犬がおるので。

老犬から子犬まで。犬の面倒をみる暮らし。

おじいわんがやってきた 2

2014年12月24日 | おせわがかり日誌
昨日は朝から2回散歩したり、会社行ったり、車のメンテナンスに行ったり来たり、いろいろ忙しかった。

のだけど、おじいわんの情報を集めたくて、明るい時間帯におじいわんのいた公園をうろうろ聞き込み捜査。

ほとんどの人が知らないと。ただ、犬好きの人たちから数件、有力な情報を得ることができた。

総括すると、1か月近くさまよっていて、最初の頃は首輪していたのだが、どんどん痩せてきて、首輪がなくなった。

公園と公園の周りの路地をひとりで歩いていた。以前からこの公園で散歩などで見かけたことはない子。

これだけ年をとっていて一度もあったことがないというのはおかしいからこのあたりの子ではない。

公園近くのマンションで、ひと月ほど前、夜中に車から犬と人が一緒に降りたのを見たという人がいる。

その数日後から、よく姿を見かけるようになった、とも。




強風が吹きすさぶ公園で、ふたり、身も心も冷えて、近くの夫の実家へ戻っていった。

そうか。やっぱり。そうなんだ。警察でも「この子の届出は出ていない」と言っていた。

「2週間は預かり期間ということで、お宅で預かってもらって、また警察署へきて頂いて、そこで正式に手続きをします」

預かりの条件はミグノンさんと同じような感じ。飼い主さんが表れたら速やかにお返しする。

いろいろ難しい条件があったり、保護していた期間にこちらで負担した費用は飼い主に請求できる、とか、初めて知る。

そんなもん、請求なんかしないよ。この子が会いたいと思っていて、これからはちゃんと可愛がってくれるなら、お金なんていらないよ。

そう思いながら、警察官の説明は頭に届かず、通過していく。

「でもねえ、たぶん、おそらく、出てこないですよ、飼い主。こういう子の飼い主は、年寄の人のことが多かったりもするんだけど、探す気力もなかったりするし」

「外で飼われてる子は首輪が抜けていなくなったりすることが多いけど、ぼけてなければ一人で家に帰るケースが多い。置き去りにされた可能性も高いね。あの公園は犬が好きな人が多いといって捨てに来るやつがいるんだ。遠くから」

いろいろ言われて、はいそうでしょうね、はい、はい、と、しっかり聞いているふりの生返事をする。

心がどんより重くなっていく。

こんな老犬が迷い犬にしろ、そんな遠い距離を移動できるはずもない。

先生も「警戒心が強いから、ボケているわけでなければ、天敵がいない安全な寝床のあたりをうろうろするはずだ。

追い立てられたんでなければ、どんどん知らないところに自分から行くことはないだろう。若い子ならともかく、この年だからね」

と言っていた。このケースは飼い主が探しにはこないだろう、というのは、先生も、警察も、決して言わないけれど、顔に書いていた。

だけどもさ、探し方がわからないにしても、寒空にこんなおじいわんを1か月も放置するなんてさ、

「もう死んでしまっているだろう」

って、思っているかもしれないよね、飼い主の人も。

わからないけど、おじいわんは、自分から出てきたのかもしれないし。

わたしとしては、ここまで生活を共にした人が、車で捨ててきたなんて思いたくないから、

警察でよくあるケースとして聞いた(というか本当によくあるケースだけどさ)

「身内のお年寄りが何らかの事情で飼えなくなった飼い犬を持て余した親戚が放置」

節を選びたい。

真夜中に、ワゴン車から年寄の犬を抱っこした人が出てきたのをベランダから見た、という人の話が、それなんじゃないだろうか。

近くにある中学校の生徒も誰もこの子は知らないという。

おじいわん、おじいわんは、どこから来たの?

おじいわんは、おうちに帰りたいかい?

