なにがあるかは時の運

日々のできごと

川上

2008-02-08 23:42:24 | Weblog
狂言、万作の会。
今年も行きました~。やめらんないっす(笑)

今年は異色の演目で。
「川上」……人の名前みたい。
伝統芸能なんで、ネタバレというか、そういうのは当たり前かな~と思うんで書いちゃうけど、これから新鮮な気持ちで見るんだ!とかそんな予定のある方はできるだけ見ないでください(笑)




いいですか?



老夫婦(たぶん)がいました。
夫の方が10年くらい前に目が見えなくなりました。
空から降ってきたありがたいお地蔵様が願い事を叶えてくれるらしいという噂を聞いて、目が見えるようにしてもらおうと思いました。妻もそれがいい、早速行きなさいと言ってくれました。
お地蔵様のお堂に篭って一晩過ごすと、夢のお告げがありました。
「もっと早く目が見えるようにしてあげたかったんだけど。事情があって今の今まで目が見えないようになってたんだよ。言うとおりにしたら目が見えるようになりますよ。あなたの妻は悪妻です。悪縁です。離婚しなさい。別れなかったら目が見えなくなりますよ」
目が覚めたら、目が見えるようになっていました。
今まで杖をついていましたが、要らなくなったので捨てました。
途中まで妻が迎えに来てくれていました。おお、目が見えるようになったのねと喜んだのも束の間、離縁だ、別れなきゃまた目が見えなくなると聞いて激怒です。
今まで不自由なアナタの面倒をずっとみてきたのに、長年連れ添ったのに、目が見えたら別れろというの!?神仏は慈悲深いものだから、せっかく目が見えるようになったのにまた盲目にするなんてありえない!!別れないわっ。……とまあこんなカンジで。
そんな妻の剣幕に気おされた夫、それもそうだとかなんとか言って、復縁の決意であります。
そしたらあれあれ、また目が見えなくなってしまいました。



………と、狂言にしてはいささか……いや、だいぶ暗い、すっきりしない話です。
事前の解説で、人によって見方がちがうとか聞かされてたので、見るときにもできるだけいろんな視点で見ようとおもったのですが、どのようにも解釈できるなあというのが感想ですね。
まずは、神仏の言うことは聞かなきゃね、という戒めの意味。
でもなんか、別に悪いことなんかしてないのにー、と釈然としない思いもあります。
ということで、次は、夫の目が再び見えなくなってしまうというのに離縁に応じなかったとは、やはり悪妻だわ、という見方。
でも、悪妻だったら夫が盲目になったとたん、もう介護なんかしてやらん、こっちから離婚してやるわとそのくらい言いそうじゃないですか。
それよりも、自分の目が見えるとなったら即離婚して良縁を探すぞーと生き生きしやがった夫の方がむかつきます(笑)。用済みになった杖を捨てるとこなんか象徴的ですよね。うわ、その勢いで妻も捨てるか!?みたいな。

そんな、いろんな考えがアタマの中をぐるぐるする狂言だったけど、また目が見えなくなっちゃった夫の手を妻がひいて、がっくりした老夫婦が寄り添うように退場するんです。なんだか良いも悪いもひっくるめて、それがこの夫婦じゃないかしらと思うような、これから先、また前の10年と同じように次の10年を淡々と二人で生活してるだろなと思うような(そんな絵が思い浮かぶような)地味だけど印象的なラストでした。

渋いけど、これはすごく良かったですよー。
映像じゃなく、ぜひ生で見ることをオススメしちゃいます。雰囲気というか、空気がすご~くいいんですよ。
何度も言うけど、地味なんで拍子抜けするかもしれないけど(笑)


2本目は筋書きも分かりやすくて、雰囲気もバカに明るい「棒縛り」
これは写真でも見れば、誰でもなんとな~くどんな話か分かるだろうなというくらいポピュラーで、単純に楽しいお話です。
こちらの太郎冠者と次郎冠者(今でいう太郎さんと次郎さんみたいなもんか)の裃がおそろいでかわいかったんだー。海鳥と帆掛け舟。すっごくステキ!!


そんなわけで、狂言、いいっすよ~。