牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

2月11日(火) 「新約聖書解題」 山谷省吾著  新教出版社

2014-02-11 07:30:39 | 日記

 本書も竹森満佐一著「新約聖書通論」と内容が似ていて、主に新約聖書の「各論」を文献学的に論じている。これも私は新約聖書の「総論、概論」的な内容を期待していたので、考えていたものと違っていた。しかし、内容は優れている。

 本書は二部構成になっていて、一部が「各論」で新約聖書27巻を説明し、二部が「総論」である。ただ一部の量が圧倒的に多い。二部の総論には、主に新約聖書正典の成立と新約聖書本文(写本)について書かれている。

 新約正典が教会会議で決定したのは4世紀であるが、新約正典にある主要な書物、すなわち4つの福音書、使徒の働き、パウロの10の手紙、ヘブル人への手紙、ペテロの手紙第一、ヨハネの手紙第一、黙示録は、一世紀の終わりまでには出来上がっていたと述べている。新約聖書正典の結集は、一世紀の後半から教会内において徐々に行なわれ始め、教会内外の情勢に応じて進行し、二世紀の中ごろに至って急激に進展し、二世紀の終わりには、大体において終結していたと、近現代の研究を踏まえて論じている。

 すなわち新約聖書正典の選択には使徒性が重視され、使徒たちによるものもしくはそれに類するものたちが書かれたものかどうかが厳しく吟味されたわけである。その作業はすでに二世紀にはほぼ終わっていた。あとは教父たちの間で微調整が行なわれ、4世紀の教会会議で27巻が確定され、現代に至っている。4世紀に教会がゼロから選んだのではなく、1-2世紀に厳しく取捨選択されていて信頼できるものが残ってきて、それらを4世紀に確認したというわけだ。

 また新約聖書本文の写本がいかに他の古典と比べて、量が多く、正確で、年代の差が小さいかが説明されている。信頼性という点において他の古典を完全に圧倒している。