おじいわんは答えない。

寝床にしていたらしき、枯葉の山のあたりをじっと見つめて、ぐいぐい弱い力でリードを引っ張る。

いいんだよ。もう、あそこで寝ないんだよ。今日はゲージを買うんだよ。

その中ならオレコが万が一とびかかっても絶対大丈夫だから。

今日のパーティーはたろうちゃんのおめでとうと、おじいわんのいらっしゃいパーティーなんだって。

よかったね、ごちそうが食べられるよ。いいこにしようね。

たろうちゃんも、オレコも、意地悪するだろうけど、踊り場のテーブルの下にある安全なゲージに入れて、ふたりが入れないようにバリゲード作るからね。

おじいわんは答えない。涙がじわっとにじんで、ぽろりと落ちたと思ったら、強風が吹き飛ばしていった。

鼻の奥がツーンと痛いよ。




とぼとぼと帰り道。

行きかう犬仲間にどうだったと聞かれる。

みんな仲間にメールをしたり電話をしたりしてくれていた。

飼い主有力な情報は何一つなかったが、駅の飲み屋から千鳥足で歩いてきた誰かのご主人が、

やっぱりひと月前の夜中に、変な車から犬を抱っこした人が下りて公園に消えるのを見た、という話が出た。

点が線になった。

みんなにお礼を言って、夫の実家へ。

一度しか来たことがないのに、この子はちゃんと覚えていて、

「このうちだよね」

と門の前で私を見る。うん、そうだよ。このおうち。

でもおじいわんのおうちは、ここじゃなくて、わたしのうちなの。

今日からね。

正式には、警察で手続きをしてからだけど。

メール着信。びくっとした。もしかして。

でもおじいわんじゃなくて、仕事のメールだった。

祝日にお客様からこのアドレスにメールなんてクレームだろうか?

