7月1日松下幸之助一日一話(松下幸之助.com)
素直な心の初段
聞くところによると、碁を習っている 人は、大体一万回くらい碁を打てば初段になれるということです。素直な心の場合もそれと同じようなことが言えるのではないかと思います。まず素直な心にな りたいと朝夕心に思い浮かべ、そうしてたえず日常の行ないにとらわれた態度がなかったかを反省する。そういう姿を一年、二年と続けて、一万回、約三十年を 経たならば、やがては素直の初段ともいうべき段階に到進することもできるのではないかと思うのです。
素直の初段にもなったならば、まず一人前の素直な心と言えるでしょう。だから大体において、過ちなき判断や行動ができるようになってくると思います。
2013年7月1日天声人語(OCN朝日新聞デジタル)
天声人語
▼何もする気が起きない時、辞書を読む。調べる必要があっての「引く」とか「当たる」とかでなく、ただ興味の赴くままに読み進む。言葉の海は広く、深い。その都度なにかしら新しいことを知る
▼お笑い芸人で日本語学の学者でもあるサンキュータツオさんの本が面白い。『学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方』。200冊のコレクションを誇る「辞書オタク」が読み比べを熱く勧める。「大人なら国語辞典は二冊持て!」と
▼たとえば「恋愛」という言葉を、〈男女間の〉愛情とするものあれば、〈特定の異性に対して〉と表現するものあり。〈まれに同性同士〉という記述を定義に加えるものもある。どれも似たり寄ったりと思ったら間違いで、それぞれ特徴がある
▼確かに新明解国語辞典のような「ひとこと多い」個性派を読み出すとやめられなくなる。辞書ならぬ字書も誘惑に満ちている。漢字の字源を明らかにする白川静(しずか)『字統』を開くのは危険である。一つの文字から関心が広がってきりがなくなる
▼箴言(しんげん)集も学びの宝庫だ。〈憎悪、敵意、粗暴は、弱さの所産である……弱者が自分以上の弱者を餌食にするときの、あの酷薄さ!〉(エリック・ホッファー『魂の錬金術』)。今の日本の世相に照らして考え込む
▼7月は文月(ふみづき)。だからというわけではないが、たまには言葉の海を遊泳して心の肥やしにしたい。時を忘れがちになるのが玉に瑕(きず)だが。この原稿も、そういう成り行きで大あわてで書く羽目となった。