KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
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2008福岡国際マラソン展望~マラソン冬の時代に

2008年12月06日 | マラソン時評
男女とも入賞者ゼロという結果に終わった、今年の北京五輪のマラソンから4ヶ月が過ぎた。長い間、五輪や世界選手権において、「日本唯一のメダル獲得、ないし入賞種目」であったのだが、今やそんな優位性は無くなった。はっきり言って、五輪でメダルが取れる可能性のある種目だったからこそ、一定の人気を集め、主要大会は日曜日の午後に生中継されていたのだ。

それでも、女子はまだ、かすかに光明が見えている。初マラソンの選手の優勝が国内の大会で相次いでいるからだ。男子はといえば、4年前のアテネ五輪の選考レースで、自己ベストを更新しながら代表に手が届かなかったランナーが3人揃って代表入りした、というのが現状だ。彼らの4年間の精進に拍手を贈りたいが、世代交代が進んでいないのも事実だ。

しかしながら、いったい、どれだけの結果を残せば、「ヒーロー」ないし「エース」と認められるのだろう。明日の福岡で、2時間4分台で優勝してみせたところで、17歳で1億円もの賞金を稼いだゴルファーや、平成生まれの美少女スケーター、もしくは、
「柔道は礼に始まり、礼に終わる」
という格言を死語にさせた若僧以上に話題になるのだろうか?

日本のマラソンが輝いていた'80年代、瀬古利彦や中山竹通が優勝したレースは軒並み高視聴率を上げていた。しかし、思い出したことが一つ。当時はまだJリーグは無かった。フィギア・スケートの大会も、五輪以外はNHK杯くらいしか中継されなかった。ソフトボールの実業団リーグの結果など新聞に載っていただろうか?あの「Number」も当時はネタに困って、加山雄三や石原裕次郎の映画の特集を組んでいたほどである。

今や、テレビで見られるスポーツの種類があまりにも増えた。五輪でメダルも獲得できないマラソンが世間からの注目度が下がっていくのも避けられない。60年を越える伝統の福岡国際マラソンもいつ、生中継が打ち切られて深夜の録画中継になるやらしれない。

さらに、みぞうゆう、もとい、未曾有の大不況である。スポーツ界もその影響からは逃れられまい。マラソンに限らず、実業団チームも今後は廃部に追い込まれていくだろう。既に、多くの企業で非正規社員が解雇されている。その次に削減されるのは、スポーツも含めた企業の文化支援の予算だ。

明日、平和台のスタートラインに立つ、ランナーたちには、今後も競技を続けていきたいと願うなら、死に物狂いで結果を残すことだと肝に銘じて欲しい。4年後のことなど考えなくていい。4年後も今のチームにいられるという保証などないのだという危機感を胸に、一つ一つのレースを悔いなく走り通して欲しい。

男子のマラソン代表の所属企業が、中国電力にNTT西日本、補欠の選手がJR東日本と、公益企業であるのも偶然ではないと思う。そういった企業でないと、アスリートを支援しづらくなっているのではないだろうか。今年は、東京電力が、谷口浩美を監督に迎えて、来年のニューイヤー駅伝初出場を決めた。日本郵政グループも駅伝チーム作らないだろうか。もし出来たら、応援するのに。(実は現在、僕は日本郵便の期間雇用社員である。)

というわけで、明日の福岡国際マラソン、日本勢の注目はアテネ五輪5位の油谷繁(中国電力)と、前述の北京五輪補欠の藤原新(JR東日本)だ。油谷は昨年の福岡以来1年ぶりのマラソン。藤原は10月にシカゴを走ったが2時間20分オーバーの結果に終わった。今年の東京で見せた、積極的で、痙攣のアクシデントにも動じなかった走りをまた見せて欲しい。JRからは一般参加で早稲田大競走部出身の五十嵐毅も出場。

今年のニューイヤー駅伝で揃って過去最低の成績に終わった古豪、旭化成とカネボウ。
「駅伝の仇をマラソンで返す。」
とばかりに、ここ福岡で入船敏(カネボウ)と佐藤智之の走りにも期待したい、入船は今年の東京、佐藤はびわ湖で2時間9分台で走ってはいるが、まだまだ記録を更新できると思いたい。

駅伝といえば、ニューイヤー駅伝の出場を果たせなかった三菱重工長崎の小林誠治。国内メジャー大会で常に上位入賞を果たすものの、まだサブテン・ランナーは出ていない。この数年、いつ、三菱からサブテンが出るかということに注目しているが、今年の東京で自己ベストを更新した彼にまた期待しよう。

余談だが、部員のほぼ全員が長距離ランナーで「陸上部」と名乗るチームが多い中、三菱重工長崎と日立電線は正式なチーム名が「マラソン部」である。福岡大学の走り幅跳び選手だった桝見咲智子が入社するまでは九電工陸上部もマラソン部だった。

この数年、国内メジャー大会での海外招待選手の期待外れぶりに失望の声が大きい。2年前のこの福岡でのハイレ・ゲブレセラシエやジャウアド・ガリブなど、は額面通りの実力を見せたが、古くは、ラッセ・ビレンにワルデマール・チェルピンスキー、'90年代以降ではアベル・アントン、アントニオ・ピント、アブデルカデル・エルムージアスらは「がっかり組」だろう。今回の海外招待選手の目玉である、フェリックス・リモや北京五輪銅メダルのテセゲイ・ケベデがどのくらいの準備をしてきて乗り込んでくるだろうか。金メダルのサムエル・ワンジルや、銀メダルのガリブ、もしくは、ハイレ皇帝らが走ったレースとして、彼らの記録に迫るくらいの万全のコンディションでスタートラインに立って欲しい。それに、ここまで述べた日本のランナーたちがどこまで食い下がれるか。

まずは、将来への希望を感じさせるレースを見たい、と思う。

(文中敬称略)




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