悪いことばかり聞いた耳や心が、そんな風に、根拠もなくおびえる。





涙が出そうになる。そしてインスタグラムのメッセージ音。

あれ?たまってるな。そうか。風の音で聴こえなかったんだ。

ダイレクトメールが届いてた。ちくわくんのお母さん。

首輪とリードの写真。今日の夕方なら届けられます、明日ならチラシ配り手伝えます、と書いてあった。

涙がぼろぼろこぼれて、夫の実家に入れなくなった。



その夜のパーティーは、楽しかった。

犬ネットワークの大半の人、義父母も、半ばあきれていたと思う。

仕事が忙しいのに、オレコのほかにもう一匹なんて、無理じゃないの。

でもひとりだけそれはこのあたりでは人類で一番犬が好きなんじゃと言われているご夫婦だったけど

「恐れ入りました。私は誰より犬が好きだけど、今回のあなたには、叶わないわ」

褒められているんじゃないと思ったけど、その人が誰よりも熱心にいろんな人に聞いて回ってくれた人だったのを思い出し、

ああ、本気なんだな、とぼんやり思った。私そんなすごいことしたのだろうか。

いや。無謀という意味では、そうだろうけども。

夫が言った。

「そもそもあの朝、○○はオレを迎えに来て、車で会社に戻るつもりだった。

滅多にとおることもないあの公園を、歩く予定じゃなかったわけで、

偶然に偶然が重なって、ものすごい確率で見つけたわけでしょ。

だって俺が具合悪いからまだ出られない、って言ったから、歩いて先にいったんだし、

俺の具合がよかったらそもそも車だったわけだし、

その時間に○○が来ちゃったのも、俺がメール見てなくて返事こなくて、

行き違っちゃったからだし、○○が「車運転できる?私先に歩いていってもいい」って言ったとき、

本当はオレ「運転無理だな」って思ってたんだよ。待っててっていおうと思ったのに、

なぜか「いいよ」って言っちゃったんだよね。そのときもあれ?って思ったんだ。

「運転できないよ」っていうつもりだったんだよ。なのに「できる」って言った。

結局おじいわんと戻ってきたから○○に運転してもらったんだけど、

あの日はほんとに運転できなかったと思うよね。だから不思議で不思議で。

ほんとに、ひとつでも条件が違っていたら、会わなかったよね。

で、条件なんて、違ってもおかしくなかったよね。そんな日だったよね。

だけど、もしおじいわんと○○が会わなかったら、おじいわん、きっと、死んでたよね」

義父母が心からおじいわんを受け入れた瞬間はこのときだったかなと思う。

かわいそうだからとかじゃないんだな、どんな子にもそうっていうわけじゃないんだな。

もうこれは決まっていたことなんじゃないの。だから足が動かなくなって、

「公園にきつねがいるんだけど」

って、震える声で電話してきたんでしょう。もうそのときから、決まっていたのよ。

この子はあなたのところに来たのね。

私の周囲のみんなが、やさしい気持ちでおじいわんを迎えてくれたときだった。





今年、相次いで亡くなった21さいの兄弟猫。

数時間おきに授乳して手塩にかけて育てた猫、あの子たちが春と秋に相次いで亡くなったんだけど。

お世話をさせてもらう暇もなく、おじいわんと同じようにガリガリになって、すーっと亡くなったんだけど。

私、ほんとはお世話したかったのよ。お世話して見送ってあげたかったのよ。

だからかなあ。後姿のがりがり感が似ていて、ほうっておけなかった。

しかもそのうちの1匹とは、顔がそっくりなんだもの。









これは6~7年前の、もっと若いころだけどさ。

私の大事なこの双子たちが、姿を借りて、来てくれたのかと思った。

「おい、お世話をさせてやるぞ」

おじいわんは使命をもって、私を選んで、来てくれたのかと思った。


そうはいってもちょっとのことでもへこたれるから、すぐ泣き言を言ったり、

なんでこんなことを引き受けてしまったんだろう、という弱い心になってしまう日も、

あるかもしれないけれども。できる限り、大切にする。

落ち込んだりしたときは、おじいわんのせいじゃなくて、自分が弱ってるんだと思えるように。

いつか老いたオレコをお世話するとき、余裕ができるような気がするし。

おじいわん、練習させてもらうからね。よろしくね。















このあと、インスタグラムでもお世話になった人たちに顛末を説明しようと、全文打ったあとに、落ちた。

多分、朝の5時半くらい。そして1時間後に目覚める。

ノロ疑惑の夫の調子が朝になってまた悪くなってしまったので、汚れ物を洗ったり、その介護と、二匹のお世話と。

うちはマンションで犬の移動は抱っこが原則なので、二匹一度には散歩できないし、どんなに重くてもオレコはかついでいかなければならない。

ハードだが、まあ、できないことはない。その分、どこかの何かを調整しないといけないけれども。

でもそういう調整をすることこそ、大事なのかもしれない。今まで会社を運営したり、夫のサポートすることばっかりが中心の生活だったから。

時間はそれこそ、何を大事にして、何をあとまわしにするとか、うまく使わないと、折角うちに来てくれたおじいわんもオレコも面白くないだろう。

二匹を養うこと、会社を運営すること、二匹を幸せだなあ~、と思わせること。

ぜんぶ、がんばんねば~。

だけどどうしても厭なことをやらないといけない、とかじゃないから、大丈夫かもね~。







そういうわけで、今後ともよろしくお願いします。

↓ 念のため、飼い主さんに届くように、お知らせはそのままにしておく。

迎えに来る気があってもなくても、いい。

事情がどうであってもいい。責める気はない。

その代り、迎えに来てもらいたいとも、思ってない。

おじいわんはいま、あったかい場所で寝ているよ。

私はあなたより、多分、おじいわんを大事にするよ。

でもおじいわんは、もしかしたら、あなたに会いたいな~、と、思ってるんじゃないかな。

そのことを忘れてもらえるくらい、大事にしようと思ってるから、

ただ会いたいだけだったら、諦めて、このブログをチェックするだけにしてね。

一時的感情で迎えに来て、また捨てられたら、わたしとはもう会えないから。

それに今度こそ、おじいわんは、放浪生活もままならないと思うしね。

わたしはあなたに怒ってない。全然怒ってない。理解できないだけ。

どうとも思わない。

でも、あなたに会いたいと願うおじいわんは、かわいそうだと思う。

会わせてあげられたらいいな、と願う。

だけど、おじいわんがそう思ってないなら、楽しい思い出をいっぱい、共有するからいいもんね。

ああ、こっちに来てよかった、って、笑いながら、お迎えが来るように。







体重:7~8キロ、痩せています

カラー:基本は茶色、顔は白髪、背中からしっぽにかけて黒毛がまざってます

去勢:していませんしてるかも

体調:右目に目やにがたまっていますが、食欲もあり、元気そうです

性格:とてもおとなしくなきません。最初は逃げていましたが、声をかけ続けたら、おとなしく抱っこされてくれました。

場所:埼玉県上尾市日ノ出 上尾運動公園内 テニスコート近く

日時:12月22日(月)AM11:45ごろ保護

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