くつろぎ日記

ストーリーとセリフに注目したドラマレビューです。

聖家族のランチ

2005-09-07 23:04:35 | book
林真理子著

角川書店


林氏がかなり読ませる文を書く作家であることは納得できるのだが
なにしろマスコミへの露出やエッセイがミーハーすぎて
辟易することがある。
読んでみると面白いがどうしてもご本人の顔が浮かんできて
妙な気分になってしまうのである。

この本は当然面白い。

料理研究家として名声も愛人も手に入れたユリ子とその家族の物語。
夫は一流銀行に勤め、息子は有名私立に通う。
娘はただ一人、ユリ子の価値観とそぐわない子である。
それぞれが自分の世界を確立してそれぞれの方向を向き
ばらばらな生き方をしている。
しかしある日を境に家族が一致団結し乗り越えようとする。
ユリ子お得意の料理の腕を生かして・・・。
それはホラーとも言えるし、嘔吐へ誘うとも言える。
やがて訪れる崩壊にはあっけないものがあり
少しばかり終わり方が残念とも思う。

林氏の人生哲学が垣間見えておもしろい。
「記号の中身など誰も知りたいと思わない。
とりあえず耳さわりのいい記号を身に付けさえすれば
人生の大半は勝利したのと同じである」
これをはっきり言ってのけられる人はそうそういないだろう。
たいていの人はそんなはずはないと理想論を語るに違いない。
しかし、しつこく奥底を覗かれたら頑強に否定はできないはずである。

林真理子がデビューした初期の頃の作品を読むと
かなり赤面してしまう箇所がある。
なんと大胆な作家なのだろうと当時は驚いたものだ。
飾らない人柄と欲しいものを欲しいと直截に語る素直さ。
だからこそ女性達の共感を呼び、現在の地位を確立できたともいえるだろう。

最近は「anego]で楽しませてもらった。
先に本を読んでいたが少しずつ感覚のズレた人間の織り成す模様に
興味もあったし、恋愛の行く末も気になったものだ。
ドラマではストーリーが変わり、登場人物の性格も違うように思った。
しかし、ご存知のように赤西仁の出演があったので
日本中のOLたちが悶絶して自社に欲しいと願ったそうだ。
このような話題作に仕上げることができるのも林氏の強みだろう。
次の作品は何か、楽しみが多い作家である。


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (neko)
2005-09-08 11:41:23
私も読みました。

一度、近くでお見かけする機会があったのですが、小説と同様とてもストレートな印象でした。

>マスコミへの露出やエッセイがミーハーすぎて

そうですよね~

でもまじめ(?)な小説はどれも面白くて、かりんさんと同じく、気になる作家のおひとりです♪
返信する
nekoさん♪ (かりん)
2005-09-09 00:35:43
会われたのですか。「ストレート」っていうニュアンスがよくわかります・・・。

この本自体も奇妙な展開で、面白かったですよね。

OLが好む恋愛ものが多いので気楽に考えてはいますが、まじめ(?)な著書は、本当にはっとするほど深いものがあり感動します。

使い分けの上手な作家さんですよね。

返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。