KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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全日本実業団女子駅伝雑感 vol.3

2005年12月29日 | 駅伝時評
テレビ中継では触れなかったが、デンソーの4区を走ったのは若松育美。旧姓永山と言えば思い出す人もいるだろう。かつて京セラ時代にアジア大会の1500m代表になり、マラソンでも2時間27分台のタイムを持っていたが、京セラ時代のチーム・メイトと結婚し寿引退していた。今秋、
「子供と一緒に、後輩の練習を見ているうちにまた走りたくなった。」
と、デンソー陸上部に復帰したが、会社の方も
「戦力になり得る」
と思ったからこそ、復帰を認めたのだろう。
4区4.1kmを13分27秒、区間15位というタイム自体は「平凡」だが、彼女がこの大会を走った初めての“ママさんランナー”なのである!

4年前の三井住友海上優勝のゴール・テープを切ったのが大平美樹だった。その時は肩をいからせた、垢抜けないフォームだったのが改善されている。10000mのタイムを31分43秒43にまで縮め、堂々たる「エース」だ。
独走して優勝を決定的なものにしたが、この5区でもっとも注目を集めたのは14人のごぼう抜きを見せたワコールの福士加代子だった。

ごぼう抜きは確かに見る者に爽快感を与えるが、声高に礼賛していいものでもない、と僕は思う。エースと他のメンバーとの実力差が甚だしいか、前の区間の走者が不調だった時でないと実現しないからだ。シドニー五輪のマラソン4位のエスタ・ワンジロはこの大会で20人抜きの記録を持っているが、彼女はインタビューではあまり喜べないといいたげな表情を浮べていた印象がある。福士も、インタビューではいつもの「かよちゃん節」で笑わせていたが、内心はおだやかでなかったろう。

大山美樹からたすきを受け取ったのは3年連続アンカーの大山美樹。「ダブル・ミキティー」のたすきリレーが実現した。2位には天満屋が浮上。1月に大阪国際女子マラソンを走る北山由美子がふんばった。

昨年は京セラの猛追撃にヒヤヒヤしながらの優勝だったが、今年は危なげない優勝だった。

2位は天満屋、そして3位には沖電気が入った。川上優子のような絶対的なエースはまだいないが、宮内ツインズがそう成り得る可能性を見せたといえる。

資生堂がアンカー弘山晴美の6人抜きで4位、京セラが石井智子の7人抜きで5位と、このあたりのチーム、序盤でもっと好位置につけていたら、と思わせた。6位はホクレン。過去最高の順位だ。増田明美さんの言うように、もう1枚“駒”があれば、来年はもっとやれそうだ。
昨年は東日本大会で予選落ちのしまむらが7位。

終わってみれば、三井に天満屋、アテネ五輪代表のマラソン・ランナーを育てたチームが、そのアテネ代表選手を出さずに結果を出して見せた。「マラソン選手を駅伝で育てる」という日本長距離界の伝統はまだ生きていた。

来年は、と言えば鬼が笑うが、ここにシスメックスが参戦してくるのであろう。これまでに、日本の女子マラソンの五輪メダリストが、メダル獲得後にこの大会を走ったことはない。来年は野口みずき、土佐礼子(監督の胴上げには参加していたが。)、坂本直子がここに戻って来て欲しいと思う。



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