでオリバーを苛める葬儀屋の先輩のほうが存在感があるくらいでしたよね。
隣の評論家さんの記事にも書いてありましたが、この映画の音楽も結構よかった!
あ、今回はTB成功したようです。めでたい!
>全然悪くない。だけどどこかが物足りない。
全く同感です!!
バーニー君の無垢な感じはとてもいいんですがね~。
私なんて早業ドジャーのほうに魅力を感じてしまいました(笑)
バーニー君の雰囲気はすごく良いですよね。
僕もそれはそう思います。
だけどなあ、なんとなくパンチの効かない作品に思えるんだよなあ・・・。
オリバー君、基本的に受身なところが印象を薄くしてるのかも、とも思います。彼が能動的に行動したのって考えてみたら葬儀屋を逃げ出したところだけのような・・・。
確かにオリバー君は印象薄いですよね。あまりにも素直に流されすぎというか…
なもんで、観終わった後の印象がどうも薄くて。
悪くはないんですけどねぇ…
こういう、良作・駄作どっちつかずの作品って、ある意味、一番映画として損してるかも。
TBこちらからも貼らせて頂きます。
>この映画、フェイギンをはじめとした強烈で人間臭いキャラの人物達にオリバー少年が食われてしまったような印象がありますね。
(^_-)-☆正しくその通りですね。
まあ悪党なんだけどフェイギン老人は愛すべきキャラに見えましたから(笑)
子供達も然り・・・
ただ女の子達はチョッと訳有りで苦労してる感じがありましたが
魅力が足りませんでしたか?
私は彼で充分でしたけど・・・
でも確かに「なんで皆そんなにかまうの?」とは思いましたわ(笑)
実際に出演までさせてますしね(^^)
その点から考えると、子供目線的には十分な映画だったのかも知れません。
オトナは子供より目が肥えてますから…(^^;
期待を裏切ることも上回ることもなかったのです。
こういう形で展開して、収束するのだろうと…
この作品はこれでいいと思うんですよね。
バーニーくんも、わたしが彼のような男の子が好きだから、
それでOKなのかもしれませんね。
>こういう、良作・駄作どっちつかずの作品って、ある意味、一番映画として損してるかも。
確かに!この映画、優等生みたいな出来ですよね。
そこに一味個性を加えれば、イイ感じの映画になったかもしれませんね。
hide様、
フェイギンというキャラクター、俳優の方々が「是非演じたい!」と思いそうな人物ですよね。魅力的な悪人、というそんなに簡単ではない役柄、ベン・キングスレーがうまく演じていると思いました。
メイクは『ロード・オブ・ザ・リング』の登場人物みたいになってましたが(笑)。
更紗様、
確かにオリバー君、雨の日に段ボールから顔を出している子猫みたいな、イタイケな風情ではありましたが、それしてもあそこまでかまうか!という気が僕はしました。
雰囲気のある子役だとは思うのですが・・・。